
メロン燃ゆ
40歳手前。もういい大人だ。
いい大人なのに未だに自分の好きな物を聞かれるととても緊張してしまう。
原因はハッキリとわかっている。
「メロン」だ。
保育園の行事かなにかで好きな果物を聞かれたことがあった。
当時それは可愛い盛りであった私は無邪気に一番好きな果物である「メロン」と答えた。
親戚の家から送られてくるメロンがとても好きだったのだ。
その日、家に帰ってから親に言われたのは、好きな果物をメロンと答えたせいで我が家は金持ちで贅沢だと思われているということだった。
その日から私の一番好きな果物は「いちご」になった。
私にとっては「子供にメロンを食べさせてる家庭アンチ」に囲まれた世界が全てだった。
何よりも親が周りからそのように言われるのが嫌だった。
私には妹がいる。
妹には転校してきた同級生がいて、その子も好きな食べ物を聞かれた時「お母さんの作ったババロア」と答えたそうだ。
今思えばババロアなんてよくあるデザートだ。
だが田舎の民はババロアが何かわからぬ故、王室御用達の高級菓子と勘違いし、この話は瞬く間に燃え上がり、妹の同級生は焼きババロアになった。
私も焼きババロアもとてもかわいそうだ。
大人になって帰省すると、同級生の親と会う機会などもあるが、当然私のメロンの話なんて誰も覚えておらず、村に新しくできる老人ホームや、どこどこの空き家に引っ越してきた人は挨拶にも来ないで不気味だなど、そんなことを噂していた。
私には祖母がいた。
祖母は晩年、認知症を患っており、少し前に話したことなどもすぐに忘れてしまう。
そんな祖母だけが「メロン食べるか?」と聞いてくれた。
私がいい大人になっても。
やっぱり果物の王様は「メロン」だ。
アサノミチユキ