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『初恋の続き』しても良いですか?(リライト版)【第4話】 初恋の成就

    chintakaこと柊 聖月

    彩夏とのゴルフ練習が始まってから1ヶ月が経とうとしていた。

    会社では、佳純は相変わらず大和に絡んできている……。

    そんな日常の金曜夕方。
    大和は佳純と待ち合わせしていた。

    「大和君から声がかかるなんてどう言う風の
     吹き回し?」
    「うん、ちょっとな……。今から時間ある?」
    「あるわよ?」
    「分かった…少し付き合ってくれないか?」
    「勿論よ」

    大和は助手席のドアを開け佳純を乗せた。

    季節はまだ夏、仕事帰りの街中はまだ街灯が点かない明るさがあった。

    「……で、今日は何なの?」
    「……佳純と飯でも食おうと思って」
    「な〜に、デートってこと?」
    「ん~~何て言えばいいかな…」
    「まあいいわ。
     ちゃんとエスコートしてくれるのよね?」
    「多分…」

    30分くらい走ったあと、車は大きな駅近くの駐車場に入った。

    二人は駐車場から歩いて、ホテルの前に立った。

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    「着いたよ」
    「ここって……、今夜は押し倒す気?」
    「ば、馬鹿……ここに有名なレストランが
     あるんだよ」
    「知ってるわよ。
     女性社員の中でも話題になってたから」

    エレベーターで最上階にあるレストランに向かう。

    ガラス張りの窓からは、点灯したばかりのネオンが、街を彩り始めているのが見えていた。

    予約席に案内され、二人は窓際に座る。

    「大和君、随分奮発したじゃない?
     一体何があるの?」
    「…とりあえず、食べてからな」
    「気になるんだけど…」

    佳純はモヤモヤはしたが、せっかくの食事と大和との時間を楽しみもしたかった。

    二人は世間話をしながら、ディナーを楽しむ。

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    和やかな雰囲気は、傍からみればまるで慣れ親しんだ恋人同士のようにさえ見えていた。

    窓の景色が群青色に染まる頃、デザートが運ばれてきた。

    「ディナーもこれがラストか……。
     佳純、話してもいいかな?」
    「ええ、そっちがメインなんでしょ?」

    大和は佳純に丁寧に、そして静かに話し始めた。

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    「押し倒されても怒らない…
     あれ凄く効いたんだ…。
     佳純は綺麗でスタイルもいい。
     そんな女性が『好き』だと訴えてくる…。
     男ならこんな嬉しいことはないし…、
     確かに…佳純を抱きたい……
     そんな気分にもなった…。

     この1ヶ月悩んだよ……。
     でも、それは愛情じゃなくて、
     男の勝手だと思うようになったんだ……」
    「体から付き合い始めるって、
     私『あり』だと思ってるけど?」

    大和は戸惑った。そして、またゆっくりと話しだした。

    「確かに…それは男の俺も『あり』だとは
     思うよ…。でも…、今の俺の中にいるのは
     佳純じゃないんだ。ごめん……」

    ホテルのレストラン…小さな期待をしていた佳純には残酷な優しさだった。

    「……分かったわ。でも最後に頼みがあるの」
    「あ…ああ」
    「今夜1回だけでいいから抱いてくれない?」
    「えっ、いや…それは」
    「やっぱり断わるんだ…」
    「悪い…」
    (抱いてやりたい気持ちも、
     男として君みたいな魅力ある女性を
     抱きたい気持ちがあるのも事実だけど、
     今の俺にはできないんだ。すまない佳純)

    佳純は静かに席を立った。

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    「帰りは一人で帰るから、
     エスコートは必要ないわよ」
    「佳純…」

    ホテルをあとにした佳純はタクシーを拾った。

    「◯◯市◯◯、運転手さん、近くに着いたら
     教えてください…それまでは一人にして…」

    そう言うと、佳純の目から涙が零れ落ちた。
    いつも態とらしく絡んでいたが、大和の優しさには本気だった。

    佳純は窓に頭を寄りかけて外を見ていた。

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    タクシーの車窓からは街のネオンが輝いている。ほんの少し前まで、淡い期待と美味しい匂いに包まれていた景色が滲んでいた。

    今夜の大和の優しさは、佳純の心を残酷にきり裂いてしまった…。


    その夜、大和は彩夏にLINEでメッセージを送り、そして電源を落とした。
    「明日、話したいことがある。
     ゴルフの練習は中止しないか?」

    今夜は、佳純からの連絡も、彩夏からの質問も見たくなかった。


    翌日、いつもの土曜日より少し遅れた時間、大和は彩夏の家のチャイムを鳴らした。

    「大和先輩、昨日は返事しても既読にならな
     いし、何かあったんですか?」
    「悪い…車の中で話すから」

    大和は何も言わずに車を走らせた。
    車が街を外れ道が空いてきた時、ようやく重い口を開いた。

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    「彩夏ちゃん、あのさ…、
     昨日佳純と話したんだ」
    「佳純さんって…、
     あの女性と会ってたんですか?」
    「ああ、先日、告白されてたから」
    「え?……それで……昨日は何を?」
    「はっきりさせようと思って」
    「結論…出たんですか?」

