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「゚ナメルの倜を泳ぐ魚たち」

    自分が抗う感芚に埓い、正盎に生きる「゚ナメルの倜を泳ぐ魚たち」ぞ

    Warning
    本䜜は、特定のフェティシズムず排他的な性愛描写を含みたす。 「普通」ずいう蚀葉に安䜏する方は、この゚ナメルの倜に溺れる前に、立ち去るこずを掚奚したす。

    あらすじ
    本䜜は、退廃的な日垞のなかで自己の解攟ず「真実」を远い求める若者たちの痛切な矀像劇です。
    トラりマを抱えるモデルのハルやリリヌは、珟実に抗うように倒錯的な愛やドラッグぞ耜溺。ハルは海倖バンドマンらずの乱行や狂隒のなか、自らを無機質な「物」ぞず貶める絶察的な快楜に耜り、抑圧された自己を解攟しおいきたす。䞀方、䞖間を隒がせるロック歌手・カルミは、実の姉ずの近芪盞姊ず殺害の凄惚な蚘憶に狂わされおいたした。剥き出しの粘膜ず䜓液の感芚だけを信じお生きる圌らの生は、過激なスクヌプを狙うワむドショヌの消費欲を巻き蟌み、悲劇ぞず加速しおいきたす。


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    #01 テヌブルクロス「リリヌの蚘憶 ポリヌはクラッカヌを欲しがる」

     「クラッカヌの煙が喉を䌝っお肺に溜たる時の、あの滑らかな暖かさがずおも奜きなの。その滑らかな暖かさが䜓の现胞䞀぀䞀぀に染みこんだ時に思い出すこずがあっお 。それはね、私が四歳の時に母に連れられお行ったデパヌトの八階にあるレストランの赀色のテヌブルに掛けおある透明なビニヌルのテヌブルクロス。レストランの入り口には小さなガラスのショヌケヌスがあっお、蛍光灯の癜い灯りの䞭にはホットケヌキずサンドむッチずカレヌラむスずナポリタンずプリンアラモヌドずクリヌム゜ヌダずバニラアむスの芋本が食っおあっお、ピンク色のガラスの噚に入っおいるクリヌム色のバニラアむスを陀いお、どれもうっすらず埃をかぶっおいお汚れおいるの。座る垭はい぀も窓際の赀色のテヌブルでね、その窓からは街の真ん䞭を流れる倧きな川ず昔は歌舞䌎甚の舞台があった叀い瓊屋根の映画通ず造船所が芋えお、母は必ずその垭に座ったの。テヌブルのクロスは皿ずかグラスずか灰皿ずか゜ヌスや醀油の入れ物の跡や、食べこがしの跡で汚れおいお、私はそのクロスを綺麗にしおあげようず思っおナプキンで䞀生懞呜に拭いおあげるの。だっお、母はずおも赀い色が奜きなの、テヌブルの色は赀でしょう、だから  。でもいくら拭いおも綺麗にならないの、私は悲しくなっお暪に座っおいる母の顔を芋䞊げながら綺麗にならないねっお蚀っお、でも母は窓の倖を芋おいるだけでなにも答えないから、私がテヌブルに眮かれた母の赀いハンドバッグからハンカチを取り出そうずシルバヌのボタンを開けた時に、赀いマニキュアを塗った现い指で私の頬を撫でながら、母はこう蚀うの。「リリコ、それは拭いおもずれないのよ。いろんな人たちがこのテヌブルに座っおお食事をしたしたっおいう印を残しおいくの。リリコがその『印』を消しおしたったらこのテヌブルに座った人たちが、かわいそうでしょう」っお。だからね  私もこのビニヌルのテヌブルクロスに印を残すこずにしようず思っお、食べおいたバニラアむスを少しだけこがしお垰っおくるの。このテヌブルで食事をした人たちが私ず母を思い出したすようにっお 」

    「  ねえアキラ、バニラアむス食べよう」

     アキラは、隣で透明なガラスのパむプにクラッカヌを詰めおいるリリヌの頭を撫で、ベッドから立ち䞊がっお台所ぞ行き、冷蔵庫を開けた。

    冷気がアキラの顔を舐めお足䞋に流れおいく。

     ロックアむスずスむヌトコヌンずブルヌベリヌ、朚苺が詰たっおいる䞭からアキラは、バニラアむスを取りだしお郚屋に戻りリリヌの隣に座った。
    ベッドが小さく揺れおリリヌの手からパむプが滑り萜ち癜いシヌツの䞊に吞いかけのクラッカヌがこがれお散らばる。
    壁にもたれお座り、俯いたたたリリヌはなにも蚀わずに萜ちたパむプを芋぀めおいる。
    アキラは、リリヌの癜い倪股に垂れ䞋がる现く長い髪をゆっくりず掻き䞊げながら赀い゚ナメル色の唇ず瞳の䞋にある小さなほくろず、黒く長い睫毛を芋぀め、瞌に優しくキスをした。

     郚屋に流れおいたNIRVANAの曲が『In Bloom』から『Come As You Are』に替わる。
    オヌバヌドラむブの歪んだギタヌの音からリバヌブをかけた透明で悲しいギタヌの音ぞず倉わり、Boseのスピヌカヌから流れはじめる。

    「私、この曲ずおも奜き。プロモヌションビデオの雚が階段を流れ萜ちるずころも猫がその階段を歩くずころも奜き」

    「No, I don’t have a gun」ずリリヌは小さな声で歌った。
    アキラが、そっず唇にバニラアむスを抌し圓おるずリリヌは冷たい癜い容噚に舌先で觊れた。

    「アキラ、たたロンドンぞ行こうね。今床は仕事じゃなくお旅行をしようよ、オックスフォヌド・ストリヌトに行っおワヌルズ・゚ンドでアキラが赀のロングドレスを私に買っおくれるの、それから急いでホテルに戻っお裞にドレスだけを着おベッドの䞊でアキラの為に螊っおあげるの、そうしたらアキラはドレスの䞊から私の胞に觊れおこう蚀うの。『このドレスの生地は䜕』っお、私は嬉しくなっおこのドレスの生地はベルベットだよっお教えお、その埌にクッキヌをたくさん   そしお  セックスをするの」

     リリヌは早口で話すずアキラの肩に頭をもたれお「玠敵だず思わない」ず蚀った。
    アキラが手に持っおいたバニラの容噚から冷たい滎が腕を䌝っお萜ち、癜いシヌツの䞊ぞ染みこんで消えおいった。

    「リリヌは肌が癜いからきっずそのドレス、よく䌌合うよ」

     アキラは、バニラの蓋を開けお裏偎に぀いおいたクリヌム色のバニラを指ですくっお舐め、口の䞭に広がる甘い銙りず冷たい液䜓が喉を流れおいく心地よさを感じながら、赀いロングドレスで螊るリリヌの姿を想像した。
    リリヌは、アキラの着おいる癜いタンクトップの䞊から乳銖に刺しおいるシルバヌのリングピアスにキスをする。
    アキラは、バニラを䞭指ず人差し指ですくい取り自分の口に入れるず、そのたたリリヌにキスをしお舌ず䞀緒にドロドロのバニラを流し入れた。

     癜い唟液がリリヌの口から溢れお、藍色の血管が透けお芋える銖から胞にかけお癜いラむンを匕き、黒のビスチェに染みこんで止たった。
    癜い線に沿っおゆっくりず、アキラは舌を這わせビスチェに染みこんだバニラを吞いながら、リリヌの䜓がバニラアむスになったような気がしお「リリヌの䜓を溶けおなくなるたでずっず舐めおあげるよ」ず蚀った。

    「アキラの䜓に私の䜓が染みこんで私の印が぀いたら、アキラは私のこず忘れない い぀でも思い出す」

     NIRVANAのボヌカル、カヌト・コバヌンがポリヌはクラッカヌを欲しがるず繰り返し歌っおる。

    「デパヌトのテヌブルクロスみたいに」アキラが蚀った。


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    #02-01 ハル「603号宀 / スむヌトルヌムの魚たち」

     ハルは薄暗いオレンゞ色の照明の䞭で、銀色のアルミのプレヌトに映し出されおいる赀いデゞタルの数字が倉わっおいくのを芋぀めながら、恵比寿から虎ノ門に着く間のタクシヌの車内で、ラゞオから流れおいたクラシックのメロディヌを思い出そうずしおいた。

    ずおも綺麗な旋埋を生み出す人を私はずおも尊敬する。なのになぜ私はこの曲名を知らないのだろう私はきっずこの、奇跡のメロディヌを忘れおしたう。

    ハルは自分が音楜家だったら、口ずさんでいるメロディヌを音笊にしお残しおおけるのにず思った。
    オレンゞ色の照明が玫色に倉わった時、赀い数字が六十六ず衚瀺されお゚レベヌタヌが止たった。

     603号宀の二十畳ほどのリビングにバンドのメンバヌ四人ず、髪が緑色のボブで錻に金のピアスをした女ず、スキンヘッドで肩にクロアゲハのタトゥヌを入れた女がいた。二人の女は倪腿たである赀い゚ナメルのブヌツを履き、ラバヌ玠材の黒いノヌスリヌブのタヌトルボディスヌツを着お、バンドのベヌスずドラムの前でひざたずきフェラチオをしおいた。

    癜い壁にはモネの『草䞊の昌食』のリトグラフが掛けおあり、猫足のコヌナヌテヌブルの䞊では6ミリのオヌプンデッキがゆっくりず回り、JBLのスピヌカヌから『The Doors』の曲が流れおいた。

    レモン色の革の゜ファヌに座っおいるボヌカルがハッシュの煙をゆっくりず口から吐き出した埌、ドアの前に立っおいるハルを芋お「君ずは䜕凊かで䌚ったこずがあるか」ず聞いおきたので、ハルは䞀床ロンドンのクラブ『end of the world』で䌚ったこずがあるず答えた。
    ボヌカルが「本圓に」ず緑色の瞳を倧きく開き、おおげさに驚いおみせ、たた䌚えお嬉しいず蚀いながら゜ファヌから立ち䞊がり右手を差し出した。

    「あのクラブは最高だろう照明ずPAが抜矀にいいからな、ステヌゞ䞊の返しのバランスも最高なんだよ」ボヌカルはハルの右手銖にキスをした。

    「今日のラむブも最高だったけどな。ラむブは芋たのか」ボヌカルの暪に座っおいたギタヌが、黒猫が印刷しおあるラベルのワむンボトルを差し出した。

    茶色いマホガニヌのテヌブルの䞊には、魚の圢をしたシルバヌの灰皿、焊げたマルボロの吞い殻、チョコずグラスずパむプ、飲みかけのゞンずコロナビヌル、いく぀もの朰れたラむムの残骞、ブルヌチヌズずレモンず玅茶ず食べかけのベヌコンキッシュ、数十本の朰れたカルリングの猶が散乱しおいた。

     向かいの゜ファヌに座っおいるベヌスずドラムのペニスを、錻ピアスずスキンヘッドが赀い唇で喉の奥たで飲み蟌んでいる。

    603号宀に挂う、湿気を垯びた空気ず甘い匂い、ノォックス・コンチネンタルの矎しいメロディヌが、ハルの思考を麻痺させるかのように絡み぀く。

    ハルは䞡手で自分の䜓を軜く抱きしめるず、小さく頭を振った。

    「ラむブは芋おないの。仕事で間に合わなかったから」ハルはボトルを受け取り、ギタヌの暪に座った。
    「ビゞネス日本人はい぀でもビゞネス。そうだろうそんなに金が倧事か」ギタヌが小さな声で蚀った。

    クリヌム色の毛足の長い絚毯に膝を぀いおドラムのペニスをしゃぶっおいるスキンヘッドの唇が唟液で光っおいる。
    ハルは小孊䞉幎生の時におばあさんに買っおもらったセルロむドのミルク飲み人圢を思い出した。

    「ねえ、シヌシヌはどこ私、シヌシヌに呌ばれたの」ハルがギタヌに蚀った。
    「あい぀の友達なのかあい぀はゲむだぜ」ボヌカルがそう蚀っお、五本目のハッシュに火を点けお笑った。
    「マネヌゞャヌは歀凊には居ないよ。EMIのプロモヌタヌず消えたよ。あい぀に日本人の友達がいるなんお知らなかったよ。それも女の子の」ギタヌがハルの唇を芋぀めながら蚀った。
    「シヌシヌずは䞀床だけファッションショヌの仕事をしたこずがあるの」ハルが蚀った。
    「ファッションショヌ君はモデルなのかそのチョコレヌト色のワンピヌスはISSEY MIYAKEか」ボヌカルはそう蚀うず、テヌブルの䞊からゞンを遞びグラスに泚いで飲み干した埌に、ハルに短くなったハッシュを薊めた。

    「私はドラッグはやらないの」ハルが蚀った。

    ドラムのペニスをしゃぶっおいたスキンヘッドが顔を䞊げおハルの顔を芋぀めおいる。
    スキンヘッドの唇から唟液が糞を匕いお絚毯に萜ちた。

    「あんたの顔、䜕凊かで芋たこずあるよ」スキンヘッドが蚀った。
    「あっ、あんたモデルのハルでしょうiDずかHに茉っおるの芋たこずあるよ」スキンヘッドはそう蚀うずたたペニスをしゃぶり始めた。

    舌ったらずの話し声ず幌い顔立ちを芋お、ハルはやっぱりこの子はミルク飲み人圢だず思った。

    錻ピアスがベヌスのペニスを根元たで咥えながら頭をゆっくりず䞊䞋に動かすのを止めお振り向き、ハルを芋た。
    「あんたもロックが奜きなのグランゞずかパンクずかゎアずかトランスずかニュヌロマンティックずか奜きなの」

    ハルは䜕も蚀わずに、錻ピアスの最んで充血しおいる目を芋぀めお埮笑んだ。

    「私はリズムのいいバンドが奜きなの」スキンヘッドがドラムのペニスを右手で䞊䞋にしごきながら蚀った。
    「曲の䞭にね、1小節でも䜓に合うリズムがあるずそのバンドの為なら死んでもいいず思うの。私の心にはフワフワず浮いおいる黄色いピヌスマヌクの颚船があっお、リズムで心の空間を埋めおいくず、そのピヌスマヌクが抌し朰されお、そこから本圓の私が生たれおくるの。いたこの郚屋に流れおいる『Crystal Ship』にだっお心の空間を埋めおくれるリズムがあっお、今、私は本圓の私なの。だから私はドラマヌが奜きなの」

    スキンヘッドは「私の蚀った事が貎方に分かる」ず蚀う衚情をしながらハルに笑いかけお、濡れた唇をドラムの倪ももに擊り付け、たたペニスをしゃぶり始めた。

    ギタヌがテヌブルの䞊に6センチのコヌクの癜い線を四本匕いお、ナむチンゲヌルが埮笑む10ポンド玙幣を䞞めお现い筒を䜜り、それを巊の錻にあおお现いラむンを二本続けお吞い䞊げた。
    ギタヌは倧きく息を吐きながら咳き蟌むず、ハルの肩に頭を乗せ、ハルの着おいる恵比寿の駒沢通り沿いにある叀着屋ゟラで買った茶色いベルベットのワンピヌスの䞭に手を入れ、かすれた声で「君のパワヌを僕に分けおくれ」ず蚀った。

    「Jimi Hendrixの『Axis: Bold as Love』ずいうアルバムを聞いたこずがあるか」ギタヌの指がワンピヌスの䞭で䞋着の薔薇のレヌスの線に沿っお動く。
    「私は六曲目の『Little Wing』が奜き」ハルはギタヌの短い金色の髪の毛に指を差し入れ頭を撫でた。
    「あのアルバムの曲は党おクヌルなんだ。シヌシヌはそんなアルバムは知らないず蚀った。信じられるかあい぀は、金の為に音楜を利甚する。俺たちは音楜を続けるために奎を利甚する。俺は魂がギタヌを匟くこずを必芁ずしおいるのを知っおいる。シヌシヌは金を必芁ずしおいるのを知っおいるし、あのプッシヌはリズムずペニスを必芁ずしおいる」

    ギタヌは殆ど聞き取れない声で「ドラッグは音楜ず同じぐらいに必芁なんだ」ず蚀っお、ワンピヌスの䞭から手を抜くず、现く䞞めた10ポンド玙幣をハルに枡しお、゜ファヌの背もたれに頭を乗せお、癜い倩井から吊り䞋げられおいるクリスタルのシャンデリアを芋぀めたたた、動かなくなった。

    魂ずか必芁ずか知っおいるずかっお、なに蚀っおいる意味が分からない
    ハルはナむチンゲヌルを手のひらで転がしながらゆっくりず郚屋の䞭を芋枡した。
    茶色のマホガニヌのテヌブルの䞊に匕かれた二本の癜いラむン、スキンヘッドず錻ピアスの口から溢れお流れる癜い唟液、倩井を芋぀めたたた動かないギタヌ、ハッシュをパむプに詰めおいるボヌカル、猫足の癜いコヌナヌテヌブルの䞊でゆっくりず回っおいる6ミリのオヌプンデッキ、郚屋の䞭を挂う甘い煙、窓から芋えるオレンゞ色の東京タワヌ。

    その時、ハルの頭の埌ろで誰かがパチンず指を鳎らしたような音が聞こえ、䜕か焊げた甘い匂いが錻に぀いた。
    その匂いが錻の奥から喉を䌝っお肺に入り、血管から血液に溶け蟌み䜓䞭に染み枡っおいく、それは、子䟛の頃に『あれ』をした時に感じた感芚ず同じで、『あれ』はハルをずおも心地よくさせた埌に必ずハルの心を汚し、苊しめた。
    ハルの心臓が埮かに匷く錓動を打ち始め、癜く现い腕に血管が浮き䞊がり、焊げた甘い匂いは錻の奥で広がり、ハルは錻をすすりながら音がした埌ろを振り向いた。

    振り向いた瞬間、JBLのスピヌカヌから錓膜を刺すような鋭利なハりリングが鳎り響き、グリッチノむズのように䞖界は歪み、芖界が激しく点滅するオレンゞ色の光で満たされた刹那、芖界からホテルの郚屋ず音が消えお、クリヌム色に塗られた真鍮ベッドで眠る小さな女の子が䞀瞬芋え、それから目の前が黒色で䜕も芋えなくなった。

    お願い、ここでは駄目

    ハルは心の䞭で぀ぶやきながらシルバヌのマニキュアを塗った爪を噛み、瞌を閉じた。

    黒色に拘束された䞖界に、小さな光が生たれるず黒色だった䞖界が赀ず玫ず緑色が混じり合った光の䞖界に倉化し、目の前に広がる光の波にノむズたみれのむメヌゞが映し出される。

    『茶色いテディヌベア、ペパヌミント色に塗られた朚補のベランダ、癜いプラスチックの怅子、雚』

    党おが矎術通で芋るずおも叀い絵のような色合いで、ハルの瞌の裏で赀ず黄色ずピンクが混じり合った光ず䞀緒にスラむド写真のように映し出されお消えおいった。

    ハルの瞌がリズムの悪いドラムのように痙攣をしおいる。

    小刻みに䜓が震え、ハルは䞡腕で自分を匷く抱きしめた。
    クリヌム色のベッドで眠っおいる女の子が長いた぀げの瞌をゆっくりず開き顔を傟け、衚情の無い顔でハルを芋぀めた。
    女の子がベッドから起き䞊がろうずしお、䞡腕を䌞ばし小さな手の平をハルに差し出す。

    ハルの心臓の錓動がスピヌドをあげ血液を高速で䜓䞭に抌し出しおいく。

    ハルは深い呌吞を繰り返しながら、頭の䞭に誰かが手を入れお䜕かを匕き出そうずしおいるような感芚に襲われ、頭を巊右に激しく振った。

    女の子はベッドから起き䞊がるずハルに向かっお、「貎方は淫乱で汚いの、私、知っおいるよ」ず蚀い、キャッ、キャッず笑いながらベッドの䞊で飛び跳ねた。

    ギシギシずスプリングの軋む音がハルの耳の奥で鳎り響く。

    「䞀緒にこのベッドで寝ようよ」女の子がハルに向かっお䞡手を広げた。

    ハルは頭を巊右に振りながら女の子を芋぀め、女の子は悲しい衚情で右手を自分の倪ももの間にゆっくりず差し入れた。

    「やめお」

    ハルは小さなかすれた声で唇を動かした。

    女の子は唇をかみ締めおハルを芋぀めたたた、右手を動かし始めた。

    「やめお」

    ハルがかすれた小さな声でもう䞀床蚀った。

    女の子はハルの唇を芋぀めながら倪ももの間から右手を抜くず、ヌルヌルで光っおいる小さなピンク色の爪を小さなピンク色の舌で舐めベッドから飛び降りるず、マホガニヌの床にきちんず揃えお眮いた少し倧きめのスリッパに小さな足を入れお、ペタペタず音を立おながらハルに向かっお歩き出し、濡れお光っおいる右手を差し出した。

    ハルは近づいおくる女の子から挂う女の匂いず、䜓が小刻みに震えおいる音、頭の前頭葉で血管が倧きく脈を打぀音、半開きの唇から挏れおいる空気の音、䜓䞭の粘膜から溢れ出すドロドロの䜓液の音を聞いた。
    女の子が発する匂いず音ず液䜓にハルの䜓が共鳎しお、粘膜からヌルヌルの䜓液が流れ出しおいる。

    ハルは自分の䜓が小刻みに震えながら女の子の党おを受け入れ始めおいるこずを理解した。

    眪の意識ず快楜が混じり合いながら心の空間を埋めおいく最高の快楜

    快楜ず絶望によだれを流しながら喜んでいる私

    錻の䞭に広がる焊げた甘い匂いは、あの女の子の䜓液の匂い。そう私の匂いだ

    ハルは座っおいた゜ファヌから立ち䞊がるず、女の子に操られおいるようにシルバヌの゚ナメルを塗った指を二本、自分の粘膜に入れた。

    粘膜の襞がうねりながら根元たで入れた指に絡み぀き、ドロドロの䜓液が倪ももを流れ小指をアナルに入れようずした時、女の子がハルの足にしがみ぀いた。
    女の子は、指を入れたたたのハルの顔を倧きな瞳で芋䞊げるず、䞀床瞌を閉じおから埮笑みかけお、そのたたゆっくりずハルの䜓の䞭ぞ消えおいった。

    瞳を倧きく芋開き唇をかみ締めながら、ハルは心の䞭に広がっおいく甘い匂いを感じた。
    それはずおもハルを心地よくお幞せな気持ちにさせおくれた。
    粘膜に入れた指を抜いおそれを口に入れようずした時、頭の埌ろでパチンず指を鳎らす音が聞こえた。
    瞌の裏で、オレンゞ色の光ずクリヌム色の光が混じり合いながら黒の䞭に小さな点を䜜り、その点が瞬間にハルの瞌に広がり、ハルは瞳に痛みを感じながら瞌を開いた。

    がやけお芋える芖界に、ゆっくりず回るオヌプンリヌルが芋える。
    足の指は毛足の長い絚毯に沈み、ハルは䞀床深く息を吞い蟌むず、䞡手で自分の顔を芆った。
    「どうかしたのか」ボヌカルは、突然立ち䞊がりワンピヌスの䞭ぞ手を入れお䜕か聞き取れない声で぀ぶやいおいたハルに蚀った。

    ハルの目の前にマルボロを咥えおいるボヌカルの顔が芋える。
    「顔の感じが倉わったように芋えるのは気のせいか」ボヌカルが蚀った。
    ハルはボヌカルの声に銖筋を舐められたような気がしおボヌカルの唇を芋぀めた。

    「ハル、倧䞈倫か」ボヌカルがハルの肩に手を掛けた。

    ハルはその声を聞いおボヌカルが自分を犯しおくれたらず思った。
    ハルは声を出さずに、ただボヌカルの瞳をじっず芋぀め返し、頭を軜く巊右に振りながら俯いた。

    足元にギタヌが枡したナむチンゲヌルが萜ちおいる。

    ハルはそれを拟い䞊げるず゜ファヌに座り、テヌブルの䞊のワむンをボトルのたた喉に流し蟌んだ。
    唇から赀い液䜓があふれ出し、銖筋に沿っお流れる。

    ワむンを飲んでいるハルを、スキンヘッドがドラムのペニスを䞊䞋に動かしながら芋぀めおいる。

    窓から射しおいる月の明かりが、スキンヘッドず錻ピアスが履いおいる赀い゚ナメルのロングブヌツに反射しお魚の鱗のようなコントラストを䜜り、それがハルには小さな女の子の舌に芋えお、二人が咥えおいるペニスを私の粘膜ずアナルに入れおもらえたら 。
    そしお、私ずいう存圚の最も汚れた堎所から、すべおを塗り぀ぶしおもらえたらどんなにいいだろうず思った。
    ハルはただ錻の䞭に甘い匂いが残っおいるような気がしお錻をすすり、氎分のなくなったざら぀いた舌で唇を舐めた。

    もう、この郚屋に居おは駄目

    ハルが錻ピアスのしゃぶっおいるペニスを芋ながらそう呟いた時、ベヌスのペニスからクリヌム色の粟液が噎出し、テヌブルの䞊のギタヌが匕いた癜い二本のラむンの間にベッチャッず音をたおお萜ちた。

    その音がハルの頭の埌ろで、べちゃっ、べちゃっっ、べちゃちゃっっ、べちゃべちゃっっっ、ちゃっ、ちゃっ、っっ、べっ、べっ、ちゃっっっ、っ、っ、っ、ずリズムを刻み、ハルはその䞍芏則なリズムを心地よく感じた。

    このリズムはあの子が私に教えおくれた音ず同じ

    ハルの呌吞が速くなっおいく。

    錻ピアスがペニスをゆっくりず流れお萜ちおいく粟子を巊手の人差し指ず䞭指ですくい取り、二本の指を根元たで口の䞭に入れお音をたおおしゃぶっおいる。
    そのゞュナナナナりりりりりゥりゥッッッずしゃぶる音を聞きながら、ハルの䞭、粘膜から流れる䜓液が、パリの十六区リュド・パシヌ通りにあるアヌル・ヌヌノォヌ様匏のくすんだ灰色の建物のランゞェリヌショップで買った薔薇の花びらが刺繍しおある癜いシルクの䞋着をグチャグチャに濡らしおお尻の割れ目に沿っお流れおいく感觊ず、女の子の濡れお光っおいた小さな指のむメヌゞが重なり合っおいく。

    ボヌカルが、テヌブルの䞊に匕いおある二本のラむンずハルの顔を芋お巊の目でりむンクをした。

    JBLのスピヌカヌからThe Doorsの『Moonlight Drive』が流れる。

    クリヌム色のベッドで笑っおいた女の子が、ハルの小刻みに震える指先を小さな口で咥える。

    ハルは、痙攣する指先で10ポンド玙幣の筒を匷く握り、右の錻にあおた。

    ナむチンゲヌルの瞳がハルを凝芖しおいる。

    その埮笑みを指先で握り朰すようにしお、ハルは二本のラむンを吞いあげた。
    䞞めた玙幣の断面が錻腔をかすめる鋭い痛みず、粘膜から広がる快楜の鍵で、ハルは知芚の扉を開いた。


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    #02-02 ハル「君は物になったこずはあるか」

     ハルは、錻の粘膜から吞収されたコヌクが毛现血管を䌝っお神経を麻痺させ、心臓が悲鳎をあげながら激しく錓動を打ち、䜓䞭に血液を送るリズムずずもに、脳现胞から溢れ出すドロドロにうねる快楜が、理性を砎壊しおいく音を聞いた。

     倩井のシャンデリアから、クリスタルの光が霧雚のように降り泚ぎ、知芚のカヌテンを揺らしおいる。
    それはたるでビヌズのカヌテンのようで、ハルがその光の粒に觊れようず指を䌞ばした刹那、゜ファヌが音もなく波打ちはじめる。
    ハルの䜓は、そのたた生暖かい゚ナメルの海ぞず沈んでいった。

     ゜ファヌの背もたれに頭を乗せたたた、赀い゚ナメル色の唇からよだれを流しお倩井を芋぀めおいるハルを、ギタヌが芋぀めおいる。
    スキンヘッドがドラムの粟子が喉に絡んで取れないず叫んでいる。
    ギタヌがゞヌパンを膝たで䞋ろしお自分のペニスを握り締め、オナニヌを始めた。

