
中国自動車輸出や現地生産、各国シェア侵食状況[2026年5月]
2026年5月末号:全体観
5月の見立てはこの3点です。
欧州・英国:心理的な10%ラインを突破。BYD、SAIC/MG、Chery系、Leapmotorが同時に伸び、英国では中国ブランドが日本ブランドを上回る月が出ている。
豪州・ブラジル・南ア・イスラエル:日本勢の既存ポジションが具体的に削られている。とくに豪州のBYD、ブラジルのBYD、イスラエルのChery/Omoda/Jaecooは「上位ブランド」化。
タイ:全体ではトヨタなど日本勢がまだ強いが、BEV・PHEVでは中国勢が圧倒的。HEVは逆に日本勢がほぼ独占しており、市場がパワートレイン別に分断されている。
主要市場ダッシュボード
欧州 EU+EFTA+UK
中国系グループ合計で5月に10%超、推計12%前後まで上昇。
BYD・CheryがHonda、Suzuki、Mitsubishi級を上回る月が出ている。
英国
5月の中国ブランドシェア約14%との集計。Omoda/Jaecooだけで4.95%。
日本勢より中国勢の伸びが可視化。NissanのYTD減少も目立つ。
豪州
BYDが5月ブランド2位。中国生産車は37,229台で日本・タイ生産を上回る。
Toyotaは首位維持だが、Mazda/Mitsubishiなどに圧力。
タイ
5月BEV乗用車の中国メーカーシェア86.6%。全登録では中国系ブランドが約3割規模。
HEVは日本勢98%で防衛。ただしEV領域は中国勢が支配。
ブラジル
BYDが月間4位、GWMが初トップ10。主要中国系合計で約16〜17%。
Toyotaは6位、Honda 9位。中国勢が量販価格帯に入った。
イスラエル
5月単月で中国ブランド46.4%との現地集計。H1では中国製44.7%。
日本製シェアはH1で10.6%まで低下。
南アフリカ
GWM、Chery、Jetour、Omoda/Jaecoo合計で少なくとも約16.8%。
Toyota首位は堅いが、Nissanなど中堅日本勢が埋没。
インドネシア
1〜5月でBYDが卸売6位、17,993台。
日本勢全体は依然強いが、EVではBYD/Wuling/Chery勢が存在感。
メキシコ
MG、BYDがYTDで大きく伸長。ただし中国ブランド全量把握は不完全。
Nissan/Toyota/Kiaなど既存勢の周辺で中国勢が増殖。
ロシア
Haval首位級、Geely/Changan/Jaecoo/Jetourに加え、中国由来のロシア・ベラルーシ系ブランドも大きい。
日本勢は限定的回復にとどまり、実質的には中国系供給網が中核。
市場別メモ
欧州・英国
欧州では5月に中国勢が「例外」ではなくなりました。Dataforce/ACEA系の集計では、中国ブランドがEU+EFTA+UKで10.7%、EU単体でも10.5%に達したとの報道があります。BYD、SAIC/MG、Chery系、Leapmotorが同時に伸びている点が重要です。iEVChina、ACEA
欧州5月のブランド・グループ別では、BYDが約32,380台、SAICが約30,527台、Chery系が約27,412台、Leapmotorが約9,945台。BYDはすでにHonda、Suzuki、Mitsubishi、Porscheなどを月間台数で上回る水準です。km77、Motor1
英国はさらに濃いです。SMMTによると5月の英国新車登録は160,662台、BEV比率は27.3%。SMMT
Omoda/Jaecooは5月に7,961台、シェア4.95%、Jaecoo 7は月間4位。これはもう「新興EVブランド」ではなく、量販SUV市場での直接競争です。Omoda/Jaecoo UK
豪州
5月の豪州はかなり象徴的でした。BYDが8,211台でブランド2位、GWM 4,660台、Chery 4,401台、MG 3,872台。VFACTS系集計では、中国生産車が37,229台で、日本生産22,832台、タイ生産17,552台を上回っています。Cars24/VFACTS、AADA
日本勢ではToyotaは首位維持ですが、5月は前年比で大きく下げたとの現地集計もあり、MazdaやMitsubishiも弱い。中国勢はEVだけでなく、SUV、UTE、低価格小型車へ広がっており、豪州は日本勢シェア浸食を測る定点観測市場として重要度が上がっています。
タイ
タイは「中国勢が日本勢を全部食っている」というより、きれいに市場が割れています。
5月のBEV乗用車では、BYD/Denzaが3,683台、Chery/Omoda/Jaecooが2,727台、MGが2,644台。中国メーカー合計で86.6%。1〜5月累計でも中国メーカー合計90.6%です。JETRO
一方、HEV乗用車ではToyota/Lexusが47.0%、Hondaが37.5%、Mitsubishiが11.0%で、日本メーカー合計98.0%。つまりタイでは、日本勢はHEV・ピックアップ・既存販売網で守り、中国勢はBEV/PHEVと価格訴求で攻める構図です。JETRO
全体販売では5月国内販売57,765台、前年比10.6%増。EV需要が下支えしましたが、生産は輸出不振で落ちています。FTI/Toyota発表引用、Trading Economics
ブラジル
