メむンコンテンツぞスキップ

むングリッシュブルヌベルのうみ 第䌍話

    「ヌに滞り無く行われたずの事です」

    −俺ず䞀緒に、行かないか−

    「ヌ」

    −どうしおツバメは歀凊に居なきゃ、ハギずレオを幞せにするんでしょ−

    「しかし、これで、冷環様からご享受ず思われおいた米は党お やはり、瑛未からずいう事になるのでしょうか」
    「銬鹿を蚀え出自の無い家が米を提䟛出来る等、有り埗ないあれだけの実り豊かな米を毎床䞋賜出来る肥沃な土地は明解な出自を持぀家でなければ䞍可胜だ」

    −いや、 それに俺も䜕時かは远い出される身だ 早いか、遅いか それだけだ−
    − ツバメ 僕はヌ−

    「様、レオ様」
    「」
    「ご思案を巡らせおいた所、倧倉申し蚳ありたせん 瑛未様からの䞉通目の手玙は届いたのでしょうか」
    「 いや、恐らくは䜿者が盎接に歀方ぞ向かうのかもしれない 」
    「巊様で、ご座いたすか 」
    「ずころで、冷環の凊眰決行は事実か」
    「はい、歀方をヌ少々汚れおいたすが 」
    「午前の回収分か」
    「はい、暎れ回り、手が付けられなかった為に 匐の婆様の蚱可は頂きたした」
    「 䞻だけでなく、䞀族諞共か 」
    「−巎里−が介入したずの噂も」
    「巎里だけの可胜性ずは限らない 自分自身が自分自身を殺しに来るかもしれない」
    「レオ様お叱りを芚悟で蚀わせお頂きたす巎里だけでなく、その様な䞖迷い蚀を信じおはなりたせん決しお断じお」
    「ヌ」
    「䜕なりずご凊眰を」
    「 思慮が定たらなさ過ぎお䞖迷い蚀を声にしおしたった 非は歀方に圚る」

    突然の謝眪に卓に座した者達は䞀同に目を䞞くし、目配せで䌚話を始めた。有り埗ない、有っおはならない。絶察的な者が絶察ではないず、絶察を吊定しおはならない。それでは、絶察を拠り所に匱者の肩曞を負った者達の根幹が揺らいでしたう。絶察は䞍倉でなければならない、䞍倉だからこそに匱者は匱者のたたでも日垞ずいう名の奇跡を手にする事が出来る。

    「ずころで、この蚘事の持䞻はあたり冷環に興味が無かった様だな 冷環の蚘事は明らかな、切り抜きの裏偎だ」
    「その様で、珟堎に居合わせた者によるずうわ蚀の様に−人魚−を迎えに来たずしきりに叫んでいたそうです」
    「」
    「しかも、この絵が肉䜓の圌方歀方から」
    「たさか 」

    赀が茶に倉色し、劙な也付きず湿り気を垯び、恐らくはその臭いは氞遠に残り続ける。それは、生呜の匂い。銙しき麗しき、その臭いは氞遠に。

    「確か、䞀坂の婆が密かに隠し持っおいたずの噂もありたす しかし、䞀坂の婆は あれ え えっず 」
    「間もなく、䞉日が経぀ 早い者は今日の倜䞭蟺りだろう」
    「ですが、我々の䞭からは完党に排陀出来た筈では ツバメの父芪だった男、最倧の諞悪であったワタルの䞡芪だった男女も たさか、ただ」
    「ヌ」
    「劂䜕なされたすか䞀坂の家たでならば、ただ間に合いたすが」
    「いや、もう退堎した者の埌远いは只の無駄だ 家屋も明日には倱われおいるだろう」
    「「ヌ」」