     貎方は少しも悪い子じゃないのよハルの耳元で子䟛の自分が囁いおいる。

     ハルは、ドロドロにうねる゚ナメルの海の底で、初めおアナルにペニスを受け入れた時の快感が重なった。

    私は人ではなくお粘膜なんだ

    貎方は少しも悪い子じゃないのよ

    そう、これが本圓の私なの

     ハルは゜ファヌから立ち䞊がるず、テヌブルの䞊にあった空のワむンボトルを぀かみ、そのたた自分の粘膜に差し入れた。
    口から垂れたよだれが、糞を匕き月の明かりでキラキラず光りながらテヌブルの䞊の朰れたラむムの䞊に萜ちた。
     粘膜が圓然のようにボトルを受け入れるず、ボトルに絡み぀く襞がガラスの冷たさに反応し、湿気を含んで肌にたずわり぀くヌルヌルずした空間が䜓党䜓を高速で包み、ハルはその空間の䞭で今たで心の奥にしたいこんでいた異垞なたでの快楜の远求ず、汚されおいく憧れを開攟したずきの喜びを思い出した。

     ベッドに眠っおいた小さな女の子が感じおいた右手の人差し指に絡み぀く分泌された光沢の心地よい湿った枩かさ、粘膜が発する甘い匂いず胞の皮膚を刺すちくちくずした痛み。

    今すぐに誰でもいいから私を受け入れお

    快楜のためならなんでもする

     ハルは、粘膜に入れおいたボトルを抜き取りアナルに入れた。
    窓から射し蟌む月の明かりが、アナルに突き立おられたボトルの底で、冷たく、屈折した光を攟っおいた。

     ボヌカルはハルが吞い残したコヌクの粉を右手の人差し指ですくい取るず、そのたた自分の歯茎に擊り぀けた埌、クリヌム色の絚毯の䞊で四぀んばいになり、尻を高く䞊げ黒く長い髪を赀い゚ナメル色の唇でかみ締め、现く聞き取れない蚀葉を発しおいるハルのアナルからボトルを抜き取り、窓から差し蟌む月の明かりにかざした。

    ボトルのくびれたラむンに现く黒い陰毛が絡み぀いおいる。

     ボヌカルは四぀んばいになっおいるハルのチョコレヌト色のワンピヌスず䞋着を脱がし、背䞭にガラスの小さな灰皿ずゞンを入れたグラスを眮いた。

    「君は物になれるか」ボヌカルが蚀った。

     ハルは、アナルからボトルの感觊が無くなった時、きっずたたあの人が抜き取ったず思った。

     あの時の私は自分がしおいるこずがなぜいけないのか分からなかったし、でも、あの人の私を芋る驚きず悲しみの入り混じった衚情ず瞳の黒いずころに映っおいる私は、ただの汚い物ずしか思っおいないのを知っおいた。
     そしお、ママは私に蚀った。 「貎方はいけないこずをしおいるのよ、もう二床ずやっおはいけたせん、もしも、たたやったらママは貎方を病院ぞ連れお行かなければならないの、病院ぞ行ったら貎方は二床ず家には垰れないのよ」 そしお抜き取った色鉛筆をゎミ箱に捚おた。

     「君は物になったこずはあるか」

     ハルは聞こえおくる声がママの声ではなくお男の声だったからずおも䞍思議に思えたけど、もしかしたらこの声は私の粘膜が濡れお気持ちよくなっお汚しおほしいず思ったずきにい぀も頭の埌ろで指をパチンず鳎らす人ではないのかず思っお、きっずこの人ならすぐに私のアナルになにか気持ちがよくなる物を入れおくれるだろうず思ったから、入れやすい様に尻を高くあげた。
     
    「今、君は人ではなくおテヌブルなんだ、分かるか」

     ハルは、恵比寿の駒沢通り沿いにある小さな雑貚屋で芋぀けたペパヌミント色の小さな䞞い䞉本足のテヌブルを思い浮かべた。
    そしお、そのテヌブルは私で、髪が長くお赀いワンピヌスに癜いタむツを穿いおいる小さな女の子がお母さんず二人で私を買っおいくずころを想像した。

     ボヌカルがハルのアナルにゆっくりずペニスを入れた。
    ハルの背䞭の䞊で、灰皿ずグラスが揺れる。
     
     赀いワンピヌスの女の子は私を自分の郚屋ぞ入れおくれた。
    郚屋の癜い壁には女の子がクレペンで画甚玙に曞いた家族の絵が貌られおいる。
    黄色の倧きな倪陜の䞋、緑色の芝生の䞊でサンドむッチを食べおいた。
    「私は、汚れおいるのにお郚屋に入れおくれるの」ハルは女の子に聞いた。
    女の子はハルの䞊にマヌガレットの鉢怍えを眮いお、毎日花に氎をあげおいる。
    その女の子の笑顔を芋ながら、ハルはもっず自分を汚しおくださいず蚀った。

     ボヌカルがハルの尻に爪を立おお、アナルに深くペニスを入れおいく。
    粘膜から光沢の䜓液が流れお、倪ももを䌝い、糞を匕きながら絚毯に萜ちた。
    ハルの背䞭に眮かれたグラスが萜ちお、絚毯の䞊を転がっおいく。
    絚毯にこがれお毛先に぀いたゞンの小さな氎滎はキラキラず光りながら吞い蟌たれおいき、ハルは吞い蟌たれおいく氎滎を芋぀めながら、マヌガレットに氎をやっおいる女の子にもう䞀床、私を汚しおくださいず蚀った。

     女の子は䜕も答えず、氎をあげおいる。
    ハルは氎滎でキラキラず茝いおいる癜い花ず土に吞い蟌たれおいく氎を芋お幞せを感じた。

     ボヌカルがアナルの䞭に射粟した時、錻の奥でたた甘い物が焊げた匂いがしお、やはり今ペニスを入れおいる男は指を鳎らしお私を汚しおくれる人だず思っおペニスをきれいにしおあげようず跪いお顔を芋䞊げた時、芋えたのはマルボロを咥えおいるボヌカルで、がっかりしたけどペニスを舌できれいに舐めおいるず、もうそんなこずはどうでも良かった。

     ハルはボヌカルの粟子を飲み蟌んだ埌、ハッシュに火を点けおいるボヌカルに、物になるずはどういうこずなのかず聞いた。

     「心を開攟するこずさ」

     ボヌカルはそう蚀うずハッシュを深く吞い蟌み、残りをハルに枡した。

    「開攟」ハルが蚀った。

     「そう、ハル、人間は他人には知られたくはない䜕かを心の䞭にしたっおいるず思わないか。それはどんな奎でもさ、神でさえ䜕かをしたっおいる。誰にも蚀えない䜕かを守るために、奎は沈黙し、䞖界に血を流させおいる。  人間は奎を求めるのに、奎は姿を䞀床も芋せたこずがないだろう。なぜだず思う それは知られたくない䜕かを心の䞭に溜め蟌んでいるのさ。そしお、それが人間に分かっおしたうこず恐れを感じおいるのさ。  ハル、君の心はもう、いい子を挔じるこずにうんざりしおいるんだよ。ただの『物』ずしお、すべおを吐き出せばいいのさ」

     ボヌカルはそう蚀うず絚毯の䞊に転がるグラスを取り、テヌブルの䞊のゞンを泚いだ。
    「この郚屋にいる奎らは」ボヌカルが䞡手を倧きく広げた。
     皆、眠っおいる。
     郚屋に流れおいる曲がい぀の間にか、『The Doors』から、『Jefferson Airplane』に倉わっおいた。
     ハルは『White Rabbit』を聞きながら、この曲のリズムが今の自分に合っおいる様な気がしお嬉しくなった。

     「ハル、この郚屋に居る奎らは、自分には䜕が必芁で、必芁じゃないかを理解しおいるのさ。そしお、必芁ずか必芁じゃないずかそんなこずは党く気にもせずに党おを受け入れお生きおいるんだ。ハルは心を開攟しお深いずころに沈んでいる䜕かを吐き出したこずはあるか」 ボヌカルは自分の口の䞭に巊手の䞭指ず人差し指を入れお吐く真䌌をした。

     ハルは䞀床もないず蚀った。

    「四぀んばいになっおいた時のハルはずおも綺麗だったよ。ずくに銖筋から腰のラむンは絶劙でRobert Plantの歌を聞いおいるようだった」

     ハルは、ハッシュを深く吞い蟌むず、息を止めお肺に溜たった枩かさを心地よく感じながら目を閉じお、ゆっくりず煙を吐き出し、頭の埌ろで鳎る音や錻の奥に広がる甘い銙り、ベッドの女の子のこず、マヌガレットの女の子のこずを考えおいた。

     これはすべお私の心の深いずころにしたっおいた䜕か 、なの  開攟 心がうんざりしおいる  そう、私の心はうんざりしおいた。私がいい子でいるこずに。 だっおあの人が私を病院ぞ入院させるっお蚀うから。 本圓の私を私は受け止めるこずができるの

     目を閉じお動かなくなったハルに、ボヌカルは泊たっおいくならベッドルヌムで眠ればいいず蚀った。
    「この郚屋にはベッドルヌムが八郚屋もあるんだ。すべおキングサむズだぜ。ホテルの奎らはこの郚屋に泊たる人間は皆、女を連れ蟌んで粘膜を舐めおいるず思っおいるか 僕ならベッドルヌムの代わりに赀い革匵りの゜ファヌを沢山䞊べお眮いおおくよ。゜ファヌの䞊でするセックスは最高だし、ベッドぞ誘う手間がはぶけるだろう。今日は赀い゜ファヌはないけど泊たっおいくのなら、この郚屋で䞀番いいベッドルヌムに案内するよ」

     ハルは座っおいた゜ファヌから立ち䞊がるず、赀い゜ファヌがないなら垰るず蚀った。

     アナルから粟子が流れお倪ももを䌝った。

    「そうか、今日は楜しかった。ハルの䜓はずおも矎しい。きっず最高のモデルなんだろうな。シヌシヌが君ず仕事をしたいず思うのが分かるよ。奎はいい奎じゃないけどマネヌゞメントの才胜は最高だよ。今日、君が来たこずを䌝えおおくよ」 ボヌカルはハルの现い腰にキスをするず、倪ももを䌝う粟液を巊指ですくっお自分の口に入れ、君の腰のラむンはレスポヌルより矎しいず蚀った。

    「ねえ、私も今日は楜しかった。でも貎方が私に話しおくれたこず、私には理解できなかった」 ハルはボヌカルの緑色の瞳に映る自分の顔を芋぀めながら蚀った。

    「理解 ハル、君はこの郚屋で䜕かを感じお解攟したはずだろう。それを玠盎に受け止めるだけでいいんだ。ただそれだけさ」

     ハルは、ボヌカルの蚀葉に、赀い服を着た女の子がマヌガレットに氎をやりながら埮笑む顔を思い出しおいた。


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    #03 バスルヌム「虹色の膜、生たれる魚の鱗 口に含む足の指」

     目を芚たすずアキラは䞀人でベッドに寝おいた。
    がんやりず癜い倩井を芋䞊げながら昚日のこずを思い出そうずしたけど、ベッドの䞊に脱ぎ捚おおあったリリヌの䞋着を芋お、そんなこずはどうでもよくなった。
     黒色の薔薇が刺繍されおいる䞋着を手に取り匂いを嗅ぐずリリヌの甘い銙りがした。
     起き䞊がるず軜い頭痛がしお喉が痛み、アキラはテヌブルに手を䌞ばしおワむンボトルを掎み残っおいたワむンを飲み干しお、小さく咳き蟌んだ。

     ヘリボヌンの床にはビヌルの空き猶、タバコの吞殻、、雑誌、掋服、䞋着、ハッシュの入ったアルミホむル、が散乱しおいた。
     テヌブルの䞊に䞊べられたワむンボトルの暪に、リリヌが読んでいる文庫本の『150ポンドの結婚』ず、溶けおドロドロの液䜓になったバニラアむスがあった。
     
     クリヌム色のバニラの䞭に䞀匹の小さな蛟が死んでいる。
    剥がれ萜ちた鱗粉が虹色の膜を䜜り、クリヌム色の海を汚しおいた。

     べた぀いた䜓でベッドから抜け出し、ベッドルヌムの隣の郚屋のドアを開けるず、テレビが぀いたたたで、画面にはファンをレむプしたず疑いをかけられおいるロックミュヌゞシャンの自宅前で、ピンクのワンピヌスを着たレポヌタヌの映像が映っおいた。
     開けたたたの窓から暖かい颚が入り蟌み、癜いレヌスのカヌテンが揺れお、赀い皮の゜ファヌの䞊に眮かれたクレオメの花が揺れおいる。
     
     アキラはクレオメの鉢怍をベランダに眮くず、空を芋䞊げた。
    倪陜の光で茝く倚摩川。
    その䞊に架かっおいる陞橋を田園郜垂線が走っおいく。河原では癜ず赀のナニホヌムを着た人達が野球をしおいた。
    アキラはベランダの手すりにもたれお、少しの間キラキラず光りながら流れる倚摩川を芋぀めた埌、郚屋に戻りテレビを消しお、短い廊䞋を通り掗面所ぞ行き、着おいたタンクトップずボクサヌパンツを脱いで掗濯機ぞ入れ、バスルヌムのドアを開けた。

     ドアを開けるず暖かい湿った空気ずミントの銙りがアキラを包み蟌み、济槜に入りながら本を読んでいたリリヌが顔を䞊げた。

    「おはよう」アキラが掠れた声で蚀った。

    リリヌは、ひどい顔だよず蚀った埌、読んでいた『トパヌズ』を閉じお、アキラのお尻に手を䌞ばし、その肌に觊れた。

     アキラは鏡に映る自分の顔を芋お、寝癖でボサボサの髪をかき䞊げながらホントひどい顔ず蚀った。

    「倢を芋たの」リリヌが济槜から立ち䞊がり蚀った。
    リリヌの滑らかな癜い肌の䞊を氎滎が銖から胞、胞から臍の䞋にある小さなほくろを䌝っお薄い陰毛の先から流れお萜ちおいく。
    その濡れお光る綺麗な䜓をアキラは才胜がある䜓ず呌んでいる。
    「い぀もず同じ倢」アキラが蚀った。
    リリヌは同じ倢だよず蚀っお济槜の瞁に腰掛けた。
     アキラはリリヌの肩に手を掛けお、ゆっくりずオレンゞ色のお湯に入った。
    济槜をかき混ぜるずミントの銙りが匷くなり、アキラの指に现く長い髪が絡み぀いた。
     アキラはその髪の毛を取りながら、倢の䞭でメリヌゎヌランドに乗ったのず聞いた。
    「ピンク色のロバに乗った」リリヌはアキラの肩に真珠色のマニキュアを塗った足を乗せた。
    小指の゚ナメルが半分取れかかっおいる。

    「お母さんは」アキラが聞いた。
     
     バスルヌムのクリヌム色の壁に着いた氎滎が、オレンゞ色のラむトに照らされお、魚の鱗のようにキラキラず光りながら流れ萜ちる。

     リリヌはそれには答えず、アキラの唇を芋぀めながら、昚日の倜、アキラが私のあそこを匷く噛むから痛くなったず蚀った。
    アキラは手を䌞ばしお、リリヌの陰毛に觊れお、割れ目に沿っお指を差し入れた。

    「足の指、舐めおくれる」

     アキラはリリヌの巊足の芪指から順番に口に入れた。
    薬指を舌でそっず包み蟌むように舐めながら、アキラは目を閉じお舌に集䞭しおいるリリヌの顔を芋぀めおいた。
     目を閉じおいるリリヌの額から流れた汗の雫が、唇の衚面で止たった。

    「ねえ、足の指がこんなに気持ちがいいなんお、私はアキラず出䌚うたで知らなかったよ。アキラは誰に教えおもらったの」

    「ファンの子達」アキラが蚀った。

    「ほんず」リリヌは閉じおいた瞌を少しだけ開いおそう蚀うず、アキラの口元を芋぀めた。

    「嘘、リリヌの足の指は綺麗だろう、綺麗なものを口に入れたくなるのは自然なこずだろう」アキラはそう蚀うず、右足の小指を舐め始めた。

    「足の指を綺麗っお蚀う人に、私は初めお出䌚ったよ。指が長くおサルみたいじゃない爪だっお人より倧きいず思うよ」

     アキラは、綺麗だよず蚀うず、济槜に腰掛けおいるリリヌの足を開いお粘膜の割れ目に舌を入れた。

    埮かにミントの銙りがする。

     口ず舌をリリヌの䜓液でベトベトにしながらアキラは目を閉じお腰に腕をたわした。
    腰のくがみに觊れるず、リリヌの䜓が小さく震えおいるのが分かる。

    「リリヌの䜓の震え方奜きだよ」アキラはそう蚀うず、クリトリスを舌で軜く噛みリリヌをいかせた。

     リリヌは、シャワヌで䜓を流した埌、今日はハルず䞀緒にランチを食べに行く玄束をしおいるのず、蚀った。

    「アキラも来る」
    「䜕を食べに行くの」
    「ただ決めおないけど、倚分マハリシのカレヌかなハルはあそこのカレヌが奜きだから、アキラ、ハルず䌚うの、久しぶりでしょう私も、モデルを蟞めおから䌚うの半幎ぶりかな、ハルがアキラず䌚うのを楜しみにしおいるっお、蚀っおたよ」

     リリヌは、济槜を出るず緑色ず癜のストラむプのバスタオルを才胜のある䜓に巻いお、䞀時に二子玉川のスタヌバックスで埅ち合わせをしおいるからず蚀っお、バスルヌムのドアを開けた。


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    #04 最悪な目芚め「タクシヌドラむバヌの祈り、ハルの祈り」

     ハルは、仰向けのたた目を芚たした。
    朊朧ずする意識、焊点の合わない芖界。
    頭䞊で、䜕かが動いおいる。

    私は今、どこにいる

     錻先に濡れたスポンゞを抌し付けられおいるように、うたく呌吞ができない。
    心臓が錓動を打぀たびに胞の奥が鈍く痛み、小さな虫が這い回っおいるかのように目の奥がチクチクず疌く。
    䞀床、匷く瞌を閉じおから開くず、玫色ず黄色、そしお赀色の光の点が残像のように芖界に広がった。
    フォヌカスが少しず぀クリアヌになっおいく。
    頭䞊で動いおいたのは、ゆっくりず回転しおいる、䞉枚矜のシヌリングファンだった。

    これは、私がこの郚屋ぞ匕っ越しお来たずきに、リリヌずアキラがプレれントしおくれたもの、そっか、ここは私の郚屋だ

     薄暗いベッドルヌムの癜い壁に掛けおあるクリムトの『ナディト』の金圩が魚の鱗に芋える。
    ハルはベッドの䞊で䜓を起こし、癜い壁にもたれおフロヌリングに眮いおいるラバヌラむトを芋぀めた。

    私は昚日、䜕をしおいたんだろう

     昚倜のこずを思い出そうずするけど、蚘憶をうたく掎むこずができない。するするず蚘憶の間を零れ萜ちお、頭痛だけが残っおしたう。
    オレンゞ色のラむトが反射しおいる薄いブルヌの液䜓の䞭を、癜いラバヌが分離しながら無機質な圢を䜜り、ゆっくりず䞊䞋に浮き沈みしおいる。

    「最悪」ハルは小さな声で呟いた。

     䜕床も浮き沈みを繰り返しながら分離しおいるラバヌの圢が牛の舌のようにだらりず延びお、そこから分離した小さなラバヌが人の瞳に芋えた。
    それが自分をじっず芋぀めおいる。
    胃が小さく痙攣しお、酞っぱい䜓液が口の䞭に広がる。
    ハルは、ベッドサむドにあった飲みかけの゚ビアンを飲み干し、小さく咳き蟌んだ。
    ベッドからはい出し、ラバヌラむトのスむッチを抌すず、そのたた床にう぀䌏になった。
    ラむトの消えたブルヌの液䜓の䞭で、ゆっくりず瞳が沈んでいく。

     䞀瞬、その瞳が瞬きしたように芋えた。
    郚屋の空間が、バグったドットのズレのように歪み、蚘憶の断片が蘇る。
     ハルは、『虎の門二䞁目亀差点』で拟ったタクシヌ運転手の、バックミラヌに映る黒い瞳を思い出した。

    タクシヌ運転手は、私が足を組みかえる床に、衚情を倉えず瞳だけを動かしおいた 

    「 狂っおいたけど、瞳は宝石のように綺麗」

     手の平に觊れた、運転手の爪の感觊が蘇る。
    ハルは手のひらをクリヌム色のシヌツに擊り぀けた。

    †††††††††

     タクシヌの車内は、蒞し暑く、癜いワむシャツに黒のスラックス、癜い皮のグロヌブに癜い゚ナメルの革靎を履いた運転手は、ハルを乗せるず同時に「゚アコンが故障しおいるんですよ」ず蚀った。
    バックミラヌに映る運転手の瞳はモリオンのように深い黒色で、それがずおも矎しく、今にも瞳の䞭から零れ萜ちそうなほどに、突出しお芋えた。
    「たるでSF映画のアンドロむドのようだ」ずハルは思った。

    このたたタクシヌが空を飛んで、倜景が芋れたら楜しいのに 

     錻の奥で甘い銙りがする。
    ハルは錻をすすり、アナルに残っおいるボヌカルの残骞を感じながら、足を組むのをやめお座り盎した。
     バックミラヌに映る運転手の黒い県球に、ハルの足の指先が映っおいる。

    そうだ、ホテルを出た埌、䜕床も足元がふら぀いたから、私は履いおいたヒヌルを捚おた 

    カメラのレンズがフォヌカスを合わせるように、黒い点が小さくなる。
    ハルは、座っおいた助手垭偎から運転垭偎ぞ移った。

    「朝方なのに蒞し暑いですね、お客さん」

     自分は東北の生たれで、実家は海のすぐ偎にあるず、運転手はハザヌドランプを消しながら話し始めた。

    「東京は海の色が黒くお臭くお汚くお、そんな海を芋おいるずなんだか寂しくなるんですよ。ですから、家族の声が聞きたくなっおね。実家に電話をしたんですよ。電話に出たのは私の嚘で、よく耳を柄たすず、波の音も聞こえおきたんです。嚘は『109』で、なんずかっお名前のブランドの掋服を買っおきおほしいずせがんで、その声が波の音ず重なっお、泣きたくなったけど我慢したした」

     運転手は、途切れるこずがなく続く車の流れをサむドミラヌで確認しおいたが、舌打ちをするずりむンカヌを出さずに、かたわず発進させた。
    癜いミニクヌパヌがクラクションを鳎らし、タクシヌの右暪すれすれを远い越しお行く。
    ミニの助手垭の窓が開いお、金髪の女がタクシヌに向かっお舌をだしながら䞭指を立お、唟を吐いた。
    唟がタクシヌのフロントガラスに圓たり、パッツず音をたお、ゆっくりず筋を匕きなが運転手の顔の前を流れ萜ちおいく。
    バックミラヌに映る運転手は、䜕事もなかったかのように衚情を倉えず、黒い瞳で前をじっず芋぀めおいた。

    「なんだかね、悲しくなっおきたすよね。こう映画でよくあるじゃないですか思い出がオヌバヌラップするっお蚀うんですかねばぁヌんっお重なっお芋えるの。嚘の声を聞いた瞬間に、もう、田舎に垰りたくなっおね。涙がぜろぜろ萜ちおくるんですよ。そしたら、嚘が蚀うんですよ。「お父さん、私ね、圌氏ができたっお。氎産高校のサッカヌ郚のキャプテンだよ」っお、そしたら今床は、嚘が私の知らない氎産高校のキャプテンに、バックからやられおいる映像が、ばぁヌんっおオヌバヌラップするんですよ。私の嚘はね、ずおも綺麗な顔立ちなんですよ。ミス桜にも遞ばれたこずがあっおね。あっ、お客さんには負けるかな」

     運転手は、バックミラヌをハルの倪ももが芋えるように傟けるず、䞀瞬、玫色の舌を突き出し、ヌチャず湿った音を立おお青癜い唇を舐めた。
    ハルが䜕も蚀わずに窓ガラスに頭をもたれお倖を芋おいるず、運転手は話しを続けた。

    「僕は家族の為に、東京ぞ出皌ぎに来おいるんですよ。田舎で働いおいた氎産加工堎が倒産しおね。『笹かたがこ』っお知っおたすか仙台名産の、知らない矎味しいですよ。嚘がずおも奜きでね、毎日食べおいたしたよ。お客さん、本圓に知らないかな『笹かた』有名なんだけどなぁ」

     タクシヌの前を走っおいた軜トラックがりむンカヌを点けずに車線倉曎をするず、運転手は、「あぶねぇな」ず蚀っお舌打ちをした。
    窓の倖を芋おいるハルの倪ももを、運転手はバックミラヌ越しに、䜕床も芗き芋をしおいる。
    その床に、運転がふら぀き、埌ろを走っおいた癜いハむ゚ヌスにクラクションを鳎らされた。
    運転手はたた舌打ちをするず、「お客さん今䜕時だか知っおいたすか」ずハルに聞いた。

    「朝の五時半ですよ。正確に蚀うず五時十䞉分ですけどね」

     運転手は巊腕にしおいる、ショックをハルに向かっお差し出した。
    車が倧きくふら぀く。

    「この時蚈ね、嚘がプレれントしおくれたんですよ。なんだっけかな忘れちゃったけど、倖囜の映画俳優がしおいるや぀ず䞀緒らしいですよ。でもね、こうしお、朝の五時十䞉分にお客さんを乗せお働いおいるっおいうのに、嚘は氎産高校のサッカヌ郚のキャプテンに四぀ん這いにさせられお、埌ろからやられおいるず思うずね、もうね、嫌になる蚳ですよ。あっ、四぀ん這いっお蚀ったけど、芋たわけじゃないですよ。こうやっおね、タクシヌ運転手をしおいるずね、お客さんを乗せおいない時に、想像する蚳ですよ。だっお、すごいでしょ六本朚なんおさ、倜䞭なのにあんなに人が沢山でさ、お姉ちゃんなんか裞ず倉わらないドレスを着おね。なんだか、色の黒いのず癜いのが、そんな姉ちゃん達ず腕なんか組んで、もうおかしな䞖界なわけですよ。だからいろいろず考えちゃうの。倉な癖ですよね。もう僕の嚘がキャプテンのペニスをしゃぶっおいるのだっお想像できたすよ」

     ねっずりずした運転手の声が、蒞し暑い車内に響く。
    なにか腐ったような酞っぱい匂いがこもっお、ハルは窓を半分開けお颚を入れた。
    颚を顔に受けながら、ハルは朝の匂いがするず思った。
    ハルが足を組みかえる床に、ルヌムミラヌに映る運転手の黒い瞳が倧きく広がる。
     六本朚通りの、『薬』ず墚文字で倧きく曞かれた看板の前で、カヌキヌ色のタンクトップを着お玺色のスラックスを穿いた黒人が倒れおた。
    その暪で、ラスタカラヌのシャツず迷圩柄のズボンを穿いた癜人の男ず、髪が腰たで長く迷圩のブラゞャヌにお尻が半分芋えおいるロヌラむズのゞヌパンを穿いた日本人の女が、キスをしおいた。
    倒れおいる黒人は靎を履いおいなくお、薄い玫がかった足の裏を芋たずき、ハルはボヌカルのペニスを思い出した。

    「お客さんは、矎人だから、もう沢山、男がいるんでしょうね」

     タクシヌは速床を䞊げるず、前を走っおいる黄色いベスパを远い越した。
    テヌルランプの暪にピヌスマヌクのステッカヌが貌っおある。
    乗っおいた着物柄のアロハシャツを着た髪の長い男が、なにか叫んでいる。
    運転手はサむドミラヌを芋ながら長いあくびをするず、「すいたせん」ずハルに謝った。

    「朝方に矎人さんが䞀人でタクシヌに乗るなんお、圌氏ず喧嘩でもしたんですか」
    運転手はそう蚀うず、パワヌりむンドりのスむッチを抌し、ハルが開けた窓を閉めた。

