メインコンテンツへスキップ
見出し画像

【短編物語】#せりふ三題噺(いちご、パジャマ、文鳥)

    つきほ


    はらとけいさんの企画に参加させていただきます!

            ***

    うちに……居候がきた。
    いや、来たというのはおかしいか。

    終電間近の電車の中で騒ぐ酔っ払いが、まさかの知り合いで。
    放っておけずに店に連行したのだ。

    『夏休みいっぱい、こっちで住み込みのバイトを探して、お金を貯めるんだ!』
    なんて言ってる若者のことなど、放置しておけばいいのに。

    それが……甥っ子の幼馴染の同級生。
    しかも親族の子だから……そうもいかない。

    ーーだいたい、なんでこんなとこまで出てきてるんだよ。

    田舎育ちの、わがまま、身勝手、傍若無人な一族のお姫様……。
    それを具現化したような女子高生。

    加えて、世間知らずと来た。
    ーーっていうか、酔っ払いなんてアウトだろ……。
    そんなのを……世に野放しにしておくわけにはいかない。

    それで……今に至る。

    カフェ・ケニアの2階は住居になっている。
    もともと甥っ子を呼ぶ予定でいたから、部屋にも空きがある。

    甥っ子はさっさと下宿先を見つけ、ルームメイトと楽しくやっているようだから……その空き部屋も、しばらく使う予定はない。

    そう伝えたまではよかった。
    「いいの?助かる〜!ありがとう」
    さすがは結衣というのか。

    警戒心のけの字も、遠慮のえの字もなく。
    当たり前のように部屋に入っていった……。

    ドタン、ガタン……ドス!
    朝っぱらから、何やら大きな物音をたてている。

    ーーおい……滞在って、夏休み中だけだよな?
    ……何というか、嫌な気しかしない。

    もうここは、保護者としてひと言ガツンと言ってやらねばと……部屋の前に立つ。

    ーー引っ越しおめでとう!なんて言うつもりないぞ……。
    荷解きも、何一つ手伝うつもりはない。

    ーーだって近所迷惑だろ……。
    ……ただ様子が気になっただけ。

    コンコン……。
    「結衣?何してる?」

    ふいに静まり返ったっきり……応答がないのも気になり、カチリとノブを回す。
    ……それでも。何の反応もない。

    「結衣、開けるぞ?」
    ドアを開けた瞬間……。

    「ヤスさん助けてぇっ!」
    急に抱きつかれた。

    ふわふわの……パジャマだろうか。
    水玉柄かと思ったら、白い文鳥の模様。意外と可愛いもの好きらしい。
    その、甘い柔軟剤の香りに包まれる。

    ……が。
    結衣の方は一大事といった様子だった。

    「ど……同居人と格闘してたっ!何あの業務サイズッ」
    必死の形相で訴えられても……何がなんだか、よくわからない。

    「……何のことだ?」
    「あれだよ!カブトムシとかコオロギに似てるけど、全然違う『G』!もうっ、名前まで言わせないでっ!」

    ……涙目で言われてもだ。

    ーーいや、業務サイズって何のことだよ……。
    結衣が震えながら指さした方向を、とりあえず見てみる。

    さっそく部屋干しをした洗濯物なのだろうか。
    まさかのいちご柄パンツに、大きなGが……。


    ーー朝っぱらから、災難だな……。
    なかなか衝撃的な光景に……変なつぶやきが口から漏れた。
    「そりゃ……おめでとう」

     
     
     
    長い間…自分のために書いていた物語たちを、形に残そうと思い立ちnoteをはじめました。 自己紹介をご覧ください。 今は、創作エッセイや企画のお話しに参加させていただき、書くことを楽しんでいます。 不思議な余白が好き。 (長編は、児童文学寄りかも?) よろしくお願いします🌳。

    あなたへのおすすめ