43歳、工場で人生をやり直す。第8話 夜勤明けの朝日
夜勤を終え、工場を出た。
空は少しずつ明るくなり始めていた。
最初の頃は、夜勤明けの朝なんて余裕がなかった。
眠い。
疲れた。
早く帰って寝たい。
そればかりだった。
でもこの日の朝は少し違った。
駐車場へ向かう足取りが軽かった。
特別なことがあったわけではない。
大きな成果を出したわけでもない。
それでも心の中には不思議な充実感があった。
車に乗り込み、エンジンをかける。
バックミラー越しに工場を見た。
数か月前の自分なら想像もしていなかった景色だった。
工場で働く自分。
夜勤をこなしている自分。
筋トレを続けている自分。
少しずつ成長を感じている自分。
以前は先のことばかり考えていた。
不安ばかりだった。
失ったものばかり見ていた。
でも今は違う。
まだ完璧ではない。
問題もたくさんある。
それでも前に進んでいる。
それだけで十分だと思えた。
信号待ちで空を見上げる。
朝日がゆっくりと昇っていく。
その光がやけに眩しく見えた。
人生は思い通りにならない。
大きくつまずくこともある。
遠回りすることもある。
私自身がそうだった。
それでも、人は何度でもやり直せる。
年齢は関係ない。
遅すぎることもない。
大切なのは、一歩を踏み出すことだ。
43歳。
工場勤務。
夜勤。
筋トレ。
どれも以前の自分にはなかった世界だった。
でも今は、この道を選んで良かったと思える。
夜勤明けの朝日を見ながら、私は静かにそう思った。
そして心の中でつぶやいた。
「まだまだこれからだ。」
第1章 完