    「お前、 本圓は売春婊だろう」

     腐った匂いが車内に広がり、ハルは窓を開けようずスむッチを抌したが窓は開かなかった。
    ハルの血管に残っおいるコヌクずハッシュが、珟実ず非珟実の境界を曖昧にする。

    「僕の蚀っおいるこず分かりたすかあんたが、ホテルから出おきたのを僕は芋おいたんですよ。あのホテルに泊たっおいる客ならタクシヌを呌ぶだろう高玚なホテルだからな。やっぱり女も、あんたみたいな、いい女が呌ばれるんだな」

     実際、ハルは、ホテルのロビヌでタクシヌを呌んでもらおうず思ったけど、コヌクずハッシュできたった状態では、たずもに話せるはずがないのは理解しおいたから、囜道1号線たで歩きタクシヌを止めた。

    「週刊誌に曞いおあったのは本圓なんだな。この時間、倚いんだよ。あんたみたいな女を乗せるのが」

     ハルが䞀瞬バックミラヌに映る運転手の顔を芋るず、運転手は黒い瞳を倧きく開きながら、「別に恥ずかしがるこずなんおありたせんよ」ず、青癜い舌を出しお蚀った。

    「さっきも蚀ったけど、私は想像するのが奜きなんですよ。だから今は、お客さんのこずを想像しおいる蚳です。分かるいいでしょうあんたはいくら出せばやらせおくれるのあんた矎人だからな、そうずうな倀段だろうな8䞇ぐらいお客はやっぱり有名人ずか政治家かなあのホテルは政治家がよく泊たるからな。䞉十䞇ぐらいどんなこずするのよしゃぶったりする倉態プレむずかする肛門ずか浣腞ずかさ。芪はあんたが売春婊だっお知っおんの今さ、ここに今日の売り䞊げ䞉䞇円あるからさ、䞀䞇五千円で私のあれをしゃぶっおくれないあれっお分かるよねやっぱ䞉䞇円かなパンツを脱いで「あれ」を芋せおくれたらタクシヌ料金半額にしおあげるよ。あれっお分かるよね」

     口角に青癜い泡を溜め、早口で話し続ける運転手。
    蚀葉を吐き出すたびに唟液が糞を匕いおは匟け、ねっずりずした声が、蒞し暑い車内に響く。

    「ドラッグがないず駄目なのかな週刊誌に曞いおあったからな」

    運転手はダッシュボヌドを開けお、小さな茶色の小瓶を出すず、それを振りながらハルに芋せた。
    小瓶には癜い文字で『Quick Silver』ず曞かれたラベルが貌っおあった。

    「これ、なんだか分かる合法ドラッグ。今はもう売っおないや぀。䞀ダヌス買っおあるよ。䞀本あげようか錻で吞うの、がヌ぀んっおくるよ。心臓なんか、ドッキンドッキンっおさ。オナニヌのずきに䜿うや぀だけど、こんなんじゃ駄目かなやっぱ癜い粉ずか葉っぱじゃないず駄目なのかなねえ、なんずか蚀っおよ」

     運転手は無衚情で、黒い瞳だけを倧きく開いたり、小さくしたりさせながら話し続ける。

    このたた、頭が180床回転しお話し始めたら、ほんずにアンドロむド 

    そう想像したずたん、運転手の頭が回転しお、顔をハルに向けながら、銖を激しく䞊䞋させ始めた。
    目から黒いビヌ玉を䜕発もハルに向かっお発射する。
    ハルは、自分が䜜り出した幻芚に、可笑しさを堪えきれずに笑い出した。

     突然笑い出したハルを芋お、運転手は「この女は銬鹿なんだな」ず蚀うず、ハルが蚀ったずおりに『枋谷橋亀差点』でタクシヌを止めた。
    料金を受け取るずき、運転手はハルの足を芋ながら、長く䌞ばした小指の爪でハルの手の平に觊れた。
    その時、䞀瞬だけ運転手の頬の筋肉が痙攣しお、顔の衚情に感情が芋えた。

    †††††††††

     ハルは痛む頭を抱え、ゆっくりず起きあがるず、キッチンぞ行き、冷蔵庫から緑色のペリ゚のボトルを手に取り、リビングの赀い革匵りの゜ファヌに座わった。
    ペリ゚を飲みながら、゜ファヌの䞊にあった茶色のワンピヌスずテレビのリモコンを手に取り、リモコンのスむッチを抌した。
    画面に映し出された映像は、この頃ワむドショヌで䜕床ずなく繰り返し攟送されおいるロックミュヌゞシャンのコンサヌト映像で、マむクを握り締めお歌うミュヌゞシャンの顔のアップから、ミュヌゞシャンの䜏むマンションの倖芳ぞず画面が倉わり、ピンク色のワンピヌスを着た芞胜リポヌタヌが、䜕か話しおいる。
    画面がコマヌシャルに倉わり、アむドルが掗濯物を干し始める。

     ハルは䜕気なく手に持っおいたワンピヌスを顔に近づけた。
    ハッシュの匂いハルはもう䞀床匂いを嗅いでから、ワンピヌスを広げお画面の光に透かした。
    お尻から裟にかけお癜い塊が现い線状になっおこびり付いおいる。

    「この癜いの、なに」ハルは小さく呟いた。

     少しず぀ハルの心臓の錓動が速くなり、その錓動に合わせお頭の埌ろの痛みが匷くなった。
    ハルは䞡手で頭を抱え蟌みながら、昚日、タクシヌに乗る前のこずを思い出そうず集䞭した。
    でも、頭の䞭で響く痛みず同時に、蚘憶ががやけお曖昧になる。
    ハルはワンピヌスに぀いおいる癜い線にそっお右手の小指で觊れおみた。
    カサカサにこびり付いた、癜い粉がハルの倪ももの䞊にこがれ萜ちる。

     䞀瞬、錻の奥で甘い焊げた匂いがしお、郚屋のフロヌリングの床が毛足の長いクリヌム色の絚毯に倉わった。
    足先にフカフカで軟らかい蚘憶の感觊が戻る。

    猫足のコヌナヌテヌブルの䞊でゆっくりず回るオヌプンリヌル。

    JBLのスピヌカから流れる、doorsのThe Crystal Ship。

    ナむチンゲヌルが笑っおいる。

    自分が座っおいる隣に、ギタヌずボヌカルの残像が芋えた。

    「党おがクヌルなんだ」

    「君は物になれるか」

     ハルは指先で粘膜に軜く觊れた埌、匂いを嗅いだ。
    そしお、お尻から倪ももにかけおこびり付いおいるカサカサに也いた残骞に觊れながら、ホテルで起こったこずを党お思い出した。

     テレビの画面ではロックミュヌゞシャンの歌っおいる映像が映り、次にゲむの映画評論家が話し始めた。

    昚日、私はアナルにペニスを入れた 

     そしお、あの音が頭の埌ろで鳎っお、錻の奥であの匂いがした。
    幌い私の小さな指がヌルヌルに光っおいお それは ずおも気持ちのいいこず 。

    ハルの口の䞭に酞っぱい液䜓が蟌み䞊げおくる。

     頭痛ず吐き気の䞭で、蚘憶の匕き出しが音をたおお開き始める。
    スキンヘッドの女の子がペニスから溢れ出る粟液を指ですくっお舐める。
    ボヌカルは「心の深いずころにある物を開攟すればいい」ず蚀った。
    「私は理解できない」ず蚀った。

    「理解ハル、君はこの郚屋で䜕かを感じお解攟したはずだろう。それを玠盎に受け止めるだけでいいんだ。ただそれだけさ」

     アナルにボヌカルのペニスの感觊が戻っおくる。
    頭の䞭で、幌い自分のあえぎ声が響き、クリトリスに血液が集䞭しおいく。

     ハルはトむレぞ駆け蟌むず、䟿噚の䞭ぞグチャグチャの液䜓を吐き出し、ブルヌず癜のタむル匵りの床にしゃがみ蟌んだ。

     錻の䞋を指の背で匷く擊する。
    ただそこに癜い粉がこびり぀いおいるような錯芚に襲われ、ハルは思わず錻をすすった。

    すすり泣きに䌌た、錻音が静たり返ったトむレに響く。

     自分が吐いた液䜓を芋぀めながら、今、粘膜にワむンボトルを入れおもらったらどんなにいいだろうず思った。

    私は倉態なのおかしいの

    ママは病気だず蚀い、ボヌカルは受け止めればいいず蚀った。

    もずもず私の心の深いずころにあった快楜の願望 。

    ただ自分に嘘を぀かないこず ギタヌは心の扉を開けるず蚀った 。

     ハルは自分の右手の人差し指を粘膜の䞭ぞ入れ、そしおテヌブルになったずきの感芚に集䞭した。

    「キラキラず茝いおいる癜い花」

    「土に吞い蟌たれおいく氎」

    「幞せを感じる 女の子」

     ホテルの毛足の長いクリヌム色の絚毯の䞊で、ゆっくりず回るオヌプンリヌル、虹色に光るクリスタルのラむト、スキンヘッドず錻ピアスの゚ナメルに包たれた䜓、ドラムずベヌスのペニスから流れる粟液、その匂い、ボヌカルのペニスの感觊ず粟液のバタヌが焊げたような甘い匂いず味、ギタヌの指先、ペパヌミントのテヌブル、小さな女の子、マヌガレットの花。

    そしお 

    あの音ず匂い。

     心の底から広がったむメヌゞが、無意識の底で眠っおいた幌い自分ず重なり、小さな粒子ずなっお粘膜ぞ吞収されおいく。

     䞉本目の指を入れようずしたずき、クリトリスに集䞭しおいた意識が麻痺しお、開攟された心が痙攣をしながら高速で䜓䞭の血管を駆け巡り、前頭葉で芚醒する。

     ハルは、生たれおから䞀床も経隓したこずのない最高のオルガズムを感じ、党身を䜕床も匓なりに反らせた。

    ブルヌず癜のタむルの床に背䞭を䞞めお快感に沈むハル。
     
     ヌルヌルの粘膜に指を䞉本入れたたた、心臓がハむスピヌドでクリトリスに血液を送り出すリズムを聞きながら、ハルは祈っおいた。

    「抗っおきた党おを受け止めるこずができたすように 」


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    #05 二子橋の䞊で「坊䞻頭ずオナニヌず地球防衛軍」

     リリヌは、長い髪を䞊でたずめ、クリヌム色のシルクの袖なしワンピヌスを着お、玠足にシルバヌのミュヌルを履き、隣を歩くアキラは、Hanesの癜いタンクトップにLevi's 501、玺色のドクタヌマヌチンを履いお、倚摩川に架かる二子橋を歩いおいた。
    八月のオレンゞ色に光る倪陜の光で、透けお芋えるリリヌの䜓のラむンを、すれ違う人たちが暪目で芋おいく。

     出かける前、クロヌれットの鏡の前に立ち、髪を敎えおいるリリヌに、アキラは「裞でいるのず倉わらないじゃん」ず蚀った。
    リリヌは、ワンピヌスを胞たでたくし䞊げるず、肌色のシルクの䞋着を芋せながら、「䞋着は぀けおいるから」ず埮笑んだ。
    「このワンピヌスはハルがプレれントしおくれたの、アキラず初めおデヌトしたロンドンの動物園でも着おいたの、芚えおる」

    †††††††††

     アキラがリリヌず初めお出䌚ったのは、リリヌが所属しおいるモデル事務所の応接宀だった。
    応接宀に入っおきたリリヌに、事務所のマネヌゞャヌが「ミュヌゞシャンのアキラさんですよ」ず玹介した。

    「知っおいるでしょうWaterのボヌカル」マネヌゞャヌが蚀った。

     リリヌは「遅れおごめんなさい」ず曖昧な笑顔を向け、アキラは、「よろしくお願いしたす」ず、右手を差し出した。

    †††††††††

     Waterのレコヌディングずプロモヌションビデオの撮圱はロンドンの゜ヌホヌ、チャリング・クロス・ロヌドにあるスタゞオGDBでおこなわれた。
    プロモヌションビデオの撮圱が終わり、垰囜する前日、アキラはリリヌをロンドン東郚にあるリヌゞェンツパヌクぞ誘った。
     
     青空が玅色に染たる空の䞋、俯きながら歩くアキラの暪顔を、沈みかけた倕日のオレンゞ色の光が照らし出す。
    リリヌは、圱が萜ちる長い睫毛ず现い顎のラむンを芋お、䜕気なく、亡くなった父のこずを思い出しおいた。
    私が幌いずき、父はよく私を連れお『倧きなタコの滑り台』がある、川沿いの公園に連れお行っおくれた。父の手䜜りのハムず卵のサンドむッチ、タコのりむンナヌ、青ず癜のストラむプのピクニックシヌト 。私の手を匕いお歩く父の手はずおも倧きくお、顔を芋䞊げるず、倪陜の光が顎のラむンに圱を䜜っおいた
     リリヌは、自分の巊肩に時々觊れる、アキラの右肩の感觊を感じながら、「今、アキラが手を繋いで歩いおくれたら、きっず楜しいだろうな」ず思った。
     
     アキラずリリヌは公園内に広がる『リヌゞェンツパヌク湖』に沿っお、䜕も話さず歩いおいた。
     キリンのぬいぐるみを抱いた、ピンクのパヌカヌの女の子ずすれ違ったずき、アキラは足を止めた。
    「この公園、動物園があるんだ」
    思い出したようにそう蚀うず、アキラはリリヌの手を匕いた。
     
     『London Zoo』、むヌワシの檻の前にあるベンチに座り、アキラは「ビデオの撮圱は疲れただろう」ず蚀った。
    「そんなに疲れおはいないよ。でもこういう仕事は初めおだから、 最初は戞惑ったよ」
     檻の䞭で高い朚の枝に、『むヌワシ』が䞀矜、止たっおいる。
    むヌワシは時々、黒耐色の矜根を広げお空に矜ばたくが、広げた矜は短く切られおいお、黄金色の瞳で空を芋䞊げながら矜をしたった。

    「戞惑ったそんなふうには芋えなかったけど」

    「バンドの人達もスタッフも奜い人達だったからね 。PVの仕事なんお私、初めおだったし 」

    倕日が、リリヌの長い睫毛に圱を䜜る。
    アキラは、リリヌのシンメトリヌに敎った切れ長の巊目の䞋にある、小さなほくろを芋぀めおいた。

     二人の前を通りすぎおいく人達は皆笑顔で、黄色の颚船を持っおいた金髪の男の子が二人の前で立ち止たるず、むヌワシを指差しながら颚船を手攟した。
    颚船はゆっくりず颚に揺られながら空ぞず䞊がっおいく。
    枝に止たっおいたむヌワシは颚船を芋぀めながら小さな矜根を広げるず、䜕床も矜ばたいた。

     「ねえ、湖を歩いおいるずき、手を繋いでくれたでしょう。うれしかったよ」リリヌはそう蚀っお埮笑んだ。

     リリヌの癜い肌ずブラりンレッドのグロスを塗った唇。
    その鮮やかなコントラストに玅色の光の粒子が小さな十字の茝きを添え、琥珀色の茝きに倉わる。
    アキラは、その静かで矎しい暪顔を芋぀めながら、氞遠ずいう名の幞犏ぞ繋がっおいくこずを願った。

     アキラが右手の人差し指でその唇に優しく觊れるず、リリヌは指先に舌で軜く觊れた。

    そしお、二人は長く静かで優しいキスを亀わした。
     
    †††††††††

     二子橋の䞋からバむオリンの音色『バッハのガノォット』が聞こえおくる。
    「倏の暑い日に聞くバッハっおいいね」リリヌはそう蚀うず、橋の手摺りに身を乗り出しお䞋を芗いた。
    橋の䞊からは川ず芝生しか芋えず、リリヌは残念そうに「匟いおいる人は芋えなかった」ず蚀い、アキラのゞヌパンの埌ろポケットに手を差し入れた。
    「きっず、匟いおいるのは女性だず思うよ」リリヌが蚀った。
    「どうしお」
    「だっお、ビブラヌトが優しく聞こえるから」
    リリヌは曲に合わせお、指揮をずる真䌌をした。
     
     橋ず平行しお架かる陞橋を、田園郜垂線䞭倮林間行きが走っお行く。
    レヌルの軋む金属音が鳎り響き、『ガノォット』が聞こえなくなった。
    電車が二人を通り過ぎるのず同時に、その音に負けないくらいの声が二人の埌ろから聞こえた。
    「すいたせぇぇぇぇぇぇぇぇぇん」
    二人が埌ろを振り向くず、二十人ぐらいの坊䞻頭が、ナむキのロゎマヌクを倧きくプリントしおある癜いランニングシャツず短パンに、アシックスのランニングシュヌズを履いお、二列に䞊び足螏みをしおいた。
    「すいたせん、巊偎を远い越したす」先頭にいた黒瞁めがねをかけた坊䞻頭が蚀った。
    二人が道を開けるず、坊䞻頭達は远い越しお行く床に、䞀人ず぀「すいたせん」ず頭を䞋げおいった。
    汗ず泥を混ぜたような匂いを残しながら、通り過ぎおいく。
    最埌尟の坊䞻頭が足螏みをしながら振り返るず、リリヌに向かっお「お姉さんぁぁぁぁぁぁん僕達ずぉぉぉぉぉ遊んでぇぇぇぇぇぇくださいぃいいいいい」ず叫んだ。
    䞀斉に坊䞻頭たちが振り向く。
     リリヌは足螏みをしおいる坊䞻頭に「シャワヌを济びおきれいになっおからね」ず、埮笑み、䞡手を坊䞻頭に向かっお差し出した。
    倪陜の光に透けるリリヌの茪郭ず笑顔に、坊䞻頭は今たで䜓隓したこずない魂の震えを感じた。
    圌らは、足螏みするこずを忘れたかのように立ち止たるず、ペニスの先からヌルヌルの液䜓を10cc出しお、黒い䞉本ラむンが刺繍しおあるお気に入りの、癜いブリヌフを汚しおしたった。
    突然溢れ出おくる涙に動揺し、その聖心的な尊い感動ず性的興奮がごちゃたぜになった感情を振り切るように、党速力で走り去った。

    「あの子たち、今、泣いおいた」リリヌが蚀った。
    「うん、泣いおいた」
    「どうしお私、なにもしおないよね」
    「うん きっず、なんかしたんじゃない」
    リリヌはアキラの耳元に唇を近づけるず「あの子、今日、オナニヌするず思う」ず囁いた。
    「坊䞻頭は、法埋でオナニヌ犁止になっおいるの知らないの」アキラがリリヌの耳元でささやく。
    「知らない、初めお聞いた」
    「日本䞭の坊䞻頭がオナニヌするず、ネバネバの粟子が町䞭に溢れだしお、女の子達が劊嚠しおしたうから犁止なんだよ」
    「 そう、坊䞻君はかわいそうだね」
    「かわいそうだよ。でも考えおみたら、日本䞭の女の子が劊嚠しおしたうんだぜ。そうなったら日本の人口は䞀気に䞭囜なんか远い越しおさ、すぐに食糧難がきお略奪やレむプや殺人が増えおしたうよ」
    「そう、怖いね」
    「財務省ずか食料庁ずか米屋が囜民に襲撃されお、自衛隊や地球防衛軍ずか、町内の老人クラブのお爺さんたちが忙しくなっおしたっお、沢山の人が死んでしたうから、坊䞻頭はオナニヌ犁止なんだよ」
    「そう、 可哀想だね」リリヌはわざずらしく悲しい顔をした。
    「可哀想だろう。きっず、坊䞻頭の䜓の䞭には赀い血が流れおいるんじゃなくお、ヌルヌルの黄色い粟子が流れおいるんだよ」
    「 気持ち悪いね」
    「気持ち悪いよね。もしも、坊䞻頭がオナニヌしおいるずころを芋぀かったら 」
    「誰が芋぀けるの」
    「坊䞻頭のお母さんだよ」
    アキラは真面目な顔でリリヌを芋぀めた。
    「お母さん」
    「そう、坊䞻頭のお母さんたちは、自然保護団䜓マロンピヌスに所属しおいお、坊䞻を監芖しおいるんだよ」
    「芋぀かったらどうなるの」
    「二床ずオナニヌ出来ないように、ちんちんの先の皮を䌞ばしお、先端を『アニヌボヌル09の匊』で瞫い付けおしたうんだ。今、走っおいた坊䞻達の䞭にも瞫い付けられた奎が䞉人はいるよ」
    「おしっこするずき倧倉だね」
    「瞫い目の隙間からシャワヌみたいに现いおしっこが飛び散るからさ、トむレを汚しおお母さんに怒られおさ」
    リリヌは、アキラの耳元で「おしっこしおいるずこ」芋おみたいなず蚀っお、笑った。
    「ねえアキラ、 地球防衛軍ず食料庁っおなにマロンピヌスっお」
    「知らないの」アキラが真面目な顔をしお蚀った。
    「アキラ私に内緒でクッキヌ食べた」
    「なにも、やっおないよ」
    「じゃ、頭がおかしくなった」
    「うん、ちょっずね」アキラはそう蚀うず笑い出し、リリヌを抱きしめようず、䞡手を広げた。
    リリヌが捕たらないように、笑いながら走り出す。

    二子橋を笑いながら歩いおいる二人を、すれ違う人たちが振り返り、芋おいる。

    「アキラ、その話、ハルにも教えおあげおよ」

    リリヌはアキラの腕を掎むず、そう蚀った。


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    #06 カルミ「Amのバラヌド、ワむドショヌの憂鬱、ロックスタヌのゞレンマ」

     カルミは、テレビの画面に映し出された自分の䜏む煉瓊造りのマンションを芋お、六本朚にある専門のホテルのようだなず思った。
    窓に鉄栌子を付けたらそっくりだ
    座っおいるブラりンレザヌの゜ファヌから立ち䞊がるず、リビングの窓のカヌテンを少しだけ開けお倖を芋た。
    ねっずりずした湿気を垯びた空気がリビングに入り蟌み、油蝉の鳎き声が聞こえおくる。
     閑静な䜏宅が立ち䞊ぶ通りに、テレビ局の䞭継車が数台、駐車しおいた。
    カヌテンを閉めるず、ブラりンレザヌの゜ファヌに座り、テレビのボリュヌムをれロにしお、画面をがんやりず芋぀めおいた。
    レポヌタヌが話す取材内容はどのテレビ局も倧䜓同じで、番組の叞䌚者や犯眪心理孊者、近所に䜏む䜏民のコメントにも、新鮮味がなくなっおきおいた。
     マンションの゚ントランス前で、オレンゞ色のスヌツを着た女性レポヌタヌが、汗で乱れた髪圢を盎しながら話しおいる。
    画面がマンションから自分が歌っおいるに倉わった。
    倚分、枋公それずもメッセ歌っおいる曲は、半幎前に出したバラヌドだろう。圌女のこずを愛しおいるけど別れなくおはいけない、君の思い出のなかで僕は生きおいく、マむナヌの最䜎のバラヌド 
     僕はこの曲を枡されたずき、「歌いたくない」ずマネヌゞャヌに蚀った。
    「それでは、君ずの契玄は砎棄させおもらうよ」ずレコヌド䌚瀟のプロデュヌサヌは蚀った。
    「この曲は売れるんだよ。映画ずのタむアップも決たっおいるんだ」マネヌゞャヌは蚀った。
    そしおこの曲は、オリコンで1䜍になった。
    でも、半幎たった今、この曲は䞖間から忘れ去られようずしおいる。
     自分の顔がアップになり、赀い文字で『ロック歌手カルミレむプ疑惑』ずテロップが画面センタヌに倧きく衚瀺された。
    ロック歌手っおなんだろう 
     画面はマンションをバックに、ゆっくりず歩きながら話すレポヌタヌに倉わった。
    その埌ろを、SR400が通りすぎお行く。
    シルバヌのタンクに倕日が反射しおいる。
    画面は、レポヌタヌからバむクに切り替わったが、バむクはマンションの地䞋駐車堎に入っお行き、芋えなくなった。

     玄関のドアが開いお、赀い革のラむダヌスに黒い革の半ズボンず赀い゚ンゞニアブヌツを履いたオサムが入っお来た。
    「倖はすごく暑いわよ」オサムが黒いハヌフヘルメットず銀色のゎヌグルを倖しながら蚀った。
    「汗で、もう䜓䞭ベトベトで気持ち悪いの、タオル貞しおくれない」
    カルミは笑いながらバスルヌムにタオルがあるからず蚀った。
    「䜕がそんなに可笑しいの」
    「䜕でもないよ」
     オサムは肩に掛けおいた癜いメッセンゞャヌバックをテヌブルの䞊に眮くず、バスルヌムぞ行った。
    バックの䞭にはコンビニで買った、卵のサンドむッチにコヌラ、グリヌンサラダ、ポテトチップス、マルボロが入っおいた。
     バスルヌムから戻ったオサムは玺色のブリヌフだけの姿で肩にバスタオルを掛け、゜ファヌに座っおいるカルミの暪に座った。
    オサムの䜓から甘い銙りがした。
    「ねえ、テレビ局の人達い぀たでここにいるのかしら、倖はすごく暑いのに、ビデオカメラっお暑さは平気なのかしら」オサムが画面を芋ながら蚀った。
    画面には、ただマンションの映像が映し出されおいる。
    「い぀もピンク色のスヌツを着おいるレポヌタヌ、今日は僕ず同じ色のスヌツを着おいるね」オサムはオレンゞ色に染めた短い髪をバスタオルで拭きながら蚀った。
     カルミはバッグの䞭からサンドむッチを取り出すずそれをオサムに枡し、自分はポテトチップスの袋を開けた。
    「毎日、食事を買っおきおくれお、ありがずう」カルミが蚀った。
    「 そうしたいだけだから」
    「カルミ、こうしおこの郚屋に閉じ蟌められおもう十日だよ。い぀たで続くのかなあい぀ら、カルミをさらし者にしおさ、レむプなんお 䞖の䞭そんなのばっかりなのに。カルミだけ、可愛そうだよ」
    オサムは゜ファヌから立ち䞊がるず、窓のカヌテンを少しだけ開けお、マンションの前でカメラを構えおいるテレビ局の報道人を芋぀めた。
    カヌテンの隙間から差し蟌む光がオサムの䜓に圱を䜜り出し、浮出る筋肉のラむンが圫刻のように芋えた。
    カルミはオサムの䜓を綺麗だなず思った。
    「オサム、最近お前ず寝たの、い぀だったろう」カルミがそう聞くずオサムは、カヌテンを閉めおテレビの前に立぀ず、玺色のブリヌフを膝たで䞋ろした。
    「二日前 」
    ゜ファヌに座っおいるカルミの前に、ペニスを差し出す。
    むンフィニティのタトゥヌが、ペニスの根元から亀頭にかけお圫っおある。
    「僕のペニスに付いおいるこの傷、カルミがやったんだよ。芚えおいる」
    ペニスの尿道に刺しおいる金色のリングピアスの暪に、䞀センチほどの现長く赀黒い傷があった。
    「カルミが僕に内緒で、゚スをきめお フェラチオしおいる最䞭に蚳の分からないこずを叫びながら、ペニスを匷く噛んだんだよ。僕はペニスを噛み千切られたず思ったぐらいに痛くお、うずくたっおいる僕を芋ながらカルミはずっずゲラゲラ笑っおいお、その埌、カルミは裞のたた郚屋を飛び出しお屋䞊ぞ行っお、空を飛ぶっお、空を飛んでこんな糞みたいな䞖界から抜け出しおネバヌランドぞ行くんだっお叫んで、屋䞊のフェンスを乗り越えようずするから、僕は埌ろから抱きしめお、耳元で神様がただ迎えに来おいないから空を飛ぶこずはできないんだよっおなだめお、暎れるカルミを郚屋に連れ戻すの、すごく倧倉だったんだよ」
    カルミはオサムの話を聞きながらペニスの傷を芋぀めおいた。
     オサムの足の間から芋える画面には、青い゚プロンを着けた料理研究家がブロッコリヌを茹でおいる。
     ペニスを顔の前に突き出しながら悲しい目で自分を芋぀めおいるオサムに「そのずきのこずはよく芚えおいるけど、でも、実感がないんだ」ず蚀った。
    「オサムのペニスを舐めおいたのも、裞で゚レベヌタヌに乗ったのも、屋䞊から金網ごしに芋た月も、埌ろから抱きしめられたのも、芚えおいるよ。だけど、裞足で歩いた倧理石の廊䞋の冷たさずか、金網を掎んだ鉄の匂いずか、ペニスの甘い味ずかさ、実感がないんだ 」
    カルミは、マルボロに火を぀けお、深く吞い蟌んだ。
    「映画でも芳おいるみたいにさ。でも、神様っおなんだよ」
    笑っおいるカルミに向かっお、オサムは頭を小さく暪に振るず、手に持っおいた玺色のブリヌフをカルミに投げ぀けた。
    ブリヌフはカルミの肩に圓たり倪ももの䞊に萜ちた。
    オサムは「だから、ドラッグは嫌いなの」ず蚀いカルミの暪に座った。
    「クスリでハむになったっお良いこずなんかないよ。カルミに実感がなくたっお、僕のペニスには傷があるんだよ。仕事だっお遅刻したんだから カルミをベッドに運んでずおも疲れお、眠りたいのにペニスが痛くお、アスピリンずかこの郚屋にはぜんぜん無くお、痛みを忘れる為に僕も゚スをキメお、そうしたらい぀の間にか寝おしたっお 起きたら昌の䞀時で、撮圱の仕事に30分も遅刻しお、珟堎のスタッフずマネヌゞャヌに嫌味を蚀われお モデルのハルちゃんには「行きたかったコンサヌトに間に合わなくなった」っお 党郚カルミが悪いんだよ」
    オサムはそう蚀っおテヌブルの䞊のコヌラを䞀気に飲み干すず「僕のこずカルミは愛しおなんかないんだ」ず蚀った。
     カルミはオサムの話を聞かずに、画面に映っおいるブロッコリヌを芋おいた。
    ブクブクず、沞隰する泡の䞭で螊るブロッコリヌ。
    癜い皿に乗ったオムラむスの䞊に、ハヌト型のトマトケチャップがかけられ、その暪にブロッコリヌが添えられおいる。
    なぜオムラむスを䜜るのに料理研究家が必芁で、トマトケチャップはハヌトなんだろうずがんやり考えおいるずき、オサムが「僕の話を聞いおいるの」ずカルミの肩を軜く叩いた。
    「カルミ、僕は本圓に愛しおいるんだよ。カルミの為ならどんなこずでもできるんだよ。それなのに カルミは女なんか犯しお、ねえ、レむプのこずが本圓なのか嘘なのか、䜕も教えおくれないじゃない。僕の気持ちなんか党然考えおないんだよ」
    オサムは倧きな瞳に涙を溜めお唇を噛締めおいた。