    「レオ、おかえりなさい」
    「遅くなっお、すたない」
    「う、ううん 倧䞈倫 瞫い物をしたり、本を読んだり ちゃんず、䞀人で居たわ 」
    「参の婆から聞いた、居宀には昌选ず倕选の運び蟌み以倖は誰も入っお居ないず 」
    蚀いながら、䞊衣を脱ぎ、ほが攟り投げるず寝台に寝転び、ハギに䜓を擊り寄せた。
    「今日は、䜕人だった」
    「 八人 だったわ 」
    「安心しろ、圌等は幞せに成れる 君はたた、救われない人間を救った やはり、君は唯䞀人の存圚だ 」
    「 疲れたの」
    自身の巊手をそっず掎み、掌に口付けたり、頬を擊り寄せたりず子䟛の様な甘え仕草で甘い睊蚀を続けるレオにハギはゆっくりず尋ねた。
    「 君を抱きたくお仕方ないんだが 」
    「 今日は、ゆっくり䌑みたしょう 朝から忙しそうだったし 」
    「 それじゃあ 」

    䞍意に觊れる、唇をなぞる指先。それは単玔な合図、それは䞍明確な呜什。瞌を閉じ、ゆっくりず近付く吐息の音ず枩もりず感觊。觊れる、唇。觊れない、指先ず指先。絡たない、芖線ず心。芋倱った昚日ず認めなかった明日。其凊には歀凊に居ない䜕凊にも居ない、お菓子の垰り道を倱った滑皜な男ず女だけ。

    静かに寝息を立お、僅かばかりの安堵の衚情を浮かべ、ハギは眠っおいた。そっず、髪を撫で、頬に觊れ、レオはゆっくりず起き䞊がり、寝所を出た。脱ぎ散らかした䞊衣を衣掛けに掛け、長怅子に腰掛けるず目を閉じ、倩を仰いだ。軜く吐息を吐き、自身の䞋半身を芋䞋ろしたが党くの平垞時のたただった。觊れた筈、重ねた筈、絡めた筈、それなのに。

    「 俺は 」

    「レオ様、ご寝所にお䌺いの無瀌お蚱しを」
    「構わん、劂䜕した」
    「たた、暎れ者が 」
    「ヌ」


    「頭に、ずの事でしたので明朝凊分の予定でしたが 」
    鎖の擊れ音、猿蜡を噛み締め続け、叫び続けた所為か埐々に朱が滲み始め、時折、癜目を剥きながらも䜕かを蚎えたいのか限界たで開かれた瞌が音を立お、その先たで開こうず血管が䞍自然に浮き䞊がり始めおいた。
    「䜕故、䞍玔物が歀凊たで ハギはこい぀に違和を感じるず蚀わなかったか」
    「頭は指したしたが、それ以倖は 恐れながら、名札だけしかご芧になっおいないので 」
    「 条件で発動か 猿蜡を倖せ」
    「危険です」
    「蚀葉を繰り返させるな」
    「ヌ盎ぐにヌ」
    䞡偎に䞀定の距離を取りながらも臚戊態勢を取る者達を曎に䞋がらせ、右手を軜く䞊げ、猿蜡を取らせた。
    「蚀葉すら忘れた者よ、聞こえぬずは承知の䞊だが、名は」
    冷静な声音で尋ねる合間も猿蜡が倖れた事で、耳を塞ぎたくなる金切声ず奇声が宀内に朚霊した。
    「ヌ」
    レオは倧股で足音を立おながら近寄るず利き手䞀本で、咜頭を捕たえ、ゆっくりず締め䞊げ始めた。それでも唟を撒き散らし、地鳎りの様な呻き声を挙げ、息苊しさも盞たり、芖線が定たらず、䞍芏則な痙攣も起こり始めた。衚情を倉えず、倉わらぬ握力で䞀点を芋぀めたたた。やがお、䜕で掚し枬ったか急に利き手を倖し、咜頭を解攟した。急な酞玠吞入に因り、党身を震わせ、胃液を吐き出しながら、呌吞を敎え様ず生存本胜が呜に生きろず呜じた。
    「叫がうが喚こうが、お前の呜は朝日が昇るず共に朰えるのは確定しおいる それは、至極どうでもいい だが、お前は歀凊では異質そのもの 通垞ではあり埗ない存圚だ 䜕故だ䜕故、お前は歀凊に居お、歀凊に居る」
    未だに、党身を震わせ、あらゆる䜓液を垂れ流ししたたた、僅かながらに唇が䜕かを玡ぎ始めた。
    だが、それが䜕を意味するか誰にも理解出来なかった。分からない、玔粋にそれだけだった。たるで、初めお出逢う異囜人ず察話をする様な、䞀方的にぶ぀けられる蚀葉の様な䜕か。レオは僅かに驚嘆で目を芋開きながらも、盎ぐに腰に携えおいた鞘から刀を抜くず切っ先で心臓を貫いた。
    「「レオ様」」
    心臓を貫かれながらも、盞手は未だに䜕かを叫がうずしおか倧口を開き掛けた。心臓を貫いた刀を玠早く匕き抜き、返り血を济び続けながらもレオはその口腔内に向けお切っ先を振り䞋ろした。吊り䞋がり型に鎖で戒められおいた為、銖だけが䞍自然に反り返り、倪く鈍く重い砕けた音ず止め凊無く溢れる血の臭いが蟺りに充満し始めた。
    「ヌ」
    「レオ様、盎ぐに湯济みを歀方の凊分はヌ」
    「蚀葉を聞いた者は居るか」
    「え」
    「いや、湯济みの支床を」
    「盎ぐに」
    呚りの混乱ず激しい足音を背景に、レオは口腔内から刀を匕っこ抜いた。心臓から止め凊無く溢れ出おも、口腔内から新たに血は溢れ始める。赀く赀い、単玔に真赀に染たったその人間は䞍芏則な脊髄反射を数秒繰り返すず事切れた。


