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むングリッシュブルヌベルのうみ 第拟陞話

    歩たない、歩きたくない、歩かない

    䌎に、䌞ばしお、匕いお

    単玔に、それだけ、それ以䞊でもそれ以䞋でもなく、それだけで

    満たされ充たされる、小さな折鶎の初恋は倧きく砎かれ匕き千切れ、埮塵に成り果おた

    名前の分からない、愛する貎女ぞ

    君は、誰なのですか


    小さな䜕かを握り締めたハギはそれをシズクに向けおいる、割れた茶噚、事の急加速さ、急展開を物語る倒れた車怅子の車茪の回り加枛、そしお、愛する女に突き飛ばされ、無様に倒れた自身ずそれでも動じない、寧ろ、楜しんでいるかの様に口端を少しず぀持ち䞊げ、組んだ脚の爪先を小さく螊らせる奎。

    「そうか、物質たで持ち蟌んでいたか 盞圓に犁忌ず戯れるのが奜きなんだな」
    「持ち蟌んだのは、私ではなく−先生−です 私が歀凊で䜕䞍自由無く生きおいける様に、物語の䞻人公で居続けられる様にず その時が蚪れた時は、迷いなく向け、匕き金を匕けず扱い方を孊びたした」
    状況を党く飲み蟌めないツバメは只々、亀互に盞手を芋る事しか出来なかった。䞀䜓、ハギはシズクに䜕を向けおいるのだ加えお、他通り目の物質を持ち蟌んだそれは、䟋え、物語の造成䞻である偎の者でさえも砎っおはならない絶察条件の筈。父芪圹の男は蚀った、「持ち垰るのは人間だけ、物質を決しお持ち垰るな、有機無機に関わらず、物質を決しお持ち蟌むな」ず。それなのに、こうも簡単に理は砎られた。これは、この展開は䜕なのだ今の今たで、どれだけの自己犠牲を利他犠牲を課しお匷いお求め求められ いや、振り返れば䜕時だっお求めるだけで、求められる事は只の䞀床も無かった。䜕時だっお、車怅子越しの䞀通䌚話。向き合えるのは、䞍甲斐ない男ながらも只の男ずしお組み敷いお愛する豊最な女を貪る数時間だけ。それでも、それだけずしおも、だったずしおも。

    「ツバメ䜕時たでも、がけっず座っおいるな手䌝え」
    「 ハギ 」
    「ヌ」
    䜕かが狂い始めおいる、始めから半ばから䜕凊から歀凊からなのか足音の無い厩壊。圓たり前だ、厩壊は事象で人間や動怍物ではない、魚の様に広く広い広過ぎる青い青い海を泳ぎ続け、矎しく跳ね䞊がり、やがお、再びの圷埚いずいう名の航海が始たる。目の前の光景を受け入れきれない、衝動的な珟実逃避に楔を打ちこむかの様に金属音が聎芚に届く。音の方向に顔を向けるず、悲しいかな、分かっおしたう。それが、枷だずいう事が。だが、枷ずしおの、この圢状は始めお芋る。これは、金属なのか僅かな錆ず劣化が芋え隠れする。だが、金属補の枷を芋た事は無 い 
    「ヌ」
    いや、芋た。ある、芋た事が。䜕凊でその圢状を浅くなる呌吞ず共に尋垞では無い回転速床で廻り始める過去達。歀凊ではない、䜕  凊で
    「 あ 」

    − の容疑で、今朝 −

    䜰参通り目、䜕気無く、本圓に䜕気無く、狭い閉ざされた青い空を仰ぎ芋おしたった。だっお、あの時、俯いお、決しお、誰にも認識をされない様に矎化安党にず䞊手く語化され無数に匵り巡らされた芖線に芖認されない様に目的の堎所ぞず歩を進めおいた、その時。ほんの䞀瞬、光が県球に射し蟌んだ。眩しかった、自然ず無意識に顔が持ち䞊がる。霞んで淀んだ空気の向日偎、人工物ず人工物の合間、青い空を芋た。それだけの為だったのかいや、やはり。それだけではなかったのか。右端に僅かにそれでも、その䞀瞬を芋た。その䞀瞬の映像を認識した。咎人の、その芆われおいた筈の䞡手銖が䜕かの匟みで露わになった瞬間を。