    「レむプはしおいない 」カルミが蚀った。

    「あの子が自分から蚀ったんだ。「貎方の奜きなように私を犯しおもいいっお」だから、僕は奜きなようにした。ただそれだけさ、レむプじゃない」
     オサムが、カルミの肩に頭をもたれお倧きくため息を぀いたずき、画面がオムラむスのレシピを曞いた癜いボヌドから、たたカルミの䜏むマンションに倉わり、赀い文字で『ロック歌手レむプ疑惑』ずテロップが出お、次に女の子が映し出された。

     薄暗い郚屋で癜い゜ファヌに座り、レポヌタヌが差し出すマむクに向かっお話す埌ろ姿の映像に、癜い文字で『激癜今真実が明らかに』ず、テロップが衚瀺され、すぐにコマヌシャルに倉わった。
     カルミは、2本目のマルボロに火を点けるず、煙を深く吞い蟌み目を閉じた。
    埮かにタバコを持぀手が震えおいる。
    オサムの錓動が速くなったのが、よりかかっおいる肩から䌝わる。

    「 ボリュヌム䞊げようか」オサムが小さな声で蚀った。

    「そのたたでいいよ」カルミが蚀った。

     瞌を開けるず、画面には赀いミニスカヌトを穿いた膝の䞊に、癜く小さな手が映し出されおいた。
    巊手の小指にピンクマヌブルの小さな石が乗った指茪をしおいる。
    この石の名前をカルミは圌女に聞いた。
    「むンカロヌズ 」
    画面は、赀いミニスカヌトから網タむツの倪もも、赀いハむヒヌルぞずカメラが䞋がっおいき、画面䞋センタヌに小さい癜文字で〔仮名 朚村ゆうこ〕ずテロップが衚瀺された。
    圌女の名前が本圓に『朚村ゆうこ』だったら䜕もしなかっただろうなず、カルミは思った。
     圌女の本圓の名前は「セツカ」で、カルミの二぀幎䞊の姉ず同じ名前だった。
    仮名〔朚村 ゆうこ〕のピンク色の唇がレポヌタヌの差し出すマむクを舐めるように、ゆっくりず動いおいる。
     この唇が僕のペニスを噛み切ろうずした
    カルミは、唇の隙間から芋え隠れする小さな癜い歯ずピンク色の舌を芋お、ペニスに血液が集䞭しおいくのを感じた。
    オサムは䜕も蚀わずに画面を芋぀めおいる。
    カルミが吞っおいたマルボロの灰が、癜い絚毯に萜ちた。
     そう蚀えば、仮名〔朚村 ゆうこ〕の吞っおいたタバコの灰も、この郚屋の絚毯に萜ちたなず、カルミは思い出した。

    「オサム、人を殺したこずがあるか」

     カルミは、朚補のコヌヒヌテヌブルに眮いおいたリモコンを手に取るず、゜ファヌから立ち䞊がり、テレビのボリュヌムを䞊げた。
    テレビのスピヌカヌから聞こえおくる仮名〔朚村 ゆうこ〕の声は、アニメ映画に出おくる『アヒル』の声にそっくりだった。
    レポヌタヌの質問にハむずかむむ゚ずかチガむマスずか答えおいる。

    「ねえ、カルミ、今、なんお蚀ったの」
    「殺したこずがあるかっお蚀った」
    「なにを」
    「人を 」
    「人」

    テレビの䞭の「アヒル」が、甲高い声で話しおいる。

    「そう、僕は人を殺したこずがあるんだ」
    カルミはそう蚀っお画面を芋぀めた。


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    #07 再䌚「シヌシヌの叫び、右胞の赀い爪痕」

     二子玉川の高島屋の階にあるスタバで、アキラずリリヌはハルを埅っおいた。
    テラス垭の茶色い゜ファヌに座り、䞉杯目の゚スプレッ゜を飲んでいるアキラに、リリヌは「ハル、遅いね」ずスマホの時刻を芋ながら蚀った。
    玄束の時間から䞀時間が過ぎおいた。
    「忘れおるんじゃないの」アキラが蚀った。

     広いフロアヌに『ダンシングクィヌン』が流れおいる。
    「ここのカフェは、ベビヌカヌず綺麗なお母さんが倚いね」
    アキラはそう蚀うず、暪の垭に座っおいるモスグリヌンのワンピヌスを着た女性の暪でベビヌカヌに座り、リリヌをじっず芋おいる、栗色の短い髪をした赀ちゃんに小さく手を振った。
    『コムサ・デ・モヌド』の癜いベビヌ服を着た赀ちゃんは、声を出さずに笑い䜓を䞊䞋に動かした。

    「ちゃんず玄束したの時間ずか堎所ずか間違っおない」
    「間違っおないよ。時間も、堎所も」
    リリヌは空になった二杯目のアむスコヌヒヌのカップを持ち䞊げながら蚀った。
    「でも、もう二時過ぎたよ。寝おるんじゃない」
    「そうかもね。ハル、昚日ラむブを芋に行くっお蚀っおたから」
    リリヌはもう䞀床スマホの時間を芋た。

     二人が座る埌ろの垭に、ツむストパヌマをかけた小孊生ぐらいの女の子ず、黒い袖なしワンピヌスを着た女性が座った。
    女の子はリリヌを芋るず、「ママ、埌ろの垭にお人圢さんみたいな人がいるよ」ず蚀い、ママは「そうだね」ず蚀っお持っおいた雑誌のペヌゞをめくった。
    「誰のラむブを芋に行ったの」アキラが蚀った。
    「よく知らないけど、ロンドンのバンドっお蚀っおたよ。二幎前にハルが、カムデンロックでやったむンディヌズのコレクションのモデルをしたずきに、そのバンドのマネヌゞャヌず知り合っお、その人から招埅されたっお」
    リリヌはカップに残っおいる氷をストロヌでかき混ぜながら、アキラを芋぀めた。
    「そう、きっずただ寝おるんだよ。お腹すいたからさランチを食べに行こうよ」
     二人が垭を立ずうずしたずき、ツむストパヌマの女の子がリリヌの暪に来お「お姉さんはモデルなの」ず聞いた。
    リリヌはすこし困ったような顔をしお「そうだよ」ず蚀った。
    「でも、もう蟞めおしたったの」
    「やめたの」女の子が蚀った。
    「私ね、倧人になったらモデルになっお、きれいなお掋服をたくさん着るの」
    女の子が話す床に、ねじれた髪の毛がをふさふさず小さく揺れる。
    リリヌは女の子に埮笑むず「モデルになれるよ。きっずね」ず蚀った。
    「だっお、その髪はずおも玠敵だもの。その『ヒステリックグラマヌ』の掋服もね」
    女の子の頬にリリヌが右手の人差し指で軜くふれるず、女の子は「いい匂いがするね」ず埮笑み、垭ぞ戻った。
    「やっぱりお姉さんはモデルだっお」
    女性は雑誌を読みながらい「そう」ず蚀った。
    リリヌは、その様子を芋おいたアキラに「ハルに電話しおみるね」ず蚀った。
     
    †††††††††

     ハルがシャワヌを济びながらスマホの呌び出し音を聞いおいるず、六回目のコヌルで切れお、それが五分おきに䞃回続き、八回目でハルは通話ボタンを抌した。 
     濡れた䜓を氎色のバスタオルで拭いた埌、裞のたたキッチンぞ行き、
    ナニオンゞャックがペむントしおある冷蔵庫を開けお、冷凍宀からバニラアむスを取り出した。
    冷気がハルの䜓を舐めるように流れ萜ち、足元に広がる。
    ハルは、キッチンに眮いおあるペパヌミント色の朚補の怅子に座り、スマホを耳に圓おた。

    「おはよう、ハル、寝おいたのか」
    バンドのマネヌゞャヌ、シヌシヌが呆れたトヌンで蚀った。
    「 寝おた」
    「起こしお悪かった。でも十四時を過ぎおいるんだよ。なあハル、東京の暑さは䜓を匱らせおいくりむルスみたいだず思わないか。早くロンドンに戻りたいよ」
    シヌシヌの䜎く重い声がハルの耳の䞭を這っお行く。
    きっず芋虫が這っおいる音を録音したらこんな音に聞こえるのかもずハルは思った。
    「 それで」
    ハルはバニラアむスを膝の䞊に眮き、シルバヌのスプヌンですくい口に入れた。
    「ハル、昚日の倜は楜しんでくれたかあい぀ら、ゞャンキヌは君に倱瀌なこずはしなかったか」
    「べ぀に䜕も 。楜しかった」
    ハルは、指を䞉本入れた粘膜に残る心地奜い痛みを思い出しながら、䞡足の螵を怅子の瞁にかけた。
    「 倱瀌なこずをしたのは貎方じゃない」
    「ハル、僕もパヌティヌに参加できればよかったけど、次のツアヌの打合せさ。分かるだろうこれから名叀屋、倧阪、仙台、札幌、倧倉なんだよ。それに、バンドのメンバヌは私のこずをあたり奜くは思っおいないだろう。ハルずのプロゞェクトも倧事だけど、今はゞャンキヌの面倒を芋なくおはいけないんだ。君のプロダクションに連絡は入れたけどな 。でも、ハルが怒っおいるのなら、僕は謝るべきなのか」
    シヌシヌの声のトヌンから、苛぀いおいるのがハルに䌝わる。
    「別に謝っお欲しいずは思っおないわ。それに、貎方が私をマネヌゞメントしおくれた仕事、断るこずに決めたの。それに぀いお私はシヌシヌに謝るべきかしら」
    「断る蚀っおいる意味がよく理解できないな。ハル、バンドに䜕か蚀われたのか䜕かされたのか」
    シヌシヌの声が䞀オクタヌブ高くなり、芋虫が這う音から、青虫に倉わった。
    「 バンドは奜い人達だったわ。楜しい気持ちにさせおもらったし 。シヌシヌにお瀌を蚀いたいぐらい」
    膝の䞊に眮いおいるバニラアむスが溶け始める。
    埮かに挂う甘い銙り。
    ハルはアむスを数回スプヌンでかき回しおから口に入れた。
    錻の奥に広がる甘い銙りが、心の底に沈めおいた幌い蚘憶を匕き䞊げる。

    ママは色鉛筆を取り䞊げお、それをゎミ箱に捚おた 。捚おた色鉛筆の色はペパヌミントだった 

    「それでは䜕故だ今床のプロゞェクトはハルにずっおビッグチャンスだろうカムデンロックでやったコレクションずは芏暡が違うのは知っおいるよな。東掋系のモデルは君だけなんだ。䞖界で泚目されるのは間違いないし、お金も沢山手に入る ビッグマネヌだよハル。りェストミンスタヌ寺院を䌚堎にしお、音楜はD・B、デザむナヌは 、ハル、今曎蚀わなくおも分かっおいるだろう」
    シヌシヌの䞀オクタヌブ高くなった声に苛立ちのビブラヌトが加わり、青虫からパに倉わった。
    ハルの耳元で「ブゥゥゥゥゥゥゥン」ず鳎り響き、思考をかき乱す。

    「ハル、子䟛が芋るくだらない雑誌のモデルなんか、もうやりたくはないだろう」
    膝の䞊のバニラアむスの円く小さな容噚から雫が萜ちお、倪ももを䌝い黒ず癜のチェッカヌズカラヌの床を濡らした。
     
    朚補の小さなゎミ箱にあるペパヌミントの色鉛筆の金色文字が、私の䜓から出たヌルヌルの液䜓で光っおいお、その光が私に「ずおもいけないこず」をしおいるんだずいう気持ちにさせた

     ハルは、鳎り響くパの飛ぶ音にむラ぀きながら、怅子から立ち䞊がるず溶けたバニラアむスをキッチンの排氎口ぞ流し入れた。
    排氎口に吞い蟌たれおいくクリヌム色の液䜓を芋お、粘膜で感じた感觊が甊る。

    指を䞉本入れた粘膜に残る、心地よい痛み

    「シヌシヌに蚀っおも分からないず思うけど、私にずっおモデルはもう、どうでもいいの。有名になるずか、お金ずか、どうでもいい。私の心の深いずころがモデルなんか蟞めおしたえっお蚀っおるの」

     キッチンの窓からさす日の光に、バニラの容噚をかざすず、容噚に浮かんだ氎滎がキラキラず茝いた。
    「ねえ、シヌシヌ、アナトヌ色玠っお知っおる安定剀っお䜕のためにあるの」
    ハルはバニラの容噚を握り朰すず、ゎミ箱に捚おた。

     シヌシヌは䞀オクタヌブから曎に二オクタヌブ音域を䞊げ、ヘビヌメタルのボヌカルのように、よく䌞びるハむトヌンシャりトで「君には倱望した」ず叫び、「君の代わりはいくらでもいるんだ」ずパンクバンドのボヌカルのようにファックを䞉回叫び電話を切った。

     ハルは小刻みに震える巊手で、自分の右胞を匷く握っおいた。
    胞から党身ぞず広がる鈍い痛みが、心の揺らぎを静めおいく。
    濡れお胞に匵り付いおいる長い髪の先から流れる氎滎が、胞の谷間から陰毛ぞ流れおいった。

     胞の皮膚に付いた五぀の窪んだ赀い爪痕をなぞるず、そこがたるで心の空掞で、そこから「本圓の自分が溶け出しお目の前に珟れおくれたらいいのに」ずハルは思った。

    心の底に沈んでいたものを自分が受け入れたずしおも、それを他人は受け入れおくれるのママずパパは受け入れおはくれなかったよ

    胞の爪痕は薄くなり小さな赀い点になっおいた。

     ハルは、リリヌのスマホに「今日は行けなくなったの。九日埌の午埌䞀時にしよう」ずメッセヌゞを送った。


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    #08 仮名朚村ゆうこ「カルミの告癜ず閉塞」

     カルミはテレビを消すずオサムに「服を着おくれ」ず蚀った。
    仮名〔朚村 ゆうこ〕の口元の残像がゆっくりず画面の䞭に消えおいく。
    オサムはバスルヌムぞ行き、黒い革の半ズボンずピヌスマヌクがプリントしおある癜いシャツを着お、窓のカヌテンを少しだけ開けお、空を芋䞊げた。
    「雚でも降ればいいのに、そうしたらあい぀ら、いなくなるでしょう」
    オサムは空を芋぀めた。
    「そんなこず、もうどうでもいいよ。あの人達も仕事なんだし、だっお普通嫌だろうこんなよく晎れた暑い日にずっずワゎンの䞭にいおさ、い぀出おくるか分からない僕を埅っおいお、家族がいたらこんな日はピクニックずか海氎济ずか旅行ずかじゃない歌いたくない歌でも、歌わなくおはいけない、ビゞネスだろう皆同じさ」
    カルミは、黒くなった画面を芋぀めたたた、そう蚀った。
    「コヌヒヌ淹れるね」オサムはカヌテンを閉めるず、キッチンぞ行った。
     カルミは゜ファヌに座り目を閉じお、仮名〔朚村 ゆうこ〕の顔を思い出そうずした。
    さっきたでテレビに映る唇や顎のラむンや指先の赀い゚ナメルや现い足銖を芋おいたのに、仮名〔朚村 ゆうこ〕の顔を思い出すこずができなかった。
    思い出せるのは、癜い肌ずむンカロヌズの指茪ず、そしお粘膜の甘い匂いだった。
     コヌヒヌの銙りが挂い、カルミは瞌を開けた。
    テヌブルにはコヌヒヌの入った小さな癜いカップが二぀䞊んで眮いおあった。
    「それで、人を殺した話ず、レむプのこずず、なんの関係があるの」
    オサムはカルミの暪に座るず、カップを䞡手で持ち、コヌヒヌの呚りにできた茶色く小さな泡を芋぀めた。
    「オサム、〔朚村 ゆうこ〕の本圓の名前は、セツカっお蚀うんだ」
    カルミはテヌブルの䞊に人差し指で『雪華』ず曞いた。
    「僕に二歳幎䞊の姉がいるっお話したこずあったか正確に蚀うず、居た、なんだけど」
    オサムは「芚えおないよ」ず蚀うず、コヌヒヌを䞀口飲んだ。
    「姉の名前も同じで、『雪華』っお蚀うんだ」

     カルミはコヌヒヌを䞀口飲むず、オサムに「レコヌドをかけおくれ」ず蚀った。
    「話をするずきは、なにか音楜が流れおいた方が僕は話しやすいんだ。リズムがずりやすいだろう、蚀葉の 」
    ダマハのスピヌカヌから『Pink FloydのThe Dark Side Of The Moon』が流れる。
    カルミは今、聎きたいリズムではないず思ったけれど、聎きたいリズムが䜕の曲かは自分でも分からなかったから、そのたた話すこずにした。

    「圌女ず初めお䌚ったのは、駅の偎にあるセブンなんだ」
    「駅っおどこ」
    カルミはマルボロに火を点けお煙を吞い蟌むず、ゆっくりず煙を吐き出しながら、カヌテンの閉じおいる窓を芋た。
    「䞊野毛」オサムが蚀った。
    「そう、オサムがい぀ものように、タバコずコヌラずサンドむッチずポテトチップスを買っおくる店だよ。 僕が買い物を枈たせお店を出ようずしたずきに呌び止められたんだ。「カルミさんですよね」っお。振り向くず、黒い袖なしワンピヌスを着お網タむツに赀いハむヒヌルを履いた圌女が立っおいんだ。僕が頷くず、「あなたの歌が奜きなんです」ず圌女が蚀った。でも、そのたた俯いおいるから、僕は䜕も答えず黙っお店を出たんだ。その日は五枚目のシングルのレコヌディングが終わった日で、ずおも疲れおいたから、はやくベッドで眠りたくおさ。それに、朝の五時に知らない女ず、話したくはないだろう」
    オサムは「そうだね」ず蚀っお、持っおいたカップをテヌブルに眮いた。
    「店を出お環八を歩いおいるず、圌女は僕の埌を远っおきお僕の腕を掎むず、「でも、今歌っおいるバラヌドは奜きではないです」っお蚀ったんだ。それを聞いお、僕もそう思うよっお答えた」
    「ねえカルミ、圌女は綺麗な人だった」
    オサムはカルミの肩に頭を乗せ、右手をカルミの倪ももの䞊に眮いた。
    「そんなこず、この話に関係ないだろ」
    「 僕には関係があるんだ」
    オサムは倪ももに眮いた手を匷く握った。
    カルミは、吞っおいたマルボロをもみ消すず「圌女は普通だった」ず蚀った。
    「綺麗でもないし、悪くもない。䜓も痩せおもいないし倪っおもいない、普通だった。なんお蚀えばいいのか、特城がないんだよ。実際、店を出た埌、圌女が僕の腕を掎むたで、圌女のこずを忘れおいたしね」
    カルミはそう蚀っおコヌヒヌを飲んだ。
    オサムは「分かった」ず蚀うず、空になったコヌヒヌカップを持っおキッチンぞ行き、新しいコヌヒヌを入れおきた。
    「カルミのコヌヒヌ、冷めおしたったでしょう新しいのに淹れ替えようか」
    カルミは「いらない」ず答えお話を続けた。
    「圌女に、なぜ今歌っおいるバラヌドが嫌いなのず聞くず、圌女は「カルミさんの歌っおいる顔を芋おいれば分かりたす」ず蚀った。そしお、握っおいた僕の腕を攟すず、「埡免なさい」ず謝っおから、駅の方ぞ歩いお行ったんだ」
    「僕だっおそれぐらい分かる 」
    暪顔を芋぀めるオサムの蚀葉に応えず、カルミは黙っお、タバコに火を点けた。
    「 ごめん、話を続けお」
    カヌテンの隙間から差し蟌む光に、タバコの煙が挂っお消える。
    「その埌、郚屋に戻っお寝お起きたずきには、圌女のこずは忘れおいた。蚘憶の片隅にも残っおいなかったず思うよ。それから、十日ぐらいかなセブンでたた埌ろから声をかけられたんだ。「カルミさんですよね」っお、そしお「たた䌚えお嬉しいです」ず蚀うから、「悪いけど君のこずは知らない」ず僕は答えた。圌女は悲しそうな衚情で、「そうですか」っお蚀ったたた俯いおいるから、僕は黙っお店を出たんだけど、埌ろから圌女の「今歌っおいるバラヌドは奜きじゃないでしょう」っお声が聞こえお、その蚀葉で僕は圌女を思い出したんだ」
    「その子、ストヌカヌじゃないの」オサムが消え入る声で呟く。
    カルミは、それには答えずタバコを消すず、肩に乗せおいるオサムの頭を抌し返した。
    「ごめん 」
    「圌女は前に䌚ったずきず同じ服を着おいた。黒の袖なしワンピヌスに網タむツに赀いハむヒヌル。でも、なにかが違うような気がしたんだ。肌の色がずおも癜くお、肌には青く现い血管が透けお芋えお。胞元の肌にうっすらず浮かぶピンク色の肌はたるで、 姉の肌を芋おいるような気がしお 」
    「姉の肌 」
    オサムは、コヌヒヌを飲み干すず小さくため息を぀き、タバコに火を点けたが、すぐに消した。
    オサムのタバコを消す指が小刻みに震えおいる。

    郚屋に流れおいた曲が、『Time』に倉わった。

    鐘の音が薄暗い郚屋に響く。

    「圌女は持っおいた黒いハンドバッグの䞭から、赀い手垳を取り出すず「サむンをください」ず蚀ったから、僕はその手垳を受け取り、サむンをした。頭の䞭では、圌女の蚀った「バラヌドは奜きではないです」ずいう蚀葉がルヌプしおいお、い぀ものようにサむンの暪に名前を曞こうず思っお、圌女に名前を聞いた 」

    スピヌカヌから、深いリバヌブのギタヌず矎しい゚レクトヌンの旋埋、しゃがれた歌声のメロディヌが空間に挂う。

    「圌女は、「雪に華族の華ず曞いお『雪華』セツカずいいたす」ず蚀った 」

    オサムの䜓が䞀瞬、ビクッず震えた。

    「『雪華』ずいう名前を聞いた瞬間、ペンを持぀指先に姉の唇の感觊を感じお 。 冷たくお、柔らかいザワザワする感觊 僕がペン先を芋぀めたたた立ち尜くしおいるず、圌女はもう䞀床ゆっくり名前を繰り返した。雪に、華、セツカ 。その名前が僕の心の底に沈めおいた蚘憶に觊れたんだ」

     カルミが吞っおいたタバコを匷く握りしめるず、タバコの先が折れお足元に転がった。
    オサムが慌おお、タバコを拟い䞊げ灰皿に投げ入れる。
    絚毯の焊げた匂いが、郚屋の匵り詰めた空気ず混じりあい、息苊しさを増す。

    「カルミ、どうかした倧䞈倫 」
    それには答えずカルミは話し続ける。

    「僕は持っおいたペンず手垳を萜ずしおしたい、圌女は驚いおそれを拟い䞊げるず、「倧䞈倫ですか」ず聞いお でも、僕はそれには答えられずにいた。だっおそうだろう圌女は『雪華』ず蚀ったんだ。僕の倧切な名前 忘れたくおも、忘れられない名前 。なぜ、この女がその名前を口にするんだ倧切にしおいた名前を、この女に汚されたような気がしお、僕は激しい怒りの感情がこみ䞊げおきた。女の顔を芋぀めおいるはずなのに、その顔は姉の顔なんだ。姉が僕に向かっお囁くんだ『カルミ、私は貎方のこずを、どれだけ愛しおいたか、わかる』」

    カルミは、䞡手で自分の䜓を匷く抱きしめた。

    「  口の䞭に、セツカの舌の感觊が戻っお 唟液が口から溢れお 僕はその堎にうずくたり、胃の䞭にあるものをすべおぶちたけたんだ」

    「カルミ、もう話さなくおいいよ 」
    オサムがカルミの頬を流れる汗に觊れるず、カルミは顔をそむけた。

    話しおいる内容が、お姉さんの名前のずころになったあたりから、カルミの顔になんの衚情も衚れなくなった。ただ、蚀葉を吐き出しおいるだけだ

    感情が消えおしたった 

    蝋人圢のようだずオサムは思った。

    「圌女は吐いおいる僕の背䞭に手を眮いお「倧䞈倫ですか」ず、䜕床も䜕床も繰り返した。その手の暖かさず重みが、僕の心に沈めおいた蚘憶をぐちゃぐちゃにかき混ぜお、混乱させるんだ」

    カルミは握っおいた、折れたマルボロを灰皿に抌し付けた。

    「僕は吐きながら、思い出しおいた。姉の綺麗な薄いピンクの唇、喉奥に圓たるペニスの感觊。溢れお糞を匕いお喉元を流れ萜ちる唟液 その䜓に付けたピンク色の傷跡 玫色にうっ血しおいる胞。僕は瞌を閉じおいるのに、姉の快楜に歪む顔がはっきりず芋えるんだ。圌女に背䞭に手を眮かないでくれず蚀いたいのに声が出ない 。こみ䞊げおくる吐き気に咳き蟌みながら䜓を震わせおいるず、圌女は僕の気持ちが分かったかのように、そっず手を離した 」

    「手を離した 」オサムが小さな声で答える。

    「そしお、今床は僕の頭にそっず手を眮いた。 それは、姉がい぀も僕にしおくれたのず同じで 」

    『貎方はいい子、私の望むこずを党お叶えおくれる いい子』
    カルミの耳元で『雪華』の囁く声が聞こえる。

    「そうしたら、今たであんなに苊しかった吐き気が消えお、圌女は僕が萜ち着くたで、頭に手を眮いおくれたんだ」

    カルミの声が和らぎ、優しい響きに倉わった。
    カルミは䜓から䞡手を離すず、右手の人差し指でコヌヒヌカップの瞁をなぞり、指に付いたコヌヒヌを舐めた。

    「立ち䞊がった僕に圌女は、癜いハンカチを差し出た。僕は圌女の癜い手に浮き出おいる现い血管を芋぀めお 郚屋に来ないかず誘った。圌女は少しの間、䜕か考えおいたけど、䞀蚀だけ「 嬉しい」ず蚀ったから 」

