
エッセイ 都合よく真空パックした愛
私は不眠症だ。
夜になっても眠れない。
眠ること自体は好きだが、いざ夜になると「まだまだやりたいことがたくさんある!」という気持ちになってしまう。
「寝なきゃ」と「寝たくない」がせめぎ合って、ベッドの上でスマホを開いたり、閉じたりして午前2時になる。
今日こそ寝てやるぞと昼間に意気込んでいても、いざ夜になると、また今日が終わることを勿体なく思ってしまう自分がいる。
そんなときに私は自分に言い聞かせる。
「今日早く寝て、明日早く起きればいいじゃないの。」
これは、前に付き合っていた人の言葉だ。
この言葉を思い出すとほっこりした気持ちになって、寝てみようかなと思える。
私にとってその人は完全なる過去であり、今は好意も持っていない。むしろ少しいやだと思っている。
でも、この言葉を自分に唱えるとき、あの人から受け取った何か温かいものも一緒に思い出している。
今はもうないものだって、過去に存在しなかったことにはならない。
私は、今はもう好きではないその人からの言葉を、愛を、真空パックにしてとっておいている。
もし、街で見かけても声もかけないで欲しいと思っているけど、いいところだけを切り取って、今日も都合よく生きている。