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Photo byque_sera_cela

短編小説|記憶を煮込む鍋/シロクマ文芸部/詩のような物語

    紫葉柚月(しば ゆづき)

    鍋の具は、
    心をあたためる魔法の呪文みたいだ。

    白菜の白は、雪解け水のようにやさしく、
    人参の赤は、灯火のように燃えている。
    豚肉は、大地の息づかいを纏い、
    豆腐は、浮かぶ月のように静かに微笑む。
    椎茸は、森の記憶。
    ネギは、ピリリと冬の風を連れてくる。
    春菊は、ほのかな苦味で夜を締めくくり、
    鱈は、深い海の祈りを運んでくる。

    誰のためでもなく、
    ただ、分け与えたい気持ちだけで。
    鍋はぐつぐつ、やさしさを煮込んでいる。

    湯気の向こうで笑い声がほどけ、
    箸の音が、冬の夜を奏でる。
    出汁の香りが、記憶の扉をそっと叩く。

    ああ、今夜もきっと、
    心の底まであたたまるだろう。
    ──世界でいちばん、やさしい晩餐。



    シロクマ文芸部に参加させていただいています。
    小牧部長さま、いつもありがとうございます!
    今回のお題
    「鍋の具は」から始まる文芸作品です。



    【詩のような物語】という、小さな物語たちを紡いでいます。
    もし、今日の物語が、あなたの心にふれていたら
    ──それだけで、うれしいです。ありがとうございます。
    これからも、日々の光や影を、そっと言葉にしていきます。
    🌸【詩のような物語】🌸
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    会社員として働きながら小説を書いています。 地方文学賞で3度受賞。某文学賞最終選考通過 著書『詩のような物語 十二か月』Kindle・紙書籍で発売中📖 日常の小さな光や、言葉にならない想いを物語に。 本・映画・文房具(特にロルバーン)が好き。 心にそっと灯がともる物語を届けたい🌿

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