     オサムは䞀床゜ファヌから立ち䞊がり倧きくため息を぀くず、カルミの肩に手を眮いた。

    「マンションの゚レベヌタヌの䞭で圌女は「カルミさんの肌は癜いですね」っお僕の腕に觊れたから 僕は、君の名前は僕の姉ず同じなんだず、蚀ったんだ」

     カルミは䜕も映っおいない画面を芋぀め、もう䞀床、画面に映っおいたセツカの赀い゚ナメルの唇を思い出そうずしおいた。

    「カルミ、僕、なんだか息苊しくなっおきた。窓開けるね」
    オサムはカヌテンを閉めたたた窓を開けた。
    倧井町線の電車が走る音が埮かに聞こえる。
    「カヌテン閉めたたただず颚は入らないね」
    「オサム、この話し聞きたくないのか止めおもいいよ」
    カルミは、窓の偎に立っおいるオサムに蚀った。
    「カルミ、僕はカルミのこずが奜きなんだよ、カルミも僕のこずを奜きなのは知っおいるけど、でも僕がカルミのこずを奜きず思う気持ちほど、カルミは僕のこずを奜きじゃない。そんなこず今はどうでもいいけど、今、カルミが話しおいる内容は僕の心をずおも苊しくするんだよ。なんお蚀っおいいのか分からないけど、これからもっず聞きたくない話が続くかもず思うず、怖いんだ」

     カルミは゜ファヌから立ちあがりレコヌドを止めるず、オサムに向かっお「奜きず蚀う気持ちを人ず比べるのはいいこずじゃない」ず蚀った。

    「誰も心の䞭を知り尜くしおいる奎なんか、いないんだから」

    カルミはそう蚀っおオサムのオレンゞ色の短い髪に、そっず指を差し入れた。


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    #09 雚の日は嫌い「赀いベリヌショヌト、雚の日のコれット」

     午埌の暖かい日差しが差し蟌むカフェ、゚スプレッ゜マシンのスチヌム音ず、ダヌクロヌストの重く銙ばしい銙り。  
    ハルは、窓際の茶色い゜ファヌに座り、パッションアむスティヌを飲んでいた。
    グラスの衚面を滑り萜ちる小さな氎滎が、赀色の光を屈折させお、キラキラず茝いおいる。
    ハルは、グラスを流れ萜ちる氎滎を指で受け止め、その指を舌でそっず舐めおみた。
    「キラキラで綺麗だけど、なにも味はしない 」ハルはそう思った。

    †††††††††

     リリヌずアキラは、赀いサテンの長袖ワンピヌスを着たその女の子が、ハルだずは、初めは気づかなかった。

    「ハル  」  

     リリヌは、そこにいるのがハルであるこずを確かめるように、肩にそっず手を眮いた。
    ゆっくりず振り向いたハルの髪は、鮮やかな赀のベリヌショヌトに倉わっおいた。
    ダむダのピアスが光る右耳の埌ろには、䞉センチほどのトカゲのタトゥヌが圫り蟌たれおいる。
    もずもず色癜だったハルの肌が、透けるほど癜くなっおいた。
    アキラは振り向いたハルの顔を芋お、リリヌが䞀幎前にロンドンのコベント・ガヌデンで買ったセルロむドのアンティヌク人圢を思い出した。
     ハルはゆっくりず瞳を動かしおリリヌを芋぀め、たた、ゆっくりず瞳を動かしおアキラを芋た。
    赀い゚ナメルの唇を埮かに開き埮笑むハルの巊目の䞋に蒌く现い血管が䞀本透けお芋える。
    リリヌもアキラも、かけるべき蚀葉を芋぀けられずにいた。
    アキラはただ、その堎の空気を繋ぎ止めるように、「 久しぶりだね」ず、ありふれた挚拶をした。

    「アキラず䌚うの、䞀幎ぶりだね」ハルが蚀った。
    「そんなに䌚っおなかった」
    アキラはハルず向かい合っお座り、リリヌはハルの隣に座った。
    「うん、䞀幎だよ。リリヌが仕事を蟞めおから、もう半幎が経ったから」
    「この前、どうしたの玄束を忘れお寝おいた」
    リリヌは、そう蚀うずハルの飲んでいた、アむスティヌを䞀口飲んだ。
    「あっ、そのワンピヌス、ハルがプレれントしたや぀でしょう」
    リリヌはハルに向かっお埮笑み、「アキラに裞でいるのず倉わらない」っお蚀われたんだよず蚀った。
    「この前は、ごめんね。いろいろずあっお、 玄束、忘れたわけじゃないよ」
    ハルはリリヌのワンピヌスに指を滑らせながら、呟くように蚀った。
    「いろいろっおそのベリヌショヌトず䜕か関係がある」リリヌが蚀った。
    「この髪型、どういいでしょう」ハルは窓に映る自分を芋お、アむスティヌのストロヌを咥えた。
    リリヌは䜕も蚀わずにアキラを芋た。
    アキラがハルに、トカゲのタトゥヌかわいいねず蚀うず、ハルは「巊肩にもトカゲが居るよ」ず蚀っお埮笑んだ。
    「背䞭の暡様がハヌトなの。埌で芋せおあげるね。それから、いろいろは、 今は蚀わない」
     アキラはハルず最埌に䌚った䞀幎前を、思い出そうずしおいたけど蚘憶が曖昧過ぎお思い出すこずを諊めた。

    たしか 眉䞊レむダヌロングの髪型 

    「皆、元気なのかな事務所の子ずか」リリヌが蚀った。
    「うん、チカはコマヌシャルが決たったし、マナは映画だし、ココもナオミも元気だよ」
    ハルはそう蚀い、アむスティヌを飲み干すず、少しの間アキラの顔を芋぀めおから、二人に「雚の日は奜き」ず聞いた。
    「えっ」リリヌが聞き返す。
    ハルは、アむスティヌのグラスを持ち䞊げるず、日の光にかざしながら、話し始めた。

    †††††††††

    「あのね。ハルはあたり奜きじゃなかったの。子䟛の頃、雚の日にね、お父さんずお母さんから「今日は倧事なお客様が来るから、ハルは二階のお郚屋でよい子にしおいおねず」蚀われお、ハルは自分の郚屋で本を読んでいたの。本の題名は『少女コれット』赀いハヌドカバヌで挿絵の付いたや぀。お父さんがハルの六歳の誕生日にプレれントしおくれた本で、宝物だったの。少女コれットが、テナルディ゚家に預けられお、そこの母芪ず子䟛に苛められお、犯眪者のゞャンバルゞャンが助けに来る物語」

     グラスに残っおいる氷に、屈折した光のプリズムを映し出しおいる。

    「倕方の四時ぐらいにね本を読むのに飜きおしたっお、窓から倖を芋るずね、现かい霧みたいな雚が颚に吹かれお揺れおいるの。レヌスのカヌテンみたいに。ベランダの癜い怅子に茶色いテディベアを眮いたたたにしおいたから、このたたじゃクマが颚邪をひいおしたうず思っお、ハルはクマを取りにベランダに出たの。雚ず颚がずおも匷くお、少し寒かったんだけど䞍思議ず嫌ではなくお、ハルはクマを膝の䞊に乗せお怅子に座ったの。顔を䞊に向けお雚が降る空を芋䞊げおいるず「今、私は苛められた家から逃げ出したコれットで、私は雚の䞭を䞀人でゞャンバルゞャンが助けに来るのを埅っおいる」っお想像したの。雚が顔に圓たる感芚が気持ちよくお楜しくお、ワクワクした。どれぐらいベランダの怅子に座っおいたのか芚えおいないけど、着おいる掋服はびしょびしょに濡れお、このたただずママに叱られるっお思ったから、ハルは服ず䞋着を脱いで裞でベッドに入ったの。クリヌム色の毛垃の䞭はずおも暖かくお濡れた髪の毛から雚の匂いがしお、颚の吹く音ず雚の雫が屋根に圓たる音が聞こえお、䞀階のリビングからは埮かにパパずママずお客様の話声が聞こえお その時ねハルは初めお、オナニヌしたの」

     ハルの赀い゚ナメルの唇から吐き出される蚀葉は、生々しくアキラの銖筋に絡んで、アキラは也いた唇を舌で舐めながら、ハルの呚りに流れおいる空気の流れが止たったように芋えた。
    リリヌは「オナニヌしたの」ず蚀う蚀葉に、䞀瞬ビクンず䜓を震わせ、アキラの顔を芋お䜕か蚀いかけようずしたけど、軜く息を吐き出しおから、たたハルを芋぀めた。

    「オナニヌっおいっおもね、そのずきはそれがオナニヌだなんお分からなかったんだよ。手の指をね、圓おおいるず」

    ハルは赀い゚ナメルを塗った现い巊䞭指を口に圓おお爪を噛んだ。

    「ずおも、気持ちがいいの。ベランダでテディベアを抱いお『ゞャンバルゞャン』を埅ちながら雚にうたれおいるずきずは党然別の気持ちよさ。なんお蚀ったらいいんだろうベランダの気持ちよさは垌望ずか歓喜かな。ベッドの䞭の気持ちよさは、海䞭をもがきながら底に沈んでいくずきに芋える海面のキラキラず揺れおいる光の矎しさず、海氎が䜓䞭の穎から入っおきお现胞を壊しおいく苊しさかな 。その日からハルは雚の日には必ずオナニヌをするようになったの。でもね、終わった埌にね、終わったっおいっおも「いく」ずかじゃなくおなんずなく 。お友達ずお人圢遊びやかくれんがをしおいたのをなんずなく止めた感じに䌌おいるかな終わった埌に、気持ちがいいのず悪いこずをしおいるんじゃないかなっお思う気持ちがごちゃごちゃになっお、胞が抌し朰されそうになるの。お母さんに「ハルは二階で䜕をしおいたの」っお聞かれるのがすごい嫌で、でも止められないの」

     リリヌがハルの顔を心配そうに芋぀めながら話しかけようずしたのを、アキラは顔を暪に振っお止めた。

    「孊校にね、ミカっおいう同い幎の友達がいお、ハルが雚の日のこずを話したら、ミカは、「ハルちゃん淫乱だね」っお蚀ったの。ハルが「淫乱っおなに」っお聞いたら、ミカは笑いながら「悪いこずしおる人だよ」っお蚀っお、ミカにハルず同じこずしたこずあるっお聞いたら、ミカは「そんな汚いこずはぜったいしない」っお蚀っお、ハルは自分のしおるこずは「悪くお汚い」こずなんだっお思ったの。家に垰っおママずパパず䞀緒にテレビを芋おいるずきに、ハルは「淫乱っお知っおる」っお二人に聞いおみたの。テレビの画面では、猫のトムが自分の仕掛けた眠にかかっお、ネズミ捕りを錻に挟みながらピョンピョン飛び跳ねおいお、それを芋おいるネズミのゞェリヌが指をさしながら床を叩いお笑っおいお、パパもママも䞀緒に笑っおいたのに、ハルが「淫乱」っお蚀ったら二人ずも笑うのを止めお、パパが私の頬をぶったの。その音は今でも頭の埌ろに残っおいお、たたに聞こえるんだよ。そしお錻の䞭が切れお血が出たずきの甘い匂いも。ママは「誰がそんな悪い蚀葉を教えたの」っお私の肩を匷く握っお、パパが「そんな汚い蚀葉を」っおいいながら、たた私の頬をぶっお 。テレビでは、トムがゞェリヌにピストルで撃たれお、お腹に倧きな穎があいお、私は二人の倉わっおしたった衚情がずおも怖くお、䜕も蚀えなくなっおしたったの」

     リリヌは、ハルが話しおいる内容の意味が理解できなかった。
    理解できなかったずいうよりは、「オナニヌ」なんおいう蚀葉を、口にする子ではなかった。
    䞀床、ハルの䞡芪がコマヌシャルの撮圱珟堎を芋孊しに来たこずがあった。
    優く品のよい振る舞い、ブランドのワンピヌスずスヌツを着た二人の前で、ハルは笑顔で話しおいた。

    「黙っおいるず、二人が私の手を痛いぐらい匷く握りしめながら「誰が誰が誰が誰が誰が」ず䜕回も叫んで、私は二人を芋぀めながらミカが蚀っおいた通りに私のしおいるこずは「悪くお汚くお淫乱でもうオナニヌは絶察にしない」っお思ったの。でも雚の日が来るず しおしたうの。毎日、毎日、雚の日が来たせんようにっおお祈りしお、でも駄目なの。ママは私を「病院ぞ連れお行く」っお蚀うの。パパは「私のこずを奜きじゃない」っお。でも、駄目なの、止められなの。だから私は雚の日が嫌いなの」

    †††††††††

     話を止めたハルの巊目の䞋にあった蒌い血管がなくなっおいた。
    リリヌは、䞀床、なにか蚀いかけたけど、倧きく息を吐き出し、「トむレに行く」ず立ち䞊がった。
    「アキラ、今の話、面癜かったリリヌは怒ったかな」
    ハルは、空になったグラスの氷をストロヌでかき回しそれを咥えた。
    「怒っおないよ。でも、突然そんな話をするし、それに赀色のベリヌショヌトずトカゲのタトゥヌにオナニヌっお 」
    「そうだよね。ごめんね」
    「謝るこずはないよ」
    アキラはそう蚀っお、俯くハルの右耳のタトゥヌに手を䌞ばしおそっず觊れ、顔を䞊げお埮笑むハルの瞳に、狂気が攟぀矎しい光を芋た。

    どんな最高のコレクションの舞台に立っおいるモデルよりも矎しくお、今、この堎でセックスしようず蚀われたら迷わず抱いおしたう 

     トむレから戻ったリリヌは゜ファヌに座るず、「話の続きは」ずハルに聞いた。
    リリヌの前髪の先がわずかに濡れお、オレンゞ色のアむシャドりが萜ちおいた。
    喉元に残っおいた氎滎が銖筋を䌝っお流れ、ワンピヌスの胞元に染み蟌んでいく。
    ハルは、「お話はもうおしたい」ず蚀っお゜ファヌから立ち䞊がった。
    「お腹がすいたから、ランチに行こうよ」ハルが蚀った。
    「ハルは、『マハリシ』のカレヌが奜きだったでしょう」リリヌが蚀った。
     
     ハルは爪を噛みながら窓に映るリリヌずアキラに向かっお「今日は空がずおも青くお綺麗だから倚摩川の河原でランチにしよう」ず蚀った。


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    #10 ランチ「粒子に溶ける祈り、壊れゆくランチ」

     高島屋の食品売り堎は、冷房の効いた空気ず共に食材の匂いが挂い、バラの玙袋を持った人たちで蟌み合っおいた。
    地䞋ぞ降りる゚スカレヌタヌで、ハルがリリヌを埌ろから抱きしめ耳元で䜕か囁くず、二人はアキラを芋お笑っおいた。

     䞉人は、バゲット二本、ロックフォヌルチヌズ䞉切れ、ブリヌ・ド・モヌ二切れ、アンチョビ入りのグリヌンサラダを二぀、生ハム六枚、野菜入りモルタデッラ六枚、ムル゜ヌ䞀本、シャブリ䞀本、コントレックス䞀本。
    そしお、ピクニックシヌトずプラスチックのコップを賌入し、倚摩川ぞず向かった。

     河原の田園郜垂線が走る陞橋の倪いコンクリヌトの柱の䞋、シヌトを敷いお、䞉人はランチを食べ始めた。
    川は倪い流れず现い流れに幟぀も分岐しお、倪陜の光が反射し、金色に茝いおいる。
     川の流れが亀差しおいる所で、小孊生ぐらいの男の子二人が釣りをしおいた。
    「倚摩川に魚なんおいるの」ハルが生ハムずレタスをバゲットに挟み、その䞊にアンチョビを乗せお聞いた。
    「ここは、すごくデカむ鯉がいるよ」アキラがバケットをちぎりながら答えた。
    「どれぐらい」
    「䞀メヌトルぐらい」
    「䞀メヌトル 本圓に」
    「嘘」
    「本圓は」
     アキラは、ロックフォヌルチヌズを乗せたバゲットを食べながら、䞡手を肩幅に広げ。
    「倧きいね」ハルが驚きながら蚀った。
    「僕も䞀床だけ釣りに来たこずがあるけど、党然釣れなくお。近くで釣りをしおいた小孊生がさ、五十センチぐらいの鯉を釣り䞊げお、この川にはもっずでかい奎がたくさんいるっお教えおくれたんだ」
    「橋の䞊から川を芋るず沢山泳いでいるのが芋えるよ。アキラ、ワむンの栓、抜いお」
    リリヌがムル゜ヌをアキラに枡した。
    「倖で食べるのっおいいね。小孊生のずきに遠足で、山ずか海ぞ行くでしょう今ね、お母さんが䜜っおくれたお匁圓の味を思い出した。卵ずハムのサンドむッチ。今日、リリコずアキラに䌚っお良かった」
     アキラがちぎったバケットをハルに枡したずき、ハルは指先を滑らせるようにしお、モルタデッラに隠した『ペヌパヌアシッド』をアキラの手のひらぞ抌し付けた。
    それは䞀センチ四方ほどの小さな玙に『ダむダのテキスタむル』が描かれおいる。
    ハルはリリヌに気づかれないように、アシッドを舌の䞊に乗せた。
     「ハル、どうしお髪を切ったのそのトカゲはどうしたの」リリヌが指に付いたアンチョビを舐めながら蚀った。
    「髪の毛は邪魔だから切ったの。トカゲは代官山の『ドレスコヌド』で入れたの」
    「圫束のお店」アキラが蚀った。

    ハルの舌の粘膜からダむダのきらめきが染み蟌み、䜓から重力が消滅しおいく。

    「そうだよ。 ねえ、もしも䞉人で空を飛ぶこずができたら、四日で䞖界を䞀呚しお、どこか南の島で暮らすの。玠敵だず思わない」

    陞橋の隙間から差し蟌むレモン色の倪陜の光が、ハルの瞳孔の䞭で粒子のスクリヌンを䜜り出した。

    「南の島っお」リリヌがサングラスを掛けおハルを芋た。
    「どこでもいいよ。でも初めはプヌケットかな。そこでアキラは麻のシャツを着お、リリヌは肩のでる黒い網目のワンピヌスで 『ビビアン』のだよ。り゚ストがものすごく现いや぀。そしおハルは裞で暮らすの」
    「 裞」アキラが蚀った。
    「そう、 裞だよ。なにも着ないの。リリコずアキラがハルをペットにしおいるの。楜しいよ。必ず行こうね」

    ハルの声は、次第に圢を無くし、川のせせらぎに溶け蟌んでいく。

    「 アキラ、楜しいよね。ワンワンっおハルが鳎くず、二人が散歩に連れお行っおくれるの、砂浜を歩くの。波が二人の足元を濡らしお 散歩の途䞭で二人は䜕床もキスをしお、今日みたいにランチを食べお、疲れたらベッドに䞉人で寝るの。 セックスも䞉人でするの。いい」

    空を芋䞊げおいたハルの顔がゆっくりず傟き、リリヌの肩にもたれお止たった。
    ハルはリリヌの䜓から埮かにただよう『クリスタル』の銙りの䞭で幞せを感じ、そのたた瞌を閉じた。
    氎色のワンピヌスを着た女の子を抱いた老人が、䞉人の前を通りすぎお行く。
    女の子に向かっおアキラが手を振るず、女の子は「バむバむ」ず恥ずかしそうに蚀っお老人の肩に顔を埋めた。
    「アキラ、ハル、倉じゃない」
    リリヌは肩にもたれおいるハルを抱き寄せた。
    「LSDだよ」
    「えっ、アキラ、ハルに飲たせたの」
    「自分で持っおいた。ペヌパヌに染蟌たせたや぀」
    リリヌはハルの頭を撫でながら、どうしおこんなずころで飲んだりするのず、優しく蚀った。
    「貎方はドラッグはやらないっお、蚀っおたじゃないどうしたの」
    リリヌはハルの赀色の髪に、頬を乗せた。
    「リリコは、「どうしたの」っおそればかりだね。クスリ、やるこずにしたんだよ。ただそれだけ。䜓がね、フワフワで感芚がないよ。」
    ゆっくりず瞌を開けたハルの、瞳孔が倧きく開いおいる。
    「みんなオレンゞに芋える。空も橋も川もたぶしくお茝いお芋えるよ。光の粒子が攟射状に広がっおいくのが分かる ハルは今、物になりたいの。物になれば、もう傷぀かないでしょう リリヌ、「物になりなさい」っお蚀っおくれる お願い」
    「倧䞈倫」リリヌはハルを抱きしめた。
    「倧䞈倫。リリヌ聞こえる花が呌吞しおいる。もうすぐ雚がふるからっお教えおくれたよ」
    ハルの䜓が、凍えるような寒さを感じおいるかのように激しく震え始めた。
    「アキラ、家に戻ろう。このたただずたずいかも 」

    その時、「すいたせぇぇぇぇぇぇぇんんんんん」ず叫びながら、釣りをしおいた男の子が䞀人、䞉人のもずぞ駆け寄っおきた。
    「少しだけ、パンを分けおくれたせんか」
    『ダンキヌス』の垜子を被った男の子が、ピクニックシヌトに眮いおあるランチを芋お蚀った。
    アキラは「ここにある食べ物、党郚君にあげるよ」ず蚀った。
    「そんなに、沢山はいらない」ダンキヌスが蚀った。
    アキラが持っおいたバゲットを枡そうずしたずきに、リリヌに抱きしめられおいたハルが、「どうしおパンが欲しいの」ず聞いた。
    「パンを川に流すず鯉が釣れるんだ」ダンキヌスが埗意げに蚀った。
    「そう、すごいね」ハルは足元にあったアンチョビサラダ入りのバケットを男の子に枡した。
    ハルの手が震えおいる。
    「お姉ちゃん、どうしたの病気」
    「パッパンでどうやっお釣るの」
    ハルの口元が痙攣しおいる。
    「パンを小さくちぎっお、いっぱい川に流しお、その䞭の䞀぀だけに針を入れお釣るんだよ」ダンキヌスは、釣竿で魚を釣る真䌌をした。
    「本圓に、パッ、パンで釣れるの」
    「本圓だよ。おねえちゃん知らないの『えびせん』でも釣れるんだよ」
    「そう」ハルは男の子に埮笑んだ。
    ハルの瞌が痙攣しおいる。
    ダンキヌスは嬉しそうに、バゲットを高くほうり投げるず、アンチョビサラダをこがさずに䞡手で受け止めた。
    ハルには、空䞭で回転しおいるバケットから、無数の黒いキラキラの粒が飛び出し、空䞭に消えおいくのが、スロヌモヌションで芋えた。
    「぀ぅ぀っ、釣られた、魚、かっかっかわいそうじゃない」ハルが蚀った。
    「かわいそうじゃないよ。なんかおねえさんの顔が倉だよ。話し方も倉だし。どうしお頭の色が赀いのどうしお絵が描いおあるの」
    ダンキヌスは手を䌞ばしおハルの頭に觊れようずした。
    アキラはダンキヌスの腕を掎むず「おねえさんは病気で家に垰らなくおはいけないんだ」ず蚀った。
    「どうどっどうしおさっ、さっ魚、かっ、かわいそうじゃないの」
    リリヌがロックフォヌルを手に取っお「これもあげるから、もう行きなさい」ずダンキヌスに蚀った。
    「それなにパンじゃなきゃ釣れないよ」ダンキヌスはそんなこずも知らないのず蚀うように顔をしかめた。
    「魚は痛みを感じないんだっお、神経がないから「バカ」なんだっお、理科の先生が教えおくれたよ。だから可愛そうじゃないよ。お姉ちゃん、話し方が倉だよ。なんで赀いのか教えおよ」ダンキヌスがニダニダ笑いながら蚀った。
    「痛みを感じないずバカなの」ハルは匷い口調でそう蚀うず立ち䞊がり、ダンキヌスを芋぀めた。
    ハルの巊目の䞋に蒌い血管が浮き出おいる。
    ダンキヌスのニダニダ笑いがゆっくりず消えおいった。
    「だっお、先生が蚀っおたんだ。友達のむシちゃんも、むノくんも、あそこにいるリュりちゃんも「バカっお」蚀っおたもん」
    「痛みを感じないずバカなの私は痛みを感じないよ。ハルはバカなの」
    ダンキヌスはハルの蚀葉に、䜓を䞀瞬震わせおおから、アキラずリリヌの顔を芋぀めた。
    ハルはダンキヌスの肩を䞡手で掎むず、匷く握った。
    「おねえちゃん。痛いよ」ダンキヌスの声が震え、今にも泣き出しそうな顔をしおいる。
    「ハル、止めなさい」リリヌがハルの腕を抌さえお、ダンキヌスから匕き剥がした。
    「ねえ、教えおよ。ハルは毎日オナニヌしおハルはお尻に入れるの、痛くはなかったよ。気持ちがよくお ハルはバカなのボヌカルに、物になりなさいっお蚀われお嬉しかったの。魚にだっおなれるよ。心の深いずころに沈んでいるものを、私はもう䞀床、匕き䞊げたの。もう我慢はしないの。ママもパパもどうでもいいの。 本圓は、どうでもよくないの。ねえ、教えおくれない理科の先生なら分かるかなスむヌトルヌムの人達は玠盎で正盎で、そしお受け止めおいるの。受け止めるっおどうすればいい先生は教えおくれる ボトルを入れおもらったの。あの音ず匂いが、私にいけないこずをさせるの」
    ハルは、「私は淫乱なんかじゃない」ず叫ぶず、そのたたリリヌの足元に膝を぀いた。
    ダンキヌスの頭から、垜子が萜ち、倧声で泣き出した。
    泣き声が陞橋に反射しお蟺りに響きわたる。
    釣りをしおいたもう䞀人の男の子が、芋おいる。
    「ハル、もう行こうぜ」アキラが蚀った。
    リリヌは、ハルを抱きかかえるず「家にかえろう」ず蚀った。
    ハルの膝から血が滲んでいる。

    その時、マルチヌズを連れた、ペむズリヌ柄の服を着た小倪りのおばさんが、4人の前で立ち止たった。
    「ハル、垰るよ」アキラが蚀った。
    「貎方達、䜕をしおいるのかしら」小倪りペむズリヌが近づいおくる。
    ハルが振り向き、小倪りを芋た。
    ペむズリヌの暡様が䞀斉に瞬きをしお、服の䞊を這いずり回る。
     陞橋の䞊を田園郜垂線が、レヌルず車茪が軋む金属音を響かせながら通り過ぎおいく。
    マルチヌズがキャンキャンず吠える声ず、小倪りが「止めなさい」ずか「譊察を呌ぶ」ずか叫んでいる声が、金属音で掻き消される。
    ダンキヌスは、「お前たち狂っおいるバカ」ず唟を飛ばしお叫び、持っおいたバゲットをハルに向かっお投げ぀けお走り出した。
    バゲットはハルの顔に圓たり、アンチョビが頬にぞばり付く。
    ハルは、リリヌの腕を振り払うず、河原に厩れ萜ちた。
    倧きな瞳から涙がこがれお、河原の石に小さな䞞い染みを䜜っおいる。
    アキラはハルの偎に萜ちおいたバゲットを拟うず、甲高い声で吠えるマルチヌズに向かっお投げ぀けた。
    バゲットは犬には圓たらず偎に萜ちお朰れただけだったが、小倪りは「ギャァァァァァ」ず悲鳎を䞊た。
    「私のマリヌちゃんに䜕をするのぉぉぉおおおおお」ペむズリヌが金切声を䞊げる。
    マリヌちゃんは、朰れおレタスがはみ出たバゲットをむさがり食べおいる。
    リリヌは四぀ん這いになったたたのハルの前でしゃがみ蟌むず、顔に付いたアンチョビをハンカチで拭った。

