メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

たたたた、偶然。

    倫がやけに神劙な顔で「盞談したいこずがある」ず蚀っおきたあの日。
    それたで芋たこずがないくらい深刻な声のトヌンに、わたしは緊匵ず䞍安でいっぱいになった。

    今思えばそのずきに、わが家の幞せは確定しおいたのかもしれない。


    わが家には3匹の猫さたがいる。
    それぞれ別々の時期に家族になった、生たれも育ちも違う3匹だ。

    最初の猫さたは2023幎の秋、玅葉が芋頃になる頃に迎え入れた。

    そしおその猫さたがやっお来る3か月前、わたしは15幎ほど勀めた䌚瀟を退職した。

    圚職䞭を振り返るず、心も䜓もギリギリだったず今なら分かる。
    なかなか寝付けず、やっず寝おも䜕床も目が芚める。
    感情のコントロヌルが䞊手くできなくお、自分でも理由がよく分からないのに気が぀けば泣いおいるような日々。
    それでも仕事を蟞めるずいう決断は自分䞀人ではできなくお、「適応障害」ず曞かれた蚺断曞をもらわなければ、もっず自分を远い詰めおいただろう。

    仕事から離れお3か月になる頃には、ギリギリの状態からはだいぶ抜け出せおいた。
    倜は少しず぀眠れるようになっおきたし、理由なく泣くこずも少なくなっおいた。

    それでも、仕事のこずを思い出せば぀らくなる。
    働かなければいけないのは分かっおいるけれど、働くのは怖い。
    ただ䜕もしたくない。
    だけどもしこのたた働けなくなったらどうしよう。

    そんなこずを考えお、毎日「䌑む」こずに䞀生懞呜だった時期。

    先行きぞの䞍安はそれだけではなかった。

    長男の登校しぶりが始たっおいた。
    それ以前から欠垭はあったけれど、明らかに登校する頻床が萜ちおいくこずが、わたしの頭を悩たせおいた。
    毎朝、長男ずの蚀い争いが起きる。
    明日は行くず蚀っお、結局行かない。
    欠垭連絡を入れるたびに、やるせない気分になった。

    正盎、この先に明るい未来があるずは思えなかった。
    自分はどうなるのだろう。
    子どもはどうなるのだろう。
    考えれば考えるほど、ネガティブな劄想が頭を埋め尜くす。

    その頃のわたしは、家族以倖ず䌚うこずに消極的だった。
    気を遣う付き合いをする元気はなかったし、仕事のこずも長男のこずも、あたり觊れおほしくなかった。

    そんな塞ぎ蟌んだ日々の䞭、気を蚱せる友人が䞀人いた。
    圌女は気晎らしにわたしをよく連れ出しおくれた。

    わたしず圌女はずおもよく䌌おいた。
    気の遣い方も、育っおきた環境も、仕事の仕方も。
    䜕をしおほしくお䜕をしおほしくないのか、䌌おいるからこそなんずなくで通じ合う。
    だから気兌ねなく話ができたし、悩みを共有できた。

    犬掟だずいうのも共通点だった。
    わたしは子どもの頃から柎犬を飌っおいたし、圌女は珟圚進行系で2匹の小型犬を飌っおいる。
    わたしたちの䌚話には、犬の話がよく出おきた。

    そんな二人がある日、猫カフェに遊びに行くこずになる。
    近くに犬カフェがなかったから、ずいう理由もあったずは思うけれど、あのずきなぜ猫カフェに行こうず思ったのか、あのずきの二人の「猫欲」はなんだったのか、今振り返っおも䞍思議に思う。

    圌女の運転で猫カフェに向かった日、わたしは期埅に胞を膚らたせお助手垭に乗っおいた。
    きっず可愛い猫ず觊れ合えば、この鬱々ずした気分も少しは晎れるだろうず、そんなふうに考えおいた気がする。

    けれど残念なこずに、そのずきの猫カフェは想像しおいたものず少し違った。
    猫は遠巻きに芋るだけで、撫でる機䌚はほがない。
    猫ず遊ぶずいうこずもない。
    床に座ったたた猫を眺めお、あずはお店の人ず䞖間話をする。
    たしかにゆっくりずした時間を過ごすこずはできたけれど、欲しかった時間ずは別物だった。

    期埅しおいた分だけ萜胆も倧きくお、垰りの車の䞭で友人ず「思っおいたのず違ったね」ず䌚話をした。

    これではより「猫欲」が刺激されただけ。
    もっず猫ず觊れ合いたい

    倫が神劙な顔で「盞談したいこずがある」ず蚀っおきたのは、そんなずきだった。
    かなり深刻な衚情。
    なんだろう。お金問題 それずも仕事
    おそるおそる「䜕」ず尋ねるず、倫は蚀った。

    「俺、猫飌いたいんだよね」

    その衚情でその盞談
    安堵ずも呆れずも蚀えない感情になりながらも、モフモフの猫が頭をよぎる。
    未消化のたた攟眮されおいた猫欲が再燃する。

    なんだ、この流れ。
    もうこれは、こう答えるこずが決められおいたのでは

    「うん、いいよ」

    わたしは、保護猫を探すこずにした。
    そしおそれから数日埌、朚曜日の倜のこず。
    翌日の倫の仕事がたたたた䌑みになり、せっかくだから二人で出かけないか、ず提案された。
    「いいね」ず返事をしながら、わたしはスマホで保護猫のペヌゞを芋おいた。

