フカセ釣り202512【沖磯グレ】
僕は自分で調べた地磯へ自分の足で釣りに行くのが好きだけど
誘われたときは 渡船に乗って沖磯へ行く
僕を誘ってくれるのはふたり
どちらも頑固な年上の職人さん
ひとりは鉄工の部長で
ひとりは電気の元社長だけど
転生したら職人になりたい僕にとっては職人さん
仕事で話し合うと頑固でめんどくさいけど
僕が想像もつかないような案が出る
ある意味めちゃくちゃかしこいのだ
僕が頑固でめんどくさいと思っているように
相手も僕を 生意気だと思っているだろう
ふたりとも長男タイプで我が道を行く
喋りまくるけどあまり人のいうことは聞かない
中子の憎まれ子で拗れた僕は
自分の兄はコンプレックスの源だけど
社会の荒波に揉まれた今では
長男タイプの方が相手の気持ちを気にして遠慮しなくていい
僕が生意気なくらいでちょうどいいのだ
12月中旬には鉄工部長のお誘い
部長はお金じゃなくて 人と人の信頼関係を大切にする人
お誘いが来るということは まだ信頼してくれているのだろう
行きの車の中で部長はしゃべりまくる
ウキがどうとか オモリがどうとか
ハリがどうとか サシエがどうとか
マキエがどうとか きりがない
僕は釣りはできるだけシンプルに考えたい
魚はいるのかいないのか
マキエに反応するのかしないのか
魚がいて マキエに反応すれば
ハリをしっかり隠したサシエが付いていて
マキエと同調してサシエ先行で魚のタナまで届けば釣れると思う
グレの場合はそれに
マキエを撒いてからグレが反応するまでのタイミングが関係したり
サシエに触ってももっていかなかったりするので難しいのだけれど…
あまりにもたくさん選択肢がありすぎると 最適解に辿り着けない
道具は最小限にして 技の引き出しをたくさん持ちたいと思っているのだ
だからあのウキがどうとか サシエはなになに何種類とか 新製品のマキエはどうとか色々言われても
「そんなの関係ねーわ」と言ってしまう
久しぶりに会って 溜まっていた妄想を吐き出したい鉄工部長には申し訳ないが
話を合わせるのではなく 正直に正面から付き合うのだ
長い道中わいわいしゃべり続けて
一匹長寸で勝負して 負けた方が帰りの食事を奢ることになった
夜中に港に到着して仮眠して 早朝渡船に荷物を積み込み出航

沖磯に乗ると 鉄工部長は場所と潮流を分析して語り続ける
僕には全てを理解できないので 立ち位置は鉄工部長に先に選んでもらう
僕はいつも地磯ではヌカパンマキエで 沖磯でも同じように釣れると思うが 渡船に乗る時くらいは配合エサを使う
僕なりの釣り産業への礼儀だ
沖アミ生3kgとボイル3kgを配合エサと混ぜてマキエを作り 釣り開始
う~ん
難しい
ウキの浮力調整が上手くできない
エサ取りが多い
手前はハコフグ
中距離はウスバハギ
遠距離はウマヅラハギか
ウキがなんかおかしいのは きっと途中でコイツらがくわえているのだろう
鉄工部長が分析してずっと話しかけてくる
波と風で聞こえないので聞き返す
結局聞こえない なのに律儀に聞き返してしまう
ふたりともあの手この手でグレを狙うけど 釣れるのは35cm以下

まあ十分お持ち帰りサイズなのだけれど 地磯で40cmオーバーを狙っている僕には物足りない
目標は50cmオーバー
そしてこの場所にはそのポテンシャルがあるのだ
そんななか 鉄工部長が40cm級を釣った
鉄工部長は エサ取りのかわし方が上手い
気持ちが焦る
いつも誰もいない地磯でひとりで釣っているので
竿を振るのも マキエを撒くのも 仕掛けを流すのも 話しかけられるのも 先に釣られるのも
他の人といっしょに釣ることに違和感を感じる
フグカワハギ系のエサ取りのいたずらもあり
完全にリズムを崩していた
35cm以下のグレの下かどこかに50cm近い大物がいるはず
リズムを取り戻すべく 話しかけられて聞こえなくても「あぁ うん」と答えながら集中する
なんとか1匹掛けて浮かせる
「おお?デカいんちゃう?」
浮いたグレを見て鉄工部長が言い 僕がタモアミを取ろうとしたとき
グレが反転して突っ込み仕掛けが切れた
「危ない 取れてたら負けてたかも」と言うが
多分40cmはなかったので変わらなかったと思う
結局鉄工部長は40cm弱2枚で数も僕より多く完敗
エサ取りが多い時はだいたい負けるなぁ
帰りの道中は反省会
「あの時もっとああすれば」そんなことばかり思い浮かぶ
鉄工部長は相変わらず妄想がふくらませてありとあらゆる話をする
僕の思考が追い付いていないだけかもしれないが
「そんなの関係ねーわ」と返す
行きと全く同じ関係だ
あー 釣りは面白いなぁ

30cm以上をキープしてたら持ち帰りは5匹だった
三枚に下ろして塩麴に一晩漬けて 一夜干しにして冷凍して 毎朝焼いて弁当に入れる
鉄工部長は60歳を過ぎたので そろそろ仕事を引退するらしい
引退したらもう沖磯には行かないという
今回人と一緒に釣りをすることが難しくなっていることに気付いて 慣れるため たまには人と一緒に行かなければと思っていたのに…
「たくさんの無駄遣いをやめれば 釣りくらいいけるでしょ?」
と言ったけど お金の価値観は人それぞれだから仕方ない
まあそういいながら また気が向いたら誘ってくれるだろう
自分の本能で生きている人なのだから
