
【絵本】光の子トキと、形を変えるじかんの話
ある昼さがりの空に
まぶしい光がきらきらと広がっています。
その光の中で
小さな光の子が遊んでいました。

ある日トキは
空にぽつんと浮かぶ「まる」を見つけました。
「あれは、なんだろう?」
トキはどきどきしながら
まるに近づいていきました。
上へ。
上へ。
もっと上へ。

ふしぎなことに
上へ行けば行くほど
まるはどんどん増えていきます。
気がつくと
トキは宇宙までやってきていました。
「うわあ……!」
そこにはまるたちが
あちらにもこちらにも
ぷかぷか浮かんでいます。
トキは
そのひとつにそっと触れてみました。
ぷにっ。
「あははは!」
すると
まるはふわふわの生きものみたいに
ゆらゆら動きはじめました。

「きみはだれ?」
トキが聞くと
まるはころころ転がりながら答えました。
「ぼくは、じかん。
宇宙ではでこぼこが少ないんだ。
だから
まるくなってするする進めるんだよ。」
じかんは楽しそうにくるりと回りました。
「もっとおもしろいもの見せてあげる。」
じかんは
トキの手を引いて大地へ降りていきました。
すると――
下へ行けば行くほど
じかんの形が少しずつ変わっていったのです。

まるかったじかんはとがった三角になり
やがて
ごつごつした四角になりました。
「わあ!」
トキはびっくりして声をあげました。
「どうして形がかわったの?」
するとじかんは
四角い体を揺らしながら言いました。
「大地はでこぼこが大きいんだ。」
ごとん。
ごとん。
じかんはゆっくり転がりました。
そして
じかんは少し得意そうに笑いました。
「ぼくはね
ひとりじゃないんだ。
もっとおもしろい秘密
見せてあげる。」
その時――
目の前に
ぷよぷよした大きなものが現れました。

「わしは、ダン。」
ダンはのんびり言いました。
「みんなが飛んだり、笑ったり
眠ったりしておる“場所”そのものじゃ。」
「場所……?」
トキは
ふしぎそうにダンを見上げました。
すると
ダンの体が空までぐうんと伸びました。

ダンが動くたび
空も
大地も
ぐにゃりと揺れます。
「うわああ!」
トキは
びっくりして目をまんまるにしました。
じかんは
楽しそうに笑っています。
「ぼくたちはいつも一緒なんだよ。」
ダンは
トキとじかんを背中にのせて
宇宙へ向かって伸びていきます。
宇宙へ近づくにつれて
じかんの角はだんだん丸くなっていきました。
そしてダンは
宇宙から大地まで続く
大きくて長い滑り台を作りました。
「さあ、滑ってみるんじゃあ!」
「せーの!」
ふたりは
ダンの背中を勢いよく滑りはじめました。

宇宙では
ダンの背中はつるつるです。
トキもじかんも
すいすい進んでいきます。
ビューーン。
ビューーーン!
けれど
大地に近づくにつれて
ダンの背中は
だんだんでこぼこしてきました。
でこぼこに引っかかりながら
じかんはとがった三角になり
ごつごつした四角になっていきます。

トキは
ごとん。
ごとん。と
転がるじかんをじっと見つめました。
さっきまで
するすると進んでいたじかんが
今は
ゆっくりぶつかりながら進んでいます。
楽しくて
ふしぎで
夢中になっていると
空は夜色に変わっていました。
そして
いつの間にか
ダンとじかんの姿は
みえなくなっていました。
でもなぜか
トキはさみしくありませんでした。
遠い宇宙。
知らない世界。
見たことのない
たくさんのふしぎ。
「また会えるといいな。」
そうつぶやくと
夜空は前よりずっと広く見えました。

最後まで読んでくださりありがとうございます。
この物語は、相対性理論の不思議からインスピレーションを受けて書きました。
不思議ってよくわからないからこそ、想像が広がるものだと思っています。
この物語の中で、みなさんの心にも新しい景色が浮かんでいたら嬉しいです🕊️