    「ハル、垰ろう」
    ハルの長いた぀毛の先から零れ萜ちる涙を指先ですくい取りながらリリヌが蚀った。

    「リリヌは私を受け止めおくれる」
    ハルはリリヌの胞に顔をうずめるず、小さな声で蚀った。

    「圓たり前のこずを聞かないで 」
    ハルを抱きしめおいるリリヌの瞳からも涙が流れおいた。

     小倪りペむズリヌは、マリヌちゃんを抱きかかえながら、小声で「私のマリヌちゃんにパンをぶ぀けたのは蚱さない。譊察を呌ぶわ、譊察を呌ぶわ」ず繰り返しおいた。
    アキラはペむズリヌに近づくず、マリヌちゃんを抱いおいるでかい胞の谷間に、持っおいたシャブリのボトルを抌し蟌んだ。
    ペむズリヌは「ひゃぁっ」ず声を䞊げお、抱いおいたマリヌちゃんずシャブリを萜ずした。
    ボトルがマリヌちゃんの背䞭に圓たっお「ゎン」ず、鈍い音をたおお跳ね返り、石に圓たっお割れた。
    ワむンずガラスが飛び散り、ペむズリヌが履いおいた金色の糞で象が刺繍しおあるス゚ヌドのパンプスを汚した。
    マリヌちゃんは川の䞭を猛スピヌドで走り出し、ペむズリヌはその埌を远っお走り、石に躓き転んで額から血を流した。
    「譊察を呌ぶから埅っおいなさい」そう叫ぶず、マリヌちゃんを远いかけ消えお行った。

    †††††††††
     
     二子橋を枡り始めたずき、倧粒の雚が降り出した。
    暖かい空気を颚ず雚が冷やし、歩道に倧きな氎たたりを䜜りだす。
    い぀の間にか空は灰色で、雲の隙間から光の柱が䜕本も差し蟌み、雲の移動に合わせお芋え隠れしおいた。

     アキラは、リリヌがハルの肩を抱きながら歩く二人の埌姿を芋぀めながら、少し離れお歩いおいた。
    「もうすぐ雚が降る」
    ハルの蚀葉を、アキラの頭の䞭でリピヌトしおいた。
    物になりなさいっお蚀われお嬉しかったの 心の深いずころ 受け止める 

     アキラはハルが枡した、ペヌパヌアシッドを口に入れた。
    舌が痺れながら少しず぀感芚を麻痺させおいき、心臓がスピヌドを䞊げお血液を送り出しおいく。
    アキラが橋の手摺りから身を乗り出しお䞋を芗き蟌むず、小さな波王が幟぀も生たれおは消える川の䞭を、ゆっくりず泳ぐ二匹の鯉が芋えた。

    鯉はぎったりず寄り添い、たるでダンスでも螊っおいるかのように倧きなカヌブを描きながら、流れに逆らい泳いでいた。


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    #11 ロックンロヌルだろう「氞遠に続く恐怖ず絶望、朰れたマリヌゎヌルド」

    「僕は人を殺したこずがあるんだ 」

    その蚀葉を聞いた瞬間、オサムは䜓䞭の血液が沞隰し皮膚に鳥肌が立぀のを感じた。
    それは『ボコボコ』ず音を立おお䜓䞭を䟵食し、茪郭を塗り぀ぶした。

    そんな蚀葉、聞きたくない 

    僕ずカルミはこの先も、ずっず䞀緒に暮らしお、幞せになれるず思っおいたのに なぜそんなこずを蚀うのだろう 

    カルミを理解できない日々が、このたた氞遠に続いおいく恐怖ず絶望。

    オサムは、倧きく顔を巊右に振るず、カルミを抌し倒し銬乗りになるず、犯し始めた。

    窓の倖から子䟛の遊ぶ声ず、「雚が降っおきたから早く家に戻りなさい」ず子䟛を呌ぶ母芪の声が聞こえる。
    カルミはされるがたたにそれを受け入れ、ただ、窓を叩く雚音ず遠ざかる母子の声に耳を柄たせおいた。

    心に底に沈めおいた蚘憶 思い出したくない姉の蚘憶 

    もう限界だ 

    「オサム、ここに閉じ蟌められおから、䜕日たった」カルミはペニスを口に含んでいた、オサムに蚀った。
    「 ニ週間」オサムが顔を䞊げお蚀った。

    倖にはテレビ局のレポヌタヌが䞀日䞭僕のこずを狙っおいお、知りもしない人達が暇にたかせおコメントをしお、レコヌド䌚瀟は「カルミの宣䌝になるからいいじゃないか」ず蚀う。フォヌクシンガヌのような長髪に黒いスヌツを着おコンバヌスの癜いハむカットを履いたプロデュヌサヌは「ロックンロヌル」だろうず蚀う

    「どうしたの」オサムがカルミにキスをした。
    䞊唇を軜く噛み、舌を入れる。

    「もう神経がもたない 」
    カルミがキスをされたたた呟いた。

    「えっ」
    オサムは顔を䞊げるず、唟液が糞を匕いおカルミの頬に萜ちる。
    「神経がもたない 郚屋に閉じ蟌められおいるのは、もう 限界だよ」

    雚音が激しくなり、郚屋の䞭にノむズ音が響く。

    「オサム どっか、遠くぞ行こうぜ」

    オサムはため息を぀いお、「気持ちは分かるけど無理だよ」ず蚀った。

    「倖にはただ沢山いるよ。テレビの人」
    「もう、いいよ。僕には関係ない」
    カルミは䜓を起こすず、マルボロに火を点け深く煙を入れた。

    「レコヌド䌚瀟はどうするの圓分の間、郚屋でおずなしくしおいなさいっお蚀われたんでしょう」オサムは、カルミの倪ももに手を乗せながら蚀った。
    「ねえ、僕がもっず気持ちいいこずしおあげるから」オサムはカルミのペニスを握った。
    「もう、いい。きっずレコヌド䌚瀟も喜ぶず思うよ。たた僕がなにか事件をおこせば曲が売れるっおさ。ロックンロヌル、そうだろうテレビを芋おいる人達も、たた楜しめるだろうし、あの女だっお自分がテレビに出れるから嬉しいだろうし。オサム、お前が䞀緒に行くのが嫌なら僕は䞀人で行くよ。バむクの鍵を貞しおくれ」
    カルミはペニスを握るオサムの手を振り払った。

    「 わかった。僕も行く」オサムはそう蚀うず深くため息を぀き、カヌテンが閉たっおいる窓を芋぀めた。

     カルミはシャワヌを济びるず、玠肌の䞊に黒い革のオヌバヌオヌルを着お、赀い゚ンゞニアブヌツを履いた。
    オサムは郚屋に来たずきず同じ、赀い革のラむダヌスに黒い革の半ズボンず癜いコンバヌスを履いお、二人ぱレベヌタヌに乗った。

    地䞋の駐車堎に向かう゚レベヌタヌの䞭でオサムはカルミに「このラむダヌス、ただ汗で濡れおいるから気持ち悪い」ず蚀った。

    「今日も暑いでしょ革は奜きだけど、倏は嫌い」

     カルミは、゚レベヌタヌの床に散らばっおいた、オレンゞ色の小さな花匁を、゚ンゞニアブヌツの硬い爪先で無造䜜に転がしながらオサムに「この花の名前は知っおいるか」ず聞いた。
    「マリヌゎヌルド」オサムは、倧理石に匵り付いたドレスのフリルのような残骞を芋お蚀った。
     
     薄暗い駐車堎に止たっおいる車はどれも高玚車ばかりで、癜いポルシェの暪にオサムの『ダマハSR400』が止たっおいた。
    アルミタンクが駐車堎の薄暗いラむトに反射しお鈍く光っおいる。
    カルミはオサムに「䞖界䞭のどの高玚車よりもSRが䞀番かっこいいず」蚀った。
    オサムはバむクにたたがるず、タンクの暪にあるむグニッションに鍵を差し蟌み回した。
    スピヌドメヌタヌずタコメヌタヌがうっすらず光り、黒の半キャップを被りゎヌグルを付けたオサムの顔の巊半分を照らしだす。
    カルミはオサムの顔を芋お、昔で芳たアニメヌションを思い出した。

    狂ったアンドロむドが包䞁を持ちながら、しょんべん暪䞁のような裏路地を歩き、子䟛にピストルで撃たれる。バヌチャルでいかれた近未来 クヌルなテクノ 

    傟斜しおいる駐車堎の入り口が明るく光っおいる。
    振り出した雚が土砂降りになり、幟぀もの现い氎の流れが駐車堎の排氎溝に吞い蟌たれおいく。
    オサムはバむクのチョヌクを匕き、軜く䞉回キックを螏んでから、バむクの前に立぀カルミを芋぀めるず「朚村ゆうこに䜕をしたのず」聞いた。

    「僕が雪華にしおいたこずず 同じこずをしようずした」
    「 どんなこず」
    「 今は蚀いたくない」
    オサムは、逆光で圱になっおいるカルミを芋぀めた。

    「でも圌女には無理だったんだ。心がもたなかった 」

    「心がもたない 」

    オサムはそう小さく呟くず、バむクのキックを匷く螏み蟌み、アクセルを開けた。


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    #12 もう䞀人の自分「二本の尻尟を持぀トカゲ、神になったカメラマン」

     アキラは、テヌブルに座り怅子の䞊に足を乗せお、シャワヌを济びたばかりのリリヌの背䞭を芋おいた。
    癜い肌から立ち䞊る仄かな熱が、氎滎ずずもに埮かにミントの銙りを攟っおいる。
    髪の先から萜ちた雫が背骚を䌝いお尻の割れ目に流れおいった。
    「雚、土砂降りだね」リリヌはキッチンの窓を開け、ゆっくりず流れおいく灰色の雲を芋お蚀った。
    湿気を含んだ郚屋の空気を土砂降りの雚が冷やしお、リリヌは目を现めた。
    「ハルは」リリヌが濡れおいる長い髪をひねっおたずめ、バレッタで埌ろに留めながら聞いた。
    「寝おいるよ」
    「私も少し寝るね」
    リリヌは冷蔵庫から゚ビアンを取り出し、それを持っおベッドルヌムぞ行った。

     土砂降りの雚の䞭、リリヌはハルの肩を抱きながら䜕も蚀わず歩いおいた。
    アキラには、雚ず涙で滲むハルの青いアむシャドヌが、たるで青い涙を流しおいるように芋えた。
    雚でずぶ濡れになったワンピヌスが䜓に匵り付き、たるで二人は裞で歩いおいるようで、アキラはそんな二人の埌ろ姿を芋お、ずおも叀い矎術通でその建物よりも叀い絵を芋おいるような、そんな気がした。

    ハルは郚屋に戻るずすぐに食べた物を吐き出し、䟿噚の底に沈むバゲットを芋぀めながら、誰に蚀うずもなく「玠盎に生きるこずに決めたんだよ」ず呟いおいた。
    リリヌはそのずきも䜕も蚀わずに、ハルの肩に手を眮いおいた。
    アキラはキッチンの窓を閉めるず、リビングの゜ファヌで眠っおいるハルの右耳の䞊に圫られた青いトカゲに、そっず觊れおみた。
    トカゲは口から现い舌を出し、䜓をくねらせお、生きおいるかのように頭の䞊を這っおいる。
    アキラはハルの濡れおいるサテンの赀いワンピヌスを脱がせようずしお、優しく肩に手を眮いた。
    背䞭のゞッパヌを䞋ろしお袖から腕を抜くず巊肩にトカゲが這っおいた。
    頭のトカゲよりも䞀センチほど倧きなトカゲには尻尟が二本あった。
    アキラがトカゲを芋぀めおいるず、ハルが静かに瞌を開けアキラに埮笑んだ。
    「このたただず颚邪ひくよ」アキラが小声で蚀った。
    ハルは䜕も蚀わずにアキラを芋぀めおいる。
    アキラは静かにワンピヌスを脱がせた。
    「䞋着は」
    ハルは埮笑むず腰を浮かせた。
    ワむン色のパンティヌを脱がせお、氎色のタオルケットを掛けながら、アキラは「肩のトカゲには尻尟が二本あるね」ず、蚀った。
    ハルは頷くず、音楜が聎きたいのず小声で蚀った。
    「䜕が聎きたい」
    「Ben Harper」
    アキラが「FIGHT FOR YOUR MIND」をかけるず、ハルは瞌を閉じた。
    郚屋にワむれンボヌンのスラむドギタヌが流れる。
    「肩のトカゲはなぜ尻尟が二぀あるか知りたい」ハルが目を閉じたたた蚀った。
    「うん」
    「ねえ、心の䞭っおいったいどうなっおいるんだろうね。䟋えば、心の䞭に詰たっおいる考えずか、思いずか、愛ずか、憎しみなんかが目に芋えるもので、それをテヌブルの䞊に䞀぀䞀぀䞊べるこずができたらいいず思わないそしおその䞭から自分の奜きな心だけを遞んで、嫌いな心は捚おおしたうの 」
    「心の䞭」アキラはハルが寝おいる゜ファヌの肘掛に座った。
    「ロンドンから来たバンドのボヌカルが蚀っおいたの。「自分は䜕が必芁で、必芁じゃないかを理解しおいる」っお。そしお、「必芁ずか必芁じゃないずかそんなこずは、たったく気にもせずに党おを受け入れお生きおいる」っお。私に、「心を開攟しお深いずころに沈んでいる䜕かを吐き出したこずはあるか」っお聞くの。「人は皆、他人には蚀えないこずを心に仕舞っおいお、心はそんなこずにうんざりしおいる」っお。「もっず玠盎に生きおほしい」っお。」

    「心がうんざりしおいる 」

    「アキラは䜕か心に仕舞っおいる」

    アキラは、テヌブルの䞊にあるリリヌの『クヌル』に火を点けおメン゜ヌルの煙を深く吞い蟌んだ。
    「倚分、仕舞っおいる 。でも今は思い぀かないな」
    「私は、沢山ある」ハルはアキラの膝の䞊に现くお長い足を乗せた。
    ワむンレッドに塗られた足の爪が光っおいた。

    「高校生のずきにね、付き合っおいた男の子が本をプレれントしおくれたこずがあっお、それは、『ベトナム戊争ぞ行ったカメラマンが自分の䜓隓を曞いた本』で 」ハルは話を途䞭で止めお瞌を開けるず、アキラの顔を芋぀めお埮笑んだ。
    「本の内容を聞くのず、私ずセックスをするの、どっちがいい」
    ハルは䜓に掛けおいたタオルを少しだけずらしお、巊胞を芋せた。
    乳頭に銀色のホリゟンタルニップルが貫通しおいる。
    アキラを芋぀めるハルの敎った顔に広がる薄いそばかすが、幌さの䞭に朜む抗いがたい劖艶さず、壊れそうな危うさを宿らせおいる。
    「本にしずくよ。今、ここでハルずセックスをするのには、この゜ファヌは狭すぎるだろう」
    アキラはハルの胞に、タオルを掛けなおした。
    「アキラ、奜きだな。そういうずころが奜きだよ。リリコのこずが嫌いになったら、今床はハルをお嫁さんにしおね」
    アキラは、ハルの唇にそっずキスをしお「 話は」ず蚀った。
     
    †††††††††

    「アメリカ第十六郚隊ブラボヌチヌムの歩兵の䞭にね、ロックスタヌがいお、カメラマンはそい぀を取材に行く途䞭のゞャングルで、仲間のクルヌずはぐれおしたうの。カメラマンは北ベトナム軍のゲリラ兵士に捕たっお捕虜になっおしたうんだけど、「俺は兵士じゃない民間人だ」っおゲリラに蚀っおも無駄なの。だっお、ゞャングルの基地には子䟛のゲリラしかいなくお、誰も英語が分からなくお、拷問ずか、いろいろず残酷なこずをされおしたうの。どう面癜そう」

    アキラは頷いお、吞っおいたタバコを消すずたた、新しいタバコに火を点けた。

    「カメラマンが爪を剥がされおいるずきずか、歯をペンチで抜かれおいるずきずか、足の指をアヌミヌナむフで切り萜ずされおいるずきずか、口の䞭にうんこを詰め蟌たれおいるずきずか、痛みを超えた苊痛の䞭で、カメラマンは感情のプラグを匕き抜くの。生きるこずを諊めるために。そうしたら、今たで生きる為に自分を支えおいた、家族、恋人、仕事、宗教、名声、平和、自宅の庭に咲いおいるラむラックの玫色の花、Bob Dylanの、ナゎヌやヘミングりェむの小説、机の二段目の匕き出しに隠しおおいたポルノ雑誌、壁に掛けおあるママの写真、そんなこずは生きおいるこずになんの意味もないこずだったっお、悟っおしたうの。はやく殺しおくれず祈るのだけれど、カメラマンを初めから人間ず思っおいない子䟛ゲリラは、なかなか殺しおはくれなくお、心の䞭で䞀䞇回殺しおくれっおお祈りしたずきに、目の前に『別の自分』が珟れたんだっお」

    ハルはそこたで話すず、アキラの吞っおいたタバコを取っお、䞀床メン゜ヌルを深く吞い蟌み、アキラに返した。

    「本圓におもしろいもっず聞きたい」
    アキラは膝の䞊に乗っおいるハルの足の指に觊れながら頷いた。

    郚屋に流れおいる曲が「POWER OF THE GOSPEL」にかわり、ノァむオリンの音色がやさしく響く。

    「もう䞀人の自分はね、コメディ映画でも芋おいるかのように、巊足を゜連補のチェヌン゜ヌで切断されお歯のないうんこたみれのカメラマンを芳おいるの。「片足じゃもう息子の゚ディヌずサッカヌができない」ずか、「恋人コヌトニヌずロヌラヌスケヌトができない」ずか「口の䞭に詰められおいるうんこはハノむのクリスマスロヌドずいう名前の売春宿で働くマリアのうんこで、マリアは毎日アヌミヌの粟子を飲んでいるから、これでプラスマむナスれロだぜ」ずか、LLサむズのポップコヌンを食べながらカメラマンに教えおくれるの。カメラマンは、そのロングヘアの癜いにきび顔にレむバンクラシックの黒いサングラスを掛けお、チョコがたっぷりずかかったドヌナッツを口䞀杯に詰め蟌み、キングサむズのペプシを飲んでいる、もう䞀人の自分に助けおず頌んでみるんだけど、ロングヘアはカメラマンに指をさしながら笑っおいるだけで、ぜんぜん助けおはくれないの。カメラマンは突然珟れたもう䞀人の自分が、本圓は神様なんじゃないかず思っおいたけど、そうではなくお、やっぱり死神だっお思っお、死を祈り続けるの。巊腕のないゲリラ兵士に向かっお、自分の切断された巊足ず䞀緒にバケツに入っおいる゜連補のチェヌン゜ヌを指さしお、僕の銖を切り萜ずしおくれずゞェスチャヌしおいたずき、初めは笑っおいたロングヘアは、ゲリラがチェヌン゜ヌの゚ンゞンを掛けた瞬間に、笑うのをやめお、黄色い唟をカメラマンに吐き飛ばしたの 」

    「ねえ、アキラ聞いおる」
    ハルはアキラの膝から足を滑らせ、その现い指先でアキラの頬をなぞるように觊れた。
    アキラは瞌を閉じお、「カメラマンずロングヘアずゲリラ兵を想像しながら聞いおいるよ」ず蚀った。

    「ポップコヌンずペプシが混ざり合った甘ったるい唟が、カメラマンの額にベチャず音をたおたずき、カメラマンに猛烈な怒りがこみ䞊げおきお、ロングヘアに向かっお、「お前の前では絶察に死なねえぞ」っお叫んで、殺しおくれっお頌んだゲリラに、フェラチオをしお蚱しおもらったの。カメラマンはペンチで歯を党郚抜かれおいたからフェラチオがずおも䞊手で、カメラマンの前には八十五人のゲリラの列ができお、ゲリラはカメラマンの口の䞭にザヌメンを出した埌、深く合掌しお、カメラマンは初めお人間らしい扱いを受けたの。それどころか、ゲリラは、カメラマンを人間以䞊の神の出珟だず喜び、手厚い介護やお䟛え物を斜しお毎日お祈りしおいたの。䞡目がナパヌムで朰れた通信兵がお祈りをした埌、ペニスを差し出したずきに、第十六郚隊ブラボヌチヌムのロックスタヌが、十六を乱射しながら珟れお、カメラマンは救出されたの。ロックスタヌはゲリラの頭を吹き飛ばしながらカメラマンに向かっお、「君の為に曲を曞くぜ」っお芪指を立おお、カメラマンは飛び散ったゲリラの脳みそを顔に济びながら気絶しおしたったの」

    ハルは、䞀床倧きく深呌吞するず、゜ファヌから立ち䞊がり「疲れた」ず蚀った。

    「話すの疲れたよ。 喉が痛くなったからバニラアむス、食べおいい」

    ハルは裞のたたキッチンぞ行った。

    アキラは薄暗くなった郚屋で゜ファヌに座り、「 心がうんざりしおいる」ず呟いた。
    ハルの話しおいる残酷な物語はよく理解できおないけど、倚摩川でのハルの蚀動ず、なにかリンクしおいるように思えた。

    バニラアむスを持っお戻っおきたハルは、アキラの隣に座りシルバヌのスプヌンでバニラを口の䞭に入れるず「矎味しい」ず幌い笑顔で蚀った。

    「今、話した本の内容が私はずおも奜きなんだ。䜕床も繰り返し読んだんだよ。どこが奜きなのっお聞かれるず困るけど 。内容は、ずおも残酷で悲惚なこずが曞いおあるのに、ワクワクしおくるの。この本に曞かれおいる登堎人物のカメラマンやロングヘアやゲリラやロックスタヌは、それぞれ、ばらばらの人間じゃなくお、本圓は党郚を䜵せ持っおいる䞀人の人間じゃないかっお思えおくるの」

    「物語の続きず、トカゲの尻尟の秘密は」

    「尻尟がなぜ二本あるかは、もう分かったでしょう。そしお続きは、埌で いい今日は沢山話しお疲れたの。リリヌは」
    ハルはバニラの容噚に曞かれおいる成分衚を芋ながら蚀った。

    「寝おいるよ」

    アキラは、ハルのデコルテから小さな胞の谷間に広がるそばかすを芋お、『クッキヌクリヌム』のアむスを思い出しおいた。

    「それからね、 読んでいるずきに感じる 静けさが奜きなんだ」

    ハルはバニラを半分食べるず、残りをアキラの膝の䞊に眮いお、リリヌが寝おいるベッドルヌムぞ行った。


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    #13 レポヌタヌ「natural-born reporter.」

     湿気を含んだ冷たい颚が生暖かい空気を冷やし、流れの速い灰色の雲の切れ間から青空が芋え隠れしおいる。
    突然降り出した土砂降りの雚は、煉瓊敷きの地面に倧きな氎溜りを䜜り、打ち付ける雚が幟぀もの波王を生み出しおいた。

     レポヌタヌは、ADが差し出す青色のビニヌル傘の䞋で、オレンゞ色のスヌツず髪が濡れないように、ハむ゚ヌスに向かっお歩いおいた。
    昚日買ったばかりのピンクのパンプスに雚が入り蟌み、20デニヌルの黒いパンティヌストッキングを濡らした。
    レポヌタヌは画面に映し出された自分を想像し、「この雚のせいで髪型が厩れおしたったけど、自分ずしおは今日も満足のいくレポヌトが出来た」ず思っおいた。
    レポヌタヌがADに「今日の私のレポヌトはどうだった」ず聞くず、ADはVず倧きく曞かれたハむ゚ヌスのドアを開けながら「ずおも良かったです」ず答えた。
    「良いのは圓たり前なのよ。ミドリちゃん。良いだけじゃ駄目なの。芖聎者の心をぐっず぀かむものがないずいけないのよ。ミドリちゃんが専門孊校を卒業しお、制䜜䌚瀟に就職出来たら私の番組で䜿っおあげるから、珟堎をもっず経隓しお勉匷をしないず駄目よ」
     運転垭に座っおスマホで話をしおいた、黒瞁めがねをかけたディレクタヌがレポヌタヌを芋お電話を切るず「カルミが犯した女が明日、デビュヌをする蚘者䌚芋を開くらしいから、今撮った映像を明日は䜿わない」ず蚀った。
    「やっぱりおかしいず思っおたんだ、あの女。しっかり事務所が぀いおいたし、玠人っぜくなかったし カルミは、はめられたっおや぀だね」ディレクタヌがスマホの画面をTシャツの袖で拭きながら蚀った。
    「ちょっず、たっおよ。雚の䞭でレポヌトしおいる映像が欲しいっお蚀ったのは、貎方でしょうそれを䜿わないっおどういうこずよ」レポヌタヌはそう蚀っお、ADから枡されたタオルで濡れた髪を拭いた。
    「数字が取れる映像が最優先なの。あんたさ、䜕幎この仕事しおいるのか分からないけど、嫌だったら蟞めおもいいよ。代わりはいくらでもいるから、なんなら、ミドリちゃんでもいいよ。若いし」ディレクタヌはレポヌタヌを芋ずにスマホの電話番号を抌しながら蚀った。
     レポヌタヌはメモを取りながら話しおいる黒メガネを、「今ここで殎り飛ばせたらどんなにいいだろう」ず思った。
    倧孊を出たばかりで珟堎も知らない、包茎野郎のくせに。私はお前ずは違っおこの仕事に誇りを持っおいるの。いずれはメむンのニュヌスキャスタヌになっお、こい぀を珟堎で苛めおやる
    「やだな、冗談よ。そう、あの子がデビュヌするのね」レポヌタヌが笑顔で蚀った。
    ディレクタヌは電話を切るず「今から、明日あの女が開く蚘者䌚芋前に䜿うコメントを、マンションの前で撮るから」ず蚀った。
    「今すぐ土砂降りじゃないの」
    「なに蚀っおんのレポヌタヌだろう。雚なんか気にしおいたら仕事になんないよ。䜕幎この仕事やっおんのよ」
    ディレクタヌは黒瞁めがねを倖すず小さな䞀重瞌の现い目で、レポヌタヌを芋お舌打ちをした。
    レポヌタヌは「絶察こい぀を殺しおやる」ず、心に誓いながら「カメラの前で、私はなんず蚀ったらいいのかしら」ず、笑顔で聞いた。
    レポヌタヌはミドリちゃんに髪型を盎させ、新しい氎色のスヌツに着替えた。
    髪型を盎しおいるレポヌタヌに向かっお、ディレクタヌは「髪型なんかどうでもいいだろう」ず蚀った。
    「時間がないんだよ。撮ったテヌプをすぐに線集所に入れなきゃ、明日のモヌニングショヌに間に合わないよ。線集所で埅機しおいるオペレヌタヌに怒られおしたうだろう」
    レポヌタヌはトランスミッタヌを腰に装着しながら「明日の番組に、同じ服を着お映りたくはないの」ず笑顔で答えた。

     土砂降りの雚の䞭、カルミの䜏むマンションの門の前で、レポヌタヌは傘を差しながら、カメラの赀く光るレックランプを芋぀めおいた。
    傘の先から萜ちる雫がレポヌタヌの背䞭を濡らし、地面を打ち付ける雚が穿いおいる黒いストッキングず氎色のパンプスを濡らし、湿気でセットした髪型が厩れおいく。
     他局の報道車は局に戻り、䜏宅街に響きわたる雚音がレポヌタヌの声を消しおいった。
    レポヌタヌは、厩れおいく前髪ず傘の先から萜ちる雫にいら぀き、カメラのレックランプが消えるのを埅たずに、話すのを止めおハむ゚ヌスに向かっお歩き出した。
     レポヌタヌが歩き始めた時、門の䞊に぀いおいる䞞い倖灯の䞊に、ずぶ濡れの雀が口にミミズを咥えお止たった。
    雀はクネクネず動くミミズを片足で抌さえながら、小さな嘎で赀黒い䜓を匕き裂き飲み蟌んでいった。
    カメラマンがファむンダヌ越しにその様子を録画しおいるず、降り続いおいた雚が突然止んだ。

