
#雑記 元夫が巣立って行った件
夜勤入りだというのに、朝からいぬこちゃんたちの威嚇の声で起こされた。
私は横になったまま、
「うるさいよ。いぬこちゃんたち静かにしなよ。リビングのドアを開けっ放しにしてるから吠えるんでしょ」
と、寝ぼけながら言った。
すると、足元にいた娘が、
「いや……違う……」
と、困った顔を私に向けている。
「え、なに?」
横になっている私の頭の方から、極稀にしか聞くことのない、あの滑舌の悪い、通らない曇った声がした。
「今までお世話になりました」
元夫の声だった。
起き上がる間もなく、反射的に、
「こちらこそ、お世話になりました」
と返すと、
元夫は続けてこう言った。
「写真を撮ってほしい。3人の」
3人の……?
寝起きのすっとぼけた頭で「何言ってんの?」と思ったら、元夫と子どもたち、3人での写真を撮れ、ということだったらしい。
思い出した💡
元夫はいつも写真に写る側。
私は写真を撮る📸側だった。
子どもたちが小さい頃の写真のほとんどに私は写っていない…
そんな事をボヤいたこともあったなぁ。
っていうかさ…
昨日の“最後の晩餐”の時は、一言も声を発しなかったのに?
子どもたちだって出勤前でバタバタしている今、それを言うか……。
もっと言えばさ、
あれほど「見えていない」かのように無視し続けてきた子どもたちとの写真を、
今さら欲しいって……
どゆこと(笑)。
寝起きですっとぼけているのをいいことに、私は思わずこう言ってしまった。
「この期に及んで一緒に写った写真が欲しいってさぁ。
一緒にいる間にもっと話して、仲良くしときゃ良かったじゃん」
元夫は、小さく頷きながら苦笑いしていた。
歯磨き中に呼び出され、これまで無視され続けた父親(元夫)と写真を撮ることになった息子。
出勤前で、ただでさえ気持ちが落ち着かない今春新卒入社の娘。
元夫と微妙に距離を空けながら、そこに写る3人全員が不自然な笑顔を作っている、不思議な父子写真。
なんとも奇妙な光景だった。
この距離に、これまでの元夫と子どもたちとの関係がすべて現れているように感じた。
「思春期だから親と写真を撮るのが恥ずかしくて……」という距離感とは、明らかに違う不思議な感じ。
これが、この子たちにとって元夫に詰め寄れる、精一杯の距離なんだと私は悟った。
それはきっと、子どもたちの優しさの表れのようでもあり――。
そして、すぐそばにいる子どもたちの肩を抱くことさえできない元夫の現実……
それを「心残り」と言ってもいいのかもしれないけれど、それもしっかりと示していた。
そんな関係を如実に現す写真を、私は何枚もシャッターに収めた。
この離別を好機にするなら、これが新しいスタートになるんだな……。
そんなことを思いながら、元夫のスマホを構えた。
◇
夜勤入りまでの間、私はいつものように家に残る家族のための今晩のご飯を作り、引っ越しの荷造りをする。
いつもと違うのは1人分少なくなったご飯を作ることくらいかな。
毎日9合炊いていたご飯。
今日から何合炊いたらいいのだろう…🤔
なんてことのない毎日と
ほぼ同じ。
だけど今日は、
人生のからくり時計が音を立てて大きく動いた日、
なのかもしれないな。