    「随分ず玠盎で、助かりたしたわ たさか、これも貎方の算段内に組み蟌たれおいるのかしら」
    「悪いが、指先分の寛容さで手の内を僅かばかりも明かさない奎に教える事は出来ない」
    ハギは矎しく均等な笑みを零すず、シズクの頬に拳を叩き付けた。今の今たで、䜕凊にそんな凶暎性を秘めおいたのかツバメの唯䞀無二の寄る蟺は音を立おひび割れ厩れ始めた、抑えきれない目眩を匕き起こす、䞉半芏管を奮い立たせ、軜く揺れたシズクの䜓が転倒しない様に手錠に結び付けた瞄に力を蟌めた。
    「意倖ず力あるんだな」
    「お耒めの蚀葉かしら䜕でもいいわ、感謝の印に䞀぀だけ教えおあげる」
    「ヌ」
    「冷環」
    「」
    「ヌ」
    「他通り目の貎方でも倧䜓の人間関係は把握しお歀凊に居お歀凊に居るのでしょう」
    「ハギ」
    「䜕倧声出しお煩いんだけど」
    「 今、冷環っお 」
    「それが䜕貎方に䜕のヌ」

    「あ、居たした居たした、咎人発芋ですね いやぁ、それにしおも、筋曞き通りに進む高揚の感芚は䜕時䜕時たでも味わいたいものですなぁ」
    子䟛か青幎か人間か人間以倖か䜕者か誰か分からない、この唐突に珟れた第䞉者は䜕なのだだが、状況が䞍利益に傟いおいるのだけは確かだ。確実に。
    「貎方は、誰」
    「倱瀌臎したした、髙月頌遥ず申したす」
    「ヌタカ ツ キ」
    「瑛未の埓者家筆頭が䜕故、事態介入を」
    ハギの質疑を䞞ごず無芖し、頌遥が嬉々ずした衚情で芋おいたのはシズクだけだった。芖線の行先に機埮な女のハギは苛立った衚情を遠慮なく頌遥に向けたが頌遥は意に介さず、シズクの反応を埅っおいた。事態の曎なる混乱にツバメは利き手で刀の柄をそっず握り締め盎し、浅く呌吞をした。それず同時に臭いが、より確かになる。ありずあらゆる臭いを嗅ぎ慣れおいるずはいえ、先皋から臭い始めおいる䜕かの正䜓が掎めない。血なのか吐瀉物なのか焌けおはならない焌けたか飛び出しおはならない飛び出しかヌ。
    「」
    䜕故、その存圚に気付かなかったのか足音の様な存圚を誇瀺する䜕かが無かったからかだずしおも、こんなにも臭いを撒き散らしながらも䜕もにも気付かれないのは異様過ぎる。そうだ、知らないからだ。この存圚を指す、呌称も通称も。二足で歩いおいるず芖認は出来る、぀たりは人間。だが、本圓に人間なのか溶けながら溢れさせながら零しながら、それでも歀方に向かっお歩いおいる事は認識出来る。そしお、ハギが握り締めおいた小さな゜レが音を立おお床に萜ちた。


    「ヌ」
    高揚した䜓ず心が䞀気に冷めた。求めお止たない人間が初めお振り返っおくれた、耒めおくれた、愛しおくれた、優しくしおくれた、玄束しおくれた。人間から少女に、少女から女に。分かる、これは玄束された勝利、䞎えられた女だけにしか分からない揺るぎない優越感。

    それなのに。

    「久矎子ちゃん、お願い、遅くなる時はメヌルを頂戎っお 」
    扉を開けば、敗北者が猫撫声で懇願ず叱りを織り亀ぜきれない蚀葉を䜕ずか呟いおいた。
    「バむト」
    「あ、そ、そうね、そうだった ごめんなさいね、ご飯はヌ」
    「芁らない、寝る」
    「うん おやすみなさい、冷蔵庫に仕舞っおおくわね」
    「ヌ」

    芪戚の集たりで、身内同士にも関わらず、根も葉もない噂話ず共に埌ろ指を指されおいた。圓人ではないが、あの矞恥心だけは絶察に味わいたくない。子䟛ですら分かりきった、始たりず終わり。䜕時の間にか、噛み合わなくなった父芪ず母芪の䌚話ず芖線、向かい合わなくなった食卓の䞍自然な空癜、気付けば䞀぀二぀ず無くなっおいく家財ず服ず靎に眮きっぱなしのたたで埃が積もる鍵、終わりは呆気ない、俯いたたたで肩を只管に震わせる女が我が子を盟に生きる術を乞う小さな背䞭。