     灰色の雲の隙間から、傟き始めたオレンゞ色の倪陜の光が、マンションの窓に反射しおキラキラず茝き、氎溜りにレポヌタヌの圱を映す。
    ハむ゚ヌスに向かっお歩いおいたレポヌタヌは、光の筋がいく぀も亀差しおは消えおいく空を芋䞊げた。
    雚の音が消えた静けさの䞭、レポヌタヌは傘の先から流れ萜ちる雫を振り払い、傘を閉じた。

     倖灯に止たっおいた雀がずぶ濡れの䜓を震わせ、矜に぀いた雫を飛ばしたずき、マンションの地䞋駐車堎から䞀台のバむクが出おきた。
    カメラマンは雀から、すばやくバむクにカメラを向けた。
    バむクのアルミタンクが倪陜の光を反射しおいる。
    カメラマンはカメラをズヌムしながら運転しおいる赀いラむダヌスの男を映し、次に埌ろに乗っおいる黒いオヌバヌオヌルを着た男を映した。
    銀色のヘルメットを被りゎヌグルを付けた顔を芋たずき、カメラマンは「カルミだぁああああああああああああ」ず倧声で叫び、バむクに向かっお走りだした。
     レポヌタヌは初め、カメラマンがなぜ叫びながらバむクに向かっお走り出しお行ったのか理解できなかった。
    濡れた背䞭ず足ず髪、党おが䞍愉快で、少しでも早く家に垰りたいず思っおいた。
    ハむ゚ヌスから、飛び出しおきたミドリちゃんが䜕か倧声で叫びながら、レポヌタヌに近づいおいき、その埌に出おきたディレクタヌの叫び声で、レポヌタヌはバむクに乗っおいるのがカルミだず理解した。

     オサムは自分達に向かっお走っお来るカメラマンずレポヌタヌを芋お、スロットルをゆるめながら、埌ろに乗るカルミに「どうするのよ」ず叫んだ。
    カルミは、オサムのヘルメットを軜く叩くず、耳元で「蜢いちゃえ」ず蚀った。
    オサムはカルミの蚀葉で、バむクのギダをニュヌトラルに入れお、゚ンゞンを吹かしながらバむクを止めた。
    「今なんお蚀ったの」オサムは、埌ろを振り返りカルミに聞いた。
    カメラマンずレポヌタヌは、゚ンゞンを吹かしながら䜕か話しおいる二人乗りのバむクを芋お、走るのを止め、立ち止たった。
     四癟単気筒゚ンゞンの倪く重い音が、マンションの壁に反響しおいる。
    「蜢いちゃえっお蚀った」カルミが倧声で蚀う。
    マンションの゚ントランスのガラス匵りのドアが開いお、䞭から癜いラルフロヌレンのポロシャツに灰色のゎルフパンツを穿いた管理人が出おきお、二人乗りのバむクに向かっお「静かにしろ」ず叫んだ。
    二階のベランダから、「うるさい」ず男が叫んでいる。
    レポヌタヌは「ハゲにラルフロヌレンは䌌合わない」ず思いながら、ラルフロヌレンに向かっお巊手を䞊げるず、マむクの感觊を確かめお、バむクに乗っおいるオサムずカルミにゆっくりず近づいおいった。
    その埌ろ姿をカメラがズヌムで远いかける。

     レポヌタヌはカメラの䜍眮を気にしながら、自分の歩く埌ろ姿を想像しおいた。
    もっず䜓の䞭心を意識しながら歩かなくちゃだめ。絶察に猫背に映っおはだめなの。きっず、今から私が始めるこのレポヌトはビッグニュヌスになるはず。あぁ、もっずいいスヌツを着おいたら良かったのに。髪型も今すぐにでもセットをしおもらいたい。カルミはなぜ、雚が降る前に珟れなかったの。党囜の芖聎者が私を芋るのよ。これをきっかけにしお、私はニュヌスキャスタヌになるのよ。今たで我慢しおきたんだもの。これは神様がくれたチャンスなのよ。そうでしょう。カルミ レポヌタヌは心の䞭で歓喜の歌を歌っおいた。
    そしお、い぀もより真剣な衚情で顎を匕き、背筋を䌞ばしお歩いた。
    こんな糞みたいな珟堎ずフニャチンの包茎ディレクタヌの珟堎なんお、私がやる仕事じゃないものレポヌタヌは蟌み䞊げる高揚ず笑い出すのをこらえる為に唟を飲み蟌んだ。
    笑っおはだめ、今は真剣にこの仕事をやり遂げるこずに集䞭するのよ
     カルミは、レポヌタヌのにやけた顔、圢の厩れた鶏冠のような髪型、握りしめおいるマむク、雚でよれよれになった氎色のスヌツず、カメラを肩に担いでいる男を芋お、䞉日前にオサムず䞀緒に芳た映画の題名を思い出そうずしおいた。
    あの映画で、レポヌタヌは最埌に䞻人公の前で呜乞いをした埌、ラむフルで撃ち殺されおしたったよな。今、僕もラむフルを持っおいたら、きっず厩れた髪型ずニダニダ顔に、撃ち蟌んでやるのに
    氎色のスヌツが血で赀くなるずころず、カメラが暪倒しになっお映像が切れる堎面をカルミは想像した。

     レポヌタヌは二人の六メヌトル手前で止たり、前髪を巊手でかき䞊げるず、マむクを口元に近づけお二人を芋぀めた。
    ディレクタヌずミドリちゃんは門の前で、向き合う䞉人を芋぀め、管理人はマンションの゚ントランスの前で腕組みをしおいる。
    ベランダの男は、スマホを取り出すず録画を始めた。
     カルミはオサムの腰に腕をたわしおから、自分の足元を芋぀めた。
    傟きかけた倪陜のオレンゞ色を反射しおいる氎溜りがキラキラず光り、それが、魚の鱗に芋える。
    氎溜りの䞭に、バニラアむスの小さな容噚が朰れお萜ちおいた。
    カルミは「ここを抜け出したら、䞀番初めにバニラアむスを食べよう」ず思った。
    オサムずセックスした埌に、銀のスプヌンでバニラを食べながら「雪華の話をしおあげよう」ず思った。
    その考えがずおもすばらしいこずのように思えおカルミは嬉しくなり、朰れたバニラアむスの容噚を氎溜りから拟い䞊げるず、傟いおいる倪陜に向かっお攟り投げた。
     
     クルクルず回転しながら氎しぶきを䞊げお飛んでいく容噚を、カメラが远う。
    容噚はレポヌタヌずバむクの間に萜ちお、レポヌタヌの足元に転がり、止たった。
    レポヌタヌは氎色のパンプスで容噚を螏み぀けるず、ゆっくりず二人に向かっお歩き出した。
     カルミぱンゞンを吹かし続けおいるオサムのヘルメットを二回叩くず、耳元で「もう行こうよ」ず呟いた。
    オサムは頷くず、近づいおくるレポヌタヌを芋぀めながら也いた唇を舐め、スロットルを党開に開けお、クラッチを攟した。

     雚が䞊がった埌の柄んだ空気が二人を包み、雲の切れ間から芋える空はオレンゞ色に染たっおいる。
    きっず、僕ずカルミはこれからもこんな空気の柄んだ空の䞋でずっず䞀緒にいるんだず、オサムは信じおいた。
    クラッチを攟した指先に雚の雫が圓たっお、オサムはその冷たい感觊に指先を䞀瞬芋぀めた。
    タコメヌタヌの針がレッドゟヌン八千回転たでいっきに回り、は前茪を浮かせお走り出す。
    キャプトンマフラヌから単気筒゚ンゞンの爆音が響きわたり、オサムの党身が振動で浮き䞊がる。
    カルミの腰に回した腕の感觊がオサムに幞せの鐘を鳎らし、恍惚の快楜が党身を駆け巡る。

     レポヌタヌは自分に向かっお、前茪を䞊げながら突っ蟌んでくるバむクをぎりぎりのずころたで匕き付けおから、避けおやろうず思った。
    だっお、そのほうが良い絵になるだろうし、もしかしたらアクション映画の話もくるかもしれない。ちょっずぐらいぶ぀かったほうが芖聎者の同情を買うこずができお、キャスタヌになったずきの印象が、良いものになるでしょう。ちゃんず私を映すのよ 

    レポヌタヌは䞀瞬、背埌のカメラマンぞ芖線を逞らす。

     芖線を戻した刹那、芖界の先には瞊溝パタヌンの前茪が激しく回転しおいた。
    顔面すれすれを前茪がかすめた瞬間、レポヌタヌはカルミの冷めた瞳ず芖線を亀わし、反射的にマむクを差し出しおしたった。
    それは、二十数幎の人生をかけお圌女がレポヌタヌずしお瀟䌚に適応するために身に぀けた、悲しいたでの生存条件だった。
    マむクを向け、誰かを消費しなければ自分の存圚意矩がなくなっおしたう。

    『代わりはいくらでもいるから、なんなら、ミドリちゃんでもいいよ。若いし 』

     マむクは前茪のサスペンションに圓たり跳ね飛ばされお、空䞭でクルクルず攟物線を描きながら氎溜りぞ萜ちた。
    レポヌタヌの氎色スヌツの袖に付いおいた金色のボタンが、回転するスポヌクに巻き蟌たれお行く 。

     レポヌタヌは、倧きく芋開いた瞳で、巻き蟌たれお行く自分の右腕を芋぀めおいた。
    その瞬間がスロヌモヌションの残像ずなっお瞳に焌き付く。
    どんなずきでも、マむクを盞手に向けおしたうレポヌタヌずしおの癖を埌悔した。
    バむクの前茪が煉瓊造りの地面に着地し、氎しぶきを䞊げ、スポヌクずフロントフォヌクの間でレポヌタヌの腕が朰され、千切れおいく音がマンションの壁に響き枡った。
     その、『ゎリ』、『ゎキャ』、『グキョ』ずいう、肉ず骚が物理的に厩壊しおいく音は、蟺りにいた人達にも聞こえおいた。
    カメラマンはファむンダヌを芗きながら党身に鳥肌がたち、むダホンを倖した。
    ミドリちゃんは悲鳎をあげながら顔を䞡手で芆い、ディレクタヌは顔をしかめながら、スマホのカメラで動画を撮っおいた。
    マンションの入り口にいた管理人は耳を塞ぎ、マンションのベランダで「うるさい」ず叫んでいた男は、録画しおいたスマホを萜ずし、その䞊に、昌飯で食べたペダング゜ヌス焌きそばずビヌルを吐き出した。

     レポヌタヌは自分の腕が折れおいく音ず、筋肉や脂肪や血管が千切れおいく、プチプチずいう音を、他人事のような感芚で聞いおいた。
    私は今、䜕をしおいるの 䜕が起こっおいるの 赀い液䜓はなに 
    その瞬間、䜓に激痛がはしり抜け、レポヌタヌは絶叫した。
    マむクを握り締めおいた腕はスポヌクずフロントフォヌクの間に挟たり、千切れ飛んだ。
    赀黒い血ずクリヌム色の䜓液を撒き散らしながら空䞭に舞い䞊がり、管理人の肩に圓たっお、煉瓊造りの地面を転がった。
     
     カルミはレポヌタヌの腕が千切れる瞬間に、レポヌタヌが発したあえぎ声にも䌌た叫び声を聞いお、勃起をしおいた。
    甘い痛みの叫びに、カルミは雪華の顔を思い出し、埌ろを振り向いた。
    パンプスが脱げ、ストッキングが䌝線しお芪指が飛び出し、䞡足をばた぀かせおいるレポヌタヌの右肘から、赀い筋が䜕本も噎出しおいる。

     カメラマンはファむンダヌの䞭で倧きくなっおいくSR400の前茪に、氎色の切れ端を芋お、恐怖を感じた。
    あい぀らは、俺をひき殺そうずしおいる 
    カメラマンは、その堎にカメラを眮いお逃げ出した。
    走るカメラマンに向かっお、ディレクタヌが「カメラを回し続けろ」ず叫んでいる。
     オサムはハンドルを右手だけで持ちながら、巊手を地面すれすれたで䞋げ、眮き去りにされたカメラを拟い䞊げるず、カルミに枡した。
    カルミは、カメラを受け取るず埌ろを振り返り、血を噎出し倒れたたた動かないレポヌタヌに向けおカメラのレックボタンを抌した。
    氎色のスヌツが赀く染たり、矎しいグラデヌションを描いおいる。
    党身黒ずくめの、スタむルのいい女の子が、血で赀く染たったスヌツの女に駆け寄り、地面に膝を突き䞡手を空高く突き䞊げお悲鳎をあげおいる。
    管理人は、地面に転がるレポヌタヌの腕を芋぀めたたた攟心状態で、䞀瞬動いた人差し指ず䞭指を芋お、悲鳎をあげた。
    その暪に空を芋䞊げながら立ち尜くしおいるカメラマンがいた。
    SRがマンションの門を通り抜けお行くずき、ハむ゚ヌスの暪から、黒瞁めがねの男が飛び出しおきお埌を远っおきたけど、すぐにあきらめお走るのを止めた。

     煉瓊造りのマンションはファむンダヌの䞭で小さくなっおいき、カルミはカメラを止めるず、玅色に染たっおいる倪陜ず雲を芋た。
    飛行機が雲を匕きながら、飛んでいる。

    「オサム、スピヌド萜ずしおも倧䞈倫だよ」

    カルミがオサムのヘルメットを軜く叩き、背䞭にぎったりず自分の䜓を抌し付けた。
    オサムの心臓の錓動がカルミの心に響き、カルミは心地よいリズムに合わせお、レコヌド䌚瀟のディレクタヌが蚀っおいた蚀葉を思い出しおいた。

    「ロックンロヌルだろう 」


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    #-14 リリコの悪倢「ナニコヌンの喘ぎ、突き刺したハサミ」

     赀色のプラスチックのスプヌンからバニラアむスをちょっずず぀こがしお、リリコはデパヌトのレストランで、透明なビニヌルのテヌブルクロスにクリヌム色のハヌト型の線を匕いおいた。
    これで誰も私を忘れないよず、リリコは母に蚀った。
    母はレストランの窓から芋える枯を芋぀めたたた黙っお頷いた。
    「さぁ、リリコ、遊園地に行きたしょう」母が蚀った。
    リリコの手を匕く母の手はずおも冷たく、赀い゚ナメルの爪がリリコの皮膚に食い蟌み、リリコは痛みをこらえながら母の顔を芋䞊げた。
    母は唇を噛み締めながら真っ盎ぐに前を芋぀めお歩いおいる。
    噛み締めおいる唇にはうっすらず血が滲んでいお、リリコが「血」ず口を開きかけたずきに、ビィむむむむむむむむむむむむむヌッず鈍く重いベルの音が鳎り、゚レベヌタヌのドアが開いた。
     ゚レベヌタヌの䞭は眩しいほどの癜い蛍光灯の光で溢れ、赀い壁には青色ず黄色の颚船が颚に吹かれお揺れおいる倧きな絵が描かれおいた。
    リリコぱレベヌタヌに乗り蟌むず、母にボタンを抌したいず蚀った。
    母はリリコを抱き䞊げ、ボタンの前で「ほらっ」ず蚀った。
    酞化しおずころどころ緑色のただら暡様になっおいる真鍮のプレヌトに、二぀のプラスチックのボタンがオレンゞ色に光っおいる。
    ボタンの真ん䞭にはそれぞれ『レストラン』『遊園地』ず、赀い文字が圫られおいた。
    リリコがどれを抌しおいいのか迷っおいるず、母は耳元で遊園地でしょうず呟いた。
    母の呟いた口から甘い匂いがしおリリコはバニラアむスを思い出しお食べたくなったけど、今「食べたい」ず口に出したら、母に怒られおしたうだろうなず思いながらボタンを抌した。
     カチッず也いた音がするず、ボタンは真鍮のプレヌトから消えおなくなった。
    ボタンがあった堎所には、䞞い穎が開いおいるだけで、穎の䞭から赀黒い液䜓がゆっくりず溢れ出しお、プクプクず泡を噎きながら流れ出しおいく。
    ブゥりりりりりりりりりりりンず鈍く重い音が宀内に響きわたる。
    䞀瞬、蛍光灯がチカチカず点滅しお、゚レベヌタヌが動き出した。
    ボタンから溢れ出した液䜓は、䞍芏則な圢を䜜りながら足元に流れお広がり、サンダルを履いおいる母の足を汚しおいく。
    「お母さん、ほら芋お、血が流れおいるの」
    母はリリコの声など聞こえおいないかのように、圌女をゆっくりず床に降ろしおいく。
    「いや、ほら、床が汚れおいるよ。降ろさないで 、お母さんの足が血の色になっおる」
    ゚レベヌタヌの倩井ず壁の隙間からも、赀黒い液䜓が流れ出し、蛍光灯の光が赀く染たっおいき、壁に描かれた颚船が呌吞をするように膚らみ出した。
    「この靎は、お父さんが買っおくれた倧切な宝物だよ」
    リリコはクリヌム色の革靎を履いた小さな足をバタバタず動かし抵抗した。
    靎が床に着くのず同時に、ビィむむむむむむむむむむむッッずブザヌが鳎りドアが開く。
    冷たく柄んだ颚がリリコのショヌトボブの髪を揺らした。
    埮かに海の銙りが挂い、波の音が聞こえる。
    「行きたしょう」
    母はそう蚀うず、リリコの手を匕いお歩き出した。
    「靎が汚れおしたったよ」リリコは足元を芋るず、靎はクリヌム色の綺麗なたたで、母の足も汚れおはおらず、埌ろを振り返るず、゚レベヌタヌは消えお、黄金色に茝く草原が広がっおいた。
    目の前には、石畳の長い階段が続き、青い空には青ず黄色の颚船が颚に吹かれながら揺れおいる。
     ポヌルランドず曞かれた薄汚れたゲヌトを通り抜けるず、い぀の間にかリリコは䞀人で歩きながら、はぐれた母を捜しおいた。
    「お母さん、博物通には片足のロバはいなかったよ。ねえ、お母さん䜕凊に行っおしたったの」
    リリコが母の名前を呌び続けおいるず、鯚の圢をした噎氎の前で、母がリリコの知らない男の人ずホットドッグを食べおいた。
    母はリリコに手を振り、隣の男が手招きをしおいる。
    リリコは自分の履いおいるクリヌム色の革靎を芋぀めながら「そっちには行きたくない」ず蚀った。
    母は困った顔をしながら、リリコに向かっお歩き出し、続いお男も歩き出した。
    母の右手が、リリコの肩に觊れた瞬間、リリコは母が奜きだったメリヌゎヌランドに乗っおいた。
    リリコはピンクのロバに乗り、母は青色のナニコヌンに乗っおいた。
    メリヌゎヌランドはオルガンが奏でるメロディヌを響かせながら、ゆっくりず回転し始める。
    リリコは䞊䞋に動くロバを貫く真鍮のポヌルに掎たりながら、母に向かっお「楜しいね」ず蚀った。
    母はリリコに向かっお手を振るず、口を半開きにしたたたナニコヌンの角を掎み、前埌に腰を動かし始めた。
    「お母さん、遊んでいるの」リリコが蚀った。
    母の口から癜いよだれが筋をひきながら流れ、眉間に皺を寄せ、閉じた瞌から涙が流れおいる。
    母は、着おいた赀い長襊袢をはだけるず、胞を揉み始めた。
    リリコは握っおいたポヌルから手を離し、母に觊れようず手を䌞ばした。
    母は、快楜ず恥が亀わるような顔でリリコを芋぀めるず「早く寝なさい」ず叱った。
    リリコはその声に驚いお䌞ばした腕を戻すず、「お父さんが垰っおくるたで䞀緒に寝お欲しいの」ず蚀った。
    「䞀人で寝るのはさびしいよ 」
    母の乗っおいたナニコヌンが䞀瞬「ブルッ」ず身震いをしたかず思うず、鯚の噎氎の前にいた男に倉わった。
    男は母の腰を掎み、激しく腰を䞊䞋に振っおいる。
    母はリリコの聞いたこずのない声をあげながら、自分の胞を揉み続けおいる。
    指の間から、突起した乳銖が飛び出しおいる。
    「お母さん、泣いおいるの」リリコが呟く。
    母の口から流れおいたよだれが、糞を匕いお男の顔に萜ちる。
    男が、母の腰を掎んでいた手を䌞ばしながら「お前もこっちぞおいで」ず蚀った。
    男の手がリリコの頬に觊れようずした瞬間、リリコは足元に萜ちおいたハサミを、男の手の平に深く突き刺した。

    †††††††††

     倧きく錓動を打぀心臓の音を聞きながら、リリヌはシヌリングファンがゆっくりず回転しおいる倩井を芋぀めおいた。
    寝返りをうち、暪を向くず癜い肌に『尻尟が2本あるトカゲのタトゥヌ』が芋えた。
    肌を這うトカゲの背䞭には、ハヌト型の暡様があり長い2本の尻尟もハヌト型に亀差しおいた。
     リリヌはトカゲをがんやりず芋぀めながら、倢で芋た赀い゚レベヌタヌず母が男の䞊で腰を振っおいるのを思い出しおいた。
    手に残る、ハサミを突き刺した感觊を思い出し、深くため息を぀いた。
    ベッドサむドの床に眮いおいたクヌルに手を䌞ばし、メン゜ヌルの煙を深く吞い蟌むず、少し萜ち着いた気がした。

    「どうしたの」ハルが蚀った。
    「ごめん、起こした」リリヌはタバコを消した。
    「倧きな声で寝蚀を蚀っおいたよ。行きたくないずか、やめおずか」ハルは暪を向いおリリヌの顔を芋぀めた。
    「汗、すごいよ。熱い窓を開けようか」ハルはリリヌの額の汗を指ですくった。
    「倧䞈倫だよ。自分で開けるから」
    リリヌはベッドから起き䞊がるず、ベランダに続く郚屋の窓を開けた。
    颚が埮かにレヌスのカヌテンを揺らす。
    ハルは月の明かりに照らされお浮かびあがる裞のリリヌの䜓のラむンを芋お、綺麗だなず思った。
    私が、知っおいるモデルのなかで、リリヌが䞀番矎しいラむンをもっおいる

     リリヌは倚摩川を芋぀めながら、倜の柄んだ空気を吞い蟌んだ。

    もう、それが倢なのか珟実なのか曖昧になった蚘憶 。
    私がうなされる床に、アキラは䜕も聞かずにただ私を抱きしめおくれた。
    その枩もりに父芪を重ねた 

    「ねえ、どんな倢を芋おいたの」ハルは指で筒の圢を䜜り、それを巊の目に圓お、リリヌの背䞭を芗きながら聞いた。
    リリヌはなにも答えずに、倚摩川を芋぀めおいる。
    ゆっくりず流れる川に月明かりが反射しお、キラキラず茝いおいる。
    川に嘎の長い癜い鳥が舞い降りお、䜕かをくわえるず盎ぐに飛び立っお行った。
    「蚀いたくないのなら蚀わなくおもいいよ」
    「アキラは」リリヌが聞いた。
    「リビングの゜ファヌで、寝おいるず思うよ。ねえ、リリコの心が悲鳎をあげおいるのかもしれないよ」ハルは指でピストルの圢を䜜るず、リリヌの心に向かっお撃぀真䌌をした。

    「心が悲鳎」

    ハルは、眉をしかめお自分を芋぀めおいるリリヌの䜓を芋お、その矎しいラむンず心に觊れるこずができるアキラをうらやたしく思った。

    「でも、倧䞈倫だよ。リリコには受け止めおくれる人がいるから」

    ハルは匕き金を匕いた。


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    #15 雪華「カルミず雪華、繰り返すカルマ」

    「ここは䜕階なの」
    オサムはベッドに座り窓から芋える芳芧車を芋぀めながら、トむレから戻ったカルミに聞いた。
    「なに」カルミは着おいた革のオヌバヌオヌルで濡れた手を拭くず、冷蔵庫を開けおルヌムサヌビスで頌んだバニラアむスを二぀取り出しお䞀぀をオサムに枡しお隣に座った。
    「この郚屋、䜕階だっけ」もう䞀床オサムが聞いた。
    「䞉十䞉階」
    カルミは、ゆっくりず回転しおいる芳芧車の䞭心から倖偎に向かっお、青い電食が流れおいく様子を芋぀めた。
    「高い」オサムはバニラを䞡手で握り締めながら蚀った。
    「倧䞈倫か」
    オサムの倧きな瞳から涙が溢れお頬を䌝い、黒い革の半ズボンの䞊に萜ちた。
    「うん、倧䞈倫だよ。スヌツの女、死なないよね」
    オサムの震える声が、冷え切った郚屋に挏る。
    「腕がなくなったっお、死なないよ。ただ、マむクを持぀ずきに困るず思うけど。それ、食べろよ」
    カルミはオサムが握り締めおいるバニラの蓋を取り、シルバヌのスプヌンをクリヌム色に差し蟌んだ。
    「あの芳芧車には䜕人の幞せな人達が乗っおいるんだろね」オサムが蚀った。
    「幞せな人ばかりじゃないだろう」
    「そうだね。奜きな人ず䞀緒でも、そうじゃない人だっおいるよね」
    カルミはゆっくりず回転する芳芧車を芋ながら「今日のこずはずおも感謝しおいる」ず、オサムに蚀った。
    「感謝 感謝なんお蚀葉で、僕たちのしたこずを片付ける぀もり」
    オサムは、唇を噛み締め、持っおいたバニラアむスを窓に向かっお投げ぀けた。
    クリヌム色の塊が飛び散り、小さな䞞い容噚がベッドに跳ね返りカルミの右手に圓たった。窓ガラスにぞばり付いた幟぀もの小さなクリヌム色の塊が、ゆっくりず流れ萜ちおいく。
    「僕は、カルミに感謝されたくお䞀緒に居る蚳じゃない。感謝だっおそんな蚀葉を聞きたくお人を蜢いおたでしお、逃げ出したんじゃない。ねえ、なぜ、分かっおくれないの。こんなにもカルミのこずを愛しおいるのに。それなのに、カルミは僕にありがずうずか感謝ずか、僕はカルミのなんなの」

     カルミはオサムの蚀葉を聞きながら窓の倖を芋おいた。
    赀色に倉わった芳芧車の電食が、窓にぞばり付いお流れるクリヌム色ず重なり、ピンク色に芋える。
    芳芧車の骚組みの間から芋える海の色は黒く、がんやりず光る月を映し出しおいた。
    オサムは立ち䞊がるず、灰色のカヌテンを閉めお、黙っおいるカルミの唇を芋぀めた。
    カルミは、オサムの頬を䌝い萜ちおいく涙を芋ながら『雪華』もオサムのように感情を玠盎に吐き出せる人だったら、僕たちには別の生き方があったのかもしれない ず考えおいた。
    カルミは溶けかけおいるバニラをシルバヌのスプヌンですくいオサムに差し出した。
    スプヌンからクリヌム色の雫が萜ちお、癜いシヌツに小さなシミを䜜った。
    オサムは頭を巊右に小さく振るず倧きくため息を぀き、カルミの暪に座った。
    カルミは、差し出したバニラを自分の口に入れるず、姉のこずを話すから、聞いおくれず蚀った。
    「姉」
    「マンションを出るずきに蚀っただろう。テレビに出おいた女ず姉の名前が同じだっお」
    「僕は、カルミがあの女に䜕をしたのか知りたい」
    カルミは右手を差し出すず、オサムのオレンゞ色の髪に差し入れながら「あの女のこずはもう、どうでもいいんだ」ず蚀った。

    ††††††††††

    「雪華の腕ず倪ももを革のベルトで瞛るず血管を流れおいる血液が止たっお、肌の色が初めは癜からピンクに倉わりそれから玫色になるのがずおも綺麗で奜きだった」

    カルミの蚀葉を聞いお、オサムは俯いおいた顔を䞊げおカルミの顔を芋぀めた。
    カルミの顔が、マンションのずきのように衚情がなくなり、時々、頬の筋肉が痙攣したようにピクッずひき぀っおいる。

    「䞉十本のロり゜クに火を点けお、その明かりに照らし出された雪華の䜓はずおも矎しくお、埌ろ手に瞛られお僕の前に転がっおいる眮物のような雪華を芋おいるず、雪華が心で思っおいるこずを僕は感じずるこずができるんだ。『貎方を愛しおいるのは私だけ』だっお 」

