
【物語】はちのななびぃ🐝フロレイユ ”クロニクル” 🍯003
第3びぃ話 名前を忘れた花
びぃ〜ん。びぃ〜ん。
アルナビアの花に手を振り、ななびぃは再び空へ飛び立った。
「どんなお花が咲いているかなぁ。」
色とりどりの、たくさんの種類の花たちが仲良く風に揺れている。
ななびぃが飛ぶ、青く澄んだ広い空に向かって挨拶をしているみたい。
「みんな気持ちよさそう!ななびぃも気持ちがいいなぁ♪」
「ん?」
くもりの森を抜け、きれいな花が並ぶその先で、
一輪だけ、うつむいて咲くお花に目が止まった。
周りはみんな顔を上げて揺れているのに、そのお花だけは顔を上げていない。みんなと同じ場所にいるのに、同じ場所にいないような。黄色のきれいなお花であるはずなのに、わずかにくすんで見える…
ななびぃはそのお花がとても気になって、やさしく声をかけた。
「こんにちは!」
お花はほんの少しだけ顔を上げた。
「こんにちは…」
その声は、とても優しいけれど、どこか寂しそう。
「きれいなお花だね!」
ななびぃがそう言うと、お花はまた顔を下げて小さくクビを振る。
「わたしは、きれいじゃない」
「どうしてそう思うの?」
ななびぃが聞いてから沈黙が続く。そのあと、お花は震える声で言った。
「わたし…わたしの名前がわからないの」
ななびぃは目を丸くする。
「名前がわからないの?」
動揺しながらも、助けを求めるかのように、ななびぃと目を合わせないまま、話を始めた。
「うん。前はあった気がするんだけど…。
なんかね、本当の自分がわからなくなっちゃって」
あたたかい風がそっと吹く。
ななびぃはお花の隣にゆっくり着地した。
「名前があった気がするのなら、きっとあるはずだよ!一緒に探そうよ!きみの本当の名前をななびぃも知りたい!」
遠くの空で、小さな光がひとつ、瞬いた。
まるで、フロレイユの世界全てが、お花とななびぃを見守っているようだ。
ななびぃの言葉を聞いて、お花は悲しそうに笑った。
「無理だよ。ずっと探してきたんだから。」
「みんなが『あの子みたいになればいい』『もっと明るく』『もっと強く』『もっと頑張って』って」
「わたしは、その通りになろうとした。みんなが言うんだから間違いないって」
「でも、気づいたら…。わたしはいるのに、名前がいなくなってたの」
「わたしがどうであれば正解かわからなくなって」
ななびぃは何も言わずに、ただ静かにお花の話を聞いていた。
そして、ななびぃは尋ねた。
「きみは、何が好き?」
お花は、全く関係のない、ななびぃの質問に驚いた。
戸惑った様子ながらも、ななびぃの質問に答えようとした。
「好き?」
「うん。何をしていると、心があたたかくなる?」
でも、すぐに答えられなかった。
お花は目を閉じた。
心地よい風だけが、お花とななびぃのあいだを通り抜ける。
お花はひとつひとつ、大切につぶやいた。
「誰かの笑顔が好き」
「きれいな夕焼けが好き」
「静かな時間が好き」
少し照れながら
「きいろが好き」
くすんでみえた色が、鮮やかな黄色に戻り始めた。
「思い出してるんだ。誰かに言われた自分じゃなくて」
「きみ自身を」
ななびぃの声にお花は、はっとしたように顔を上げた。
「わたしとして咲くために生まれてきた」
小鳥のさえずりが聞こえてきた。
「思い出した!私の名前!」
お花は大きく息を吸い、空を見上げる。
ななフロ🐝better together…