
『シカゴで一か八か』 〜アマノ文筆クラブ〜
甘野さんの企画に参加させていただきます☺️。
●今回のタイトル…「シカゴで一か八か」
(え……何て?)
***
「ちょっと待って。シカゴで一か八かって……なんでですか?」
話の腰を折ってはいけないと知りながらも……思わぬワードに、思わずそんな疑問を投げかけてしまった。
この場合の『なんで』は『なんで急にそんな話』のなんでだ。
いくらなんでも、そこだけ急に話が飛躍しすぎで……置いてけぼりになっていた。
目の前にいるのは、賢也の親代わりだと名乗る女性。
『ちょっと持病があって……仕方なく闘病したのよ』
くらいの気安さで、さらっと言われたはずだが……急に、何だかスケールのでっかい話になった気がしたのだ。
え?シカゴ?と思いながら……すでに後悔にも襲われている。
初対面のマイカさんと二人きりというこのシチュエーションで、ただでさえ緊張してしまうというのに……。
いつまでたっても帰ってこない賢也が悪い。
妙な沈黙に耐えきれず、つい賢也を話のネタに出したのは自分だ。
でも。
その生い立ちについて聞いたのは間違いだったのかもしれない。
なぜか長々マイカさんの回顧談……賢也に会うに至るまでの苦労話を、延々聞く羽目に陥っていた。
……しかもその賢也は、いまだに姿を現さない上に、まだ話の中にも登場すらしていなかった。
「だからぁ……ちょっと諸事情があってね。しばらく日本じゃ暮らせないねって流れで……それで仕方なく渡米したのよ。そのシカゴで賢也に会ったってわけ」
やはり……冒頭のシカゴは気のせいではなかった。
おかげで、頭はすっかり思考停止状態だ。
――今どき、日本で暮らせなくなるような諸事情って……何?
賢也のことが気になってここへ来たのに。
このマイカさんという人物は、いったい何者なのかと……その疑問ばかりが膨れていく。
ようやく話の中に賢也が登場したというのに、さらなる疑問が持ち上がっただけだ。
なぜ、マイカさんが一か八かで渡ったその地に、賢也がいたのか。
……謎は深まるばかり。
――それもシカゴって……しかもこんな人が母親代わりって、何?
とりあえず……賢也の胡散臭さが、浮き彫りになったのは確かだろう。
こちらに怪しげな笑みを向けているマイカさんは、明らかに美魔女の類といえた。
話していることは本当なのか嘘なのか……。
見極めようにも、綺麗に化粧を施した妖艶な美しさに、何もかも忘れ……つい魅入ってしまう。
そのマイカさんが、クスリと笑う。
「康彦クンって……かわいいのね」
少し低めの甘い声が耳から入り込んできて……顔が熱くなるのを感じた。
……今思えば、あれは消し去りたい過去だ。
どういう関係であれ……親友の大切な身内であることに変わりはないのに。
あの時、マイカさんに何か惹かれるものがあったのは確かで……。
「うわあぁぁっ!煩悩よぉ去れぇっ!」
この年になった今でも、思い出す度に、つい大声で叫んでしまう。
……すっかり、黒歴史だ。
甘野さん、ありがとうございます😊。