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Photo bymegusuri64

午後五時の呼吸

    夕方になると息苦しくなる。

    世界がわたしからぼやけていって、窓の外の音が遠くなる。

    4週間前に離婚が決まった。

    望まない離婚だった。

    けれどこの1年、どれだけ一緒に暮らしたいと言っても、夫は首を縦に振らなかった。

    6歳の息子は夫のもとにいる。もう1年会えていない。

    午後5時を過ぎるころ、マンションのどこかで夕飯を作る音がする。

    包丁の音。

    子どもの笑い声。

    「いただきます」と聞こえてきそうな気配。

    わたしだけが、その時間から取り残されている。

    白いベッドの上で、わたしは膝を折り曲げ、背中を丸める。生まれたての赤ちゃんのような格好で、浅い呼吸を繰り返す。

    頭の中では、たったひとつの言葉だけが、繰り返し波のように襲ってくる。

    それでも。

    そんな夕方が、こうして文章になって、誰かのもとへ届くなら。

    離婚やうつ病や失恋で泣いている人に、わたしだけじゃないと思ってもらえるなら。

    わたしは今日一日を生きよう。

    明日生きるかどうかは、明日決めればいい。

    今日の夕方の景色が、美しいと思えるその日まで、わたしはわたしの感じたことを、言葉にするのだ。

    #創作大賞2026  

    #エッセイ部門

    #離婚

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