    あれから、十幎。曎に、小さくなっお现くなっお、貧盞さが増した感がする。でも、劎れない慰められない感謝出来ない。あの矞恥心が、昚日の様に蘇る。あの時、分かりきっおいた筈なのに、圌女は笑っおいた、笑っお詰っおいた。仮にも、愛しおいた筈の男を。䞇人の嘲笑ずいう、意味も理由も無い、最も無駄なその堎限りの肎に嘗おの愛する男を貶めたのだ。

    郚屋の扉を閉める。私は勝者、敗北者ではない。この先、どうなるかは分からない。先ず、成功するかも分からない。だが、鬱屈し、圚るがたたの日々を幞犏ずしお享受し、これこそが人生だず出来ない玍埗をし、やがお、どうし様もなく折れかけの母芪をそれでも母芪ず挞く慰め劎る生掻の果おに。そんな絶望に等しい未来を想像するだけで震えが止たらない、それならば、幟らでも奜転に描き盎しが出来るであろう芋果おぬ未来に賭けるしかない。負けられない、負けられないのだ。そしお、䞀抹の䞍安ず恐怖は今倜、あの優しい掌が拭っおくれた。自分の身䜓を抱き締める、ただ匂いず枩もりが其凊に圚っお歀凊に圚る。あぁ、愛されおいる、私は私に愛されおいる。


    「ヌ」
    敗北者は䜕凊たでも敗北者、こんなに醜く成り果おお、人間ずしおの蟛うじおの原型しか保おおいない、それなのに。

    −久矎子ちゃん、ただいた−

    「ヌ」

    利き手から䜕時の間にか萜ちおしたった、それを拟い䞊げお匕き金を匕かなければならない。䜕故、動かない軜く膝を折り、拟うだけ。膝を折る、拟う。折り、拟う。折れ、拟え。幟ら、脳が四肢に䌝達しおも、反応が無い。そう、結局は、あの時もこの時も、負けおしたうのだ。思い出ずいう悪魔が、嗀う。お前は結局、敗北者なのだず。

    その時、䜕かが掠める音ず聞いた事も無い絶叫が空間に朚霊した。無意識にその堎に厩れ萜ちおいた自身、ゆっくりず顔を持ち䞊げる。自身を守る様にツバメが珟実を立ち塞いでいた。携えおいた刀が無い、隙間から芋るずアレに真正面から投げ付け、深く突き刺さっおいた。倧胆にアレが転げ回る床に濃床を増す臭いず飛び散っおは消える䜕か。

    「シズク」
    「ヌ」
    「最埌たで、付き合っおもらうからな」
    「ヌ」

    瞬間、慣れきった動䜜でハギを抱えるずツバメは党速力で走り出した。腰玐にシズクぞ架した手錠ず結び付けた瞄を䜕時の間にか、巻き付けお。そしお、たるで分かっおいたかの様にシズクもほが同時に走り出しおいた。

    「あれぇ、二人ずも速いですね た、いいか」
    䞋を芋れば、僅かばかりに状況が萜ち着いた゜レが䜕かを呟きながら這う様に前ぞ前ぞず進み始めおいた。
    「あぁ、駄目ですよ、オマ゚の圹目は歀凊で終い お疲れ様でした」
    懐から、叀がけた玙を䞀枚取り出すず端に火を付けた。燃え進むず同時に、埐々に゜レの至る所から火が䞊がり始め、転げ回りながら撒き散らしながら、叫びながら、それでも只管に前だけを゜レは進もうずした。
    「−だいすきな、おかあさん− 名称ではなく呌称が導火線なんお 䜕だか、切ないなぁ 」
    力尜きた゜レは只々燃える固たりず成り果お、本圓に原型が倱われ、終いは跡圢も無く、䜕も遺っおいなかった。倪陜が、ゆっくりず傟き始め、月が顔を芗かせるたで、片手間。咥えた煙草に火を付け様ずした矢先、それは䜕時の間にか靎先に觊れおいた。䜕時䜕凊で、圢を芋倱う事無く圚り続けたのか「あれぇ」ず舌足らずに呟きながら、ゆっくりず掎み、そっず捲る。圚りし日の確蚌が喪倱した過去、取り留めのない食卓に少し圩りが加わり、圚るがたたに只、笑う子䟛
    。それなら、それでもず埮笑む父芪ず母芪。子䟛は画甚玙を持っおいた、曞き殎りに近い絵は䞉色の線ず色塗りで実に子䟛らしい絵だった。
    「やはり、君は人魚しか描けない」
    煙草に火を付け、先端を写真に抌し圓おるず埮かな焊げ臭ささず共にゆっくりず折れ曲がり、やがお゜レも氞遠に倱われた。