
公共授業実践8|おふざけで作った風刺画を、生徒の方が深く読んでいた話【政治③・世界の政治体制】
世界の政治体制を扱う授業で、AIに一枚の風刺画を作ってもらいました。
日本やイギリスの議院内閣制、アメリカの大統領制、中国の政治体制。教科書には、それぞれの仕組みがきちんと説明されています。ただ、議院内閣制、大統領制、三権分立などの言葉を最初から並べると、なかなか頭に入りません。
そこで今回は、制度の説明から入るのをやめました。
画像生成AIに出した指示は、だいたい次のようなものです。
「日清戦争のころの列強風刺画のような雰囲気で、現在の世界の指導者を描いてほしい」
大統領と首相の違いを説明するために、少しふざけた教材を作ってみようと思っただけでした。
生成された絵には、アメリカ、中国、ロシア、日本の指導者をイメージした人物が登場します。世界地図の上で、アジアや資源、安全保障などを、それぞれの方向へ引っ張っています。
生徒たちは、人物の顔を見て、誰を描いたものなのかすぐに気づきました。ここまでは、予想していた反応です。
ところが、絵をよく見ると、端の方に小さく「THE PEOPLE」と書かれています。その下には、頭を抱えている一般の人々が描かれていました。
これは、私が指示したものではありません。AIが「政治風刺画とは、こういうものだろう」と考えて、勝手に加えたのだと思います。余計な仕事と言えば、余計な仕事です。
しかも、その余計な仕事に、生徒の方が先に気づきました。
中央の派手な指導者たちだけではなく、絵の端で頭を抱えている人々にも目を向けていました。
大国の指導者たちが世界を自分たちの都合で動かし、その影で普通の人たちが困っている。そんな絵の意味も、おおむね読み取っていたようでした。
私は大統領と首相の違いを説明するために、この画像を作ったつもりでした。AIは頼んでもいない民衆を描き、生徒は私が説明する前に、その意味を読んでいました。
教師の狙いより、少し先まで授業が進んでしまった感じです。
その後は、絵の人物を手がかりに、「この人は首相なのか、大統領なのか」「議会との関係はどう違うのか」などと話を進めました。
生徒からも発言があり、一方的に制度を説明する授業にはなりませんでした。
今回の目標は、高いものではありません。首相と大統領は同じものではない。国によって、行政のトップの決まり方や権力の集まり方が違う。その程度が分かれば十分だと考えていました。
実業高校の生徒に抽象的な制度用語から話し始めると、授業が動きにくいことがあります。
だからといって、政治について何も知らないわけでも、考えられないわけでもありません。
知っている人物の顔を見る。国の名前を答える。絵の中で何が起きているのかを考える。その後から、議院内閣制や大統領制という言葉をつけていく。
この順番なら、生徒がすでに持っている知識を使えます。
教科書の用語を簡単な言葉に置き換えることも大切ですが、抽象的な言葉に入る前の足場をつくることも必要なのだと思います。
今回は、それが少しふざけて作った一枚の風刺画でした。
AIが勝手に描いたものを、生徒が勝手に読み取る。
教師はその間で、あとから政治制度の名前をつけていく。
ちなみに、プロンプトは本文に書いた通りです。
試してみると、また違う「余計な仕事」に出会えるかもしれません。
授業は、こちらの狙い通りに進む時より、少しずれた時の方が面白いことがあります。
今回は、いい方向にずれてくれた授業でした。
〇授業プリント
ChatGPTとClaudeを活用。実業高校用に整理しました。
〇スライド
授業プリントをClaudeにかける→スライド原本→notebookLMで整形という段取りで作っています。必要なところだけ使ってください。
〇教師用原稿
詰まったときの保険です。授業プリントとスライドをClaudeもしくはChatGPTにかけて、作成しています。しっくりこないところは自分で書いています。
次回は日本国憲法の基本的性格について。