
【短編物語】 ドキドキの行方 #3つのお題に空想のひらめきを
みかんさん、もう一つ参加させてください☺️。
●3つのお題(昭和ノスタルジー)
※イラストは企画のものを使用させていただきました。

「待たせてごめん!鈴木さん!」
そう言って、山本くんは改札口に駆け込んできた。
夕日に染まった彼の顔は、思いのほか赤い。
でもきっと、私も同じなのだろう。
「待っていて良かった……」
さっきまでのモヤモヤは消え、ドキドキ鼓動の音の方が大きくなっていた。
『駅で待ってて。山本』
そんな手紙をもらったのは昨日のこと。
でも昨日は用事があったから。
山本くんのことが気になったけど帰るしかなかった。
伝言板に書き込むのはとても勇気がいったけど。
待たせてしまうのは申し訳なかったから『先に帰ります』と書いておいたのだ。
そうしたら……今日のところには、山本くんから『雨で遅れます』と書いてある。
だから、どうして良いのか分からず待ち続けていたのだった。
「それで……用事は何かしら?」
ドキドキの正体が知りたくて、思いきってそう聞いてみたのだけれど。
山本くんは爽やかな笑顔で私に言った。
「いろいろや。だから鈴木さん、とりあえず話でもしながら、一緒に帰らへん?」
山本くんの笑顔に、私の胸はいっそうドキリとした。

山本くんは……学校の人気者だ。
私の、気になる人だ。
ドキドキの理由も何もわからないまま……私たちは並んでホームに向かった。
山本くんはとても話し上手で。
私が何も話せないでいても、いろんな話を持ち出し、私を笑わせてくれた。
でも。
その日は、本当に話をしただけ。
別れた後も、何で駅の伝言板に山本くんのメッセージが書いてあったのか……謎のままだった。
山本くんは、からかうような人じゃない。
いつも私が困っている時に助けてくれる。
疑いたくはないけど……考えれば考えるだけ、気になってしまって。
楽しかったからこそ、有耶無耶にはしたくないと思った。

でも。
学校で話しかけれる私じゃない。
だから勇気を振り絞って、山本くんに手紙を書いた。
『いつもありがとう。
きょう、そうじのあと
おしえてほしいことが
あります』
ドキドキ震える手で……山本くんの下駄箱にそっと手紙を差し入れた。
「え〜……。まどろっこしい!今はスマホがあるから、すぐにいろいろ聞けるのにぃ……。
駅の伝言板だって、もうこの世から消えちゃってるでしょう?」
「違うでしょ!なんかロマンがあって、そこがいいんじゃない!」
「で、それでそれで?山本くんとはどうなったの?おばあちゃん!」
「あんたバカじゃない?私たちの名字を考えたらわかるでしょう?」
「もぅ……あ。雨、もうやんだんじゃない?」
夕立に降られてしまい……おばあちゃんの家で、妹と雨宿りをさせてもらっていた。
雨にまつわる話をしていて、夕日に染まる景色を見ながら、おばあちゃんの恋バナというのを聞いてしまった。
雨上がりの夕暮れは、水たまりにも夕日が映って揺れていて。
私の茜色の自転車をさらに赤く染め上げていた。
「ほんと、昔の話だよ。あんたたちは、あんたたちを助けてくれるものに頼ればいいの」
そう言って微笑む真っ赤なほっぺのおばあちゃんは、いつもよりも幸せ色に染まって見えた。
みかんさん、ありがとうございました😊。