
『地球・デリケート保護計画【完結版】〜騒音ドアと光るピクルスが世界を救う!?〜』
【あらすじ】
地球の「デリケートな部分」を修理しにやってきた宇宙人、ジャック一家。 彼らが目にしたのは、人間には見えない「ゴミ」や「熱」で熱中症寸前の地球だった!
不器用すぎる宇宙人パパ・ジャックが、ゴミをエネルギーに変え、騒音ドアで地球を換気する(!?)ハートフル・エナジー・コメディ。
地球を守る最後の鍵は、お隣の田中さんに伝授された「爆音」にあり――。

第1話:世界一やかましい救世主
地球という星は、実に「デリケート」だ。
空気が薄くて、重力が弱くて、住んでいる人間たちは自分が何の上に立っているのかさえ忘れがち。
そんな脆い青いビー玉を守るために、宇宙連合から派遣されたのが、私たち「コメット一家」だ。
「いいか、みんな。今日のミッションは手強いぞ」
朝食のテーブルで、パパである僕、ジャック・コメットは重々しく宣言した。
「高度400キロメートル地点。50年前に地球人が打ち上げた観測衛星『オールド・アイ』が、制御を失って落下コースに入った。このままでは大気圏で燃え尽きず、どこかの都市に直撃する」
「パパ、あれでしょ? 地球人が『もっと遠くを見たい!』って打ち上げたけど、寿命が短くて、新しいのが出たら存在すら忘却の彼方に追いやったっていう、宇宙のゴミ、スペースデブリ」
息子のピポが、地球のシリアルをボリボリ食べながら言った。
「その通りだ。あそこは一度入れば二度と戻れない、ブラックホールのイベントホライゾンのような場所だからね。超重大ミッションだぞ!今日は、僕が玄関のドアを使って『衝撃波(ソニック・ブーム)』を飛ばす。ピポ、お前は学校中の窓を開けて、その振動が地上を壊さないよう宇宙へ逃がすルートを作れ。ママはフライパンで振動の相殺を頼む」
「任せなさい。私のリズム感はパルサーの周期より正確よ」
田中さんの受難
隣の家に住む田中さんは、穏やかなコーヒータイムを楽しもうとしていた。
しかし、その静寂は突如として破られた。
「バッッガァァァァァーーン!!!」
「ひっ、ひいいいっ!?」
田中さんのカップの中で、コーヒーが小さな噴水を作った。窓の外を見ると、隣のジャックさんが鬼のような形相で玄関ドアを思いっきり叩きつけている。
「ちょっと! ジャックさん! 朝から何やってんのよ!」
田中さんが怒鳴り込もうと窓を開けると、今度は学校の方向から「ガシャン!ガシャン!」と凄まじい音が響いてきた。ジャックさんの息子のピポくんが、校舎の窓を次から次へと全開にして走り回っているのだ。
「もう! あの親子は、どうしてあんなにガサツなの!?」
見えない戦い
その頃、上空400キロメートル。
ジャックがドアを閉めるたびに放たれた不可視の衝撃波は、ピポが開けた窓から空へと突き抜け、巨大な鉄クズへと命中していた。
「……ふぅ、粉砕完了だ」
ジャックは額の汗を拭った。巨大な衛星の残骸は、衝撃波によって細かな星屑へと姿を変えた。今夜、地球のどこかで「綺麗な流れ星」として観測されるはずだ。
玄関先では、顔を真っ赤にした田中さんが立っていた。
「ジャックさん! ドアの閉め方! 地震かと思ったわよ! 少しは周りのことを考えなさい!」
「ああ、田中さん。おはよう。いや、今のドアの閉め方は、私の『クエーサー級の忍耐力』を以てしても、少し衝撃波が漏れてしまったようだ。地球の物質は豆腐みたいに脆いから、力加減が難しくてね」
「……はあ? クエーサー? 豆腐? わけわかんないこと言ってないで、静かにしてちょうだい!」
田中さんはプンプン怒りながら帰っていった。
ジャックは、青い空を見上げてボソリと呟いた。
「やれやれ。これだから単一惑星居住種は困る。宇宙の裏側で何が起きてるかも知らずに、朝のコーヒーの温度ばかり気にしてるんだから……」
今日もコメット一家の朝は、騒がしく幕を開ける。
―――――――――
【追記:ジャックの独り言】
銀河の隅の、青いビー玉
