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詩のような物語 十二か月(3)三月 三月は、

    紫葉柚月(しば ゆづき)

    三月は、まだ寒さを言い訳にしながら、
    それでも確実に前へ進んでいる月だ。

    コートのポケットに残ったままの手袋と、
    少し軽くなった心。

    同時に抱えて歩くことを、
    誰も責めたりしない。

    三月は、決意の月じゃない。
    芽吹きの準備をしているだけの月。

    土の下で、
    「まだだよ」と言いながら、
    ちゃんと力を溜めている。

    昨日と同じ景色なのに、
    光だけが少し違う。

    それだけで、
    生きていける気がする。

    急がなくていい。
    咲く順番を比べなくていい。

    三月は、
    迷いながら進む人の背中を、
    いちばんよく知っている。

    だから今日も、
    静かに息をしていればいい。

    春はもう、
    あなたを見つけている。

     
     
     
    会社員として働きながら小説を書いています。 地方文学賞で3度受賞。某文学賞最終選考通過 著書『詩のような物語 十二か月』Kindle・紙書籍で発売中📖 日常の小さな光や、言葉にならない想いを物語に。 本・映画・文房具(特にロルバーン)が好き。 心にそっと灯がともる物語を届けたい🌿

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