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『これだけですよ』 〜アマノ文筆クラブ〜


    企画に参加させていただきます🥰

            ***
    「こんばんは〜」
    店のドアチャイムの音とともに聞こえた、独特な声。
    ーーあ、『これだけ』さん、今日も来た。

    「これだけですよ」
    が口癖の是竹(これたけ)さん。
    路地裏にひっそりと佇む、こんなお店にまで足を運んでくださる……大切なお客様。
    今は、道路の建設工事のために、地方から出稼ぎに来ているらしい。
    そのご来店に、菜々葉はつい反応してしまう。

    はじめてテーブルに着いた日に。
    『あなただけ教えてあげましょう。単身の私の支え!これだけです。これだけあればいい』

    そう言って取り出したのはスマホ。
    ……確かにその通りだろうよと思ったのに。
    待ち受け画面に映っていたのは『メダカ』。

    出張中は、いつも連れ歩いているらしい。
    ……なんのこっちゃ。

    せめて熱帯魚にしろよとか思ってしまった。

    というか、連れてこれるヤツの写真を待ち受けにするなよ。
    そこは家族じゃないのかいっ!

    それから、なんか気になる是竹さん。

    「今日はこれが最後。……あと、これだけですよ」
    そう言ってタバコをくわえるから火をつけてあげたのに。
    カバンの中から新しい箱のメビウスを出してくる。
    ……きっと、メビウスがマイセンの頃からそうやって吸っているのだろう。

    時にウザッと思うけど……それでも、羽振りのいいお客様。
    今日だって、ボトルキープして帰っていく。
    「これだけですよ。私を裏切らないのは……」
    そう言って、お会計の度に、決まってお財布の札の束をチラつかせてくる。

    いろんな意味で、いろいろ気になるお客様。

    でも……。
    「このお店に来れるのも、あとこれだけです……」
    初めて会った時にそう言っていたのに……未だになんだかんだお店に来てる。

    彼の、親指と人差し指のすき間だけは、信用しちゃいけないらしい。

     
     
     
    長い間…自分のために書いていた物語たちを、形に残そうと思い立ちnoteをはじめました。 自己紹介をご覧ください。 今は、創作エッセイや企画のお話しに参加させていただき、書くことを楽しんでいます。 不思議な余白が好き。 (長編は、児童文学寄りかも?) よろしくお願いします🌳。

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