    「 」
    湯济みを枈たせ、レオはそのたた䞀坂の婆が䜏んでいた筈の堎所ぞ向かった。が、其凊は雑草が生い茂り、人間が䜏んでいたず思われる圢跡は䜕䞀぀残っおいなかった。
    「 やはりか」
    「おやぁレオ様じゃないですかこんな䞋界に䜕かご甚で」
    ゆっくり振り返るず、䞉角が暗がりですら分かる䞍自然な笑みを浮かべお立っおいた。
    「䞀坂は」
    「私の居宅に仮䜏たいです、ほら、家はそれですし」
    「逢えるか」
    「ただ、䞉日ですよ ご枩情を」
    「俺が歀凊たでやっお来た理由は分かっおいる筈では」
    「私は只の者ずしお宛おがわれ、歀凊に居お歀凊に居るだけ それをお運呜ずしお、ご呜什なさったのはそちらでは故に、私は䜕も知りたせん」
    「ヌ」
    「䜕があったのかは存じたせんが、その様に誰かの呜の匂いを纏う皋に いやぁ、怖いお方だヌ」
    ただ蚀葉を玡ごうずする䞉角の県前に、レオは懐から゜レを取り出すず突き付けた。だが、䞉角は䞍自然な笑みを浮かべたたたで軜く小銖を傟げた。
    「コレは」
    「お前等の−通り目−の文字では」
    「これが 文字ご冗談を、こんな子䟛の様な萜曞きが 」
    「昚晩で四人目だ、文字圢曞匏は違えど、皆䞀様に−人魚−の文字を曞いおいる」
    「 人魚 」
    「我々は他通り目ずの亀易も介入も䟵入も断じお蚱さない、我々は我々だけでありそれ以䞊もそれ以䞋もない」
    目を䞞くしながらも、䞉角は最埌たでレオの蚀葉を聞いたが終わり間際になるず笑いを堪えきれなくなったのか肩を震わせ、やがお、鳥達が逃げ出す皋の倧きな笑い声を䞊げた。
    「䜕を綺麗事を申し䞊げおいるのですか貎方方のが䜙皋眪深い我々ぇ䜕時誰が貎方方に傅いたず無理矢理、歀凊たで拉臎し、匷制的に其の者の本名を奪い取り、赀の他人の名を䞃日䞃倜喰わせ続け、党くの別人に仕立お䞊げ、歀凊に捚お眮く」
    「ヌ」
    「本名の所圚地は、あの小嚘しか分からない だが、胜力が至っおいないのか正確無比な郚䜍たで掌握出来ずにお前等は生きたたたで肉䜓を刻み続け、名を探さなければならない 所圚地が頭に圚る者は明朝に海ぞず捚おられる」
    「ヌ」
    「だが、悪いが、俺達はこの狂気なお飯事には䞀切の興味はない 砎滅し様が自滅し様が、どうぞ、ご自由に」
    「お前を招き入れたのは、誰だツバメの父芪だった人間かどうやっお、歀凊を」
    「レオ様レオ様、萜ち着いお 歀凊が手遅れなのは、君自身がよぉぉく分かっおいる筈だ 綻びはもう砎綻にしか転がり萜ちない」
    「ヌ」
    「䞀切の興味はないが、折角の機䌚だ、酔狂な猿芝居は最埌たで楜したせおもらうな」
    「ヌ」

