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原点にかえる

    わたしはここにかえってきた
    あったものがなくなっていて
    なかったものがそこにあった


    *


    「原点にかえる」
    この “かえる”(返る / 帰る )は、“基本となる出発点に戻る” という意味です。
    漢字の使い分けは 傾向がほんのり見えますが、いずれも間違いではなく、どちらの表記も見られます。

    返る:  物事が元の状態に戻る場合
    帰る:  人の意思(意志)で元の場所や状態に戻る場合


    *


    ふらりと東京・練馬区の大泉学園を訪れました。

    西武池袋線の大泉学園駅。
    西武池袋線は、東京都と埼玉県を結ぶ路線です。

    練馬区は、東京23区では最も西側に位置しています。緑が豊かな区と言われていて、畑も多く練馬大根が有名です。
    大泉学園は、その練馬区の北西部にあって、埼玉県に接しています。


    わたしは23歳の時に大阪の実家を出て上京しました。初めて東京で暮らしたのがこの大泉学園の街でした。
    わたしの人生のひとつの転機。
    新たなスタートの場所。原点。

    それから都内で何度か引っ越しをして、いつしか大阪よりも東京暮らしのほうが長くなりました。
    大泉学園に暮らしたのは短かったし、とても素朴な街だったけど、やっぱりわたしにとっては特別な場所です。


    NHK朝ドラ『らんまん』の放送で、植物学者である牧野富太郎さんが注目され、晩年を過ごされたご自宅が大泉学園にあることを知りました。
    住んでいた当時は全く知らなくて、懐かしい地名が出てきて驚きました。
    その邸宅跡のお庭が、亡くなられた翌年の昭和33年から一般に開放されているということを知り、そのうちに訪れたいと思っていました。
    そんなことを呟いてから、もう早2年。
    もし行くのなら、爛漫に花の咲く春がいいなと思っていたのですけれど… この季節となりました。春はまたいつかそのうちに。

    街はほんのり甘い花の香り。そうだ、キンモクセイは牧野富太郎さんが名付けた植物でした。
    秋の香りを纏いながら、原点の街を歩きました。


    ***


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    日本のアニメ発祥の地



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    牧野記念庭園



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    ドウダンツツジが少し紅葉
    奥は立派なキンモクセイ



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    キンモクセイの花



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    学名にMakinoの文字



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    牧野博士が仙台で発見した笹


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    和名に奥様の名をとって
    “スエコザサ”と命名



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    句碑
    『家守りし妻の恵みや我が学び』
    『世の中のあらむかぎりやすゑ子笹』

    牧野博士は俳句や短歌も詠まれていた
    奥様への愛と感謝を込めた二句



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    短歌
    『何時までも生きて仕事にいそしまん
    まだ生まれ来ぬこの世なりせば』



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    ここは…… どこ。

    駅に降りたら懐かしさが込み上げてくるのかなと想像していたのですけれど…。
    駅には面影がなく、駅舎も駅前の建物もみんな新しく変わっていて、記憶にあった景色は すっかり過去のものになっていました。

    牧野記念庭園は、住んでいた方向とは逆にありました。当時、駅の向こう側にはほとんど行ったことがありませんでした。
    庭園は立派な樹木や草花に溢れていて、その歴史を感じることもできました。


    せっかくだから住んでいたあたりにも行ってみよう。
    毎日往復していた大泉学園通りの桜並木。歩いていると、景色のところどころに残っている面影を見つけて胸が躍りました。そうそう、これこれ。
    歩きながら頭の中では、なぜかギターの音色でフォークソングのようなメロディが流れていたのだけれど、それがなんの曲なのか結局わからないまま。


    記憶をたぐり寄せて辿り着いた場所に、住んでいたアパートがありました。
    外観はとても綺麗になっていたけれど、それでもちゃんとわかりました。
    建物の名前もそのままでちょっとじーん。
    ここから始まったんだなあ…なんて。しばらく佇んで眺めました。(…あやしい)


    いつの間にか もう25年以上が経っていました。
    あの時はまだ平成で、まだ20世紀で……携帯電話もデジカメも持っていなかった時代。
    わたしもとても若くて、社会人としてもまだまだ未熟で。 “だけど”なのか、“だから” なのか、恐れや迷いというものはありませんでした。若さって強い。

    年月を重ね、時代、状況、景色… いろんなものが変化していきます。あったものが壊れたり消えたりして、なかったものが生まれたり増えたりしながら、これからもそんなふうに続いていくのですね。

    過去の“今”が原点でした。“今”を重ねてここに辿り着きました。どんなことも過去が、今が、あってこそ。
    今を、今の自分を、大事にしよう。いろんなことがあるけれど、進んでいくしかないのですから。
    咲いた花も萎れ、落ちて実を結び、そこにはまた種が生まれていました。


    みなさんの町でも金木犀の香りがしているでしょうか。
    どうぞ よい一日を、よい一週間を。






    #225.    『 金木犀 』

    ⭐︎金木犀の香りはいつも平等で原点でも現時点でも

    ⭐︎神妙な顔しておにぎり握れば キンモクセイのどこからともなく

          ー ちる ー

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    キンモクセイの花言葉
    『初恋』 『謙虚』 『真実』 『真実の愛』など


     
     
     

    ちる

     
     
    エッセイと短歌、時々 詩や物語。 写真も合わせてお楽しみください。 いつか自分の言葉を集めて形にしたい。 空、月、星、花、鳥、水… 自然が好き、自由が好きです。

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