
支援学校を卒業したあと、親が直面する現実。誰も教えてくれなかった3つのこと
学校を卒業する。
その日に向けて、多くの親御さんが進路を悩まれていると思います。
就労か、生活介護か。
どの事業所がいいか。
見学に行き、説明会に参加し、相談員さんと話し合いを重ねる。
でも、実際に新生活が始まってから、「こんなはずじゃなかった」と感じる方が少なくありません。
福祉職員として働きながら、障がい児の親でもある私が、両方の立場から気づいた現実を、3つお伝えします。

1つ目:学校は、想像以上に手厚かった
福祉事業所には、「人員配置」という決まりがあります。
職員1人が、利用者さんを何人見るか、という基準です。
生活介護事業所の見学会で、よく耳にする言葉があります。
「すごい、学校より手厚い!」
でも、これは少し違います。
学校は、様々な特性を持つ子どもたちが一緒に学ぶ場所です。
一方、障がい福祉事業所は、同じような困りごとを持つ方々が集まる場所です。比較の前提が、そもそも違います。
生活介護事業所が特別に人員が手厚いわけでも、就労支援事業所が極端に少ないわけでもありません。
事業の種類によって、基準が異なるだけです。
ただ、1つだけ確かなことがあります。
学校ほど、手厚く支援して導いてくださる環境は、福祉事業所にはありません。
このことを事前に知っておくだけで、新生活が始まったときの「心が楽」になります。
2つ目:療育や発達支援からは、ほど遠い事業所も多い
児童発達支援や放課後等デイサービスを利用してこられた方は、「障がい福祉事業所」という括りで、療育や視覚支援が当たり前に行われると思っていることがあります。
でも、現実は違います。事業所によって、内容にかなりの差があります。
成人向けの事業所は、生活のサポート(介護)や就職に向けた訓練が目的として作られています。
療育的な関わりや視覚支援がなくても、事業の目的に反していないのが現状です。
新生活が始まってから、モヤモヤした感情を抱える方が多いのは、ここに理由があります。
「何かが違う」と感じたら、そのままにしないでください。
相談員さんやサービス管理責任者さんに、遠慮せず伝えてほしいと思います。
コミュニケーションを重ねながら進んでいくことが、一番の解決策です。
3つ目:送迎サービスは、事業所の努力の結晶
送迎サービスを提供してくださっている事業所は、多大な手間とコストをかけています。
国からは「加算」という形で報酬が支払われていますが、現状はかなりの少額です。
ガソリン代が高騰しても、報酬額がそれに見合って上がることはほぼありません。
報酬改定のたびに、廃止の方向性が議論されることもある、危うい制度です。
送迎のために専用の人員を雇う事業所も多くあります。
その人件費のために、資格を持つ優秀な専門職の採用を断念せざるを得ないケースも、現場では珍しくありません。
「サービス」という言葉には、無償で当たり前のように提供されるものというイメージがあるかもしれません。
でも、送迎すればするほど、事業所は疲弊していく現実があります。
その努力を、知っていただきたいと思っています。
3つのことを書きました。
これらは、批判でも不満でもありません。
福祉職員として現場を見てきた私が、障がい児の親として伝えたい、現実です。
知ることで、事業所との関係が少し変わるかもしれません。
知ることで、子どもにとってより良い環境を選べるかもしれません。
支援学校を卒業した後の世界は、学校とは違います。
でも、そこにも、懸命に働いている人たちがいます。
その事実が、一人でも多くの親御さんに届いてほしいと思っています。
事業所は、制度の中で精一杯やっています。
親御さんも、子どものために精一杯考えています。
でも、お互いの現実を知らないまま、すれ違っていることが、あまりにも多い。
知ることで、関係が変わります。
事業所の努力が見えると、「お願いしやすく」なります。
親御さんの不安が伝わると、事業所も「一緒に考えやすく」なります。
子育ては、親だけでするものではありません。
支援も、事業所だけでするものではありません。
親と事業所が、同じ方向を向いて、一緒に子どもの未来を作っていく。
そんな関係が、一組でも多く生まれてほしいと思っています。
― nono