ブラジルは5月にBYDが「主流ブランド」入りしました。新車登録264,043台のうち、BYDは21,704台で4位、シェア8.22%。GWMも7,438台で初のトップ10入り、CAOA Chery 6,660台、Geely 5,173台、Omoda/Jaecoo 3,176台。Motor1 Brasil/Fenabrave
主要中国系を単純合算すると約44,151台、月間市場の約16.7%です。Toyotaは14,819台で6位、Hondaは10,288台で9位。ここは中国勢がEV専業ニッチではなく、Dolphin MiniやSongなどで量販価格帯に入り、日本勢・韓国勢・欧米大衆ブランドをまとめて揺さぶっています。
イスラエル
イスラエルは中国勢の浸透度が最も高い市場の一つです。現地集計では5月単月の中国ブランド販売は13,681台、シェア46.4%。CheryとOmoda/Jaecooで7,113台、BYD 1,948台、MG 1,441台、Geely 834台。Sohu現地系集計
半期データでも、中国製車のシェアは44.7%、日本製は10.6%。Omoda/Jaecoo、Chery、BYDが上位に入り、Toyotaはなお上位ですが相対的な存在感は低下しています。Auto.co.il
南アフリカ
南アも中国勢が量販ランキングに定着しました。5月はToyota 10,667台で首位ですが、GWM 2,605台、Chery 2,569台、Jetour 2,020台、Omoda/Jaecoo 1,369台。これだけで8,563台、総市場51,071台に対して約16.8%です。Cars.co.za、Business Day
現地の受け止めとしては、価格・装備・保証の強さが、従来の日欧韓ブランドの「安心感」だけでは防ぎ切れない段階に入った、という論調が増えています。
インドネシア
インドネシアはまだ日本勢の牙城です。1〜5月卸売ではToyota 111,119台、Daihatsu 59,420台、Suzuki 30,262台、Mitsubishi 28,445台、Honda 18,271台が上位。ただしBYDが17,993台で6位まで上がりました。GAIKINDO
5月単月では市場全体が69,219台に落ち、BEVも1,028台へ減少。BYDは449台、Wuling 659台という月でした。これは中国勢の失速というより、インドネシアでは供給・補助金・現地生産・モデル投入タイミングで月次が振れやすい、という読みが妥当です。Tempo/Jawawa
メキシコ
メキシコは中国ブランド全体の捕捉が難しい市場です。INEGIによると5月の軽自動車販売は127,100台、1〜5月累計は627,609台、前年比4.9%増。INEGI
中国系では、1〜5月累計でMGが23,340台、BYDが16,822台。Changan、GWMも伸びていますが、BYD、Chirey、Omoda/Jaecoo、GACなどは報告体系の違いがあり、月次の中国勢合算は慎重に扱うべきです。ANCA
ロシア
5月のロシア新車乗用車市場は109,892台。Ladaが28,365台で首位、Havalが15,834台で外資系トップ。Geely 6,836台、Changan 5,194台、Jaecoo 2,861台、Jetour 2,830台もトップ10入りしています。Autostat
注意点は、TENETやBelgeeのようなロシア・ベラルーシ系表示でも実質的に中国技術・中国サプライチェーン由来のブランドが大きいことです。従って「中国ブランド」だけで見ると過小評価になります。
北米チェック:カナダ・米国本土
カナダについては、5月末時点で実体のある確認情報があります。2026年3月1日から、中国製EVの輸入に出荷ごとの輸入許可が必要になり、CBSAは5月19日から電子申告で許可情報を提出できるようにすると案内しています。これは「中国製EVがカナダ市場に入り得る制度的枠組み」が動いている、という意味では重要です。CBSA Customs Notice 26-05
一方、BYDなどのカナダ小売開始については、5月末時点では「準備・報道」はあるが、量販登録や正式な販売開始を確認できる段階ではありません。従って今月号では「カナダ参入の可能性あり」ではなく、「制度面の入口は確認、販売実績は未確認」と扱うのが安全です。
米国本土については、5月末基準で中国乗用車ブランドの本格参入を示す確認情報は拾えませんでした。むしろ米国は、中国・ロシアに関係するコネクテッド車両のソフトウェア/ハードウェア規制を強める方向です。米BIS
5月号の結論
5月末時点の結論は、「中国勢の海外展開は、EV輸出から、現地の量販ブランド化・販売網化・パワートレイン多角化へ進んだ」です。
日本勢への影響は国ごとに違います。タイやインドネシアでは日本勢はまだ強い。ただしBEV/PHEVでは中国勢が主導権を握っています。豪州、ブラジル、イスラエル、南アでは、すでに日本勢の中堅ブランドや一部量販モデルが実際に押されています。欧州・英国では、台数シェアが10%を超えたことで、いよいよ「中国勢を別枠で見る」段階から「市場構造の一部として見る」段階に入りました。
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