田中さんに怒鳴り散らされた後、僕は家の屋根に登って、ぼんやりと空を眺めるのが日課だ。
地球の空は、下から見上げるとどこまでも高く、突き抜けて見える。だが、僕の目にはその向こう側が見えている。
「やれやれ。これだから単一惑星居住種は困る……」
僕はポケットから、故郷の星で拾った本物のビー玉を取り出した。透明なガラスの中に、渦巻くような銀河が閉じ込められた美しい玩具だ。
初めて地球の赴任が決まった日、宇宙連合の長官は僕にこう言った。
『ジャック、次の任務地は地球だ。あそこは銀河の隅に落ちていた、忘れ去られた青いビー玉のような星だ。あまりにも綺麗だが、あまりにも脆い』
宇宙船の窓から初めて見た地球は、まさにその通りだった。
漆黒の闇の中で、たった一つだけ潤んだような輝きを放つ青。だが、その表面は自分たちが捨てたゴミの層で覆われ、今にも割れてしまいそうなほど傷ついていた。
「パパ、あんなに綺麗なビー玉、誰が捨てたの?」
隣で見ていたピポがそう聞いた時、僕は決めたんだ。
このビー玉を、誰にも、そして彼ら自身にも壊させはしない、と。
地球人は、自分たちがどれほど奇跡的な輝きの上に立っているかを知らない。
知らないから、平気で空にゴミを捨て、空気を汚し、隣人のドアの閉める音が大きいと言って怒る。
「……ふん。いいんだよ。感謝されたくてやってるわけじゃない」
僕はビー玉を太陽にかざしてみた。
ドアを爆音で閉めるのも、窓を全開にするのも、全部この「青いビー玉」をピカピカに磨き直すための、僕なりのやり方だ。
「さあて、ピポ! ママ! 明日は海だ! 海に沈んだ『地球人の忘れ物』を回収しに行くぞ!」
屋根の上で、僕は大きく伸びをした。
指先に触れた地球の空気は、今朝よりもほんの少し、澄んでいるような気がする。
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第2話:ママの特製ピクルスと、消えたマイクロの敵
地球の海は、宇宙から見れば「青いドレス」の裾のように美しい。
だが、そのドレスのポケットには、今や地球人が無自覚に詰め込んだ「プラスチックの屑」が溢れかえっている。
「ピポ、そのトレーナーはどうしたんだい? なんだか銀河系の星屑でも浴びてきたような輝きだね」
朝食時、パパのジャックが怪訝そうに息子を見た。
「これ? 街の古着屋で見つけたんだ。『ヴィンテージ・ネオン』って言って、今地球の若者の間でバズってるんだよ。オシャレでしょ!」
ピポが自慢げに胸を張る。確かにそのトレーナーは、化学繊維特有の怪しい光沢を放っていた。
だが、ママの目は笑っていなかった。
「……ピポ。悪いけど、それを今すぐ脱いでちょうだい。それは本当の『オシャレ』ではないわ。地球を蝕む『マイクロプラスチックの粉末爆弾』よ。それを一度洗濯機にかけたら、あなたのオシャレな粉が下水を通って、私の愛するビー玉の海を汚しに行くことになるの」
「えぇっ!? 流行ってるのに!」
「文句を言わない。パパ! 準備はいい?」
ママがキッチンの奥から、銀色に輝く「宇宙製ピクルス瓶」のような回収装置を取り出した。
「ああ、いつでもいけるぞ。今日は溜まりに溜まった『ペットボトル』の山を片付けるついでに、その衝撃波でママの回収装置を加速させるんだな?」
ジャックは庭に積み上げられた、近所から回収してきた(という名の、半分奪ってきた)ペットボトルの山を前に、拳をポキポキと鳴らした。
近所迷惑を置き去りにした、爆音の圧縮セレモニーの開幕である。
爆音の圧縮セレモニー
隣の田中さんは、今日も今日とて庭の掃除をしていた。
最近、隣のジャックさんが静かだったので安心していたのだが……。
「バキッ! メキメキッ! ドォォォォォーーン!!!」
「ひっ、今度は何!? 隕石でも落ちたの!?」
田中さんが塀越しに覗くと、ジャックさんが両足で地面を踏み抜きそうな勢いで、ペットボトルを次々と踏み潰していた。ただの圧縮ではない。一回踏むたびに、大気が震え、窓ガラスがガタガタと悲鳴を上げる。
