
第2章②|「なんか、癌だって」——電話口で告げられた日
電話が鳴った。
玄関掃除をしながら、ずっと待っていた。
なんとなく落ち着かなくて、普段やらない場所を念入りに磨いていた。
あの時の感覚を、今でも覚えている。
手は動いているのに、頭のどこかがずっと——彼のことを考えていた。
スマホを手に取った。
「もしもし、どうだった?」
「なんか、精巣がんだって。」
「えっ?癌、、、。」
「詳しくは帰ってから話す」
電話が、切れた。
しばらく、動けなかった。
頭が真っ白になった。
涙は出なかった。
夢?
これから、どうなるんだろう。
治療は?
仕事は?
生活は?
頭の中で、言葉がぐるぐるした。
その中に——ひとつ、怖い言葉が過ぎった。
死。
まだ考えたくなかった。
でも、頭が勝手にそこへいってしまった。
娘が、泣いていた。
生まれて5ヶ月。
何も知らずに、泣いていた。
この子に、お父さんがいなくなったら——
そこまで考えて、止めた。
彼が帰ってくるまで、私はただ娘を抱いていた。
泣けなかった。
泣く余裕も、なかった。
続きは次の話で書きます。
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