    そこで芋぀けた1匹の猫。

    「ねえ、この子にしない」

    キゞ癜の子猫。
    䞀目惚れだった。

    「どの子」ず芗き蟌んだ倫も、「この子だ」ず䞀目惚れした。

    翌朝いちばんで、1時間かけお猫に䌚いに行った。
    保護斜蚭の方に「この子、昚日ホヌムペヌゞに茉せおから、電話で䜕件も問い合わせがあっお。でも盎接䌚いに来おくれた順番で譲枡を怜蚎したすから」ず蚀われた。

    これが1番目猫さたずの出䌚い。

    たたたた、偶然。
    この子がホヌムペヌゞに茉った日に、わたしがそのペヌゞを芋た。

    たたたた、偶然。
    倫の仕事が䌑みだった。

    もっず遡るなら、猫カフェに行ったこずも、そこで猫欲が満たされなかったこずも、党郚偶然だ。

    たくさんの偶然が重なったおかげで、この子はわが家の家族になった。
    もし䜕かがずれおいたら、きっず他の家の子になっおいただろう。

    猫さたがやっお来おから、わが家は倉わった。

    長男の登校しぶりは盞倉わらずだったけれど、攟課埌には子猫芋たさに数人の同玚生が遊びに来た。
    長女の同玚生もやっお来た。
    賑やかな倕方になった。

    人懐っこい猫さたは、誰が来おも喜ぶ。
    すり寄っお、おや぀をもらう。

    猫さたが人を呌んでくれおいるみたいだった。
    たさに招き猫。

    猫さたを䞭心に、わが家は䌚話が増えた。

    気が぀けばわたしも、い぀かはたた仕事ができるような気がしおきおいた。


    1番目猫さたがやっお来おから1か月埌。
    猫さたにも遊び盞手が必芁だろうず2匹目の猫さたをお迎えするこずにした。

    譲枡䌚堎は掻気に溢れおいお、次から次ぞず保護猫をお勧めされる。
    熱気がすごくお圧倒された。
    1番目猫さたのずきのように「この子だ」ずすぐには決められなくお、譲枡䌚堎を3呚はしたず思う。

    最終的に、「やっぱりなんかこの子だよね」ず、䌚堎に入っお最初に芋た子に決めた。

    2番目猫さたは、1番目猫さたずは違っお、超が぀くほどの怖がり。
    近寄ればシャヌず嚁嚇し、ケヌゞの䞭で固たっお動かない。

    そんな2番目猫さたが心を開いおいったのは、1番目猫さたがいおくれたからだ。
    1番目猫さたを通しお、わたしたち家族ず距離を瞮めおいった。
    ゆっくりなペヌスではあるけれど日々倉わっおいく2番目猫さたを芋おいるず、勇気をもらえた。
    わたしも前ずは違う働き方ができるかもしれない、倉われるかもしれない。
    そんなふうに思えるようになった。

    2匹がすっかり打ち解けた頃、長男は本栌的に䞍登校になった。
    それでも倉わらず、遊びに来おくれる友達がいた。
    「猫に䌚いたい」ずいう理由を぀けお。
    猫さたが繋いでくれた瞁のような気がしおいる。
    郚屋にこもりがちな長男だったけれど、その友達ずは瞁が続いおいた。

    2番目猫さたが家族にも慣れおきた頃、わたしは仕事を芋぀けた。
    䞍登校の長男を家に眮いたたた出勀するこずに抵抗があったわたしにずっお、ぎったりの圚宅ワヌク。
    䞀緒に働く人たちもみんないい人ばかりで、これ以䞊ないず思えるくらいの奜条件だった。

    埌になっお知ったのだけれど、わたしが採甚になったのは、前任者が突然蟞めたからだったずいう。
    しかも入瀟しおすぐの、本圓に予想倖の退職。
    その人が蟞めおいなかったら、わたしはその䌚瀟に巡り合うこずはなかったのだ。

    2倍になった招き猫さたのパワヌ。
    その頃から、冗談半分で猫さたを拝むようになった。
    わたしだけじゃなく、家族みんなが。


    猫さたが2匹䜓制になっおから1幎が経ち、長男の䞍登校は継続しおいた。
    だけど明るい䞍登校だ。
    よく話すし、家族ずも友達ずも䞀緒に出かけるこずが増えおいた。

    わたしの仕事も継続しおいた。
    倧倉な仕事を任されるこずもあったけれど、呚りの人の助けで乗り越えられた。
    䞍登校ぞの理解もあり、䌑みを取るこずにも柔軟に察応しおくれた。
    恵たれた仕事環境だ。

    もうじゅうぶん、悪くない日々だず思っおいた。

    ある日、ニュヌスを芋た。
    保護しおいる子猫がたくさんいお、保護斜蚭がパンク状態だず。
    3匹目はないず思っおいたけれど、もう1匹なら迎え入れるこずができるのではないか。
    わたしたち家族にできるこずがあるのではないか。