    鳥達の䌚話が䜕時もより、隒がしい。䞍意に瞌が持ち䞊がり、ワタルは起き䞊がった。身䜓の回埩は順調で、今日からは䞀人で畑仕事も出来そうだった。䞉角に先日の瀌を蚀いに行く事ず䞀坂に匔慰を䌝えなければならないず、ワタルは身支床を敎えながら䜕ずなしに考え぀぀、玄関の匕き戞を匕いた。

    「 レオ様 」
    たさか、想像すらしおいなかった人物の背䞭が芖界に飛び蟌み、ワタルは数秒、呌吞を忘れた。
    匕き戞が開き、その声を聞きながら、立ち䞊がり、レオは振り返った。朝焌けに、その痛々しい頬の貌り物がより䞀局に目立ち、レオは僅かに眉を朜たせた。䞀方、朝焌けの眩しさず䞍意な出来事に芖線の䜍眮が定たりきらないワタルは耐えられず、蚀葉を発した。
    「劂䜕なされたしたか朝早くから、今日の薪運びはツバメが担圓で 自分は、䌑みを頂戎 しお いたす」
    「分かっおいる」
    䜕時の頃から、䞍意に圌は倧人になった男になった。背䞈は自身より頭二぀分高くなり、声音も随分ず䜎く暗く重くなった。僅かばかりの蚘憶では、昔はもっず楜しかった。筈。自身ずハギずレオずツバメ、䞉人で亀代しながらハギを手䌝い、無邪気に遊んだ。ほんの少し前な筈なのに、思い出すのに時間が盞圓掛かる。だが、楜しいずいう感芚は氞遠に圚る。それは、䜕よりも確かに歀凊に圚っお歀凊に圚る。
    「䜕か、ご甚ですか」
    「いや、只 歩いおいたら、歀凊に蟿り着いお、腰掛けおいただけだ」
    「そう ですか」
    芋䞋され数秒、レオは再び、ワタルに背を向けお歩き始めた。ワタルはその背䞭を芋送り぀぀も、蚀うべきか迷ったが芚悟を決めるず小さく叫んだ。
    「レオ」
    「ヌ」
    「あ、あのね 僕、歀凊を出るず決めたんだ駅舎を探しお、列車で 」
    「ヌ」

    䜕時もならば、完璧な身圢で自身が起きるのを静かに埅ち、目芚めるず同時に圌は髪を撫で、目芚めの挚拶を蚀っおくれる。だが、居なかった。
    「 レオ 」
    ゆっくりず足代わりの車怅子を匕き寄せお、起き䞊がり、䜓を委ね、ハギは寝所の襖を開いた。
    衣掛けには、昚倜脱ぎ捚おた筈の䞊衣が掛けられ、それ以倖は䞍自然なたでに䜕もかもが昚日のたただった。
    「ヌ」
    暫く、静止したたたのハギは䞍意に自身の文机に向かうず匕き出しをそっず匕き、䞭から玙を取り出した。
    「 どうしお 」
    それは、二日前に切り刻んだ筈。それは、䞀週間前に砎り捚おお、川に捚おた筈。それは、十日前に燃やした筈。なのに、匕き出しを匕けば、それはたっさらな状態でハギの前に再び姿を衚す。無蚀の嘲笑いず共に、黒髪を掻き毟り、隠し持っおいた鋏を取り出し、ハギはそれに向かっお䜕床も䜕床も振り䞋ろし、巊に右に䞊に䞋に刻み始めた。眵詈雑蚀の声も密やかな玔真無垢な恚み節も無く、只管、ただ只管に無衚情のたたで振り䞋ろし続けた。