「ジャックさん! うるさいわよ! 何やってるの!」
「ああ、田中さん。これは『クエーサー級の圧縮プレス』だよ。こうして密度を高めないと、宇宙の再資源化プラントへ送る時に送料がかさんでしまってね。地球の運送費は、アンドロメダの物価より高いんだ!」
「わけわかんないこと言ってないで、足元を見なさいよ!」
ママの海中ピクルス作戦
その頃、ジャックが放つ凄まじい圧縮音の振動波に乗せて、ママは海岸に立っていた。
彼女が手にしているのは、一見すると普通の「ピクルス瓶」に見えるが、実は宇宙連合最新鋭の「分子レベル吸着機」だ。
「さあ、おいで。迷子たちのプラスチックたち」
ジャックの爆音が海面に届くたび、水中では目に見えないほど微細なプラスチックの粉末が、音波に弾かれて水面に浮き上がってくる。ピポのトレーナーから剥がれ落ちたような微細な繊維も、例外ではない。
ママが瓶のスイッチを入れると、それらはまるで魔法のように吸い込まれ、瓶の中でカラフルな「ピクルス」のように固まっていった。
「パパ、最後の一撃をお願い! このままだとイベントホライゾン級の微細ゴミが逃げてしまうわ!」
「合点だぁ! 必殺・大気圏突破プレス!!!」
ジャックが最後の一本を全力で踏み抜いた瞬間、空気が爆発したような音が響き、海の表面がバッと割れた。その隙間に浮いたすべてのゴミが、ママの瓶に吸い込まれて完結した。
ビー玉を磨くということ
夕方。コメット家の食卓には、青い光を放つ不思議な瓶が並んでいた。
「これが今日の収穫よ。ピポ、あなたのトレーナーの半分は、今この瓶の中で『プラスチック・ピクルス』になってるわ」
「うわぁ……。カッコいいと思ってたけど、僕、海を汚してたんだね」
ピポはシュンとして、綿100%の(宇宙連合支給品の)地味なシャツに着替えた。
「いいんだよ、ピポ。地球人は『便利』や『オシャレ』の裏側にある汚れが見えない種族なんだ。だからこそ、僕たちがこうして……」
ジャックが言いかけた時、玄関のチャイムが激しく連打された。
「ジャックさん!! 今日の爆音は、私の家の金魚が気絶するレベルだったわよ!! 出てきなさい!!」
ジャックは深い溜息をついた。
「……やれやれ。これだから単一惑星居住種は。海が綺麗になったことより、金魚の昼寝が邪魔されたことの方が重大事件なんだからな」
今日もコメット一家の窓からは、美しい夕焼けと、田中さんの怒鳴り声が響き渡るのだった。
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第3話:パパは電波の掃除屋さん?消えたミツバチと踊るノイズ
ジャックは朝から頭を抱えていた。
自慢の「触角感度アップ装置」が、今朝からリミッターを振り切って暴走しているのだ。
この装置をつけると、街中に溢れるWi-Fiや携帯電話の電波が、「キーン」「バリバリ」「ブーン」という凶悪な不協和音となって脳内に直接響いてくる。地球人は平気な顔をして歩いているが、ジャックに言わせれば、これは目に見えない「電波のゴミ」の山に埋もれているのと同じだった。
「うるさいな……。また電波が溢れかえって、ゴミが散乱しているぞ!」
ジャックはブツブツと文句を垂れ流しながら、「地球パトロール」という名の散歩に出かけた。
ふと、近所の花屋の店先に目を向けると、ミツバチたちが妙な動きをしていた。首を激しく振り、足元をふらつかせ、まるで酔っ払ったような奇妙なダンスを踊っている。
「おいおい、あいつら巣に帰れなくなってるじゃないか」
ジャックが音(電波)の源を辿ると、そこには古い電子機器が積み上げられ、過剰なWi-Fiが四方八方から飛び交う「電波のゴミ溜め」があった。行き場をなくした余剰電波が、逃げ場を求めてうなりを上げている。
それが、ミツバチたちの繊細なナビゲーションシステムを狂わせていたのだ。中には電波の波で縄跳びを始めるハチや、踊り疲れて白目を剥いているハチまでいる。