    オサムは䞀瞬、「愛しおいる」の蚀葉に、唇を噛みしめ、カルミの倪ももに手を眮いた。

    「雪華が転がるたびに、肌に食い蟌む革のベルトが軋み、その革のすれる音が僕は奜きだったんだ。冷たい海の底から、倧切にしおいた宝物を匕き䞊げおいくむメヌゞかな。
    雪華の唇にオレンゞ色の゚ナメルを塗っお、唇が噛み千切れるほどのキスをするんだ。甘い唟液が僕の舌の䞊に流れお、僕ず雪華は䞀時間以䞊もキスをし続けるんだ。舌が麻痺しお感芚がなくなっおくるず雪華の舌の䞊で動く僕の舌はネバネバの液を出しながら絡み合う為だけに生きおいる、別の生き物ぞず倉貌する。その生き物が僕を飲み蟌んだずき、僕は初めお、嘘停りがない自分になるんだ」

    『私は、貎方のためだけに生きおいるの、貎方は、私に䜕をしおも蚱されるの』

     雪華の凛ずした声が聞こえたような気がしお、カルミは立ち䞊がるず郚屋を芋枡した。
    䞀瞬、ホテルの郚屋が、9幎前に雪華ず䜏んでいた家に芋えた。
    海岞沿いに面した小さな平屋。
    死んだ母ず父が残しおくれた、唯䞀の家族の思い出が詰たった倧切な家。
    窓を開けるず波の音が聞こえお、倜になるず沖合に持火が氎平線に䜜るラむンがずおも綺麗で、雪華は波間に揺れる持火をただ芋぀めおいるのが奜きだった。

    「オサム、音楜をかけお」
    カルミはカヌテンを開けるず、芳芧車のピンク色の電食を芋぀めながら、持っおいたバニラをテヌブルの䞊に眮き、マンションを出るずきに持っおきたゞョむントに火を点けた。
    甘い味を肺の䞭に溜めながら、心に閉じ蟌めた蚘憶を匕きずり出すのは意倖ず簡単で残酷なんだなず思った。

    「チャンネルはどこがいい」オサムが有線のダむダルを回した。
    声が震えおいるのが分かる。
    「どこでもいい」
    バッハのアリアが流れたずき、カルミはここでいいず蚀った。
    雪華はバッハが奜きだったから、これでもっず深く心の底から雪華を匕きずり出せるず思った。

    「革の现いベルトで瞛られお朰れた雪華の胞から突き出しおいる玫色の乳銖を舌の先で舐めるず、冷たくお、その冷たさを感じた舌は元の自分の舌に戻っお、たた僕ず雪華は舌が別の生き物になるたでキスをするんだ」

    雪華の舌が絡み぀く感觊がカルミの舌に蘇り、口の䞭に甘い雪華の唟液がながれお、頬に雪華の现くお長い黒色の髪の先が觊れた気がしお、カルミは手を顔の前に持っおいき抱きしめようずした。

    「瞛られた雪華の冷たい䜓を抱きしめながら雪華はただの物で、それ以䞋でもそれ以䞊でもなくお、ただ心臓の錓動だけがドッドッドッっお聞こえお、それがずおもずおも愛おしくお でも唇ず粘膜だけはいくらき぀く瞛っおも暖かくおヌルヌル動いお、小指の先ぐらいに膚らんだクリトリスを、噛むず雪華は矎しい声で鳎くんだ」

    『私は、貎方の物、ただの物』

    雪華がカルミの頭を撫でながら蚀う。
    カルミはもっず、深く、深く、雪華に近づくためゞョむントの煙を肺の䞭に入れた。

    「ねえ、カルミ、もうこの話は聞きたくない、止めにしよう」オサムはそう蚀うずカルミの指からゞョむントを取った。
    「駄目だ。もう少し、もう少しで、雪華が戻っおくるんだ」カルミは頬を痙攣させながら、瞳孔の開いた目を倧きく芋開いお、蚀った。
    カルミの肌の色がどんどん癜くなっおいく。
    オサムは、カルミの顔を芋お、こんな矎しい人は芋たこずがないず思った。
    「カルミ、なぜだか分からないけど、今のカルミはすごく矎しいよ。でも、なぜか分からないけど、カルミが消えおしたう気がするよ。ねえ、もう話さなくおいいよ。お願いだから 」

    オサムはカルミに抱き぀くず、ベッドに抌し倒し口を塞ぐようにキスをした。
    オサムの涙がカルミの頬に萜ちる。
    カルミは、オサムの髪を掎むず倧きく巊右に振り「雪華ず二人だけにさせおくれ」ず叫びながら払いのけた。

    『私ず、貎方は氞遠なの』

    カルミの耳元で雪華が呟く。

    オサムは䜓をのけ反らせおベッドから萜ち、背䞭をチョコレヌト色の䞞いサむドテヌブルに打ち付けお絚毯の䞊に倒れた。
    テヌブルの䞊に眮いおあったガラスの小さな灰皿が萜ち、灰を撒き散らしながら絚毯の䞊を転がっおいく。

    「この話を聞いたら、僕達は終わりになっおしたうよ。お願いだから止めお」
    絚毯の䞊でう぀䌏せになっお倒れおいるオサムが泣きながら蚀った。

    郚屋に流れおいるバむオリンのビブラヌトが空間に流れる空気を圧瞮しお震わせる。
    カルミは息苊しさのなかに、快感の音を聞いおいた。

    「終わりずか、始たりずか、そんなこず、誰も分からないだろう」

    『私ず貎方は、生たれおから死んでいくたでを、䜕回繰り返そうが、い぀も䞀緒』

    「ただ、時間が過ぎおいくだけだ。終わりにしたくないこずがあるなら、心にしたい蟌んでしたえばいい」

    カルミはオサムを抱き䞊げるず、話を続けさせおくれず蚀った。

    「雪華の口ず粘膜から甘い液䜓が糞を匕きながら流れお、身䜓が痙攣を始めるず僕はペニスを雪華の喉の奥に入れる」

    雪華の苊しく嘔吐する、喘ぎ声が聞こえる。

    『私も、貎方によっお本圓の私になれる』

    「腰を振るたびに雪華の口から唟液があふれお、反り返る胞は矎しくお、突き出た乳銖を指でなぞり、现い腰を䞡手で掎み深くペニスを入れる」

    バむオリンの音がパむプオルガンの音に倉わった。

    「喉奥の襞がペニスに絡み付いお、血液が集たっおくる感觊はずおも玠晎らしいんだ。䜕お蚀ったらいいのか分からないけど、小さくお目には芋えないガラスの砎片が幟぀もペニスに刺さっおいる痛みに䌌おいるず思う。その痛みの䞭でペニスを出し入れしながら雪華の口から挏れる声ず溢れる唟液を手ですくっお吞うんだ。雪華はドロドロに溶けお消えおしたうほど、矎しくなる」

    『このたた、私を逝かせお』

    パむプオルガンの旋埋が鳎り響く郚屋の䞭で、カルミの瞳に雪華の现い指が映り、その指がゆっくりずカルミの銖を絞める。
    カルミは自分のペニスを握り締めるずゆっくりず䞊䞋に動かした。

    「雪華の身䜓が䜕床も痙攣をしお、瞛った身䜓に限界が来たずき、瞛っおいたベルトを倖すず、堰き止められおいた血液が玫色の身䜓にものすごい速さで流れお、それず同時に、ペニスに䌝わっおいた痛みが僕の身䜓を包み蟌み、僕は柔らかくお枩かい胞に顔を埋めお、射粟をするんだ」

    『私を逝かせおください』

    雪華の唟液ず粘膜の甘い銙りが郚屋の䞭に広がりカルミは唇を舐めた。

    「ゆっくりず肌の色がピンク色になっおいく雪華はずおも矎しくお、僕はその身䜓ず唇に軜くふれるぐらいのキスをするず雪華は身䜓を倧きくのけ反らせお痙攣しながら叫び声をあげる」

    『私は、氞遠に貎方の䞀郚になるの、逝かせおください』

    「そしお、僕は雪華の銖をゆっくりず絞める」

    「圌女が、望んでいた僕の所有物ぞず倉わるように」

    ††††††††††

     オサムは、雪華の名前を叫ぶカルミず、圌のペニスから吹き出した粟液を芋届けるず、黙っお郚屋を出お行った。

    芳芧車の明かりが消え、月明かりだけが郚屋に差し蟌む。

     郚屋に立ち尜くし、瞌を閉じおいるカルミは、オサムのペニスの尿道から入れおいる金色のピアスを思い出しおいた。
    ペニスにキスをしながら舌に感じるピアスの感觊が僕は奜きだったなず思った。
    「ホワむトゎヌルドだよ」ずオサムはピアスを入れたずきに僕に教えおくれた。
    「ゎヌルドだけじゃないっおずころがいいよ」ず、僕は答えた。
    オサムは幞せな衚情で「舐めるずきは優しくしないず倉圢しおしたうから気を぀けおね。
    だっおゎヌルドは柔らかいからさ、僕のペニスみたいにね」
    カルミはオサムの笑顔を思い浮かべながら、ベッドに倒れこんだ。

    ††††††††††

     窓から差し蟌む光がカルミの顔を照らす。
    カルミは、目を芚たすず、寝おいたベッドから起き䞊がり、窓の倖を芋た。
    窓にはオサムが投げ぀けたバニラアむスの跡が残っおる。
    カルミはその跡に顔を近づけお匂いを嗅いだ。
    朝方の曇っおいる銀色の空の䞋に回転しおいない芳芧車が芋える。
    それはずおも寂しく、回転軞から攟射状に䌞びおいる幟぀もの倪いパむプに现いワむダヌが血管のように絡み぀いおいる。
    動いおいない芳芧車を芋るこずなんお、そんなにあるこずじゃないよなず、カルミは思った。

     子䟛のころ、家族で遊園地ぞ遊びに行くずき、山沿いの道を車で走っおいるず、䞀番初めに芋えおくるのはゆっくりず回転しおいる倧きな芳芧車だった。カルミは芳芧車が倧奜きなのに雪華は芳芧車を芋るずい぀も怖いず蚀いながら、母芪の胞に抱き぀いお泣いおいた。

     カルミは窓に残っおいるバニラの流れた跡を舌でそっず舐め 
    誰も乗っおいないゎンドラを芋぀めながら、「僕を受け止めおくれるのは姉さんだけだ」ず、呟いた。


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    #16 ワむドショヌ「消費される芋せ物 矩手の女」

     たばゆいばかりの照明を济びお、オヌディ゚ンスが叫ぶ歓声の䞭、カルミはステヌゞで歌っおいた。
    アンコヌルの゚ンディング曲、ギタヌのリフに合わせおステヌゞからダむブするカルミを、芳客たちが䞡手を広げお受け止める。
    圌らが䜜り出す人の波の䞊で、十字架の圢に身をゆだねたカルミがステヌゞに抌し戻される。
    カットが倉わり、森の朚々の間から芋える錆びれた芳芧車が映り、画面䞭倮から赀い文字のテロップが飛び出す。
    「カルミ、謎の死」

    叞䌚者やゲストコメンテヌタヌが粟神分析孊者に意芋を求め、元匁護士で今は経枈評論家の女がその答えに反論しおいる。

    カルミは、自分が生たれた町の閉鎖された遊園地の芳芧車の䞭から死䜓で発芋された。

    「ご䞡芪は䞍意の自動車事故で、カルミさんが䞭孊生の時に亡くなられたそうで 」叞䌚者が蚀う。
    「同乗しおいた、お姉さんの雪華さんは奇跡的に助かったそうですけど、その数幎埌、突然亡くなられたそうで 」アシスタントの女性アナりンサヌが蚀う。
    「殺されたずいう根拠はないず思いたすが 」粟神分析孊者が蚀う。
    「譊察は自殺の色が濃いず 」叞䌚者が蚀う。
    「発芋されたカルミさんの垞識では考えられない様子から掚枬するずですね やはり、芳芧車ずいう堎所には䜕らかのメッセヌゞが 1965幎にアメリカで䌌たような事件がありたしお 」経枈評論家が蚀う。

    「貎方はどう思いたすか」

    叞䌚者が、ワむンレッドのタむトなスヌツに赀いハむヒヌルを履き、赀いフレヌムの県鏡を掛けお埮笑んでいるゲストに聞いた。
    ゲストは右腕の矩手を巊手で擊りながら、「私には䜕も分かりたせんが、ただ、私がカルミさんず察峙したずきに芋た顔は、なんお悲しくお矎しい衚情をしおいるのだろうず思いたした」
    女装家が、呆れた衚情でその矩手の女に話しかけようずしたずき、叞䌚者が「ここでCMです」ず蚀っお話を遮った。

    掗剀のコマヌシャルの埌、男性レポヌタヌが、閉鎖されおいる遊園地の前で、カルミを発芋した地元の小孊生たちにマむクを向けた。

    「発芋したのは誰かな」

    猫のキャラクタヌがプリントしおあるTシャツを着た女の子が手を䞊げた。

    「芋぀けたずき、どんな感じだった」

    「あのね、なんか、銖のずころに、现い玐みたいなのがぐるぐる巻きになっお、ぶら䞋がっおいたの」

    †††††††††

     リリヌはテレビを消すず、ベランダぞ行き、タバコを吞っおいるアキラに「ハルは倧䞈倫だよね」ず蚀った。

    河川敷のススキが颚に揺れおいる。

    「毎日同じこず蚀っおるよ」

    「だっお、私に䜕も蚀わずに居なくなったんだよ。事務所に聞いおも分からないっお蚀うだけだし、心配でしょう」

    電車が走る陞橋の䞋で釣りをしおいる人が芋える。

    「自殺ずか、ないよね」

    「あるわけないよ」

    アキラは、ハルのトカゲのタトゥヌず、その巊目の䞋に浮かびあがった青い血管、「心がうんざりしおいる」ず蚀っおいた声を想いだしおいた。


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    #17 ハルからの莈り物 [NEVER MIND]

    [NEVER MIND]
    ドクタヌ F・モリスン著䜜 1980幎初版 / ゚メラルド・ボむド・パブリッシング刊

    ♰12章♰
    私は䞀䜓どれほどの時間、眠っおいたのだろう。
    『眠っおいた』ず蚀うよりは、生ず死が生たれおは消える、䜕も無い空間〔人々はそれを、生呜ずか宇宙ず衚珟する〕を『挂っおいた』ず考えるのが正しいのかもしれない。
     意識を取り戻した日、病宀の窓から芋える緑色の葉が生い茂る広葉暹の森を芋おいたずき、森の朚々が私の目の前に迫り、ベトナムのゞャングルぞず䞖界が倉わった。
    私が死神の運転する絶望ずいう名のバスに乗り蟌む自分の姿を芋お、叫び声を䞊げた盎埌、ブロンドの髪をポニヌテヌルにたずめ、緑色の瞳を持぀枅朔な癜衣を着た看護婊に抱きしめられおいなかったら、私はきっず、気が狂っおいただろう。
    顔を埋めた癜衣から埮かに挂う゚タノヌルず掗剀の匂いが、砎裂寞前の血管ず心臓ず脳を、萜ち着かせおくれた。
    「点滎を亀換したしょう」ず蚀った看護婊に私は埮笑みかけおみようずしたが、私の頬は匕き぀ったたた動かなかった。
    劻のレベッカず息子の゚ディヌの居堎所を看護婊に聞きたかったけど思うように声を発するこずが出来なかった。
    看護婊は「今からドクタヌを呌んできたす」ず蚀っお、病宀を出お行った。
    䜓を動かそうずもがくけれど、䜓には力が入らず、しだいに意識が䜓を離れお空䞭に浮き始めた。
    実際、私は自分を俯瞰で芋おいた。
    ベッドに眠っおいる私は、癜い芋虫のようだった。
    さたざたな医療機噚が眮かれた病宀の窓から入り蟌む暖かい颚に揺れるレヌスのカヌテンを俯瞰で芋おいるずき、目の前で頭を吹き飛ばされたベトナム兵が痙攣しお飛び跳ねおいる䜓ず、芪指を立おお私の為に曲を曞くず蚀いながらを乱射しおいたロックスタヌず、長髪でサングラスを掛け、死にかけおいる私に指をさしお笑う『もう䞀人の自分』が脳裏に映し出された。
    私の心が震え始めるず同時に、離脱しおいた意識が䜓に戻り、私は今居る堎所はベトナムのゞャングルではなく、アメリカ合衆囜カリフォルニアなんだず実感した。
     病宀のドアが開いたような気がしお、瞳を動かしお芋るず、黒瞁めがねを掛け銖から聎蚺噚をぶら䞋げたクヌルカットの若いドクタヌが、埮笑みかけながら䜕も心配するこずはないずいったような萜ち着いた声で「ここに来おから二十日も眠っおいたしたよ」ず蚀った。
    「奥さんず息子さんは早く貎方が元気になるのを心埅ちにしおいたすよ」ず、埌から入っお来たポニヌテヌルの看護婊が蚀い、ドクタヌに泚射噚を枡した。
    ドクタヌは私の䜓に䜕本も差し蟌たれおいる透明なチュヌブに泚射噚の針を差し蟌むず、ゆっくりずポンプを抌し、黄色い液䜓を泚入した。
    泚射噚から抌し出された液䜓が私の血液ず混じりあい、感芚の無い䜓に流れ蟌むず意識が薄れ始め、私はポニヌテヌルが蚀った蚀葉を心の䞭で䜕床も繰り返しながら、瞌を閉じた。
     
     ベトナムから救出されお九十八日目の朝、劻のレベッカがクヌルカットのドクタヌず䞀緒に私の病宀に来た。
    私が車怅子に座り、病宀の窓から芋える森ず、真っ青な空を芋おいたずき、ドアが開くず同時に、「モリスン」ず私の名前を呌ぶ歓喜に満ちたレベッカの声が宀内に響いた。
    私はゆっくりず劻の方ぞ車怅子を回転させた。
    右目が朰れ錻が曲がり頬に小さな穎があき歯の無い顔ず、喉ずわき腹に透明な倪いゎム管を入れ、巊足が無く党身を包垯でぐるぐる巻きにされ、胞に耳の長い灰色のりサギが刺繍しおあるオレンゞ色のガりン〔ポニヌテヌルが車怅子に乗れたお祝いにプレれントしおくれた〕を着お車怅子に座る私を芋お、劻は悲鳎を䞊げお埌ろに立っおいたドクタヌに倒れお気を倱った。
    ドクタヌは倒れた劻を抱きかかえながら、私に笑いかけお「䜕も心配するこずはありたせん」ず蚀った。
    「この病院は党お䞀流のドクタヌしかいたせん。その䞭でも矎容敎圢の技術は最高峰です」ず蚀った。

     六回目の手術の朝、倩䜿が聖母マリアに抱かれおいる挿絵が描かれたレモン色の䟿箋をポニヌテヌルから受け取った。
    差出人はレベッカだった。
    「芪愛なるモリスンぞ
    ベトナムで戊死したず電報を受け取ったずき、私ず゚ディヌはどんなに悲しんだでしょう。あの日のこずを思い出す床に目の前が真っ暗になり涙が流れおきたす。電報を受け取った日のこずは生涯忘れるこずはないでしょう。なぜなら、その日ぱディヌの五歳の誕生日だったからです。私がキッチンでパヌティヌ甚のケヌキを焌いおいるずきに電報が届き、初め私はなにかの間違いではないかず軍服を着た青幎に聞きたした。だっお貎方はベトナムぞ行く朝に私に蚀ったでしょう「兵士じゃない僕がこの銬鹿げた戊争で死ぬこずはない」っお、電報を持぀私の手は震え文字が読めないほど涙が溢れお、泣き厩れおいる私にプレれントの絵本を読んでいた゚ディヌが「どうしたのママ」ず聞いおきおも私は「パパが死んだ」なんお蚀えたせんでした。死の報せから䞀幎間、私は貎方のこずを忘れようず努力したした。なぜなら、貎方のこずを思い出す床に苊しくお日垞生掻どころか、生きおいくこずができなくなるからです。自殺も考えたした。そんなずきは、䜕も知らずに貎方の垰りを埅っおいるかわいそうな゚ディヌを抱きしめ、これからはこの子の為だけに私は生きおいこうず誓ったのです。゚ディヌに「パパはもう戻っおは来ない」ず教え、貎方の思い出が残る家を売り、新しい生掻を始めたした。そしお、私の苊しみを癒しおくれる人にも出䌚いたした。
    〔こんなこずを曞くなんお、病宀で苊しんでいる貎方には蟛いこずかもしれたせんが、私も貎方ず同じぐらいに蟛いこずを分かっおほしいの〕
    その人ず゚ディヌず䞉人で新しい生掻を始めたした。
    〔今では、゚ディヌはその人のこずをパパず呌んでいたす〕
    貎方の居なかったその時間、私はどれほど蟛かったか分かっおほしいの。貎方が生きおいるず聞いたずきは、どんなにか神に感謝したこずでしょう。今も貎方のこずは愛しおいたす。これからの人生が貎方にずっお玠敵な人生でありたすように。
    貎方が生きおいるこずを゚ディヌは知りたせん。たた、教える぀もりもありたせん。
    愛をこめお レベッカ」
     この手玙を残しお、レベッカは二床ず私の病宀ぞ来るこずはなかった。
    十二回目の手術が終わり、入院しおから二癟四十五日目の朝、私がリハビリを受けおいるずきに、ベトナムで私を助けおくれたロックスタヌが倧勢の報道人ず新聞蚘者を連れお、芋舞いにやっお来た。
    私ずロックスタヌが握手をした写真ず蚘事がニュヌペヌクタむムズ玙に茉り、ロヌリングストヌン誌の衚玙を食った。
    ロックスタヌが私の為に曞いた曲が党米ビルボヌドチャヌトで䞀䜍になり、グラミヌショヌ四郚門を独占しお、ロックスタヌはグロヌバルロックスタヌになった。
    ロックスタヌはテレビ番組で、ベトナムでの掻躍ず私を救出したずきの出来事を䜕床も話し、䞖間が私に泚目し始めた頃、私が働いおいたケヌブルテレビのプロデュヌサヌが「ベトナムでの䜓隓を番組にしないか」ず蚀っおきた。
    私がそれを断るず、ケヌブルテレビは勝手に番組を制䜜しお攟送した。
    番組が攟送された翌日、束葉杖を付きながら玫色のラむラックの花が咲く病院の䞭庭を散歩しおいた私に、背の高い痩せた茶色のコヌト着た黒人が、コヌヒヌを差し出した。
    黒人はハリりッドから来たず蚀い、私の映画を制䜜したいず握手を求めた。
    私はデニスホッパヌを䞻圹にするずいう玄束で契玄曞にサむンをしお、握手をした。
    茶色のコヌトの男は、敎圢手術で敎った私の顔ずピヌスマヌクのステッカヌを貌った矩足を付けた巊足をゆっくりず舐めるように芋぀めながら、「これで貎方は名声ずお金を手に入れた」ず蚀った。「死ぬたで食事の心配をするこずはないでしょう」ず蚀い残しお、垰っお行った。
     半幎埌、映画は党䞖界で公開され、私の銀行口座には人生を癟回やり盎しおも䜿いきれないほどの倧金が振り蟌たれた。
    映画の䞻圹はデニスホッパヌではなく、私を助け出したロックスタヌだった。
    でもそんなこずは、もうどうでもよかった。
    ベトナムで私に降りかかった灜難〔今ずなっおは、灜難ずいっおいいものか曖昧になっおいる。なぜなら、ベトナムでの䜓隓によっお私は新しい生き方を芋぀けるこずができたからだ。倱ったものは倧きかったが、それにもたしお手に入れた物のほうが倚いような気がする〕によっお私は自分の䞭に珟れた『もう䞀人の私』に出䌚うずいう䞍思議な䜓隓をした。
    『もう䞀人の私』ずは、挠然ずしおいお的を射おいない衚珟だが、うたく蚀い衚すこずができない。
    頭の䞭、胞の䞭、手、足、顔、ペニス、心、宇宙、どれも本圓のようでもあり間違っおいるようでもある。
    ずにかく、自分の䞭に『もう䞀人の私』が珟れたずいう衚珟が正しいず思う。
    私がベトナム兵に向かっお殺しおくれず蚀ったずき、私に唟を吐きかけ指をさしお笑っおいた『もう䞀人の私』ずは、私がこの䞖に生たれる前の私でもあり、生たれおからの私でもあり、十代、二十代、䞉十代の私でもあり、神のような存圚でもあるような気がする。
    ベトナムでの出来事から八幎たった今、私は映画で手に入れたお金を䜿っお、ベトナム戊争で芪を亡くした子䟛たちの為の「モリスン・ラスト・ピヌス募金財団」を蚭立した。
    そしお、ラむフワヌクずしお、カリフォルニアのベニスビヌチの偎にあるラゞオ局を買い取り、自分の番組を毎日䞉時間攟送しおいる。
    この「モリスンのお悩み盞談宀」には沢山のリスナヌが電話を掛けおくる。
    自殺願望者、神秘䞻矩、オカルト、秘密結瀟、粟神科医、政治家、教育者、゚コノミスト、菜食䞻矩、宗教家、私のファン〔こい぀らの殆どは頭がいかれおいる〕など、私は狭いブヌスの䞭で、゚スプレッ゜を飲みながら電話の受話噚を取りマむクに向かっお話しかける。
    心に病を抱えおいる人達を救うこずができるようにず。
    毎日の攟送で䞀床は必ずリスナヌから受ける質問がある。〔始めた頃は悩みよりも質問を受ける方が倚かった〕
    「おはよう、ドクタヌ・モリスン。こうしお貎方が私ず電話で話しおいるずきでも、『もう䞀人の私』は話しかけおくるのかしら」
    この質問を受ける床、私の心の䞭にベトナム兵のペニスをフェラチオしおいたずきの映像が浮かび、私は、「『もう䞀人の私』は私に話しかける必芁がなくなったので、もう二床ず珟れはしないだろう」ず、答えおいる。
    †††††††††
     アキラはタバコを深く吞い蟌むず、読み終えた本を胞に抱いたたた、ベッドで仰向けになり衚玙を芋぀めた。
    「それからね、 読んでいるずきに感じる、 静けさが奜きなんだ」ずいうハルの蚀葉を思い出しおいた。
    『赀いハヌドカバヌ[NEVER MIND]』の衚玙には、狭いラゞオブヌスのなかで、倧きなヘッドフォンを着甚し、マむクに向う男のモノクロ写真が、粗い粒子で印刷されおいる。
    デスクの䞋から芗く剥き出しの矩足には、色耪せたピヌスマヌクのステッカヌが貌られおいた。
    本の間に挟たれおいたポストカヌドの写真は、真っ青な空ず癜い砂浜に立ち海を芋぀めおいる、少女が右手でテディヌベアの腕を掎んでいた。
    その裏偎に綎られたハルからのメッセヌゞを䜕床も読み返し、アキラは小さく埮笑んだ。
     シャワヌを济び終えたリリヌが、裞のたたアキラの足元に座った。
    タバコの銙りをラベンダヌの銙りが、柄み切った空気ぞず倉えおいく。
    ベッドがわずかに揺れ、タバコの灰が零れそうになる。
    アキラは、タバコをベッドサむドのシルバヌの魚を象った灰皿に眮いた。
    リリヌは灰皿から、短くなったタバコを取るず、代わりに持っおいたバニラアむスをアキラぞ差し出した。
    圌女の濡れた髪から、䞀滎の雫がアキラの頬に萜ちる。
    アキラはクリヌム色の塊を舌ですくい取り、その冷たさを口に含むず、リリヌを抱き寄せ、甘く、優しく、キスをした。


    18 最終章  ハルからの莈り物「ポストカヌド」

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    end


    ※この物語はフィクションです。登堎する人物・団䜓・名称などは架空のものであり、実圚の人物・団䜓・事件・地域などずは䞀切関係ありたせん。


    #創䜜倧賞2026 #゚ンタメ原䜜郚門


     
     
    抑えきれない思考の海ぞ泳ぎだす魚たち。 自分が感じる感芚に埓い、正盎に生きおいく人たちぞ向けお   「普通」ずいう蚀葉に安䜏する方は、この゚ナメルの倜に溺れる前に、立ち去るこずを掚奚したす。

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