    彩夏はふと我に返り、『怖い、聞きたくない』と思った…。

    「ああ、出した……断ったよ。
     それで彩夏ちゃんにも話しておきたい事が
     あるんだけど?」
    「…な、何ですか?」

    「俺、彩夏ちゃんの事、好きになってるみた
     いなんだ。この間佳純に『邪魔』って
     はっきり言ったでしょ?
     あの頑張る姿みて、俺もはっきりしない
     と、駄目だなって思ったんだ」

    「頑張る姿?」
    「あれ見て『俺が守らないといけない』
     んだって」

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    「本当に?」
    「ああ、彩夏ちゃんの一途な所も見てきた
     し、彩夏ちゃんに惹かれてるのは
     事実だから」

    彩夏の瞳に涙が溢れだした。

    「所で、泣くのは止めようよ、
     別れ話してる、悪い男みたいだから」
    「悪い男ですもん、私をこんなに泣かせるよ
     うなことしたんですから」

    彩夏は涙を拭いながら、いたずらっぽく笑った。

    「……勘弁してよ」大和も苦笑いする。
    「へへ」


    「ところで……ずっと、聞きたかったことがあ
     ったんです…。中学校の時、
     ラブレター渡したの、覚えてますよね?」

    大和は、少し戸惑った表情を浮かべた。

    「あ…、ああ、覚えてるよ」
    「あの時、どうして返事をくれなかったんで
     すか?」

    大和は、視線を彷徨わせながら、言葉を探した。

    「えっと…、あの時は、転校してきて間もなか
     ったし、美術部は女子ばかりで、正直、
     居心地が悪かったんだ。
     それに、ラブレターなんて貰ったの初めて
     だったし、どうして良いか判らなくて…」
    「…そうだったんですね」

    大和「ごめん」

    彩夏は、少し寂しそうな表情を浮かべたが、すぐに笑顔になった。

    「もう、過去の事ですから。それに、
     今日からは恋人同士で良いんでしょ?」
    「ああ、よろしくね」


    「最近、先輩が遠くに感じてたんです。
     でも、待ってて良かったです」
    「ごめん、でもこれからは、
     大切にするから」
    「また、ゴルフ行きましょう」
    「ああ、もちろん。いつでも良いよ」
    「やった!」

    彩夏を家まで送り届け、大和は帰路についた。


    彩夏は大きな声で母親に帰宅を告げた。

    「ただいま〜」
    「おかえり。どうだった?
     今朝は重苦しい雰囲気だったけど?」
    「うん、大丈夫だった!告白されたし」
    「あら〜、やっと実ったわね。良かったわ」

    彩夏は、自分の部屋に戻り、ベッドに倒れ込んだ。

    告白された喜びと、胸につかえていた霧がすっきりと晴れ、幸せな気分に満たされていた。

    告白から数日、彩夏はゴルフ以外のデートを考えていた。
    そしてLINEで大和を誘った。

    「今晩は、今、大丈夫ですか?」
    「大丈夫だよ」
    「あの…、今度ゴルフ以外で、
     どこか連れてってください」
    「ああ、良いよ。いつが良い?」
    「えっと…、来週の土曜日とか、
     どうですか?」
    「来週の土曜日か…。大丈夫だよ。
     場所はどこか行きたいところある?」

    「えー、どこだろう。先輩のおすすめは?」
    「うーん、ちょっと考えさせて。
     彩夏ちゃんは何か好きなものとかある?」
    「好きなもの?うーん、絵を見るのが好きか
     な。先輩も美術部だったじゃないですか」
    「じゃあ、美術館とかどうかな?落ち着いて
     話もできるし」
    「いいですね!楽しみです!」
    「じゃあ、予約とか色々調べて
     また連絡するね」
    「はい、待ってます。お休みなさい」
    「お休み」


    LINEを終えたあと、大和は色々なコースを検討した。

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    美術館か…、確かに俺美術部だったけど、油絵はやってないんだよな。彼女は東京勤務だから、休日にまた東京に行くのは嫌だろうから、東京方面は却下かな〜?ま、三鷹の森ジブリ美術館は面白そうだけどな…。

    東京以外で有名処は…、どれもお泊まりコースか…、いきなりは無理だな。

    ん~~、あ、熱海のMOA美術館があった。
    あまり有名って訳じゃないけど、ここから車で行けるし、美味しいものも沢山あるよな。

    とりあえず、あげた候補を連絡して返事を待つか……。

    「この3つを美術館の候補にしたよ。
     どれが良い?」

    国立西洋美術館:フランス近代美術コレクション
    三鷹のジブリの森美術館:アニメの世界のジオラマ←東京だけど、ここは特別かな
    熱海MOA美術館:東洋美術が中心←ここは車で行ける


    10年前に止まったままだった初恋の歯車は、もう完全に動き出している……。
    次の土曜日、美術館で過ごす一日が、きっとまた二人の距離を縮めてくれるはずだ。


    本作品はフィクションです。登場人物・団体名等はすべて架空のものです。
    著作権は著者に帰属します。無断転載・複製を禁じます。


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    60代で恋愛小説とダークファンタジーを書いています。 高校生の恋、不倫の恋、神と吸血鬼、日本百名山の頂、定年後のいま。 忘れられない“あのとき”を、今も言葉に残しています。

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