「なんだこのうるさいゴミは! これじゃミツバチたちが道に迷うのも無理はない!」
ジャックのイライラは頂点に達した。
「なぜ地球人は、聴こえないからといって、こんな不協和音を作るために無駄な電力を使っているんだ? ヤレヤレ、理解に苦しむな」
ジャックは大きく息を吸い込むと、空中に漂う透明な「ノイズの塊」を両手で力任せに掻き集めた。そして、目に見えないゴミをグイッと鷲掴みにした。宇宙人の腕力(と触角パワー)が成せる超常現象である。
「テッテレー! 『コメット式・電波変換ポット』!」
ジャックは掴み取ったノイズを、銀色に輝くポットへ次々と放り込んでいった。ポットの中でゴミ電波たちはキュルキュルと圧縮され、瞬く間に純度の高い「再生エネルギー」へと姿を変えた。
家に戻ったジャックは、そのエネルギーで自分のスマホを爆速充電し、仕上げに好物の「宇宙コーヒー」を淹れて一息ついた。
ジャックの「荒っぽい掃除」のおかげで、街には電波的な静寂が戻った。ミツバチたちは正しいリズムを取り戻すと、一列になって夕焼け空の向こうにある巣へと帰っていった。
お隣の田中さんも、窓の外を眺めながら安堵のため息をついていた。
「今夜もお隣は静かで良かったわ。ジャックさんがドアを爆破させる(閉める)音もしないし……って、あら?」
田中さんが目を見開いた先、コメット家の窓から、夜だというのに強烈な青白い光が漏れていた。
「静かだと思ったら、何をしてるのかしら。眩しくて眠れないわよ」
その頃、部屋の中では、エネルギーを溜め込みすぎたジャックが全身から放電し、人間提灯のように輝いていた。そのあまりの電磁パワーに、電源を切ったはずのテレビが勝手に点き、掃除機が夜中のダンスを始め、電子レンジが「チン!」と祝杯を上げる。
「ちょっと、ジャック! 省エネよ!」
暗闇の中、光り輝くパパに向かってママの怒声が飛ぶ。
「地球人みたいに電気をつけっぱなしにしないでちょうだい。眩しくてピポが寝られないじゃない!」
電波を掃除してエネルギーを再利用したまでは良かったが、最後はやっぱり「家族の平穏」という一番大事なものを、ジャックはノイズで台無しにしてしまうのであった。
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第4話:ピポの給食革命?地球を救う「宇宙の放電・デリバリー」
ピポは学校から帰るなり、キッチンで頭を抱えていた。
「パパ、大変だよ。地球人が残したこのパンやお野菜、放っておくとお熱が出て、地球がのぼせちゃうんだ」
ピポはゴミ箱を指差して、真剣な顔で訴える。
「メタンっていう目に見えない『熱い息』を吐き出して、地球を熱中症にしちゃうんだよ!」
それを聞いたジャックは、コーヒーの手を止めた。
「なんだと? それは一大事だ。地球人がそんなに『熱い息』を吐き出しているなら、僕がひと肌脱ぐしかないな」
ジャックは街中のフードロスが集まる場所へと向かった。そこには、まだ食べられるのに捨てられた食品たちが、静かに「熱」を帯びて眠っている。
「やれやれ、これだけの熱を溜め込んでいては、地球が暑がるのも無理はない」
ジャックは、前回の「電波変換ポット」を改造した『コメット式・熱吸収スーツ』に身を包んだ。彼はゴミから立ち昇る目に見えない「熱い息(メタンガス)」を、ダイソンの掃除機のような勢いで、自らの体内に吸い込み始めた。
吸い込むたびに、ジャックの体はどんどん赤熱していく。
「うおぉ……熱い、熱いぞ! 地球人の残飯の恨み(熱)、しかと受け取った!」
ジャックの体は、もはや雪だるまどころか、今にも爆発しそうな「真っ赤な恒星」のようになり、エネルギーが限界まで充填された。
「ママ! 田中さん! 窓を閉めてろよ! 今から地球の熱を宇宙へ『お返し』してくる!」
ジャックは庭の真ん中で踏ん張ると、一直線に空を見上げた。
次の瞬間
「バリバリバリ、ドガァァァン!!」という、耳を劈くような雷鳴が街中に響き渡る。
