
オレンジ色のサンダル
ビーチサンダルがない。
裸足の足を見て気づく。
どこで脱いだのか、
まるで思い出せない。
目の前にある、
あの建物に入る時に脱いだのか。
粛然と佇む建物
どこが灰色がかってみえる、
冷たさを帯びた洋風の造り。
中では、皆優雅にお茶を飲んでいた。
そこにビーチサンダルは似合わない。
しょうがない
と、どこか諦めのような感覚で
腑に落ちる。
わたしはその人々を横目に
中庭を通りぬける。
果たしてわたしの靴はどこにあるのか。
冷たい石の感触
ペタペタと響く足音
歩いて行くと、
外に出た。
砂浜に座っている男が視界に入る。
若い男だった。
しかし、グレーの顎髭を生やし
目深に帽子を被った顔は、
一見初老のようにもみえた。
その男は、わたしを見ると、
探し物はここにあるという。
訝しむ気持ちを抑え
どこにあるのかと聞くが、
ここにある。
探せ。
と言うだけで教えてはくれなかった。
仕方なく
砂浜に手を入れ探る。
ピンクのパンプス。
そのほかにも
色とりどりの素敵なパンプスがあった。
ここにはない
そう伝えると男は、
それは三層下にある。
と言い、
それっきり黙ってしまった。
三層下。
軽やかな自由を連れて来てくれる
あの心地よいビールサンダル。
わたしは
その感覚に想いを馳せる。
それとは対照的に
洗練され、どこから見ても完璧な
かしこまったあのパンプスたち。
あれは、わたしのものではない。
砂浜に素足が沈み込み、
生暖かい砂が足にまとわりつく。
どこへでも行ってやろう
そう決意する。
わたしはわたしのものしかいらないのだ。
そして裸足のまま踏み出した。