
『今日はどっちの家に帰る?』が普通になる街
これは、あり得るかもしれない未来のおとぎ話。
昔、家は家族でひとつ持つものだった。
けれど、地方のある町では、少しずつ暮らし方が変わっていった。
車があれば困らないその町には、古い家がたくさん余っていた。都会から見れば不便なので、家はずいぶん安かった。
最初に買ったのは、少し変わった人たちだった。
仕事をするための家。
駅に近いだけの家。
あえて近所に二軒持つ家。
やがて、空き家は少しずつ減っていった。
でも、家族がばらばらになったわけではない。
ひとつの家に、全部を入れなくなっただけだった。
その町の子どもたちは、いつの間にか、それを変だと思わなくなっていた。
休日、買い物帰りの母親が車の鍵を鳴らす。
子どもは後ろのドアに手をかけながら、なんでもないことのように聞く。
「ねえママ、今日はどっちの家に帰るの?」