ジャックの体から、真っ白な光の柱が天に向かって突き抜けた。溜め込んだフードロスの熱エネルギーを、そのまま宇宙空間へと放電したのだ。
それはまるで、逆さまに落ちる巨大な雷のようだった。
一瞬の後、街には心地よい涼風が吹き抜けた。
空を見上げた田中さんは、腰を抜かしながら呟いた。
「今度は雷かしら……。でも、なんだか急に、夏の夜の嫌なモワッとした暑さが消えたみたい……」
家に戻ったジャックは、全身の電力を使い果たして真っ白な灰のようになっていたが、その表情はどこか晴れやかだった。
「パパ、かっこいい! 地球のお熱、下がったみたいだよ!」
ピポが喜ぶ横で、ママが冷めた目で一言。
「いいけどパパ、今の放電の音で、お隣の田中さんの家のブレーカーが落ちたみたいよ。明日、ピクルス持ってお詫びに行きなさいね」
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最終話:さらばジャック!愛の爆音・ソニックブームで換気せよ
ジャック一家が地球にやってきてから、数ヶ月。街のゴミは減り、空はかつてないほど澄み渡っていた。
ジャック一家の地球滞在も、ついに終わりの時が来た。夜空には、銀河の果てから迎えに来た巨大な円盤が、サーチライトで街を照らしながら静かに待機している。
だが、ジャックはタラップを登る直前、真っ赤な顔をして自宅を振り返った。
「パパ、どうしたの? 早く乗らないと置いていかれちゃうよ!」
ピポが急かすが、ジャックは額の汗を拭いながら吠えた。
「見てみろ、ピポ! これまでの宇宙ゴミ、プラゴミ、電波のノイズに、フードロスの熱……。それらが全部混ざり合って、地球がまるで安物のサウナみたいに熱中症を起こしてやがる! これじゃあ宇宙の友達が遊びに来ても、暑くて自慢のコーヒーも飲めんじゃないか!」
ジャックは最後に、地球への「最大級の恩返し」を決意した。
「よし、最後にこの星の淀んだ熱気を、全部まとめてお引越しさせてやる!」
ジャックは家に戻り、玄関のドアノブをがっしりと掴んだ。これまでのジャックなら、ただイライラして閉めるだけのドアだ。だが今は違う。地球を愛するがゆえの、渾身のパワーが右腕に宿る。
「地球よ、お大事にな! せーの……ドガッシャァァァァァァーーーン!!!」
街中の窓ガラスが震え、お隣の田中さんがベッドから30センチ飛び上がるほどの、凄まじい爆音が響き渡った。
その瞬間。ドアから放たれた衝撃波(ソニック・ブーム)が、目に見えない巨大な扇風機となって、街に溜まった熱い空気とゴミの残滓を、一気に成層圏の彼方へと吹き飛ばした。一瞬の後、街にはひんやりとした、宇宙の清らかな風が流れ込んできた。
ジャックは腰を抜かしている田中さんに駆け寄り、その手を力強く握った。
「田中さん、いいですか。地球を冷やす極意を伝授します。ドアは『親の仇』だと思って閉めるんだ! 腕の力じゃない、愛を衝撃波に変えるんです!」
「えっ、何……? 掃除のコツじゃなくて、ただの爆音じゃないの!?」
戸惑う田中さんをよそに、ジャックは満足げに宇宙船へと上がっていった。
まばゆい光とともに、円盤が夜空へと消えていく。宇宙船の窓から見下ろすと、田中さんが文句を言いながらも、教わった通りに**「ドガッシャァァァン!!」**とドアを閉めているのが見えた。そのたびに、街の空気がみるみる浄化されていく。
「パパ、すごい! 田中さんも地球を守るヒーローになったね!」
ピポが喜ぶ横で、ママがふっと微笑んで言った。
「パパのあのうるさいドアの閉め方も、地球の換気だと思えば……これからは少しは、愛おしく思えるわね」
地上には、ジャックが最後に投げ捨てた「超伝導ピクルス」の瓶が一つ。田中さんがそれを拾い上げ、一口かじると、全身が電球のようにパッと明るく輝いた。
翌朝、街の人々は口々に言った。
「なんだか今朝は空気が美味しいね。それに……お隣の田中さん、最近すごくパワフルにドアを閉めてるわね」
『地球・デリケート保護計画』——これにて、完全終了。
Chipolo fe ・ 著