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第8話絵の䞭の花

    喩草

    『たたあの青幎が、倉な䟋えをしに来た。』
    静かで切ない䜙韻のあるミステリを、1話完結で。
    これは、眪を犯した者の、静かな独癜の物語。

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    矎しくなかった。
    それが、最初の感想だった。

    ベッドの䞊で事切れおいた圌女は、
    汗ばんだ前髪を貌り぀かせ、頬はわずかに膚らんでいた。
    服の色も悪かった。
    あんな、くすんだセヌタヌを遞んでほしくなかった。

    なぜ、最埌くらい僕の望む「矎しさ」をたずわなかったのだろう。
    僕が䞎えた本、僕が語った蚀葉、僕が手枡した銙氎の意味は、圌女には䌝わっおいなかったのか。

    遺曞はなかった。
    その無蚀の抗議すら、矎しくなかった。




    あの青幎刑事は、薄い足音ずずもに珟れた。
    ベヌゞュのゞャケットに、癜いTシャツ。
    目立たない服装だったが、奇劙なほど空気を乱さなかった。
    そこに立぀だけで、たるで䜙癜が締たるような静けさがあった。

    圌は郚屋の隅を䞀瞥し、ふず口をひらいた。

    「きれいな絵ですね」
    それだけ蚀っお、圌は゜ファの脇に立ったたた動かなかった。

    「劻が描いたんです。花をよく写しおいた。几垳面で、䞁寧で」

    僕の声に、圌は返事をしなかった。
    ただ、あの絵をしばらく芋぀めおいた。

    「たずえば、毎日キャンバスに花を描き続ける人がいるずしたす」
    圌が唐突に蚀った。

    「色は鮮やかで、構図も掗緎されおいる。花びらのグラデヌションも、茎の曲がり具合も、完璧に再珟されおいお」

    黙っお聞いおいた。

    「でも、どれだけ巧みに描かれおいおも、ある日ふず気づくんです。描かれた花には、銙りがない」

    圌は䞀歩、ベッドに残された寝具のしわぞ芖線を萜ずす。

    「生きおいるものっお、思ったより雑なんですよ。湿っおいたり、枯れおいたり、虫に食われおいたり。
    でも、そういう䞍完党さを汚いず切り捚おおしたうず残るのは、絵だけになる」

    圌はそこで、ようやく僕の方を向いた。

    「圌女、息を詰めおいたせんでしたか。絵の䞭みたいに、敎いすぎおいたず、思いたせんか」

    䜕も蚀わなかった。

    圌が垰ったあず、郚屋に残ったのは静寂ず、銙りのしない花の絵だった。

    怅子に座り、匕き出しを開けた。
    䞭には、ラベルの揃った小瓶がいく぀も収たっおいた。
    圌女に莈った銙氎ず、たったく同じ芋た目。

    䞭身は僕が調合したものだった。

    僕の配合で、僕の手で。
    矎しさの茪郭は、そこに確かにあった。

    描かれた花に銙りはない。
    だから、僕が添えた。
    足りなかったのは、それだけだった。

    汗で貌り぀いた前髪も、頬の膚らみも、
    くすんだセヌタヌの色も、
    党郚盎した。

    郚屋に残った完成品は、ずおも静かだった。
    僕の手で、ちゃんず敎えおおいたからだ。
    矎しさずは、そうやっお完成させるものだ。

    たずえ、銙りのしない絵のようでも。





    【事件たずめ】

    【捜査蚘録】

     
     
     

    喩草

     
     
    コヌヒヌを片手に、隣人の䞍自然な怍朚鉢を芋぀めながら考え事をしおいたす。

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