
【短編】『雨の日の傘』は、歌を歌う #拝啓文芸部
Mr.Qさんの企画に参加させていただきます☺️。
●お題(宛先)……「雨の日の傘」
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店先で、通路を行き交う人たちをぼんやり見ていた。
「わぁ、これ見てみて!」
「まぁ、素敵ね」
手に取られ、閉じて、開いて……。
そのたびに、くるくると世界が揺れて回る。
そして私は元の場所に戻され……自分と同じ傘が売られていくのを、またぼんやり眺めるのだ。
いつか自分も……。
そう思ったこともあったけれど。
だんだん布に張りはなくなり。
節々は強張り。
ライトに照らされ、少しずつ薄れていく色味を見ているうちに……その気持ちはだんだん削がれていった。
……そして。
ようやく閉じられたと思ったら……違う場所に運ばれたのだ。
同じような仲間が一同に集められ、山のように積まれる。
視界は、ついに闇に閉ざされたのだった。
そんなある日のこと……。
「わぁママ!これみっちゃんと一緒だ!買っちゃだめ?」
明るい女の子の声が、私を暗がりから救い出した。
「……それでいいの?」
「これがいいの!素敵な空色の傘なんだよ!」
嬉しさに痺れる中、久しぶりにパッと体が広げられる。
あちこちからパリパリと音がしたけれど……心地よい開放感がそこにあった。
――わぁっ!
目の前にあったのは……ものすごい奥行きを持った、広い広い空だった。
高いところから、こちらに向かってパラパラと雨が降り注ぐ。
細かな雨粒が身体中を打ち付け……初めて感じるくすぐったさに、私は思わず笑い声をあげた。
視界が揺れて、めまいがしそうで。
……何だかとても、おかしくて。
ふと辺りを見渡すと……仲間たちが笑うように歌っている。
雨の日の傘たちは、みな歌を歌うものらしい。
ならば!と、私も歌ってみた。
私は誰よりもたくさんの歌を、雨空に捧げることができた。
お店にいる間に聞いた、ありとあらゆる歌を……女の子を優しく守りながら、私は歌う。
音楽のように響く、雨粒をはじかせながら。
……声、高らかに。
Mr.Qさん、ありがとうございます☺️。