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【短編物語】 したたかに笑って〜アマノ文筆クラブ〜

    つきほ

    甘野さんの企画に参加させていただきます。
    お題…『したたかに笑って』

            ***

    きつく抱きしめ合う……互いの吐息だけが、耳に届いていた。

    むんと辺りに立ち込めるのは、濃い血の匂い。
    それは……つい先程まで、敵だったものたち。
    または、味方だった者たちの……成れの果て。

    互いの身体は、その返り血で赤く染まっていた。

    どちらともなく叫び、最後に打ち合った剣と剣がきれいな音をたてたのは覚えている。
    ……まるで、それが合図のように。
    2人で乱舞を舞うように、剣を繰り広げ全ての命を壊滅させた。

    ようやく見つけた愛しい人と、共に生きるため。
    全ては……長年の切望の上にあった。

    だが『仕方がなかった』などという言い訳をしようとは思わなかった。

    これが最善の策だと言い聞かせ、自分が負った罪を……那茅にも同じく負わせてしまったのだから。

    「ごめん……」
    その思いは、口をついて出てきていた。

    でも。
    「……何、言ってるの?」
    耳元で……那茅は、不思議な声音でそうささやいたのだった。

    「世の中、理不尽だし思い通りにならないし、傷つくことばかり。ずっとそうだったじゃない。……だからみんなも、泣きたいなら泣けばいい。恨みたいなら恨めばいい」

    声には、わずかに苦渋の響きがにじんでいる。
    ここに至るまでのいろいろを思うと……確かにその通りだ。

    するりと腕から逃れるようにして、那茅はうつむいていた顔を上げた。

    「でも、四の五の言ってても仕方がない。もう選んでしまったんだもの。この際私たち、したたかに笑って生きていきましょう」

    それは、とても前向きな言葉で。
    迷いのない瞳をしていて。
    彼女は、自らの意思でこの道を選んでくれたのだと……そう思えた。

    ……ふっと、肩の力が抜けていく。
    今まで会えなかった苦しみも、探し続けてきた苦労も、湧き出てきそうな後悔も。
    全て、半分以上持っていかれたような気がしてしまう。

    「明日も、その次の日も、そのまた先も……。私、幸せになってやるんだから」
    そう言って笑う那茅の顔は、血まみれなのにとても美しくて。
    もう過去を全て断ち切ったように見える彼女に、底しれぬ強さを感じた。

    ……だからこそ、自分は彼女を求めたのだろう。
    那茅でなければだめだと思った。
    自分に空いた穴は、二度と塞げないと思って。

    ようやく見つけて、救い出せたと思ったのに。これでは、助け出されたのは自分の方みたいではないか……。

    「うん、幸せにする。2人で幸せになろう」

    カッコ悪いような気持ちを取り繕うように、しっかり思いを込めた声で、そう告げる。

    「3人よ」
    那茅は満面の笑みをたたえた。

    「………え?」
    「3人。あなたの、赤ちゃん」
    「は?」
    「産まれたのよ」
    「ええぇっ!?」
    とんでもない告白に、頭は真っ白だ。

    身に覚えはないことはない。
    ーーでもそれって……えっと……。
    ただ、急なことに気持ちは全くついていかないし、完全に思考は停止状態だ。

    「早く!茅那が待ってるわ。預けたままなのよ」
    こちらにお構いなしといった様子で、那茅は手を差し伸べる。

    その笑顔は……なぜかしたたかに見えた。

            ***
    むかーし書いてた…懐かしい話のスピンオフです😅。厨二病😂💦

    甘野さん、紹介ありがとうございました😊

     
     
     
    長い間…自分のために書いていた物語たちを、形に残そうと思い立ちnoteをはじめました。 自己紹介をご覧ください。 今は、創作エッセイや企画のお話しに参加させていただき、書くことを楽しんでいます。 不思議な余白が好き。 (長編は、児童文学寄りかも?) よろしくお願いします🌳。

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