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身に覚えのないアザ

    インターホンが鳴って、目が覚めた。

    ハッ…そうだった。
    今日朝イチに荷物を指定したんだった。

    起きたてとは思えない速度で起き上がると、
    ベッドの近くに配置してある棚に体当たりしてしまった。

    いっ…!

    角がちょうど鳩尾(みぞおち)に入ってしまった。

    初経験の形の怪我である。

    しかし、配達員に帰られる訳にはいかない。
    今は痛がるよりも荷物を受け取る方が優先だ。

    ドアを開けて応対する。
    サインをとんでもない顔で書く。
    配達員は何も悪くない。

    荷物を玄関付近に起き、走ってベッドに戻る。
    やっと痛がる事が出来る。

    一応出血がないか確認をする。
    本当にくぼみに角が直撃したのだろう、痛みの割に跡が小さい。

    眠っている時に痒かったのかな〜くらいの赤さで皮膚もむけていなかった。

    時間が経って広範囲に青くなったらどうしようという不安を抱えながらも、私は睡魔に負けて二度寝をした。

    起きて1日過ごしても特に跡が大きくなったり変色することもなく、痛みの余韻だけ残っていた。

    夕方、ピラティスに行った。
    変に気にしてしまって背中をつりそうになったが鳩尾は特に問題なかった。

    風呂上がり、鏡に写った自分に驚いた。

    左の二の腕に大きな青アザが出来ていて、周りは黄色くなっていた。

    え……いつからだ? 

    全く身に覚えがなかった。

    自分の身に起こっているのにも関わらず、本当に身に覚えがないのである。

    ピラティスか?
    今日は腕を集中的に鍛えるメニューだったが、流石にピラティスでこんなアザは出来ない。

    次に、朝の鳩尾強打事件を思い出す。

    あの時は確か鳩尾を角に強打して…
    思い出しきれず現場検証をしようと寝室に戻った。

    ズレた棚は鳩尾だけでタックルした記憶になっていた。

    しかしよく考えると鳩尾だけで色々と入った棚が動くはずもなく、私の二の腕でも押されていたという推理にたどり着いた。

    私は鳩尾の痛さと荷物の受け取りの焦りで、腕の痛みを全く感じていなかったのである。

    今までも何回も身に覚えのないアザが出来ていた事がある。

    知り合いに、身に覚えのないアザがあるのはアホだと言われた事もある。

    身に覚えのないアザがよく出来ると言うと酒で記憶が無いのだろうと思う人もいるのかもしれない。

    しかし、私の場合はお酒を飲まない。

    今回のこの鳩尾強打事件でわかった。

    私が身に覚えのないアザが出来る時は、アザが出来るほどの痛み以上にその瞬間何かを必死にやっているのである。

    舐めてもらっちゃあ困る。

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