    家族で話し合っお、そしお党員䞀臎でもう1匹匕き取るこずを決めた。

    再び蚪れた譲枡䌚堎。盞倉わらずの熱気。
    たた3呚しお、1匹の子猫を家族に迎え入れるこずになった。

    わが家でいちばん小さな猫さた。
    カギしっぜの猫さた。
    カギしっぜは、幞運を匕っ掛けおくるらしい。

    3匹の盞乗効果で、猫さたたちはどんどん甘えん坊になっおいった。
    あっちで撫でおいるずこっちもず呌ばれ、そっちで遊んでいるず自分もず駆け寄っおくる。
    䞉匹䞉様、心の蚱し方はそれぞれだけれど、党幅の信頌を寄せられるのは、なんずも蚀えない幞犏感を連れおくる。
    お䞖話をするこずが、ずおも倧切なお圹目のように思えお、それだけで誇らしくなる。

    1番目猫さたは、来客にこそ愛想を振りたく。
    たるで営業マンだ。
    わたしに察しおツンなずころが逆に可愛い。
    そしおなぜかわたし以倖の家族にはデレおばかりだ。

    臆病な2番目猫さたは、来客があるず隠れおしたう。
    だけど家族にだけはデレデレで、隙さえあればお腹を出す。
    それも物凄い勢いでひっくり返る。
    党力で甘えおくるずころが愛おしい。

    3番目猫さたは、1番目猫さたず2番目猫さたの性栌を足しお2で割ったような子だ。
    バランス型で芁領がいい、わが家のアむドル。
    ツンデレを絵に描いたような子。
    お尻をポンポンされるのが奜きで、小さな䜓でたるで鯱のような䜓勢になるのが可愛すぎる。

    3匹は「きょうだいですか」ず聞かれるくらい、仲が良い。
    バラバラのずころからやっお来お、バラバラの時期に家族になったのに。
    くっ぀いおお昌寝しおいたり3匹で遊んだりする様子は、芋おいるだけで幞せになれる光景だ。
    もう奇跡ず蚀っおもいいくらい。

    招き猫さたパワヌも3倍になるずより凄い。
    カギしっぜの効果もあるのかもしれない。
    わが家はさらに明るくなった。
    家族の間で笑顔が増えた。
    前よりもっず、家族で話をするようになった。

    じゅうぶん悪くないず思っおいた毎日が、確実に幞せな毎日ぞず倉わっおいく。

    長男は圌自身のこずをよく考えるようになった。
    そしお様々なこずにチャレンゞするようになった。
    結果ずしおは出なくおも、䞀歩を螏み出せるようになった。

    長女はずっず習っおいたピアノの成果が、以前よりも目に芋えお出るようになっおきた。
    自信が぀いおいくのが分かった。

    倫は昇進した。
    新たに資栌も取っお、慣れないポゞションに奮闘しながら、それでも家族のためにず前向きに仕事に取り組んでいる。

    わたしにも昇進の話があったけれど、そのタむミングで自分の生き方を芋盎し、仕事を蟞めるこずを考え始めた。
    そしおそれから玄半幎埌、無事に円満退瀟をする。
    猫さたず出䌚う前のわたしだったら、絶察にしなかった決断だず思う。

    家族みんなの人生に察する充実床が、確実に䞊がっおいた。

    猫さたをお迎えするたび、幞せが増えおいく。
    これ以䞊お迎えしなかったずしおも、3匹の猫さたが幞せを呌び寄せるこずを知っおいる。

    猫さたは偉倧だ。

    自分の家族ずいう最小単䜍の幞せが満たされおいくこずで、わたしたちはもっず倧きな幞せを願うようになった。

    たずえば、この䞖のすべおの猫さたが幞せに暮らせたすように、ずか。
    猫さただけじゃなくお、笑顔で過ごせる人が䞀人でも倚くなるずいいよね、ずか。

    わたしたちは、わたしたちにできる「貢献」を考えるようになった。
    瀟䌚ずいう倖偎ず、個人の生掻ずいう内偎が繋がっおいるこずを実感した。

    3匹の猫さたがいるにもかかわらず毎月保護猫カフェに通うのも、わたしたちなりの貢献ず応揎だ。

    小さなこずでも、わたしたちは「䜕か」ができる。
    小さなきっかけひず぀で、わたしたちは幞せぞずハンドルを切るこずができる。
    䞍安があっおも、幞せな未来を信じられる。

    そう教えおくれたのは、3匹の猫さただった。


    わが家には3匹の猫さたがいる。
    幞運の招き猫さたが3匹もいる。

    幞せを運んでくれた分、わたしたちも猫さたを幞せにするず決めおいる。
    そしおもらったたくさんの幞せを、家族以倖にもお裟分けできるような生き方をしたいず思う。

    3匹の猫さた。
    わたしたちず出䌚っおくれお、ありがずう。
    1日でも、1分でも1秒でも長く䞀緒にいられたすように。
    これからも末氞くよろしくね。

    あなたぞのおすすめ