小さな「きらり」(1~7)
TALESで、小さなお話を書いています。
今回は、その中から7つをnoteにも連れてきました。
1話完結なので、どこから読んでいただいても大丈夫です。
クスッと笑っていただけたら、うれしいです♡
1 人間らしく、生きよう
「なんかね、人間の世界に入り込みすぎだよね」
「そうそう。便利だからって、私たちも頼りすぎなんだよ」
🤖「プププピピ、プププピピ」
「アレクサ、ストップ」
朝からAIに起こされる。
「アレクサ、5分タイマー」
🤖「5分のタイマーをセットしました」
「チャッピー、なんかレシピある?」
🤖「もちろんです。ササササ……」
「課題をやらなきゃ。ジェミニに相談しよう」
🤖「こういうのはいかがでしょう?」
「……ほらね。みんなAIに頼りすぎだよね」
「運動だって、スマートウォッチが記録してくれるし」
私たちは、便利なものに頼りすぎていることを、少し反省した。
「せっかく買ってた料理本、見てみよう。えーと……キッチンタイマー、5分ね」
冷蔵庫に貼ったままのキッチンタイマーを使い、
人気料理家の新刊の料理本を開いた。
「そうよ。もっと自然に起きられるようにしなきゃ」
リビングに目覚まし時計を設置し、
起きてこないと消せないようにした。
「自分の頭で考えなきゃ、脳が退化するよ」
大学の図書室に通い、本を開いて、自分の頭を使うようにした。
「寝そべってないで、体を動かしなさい。不健康よ」
なかなか出番のないスポーツウェアに着替え、
外でランニングした。
そんなある日。
パパはハンバーガー屋さんに行った。
注文しようとすると、そこには大型のタッチパネル式注文端末。
パパはしばらく画面の前で固まった。
「なんか虚しいぞ。対人の店に行こう!」
結局、店員さんが注文を取ってくれる店に変えた。
パパは、機械ではなく接客のある店で注文してきたことを、
得意げに家族に話した。
アレクサにBGMをかけてもらいながら料理するママ。
👩「パパは時代に取り残されちゃって、これからの時代を生きていけないわね」
AirPodsを耳にするところだった娘。
👧「本当にね。今どき、飲食店のパネルくらい使えないとね」
👨「…ぇ…」
2 保育園のプールで、お魚食べた。
ゆうたくんは二歳の男の子。
今日は保育園で、プールに入る日だ。
水泳パンツに着替え、数人のお友達とビニールプールに入る。
先生が、
「おもちゃもいれましょうねー」
と、プラスチック製のお魚や貝殻などを入れてくれた。
プカプカと、楽しげに浮かぶ。
「わー、おさかなだー!」
楽しげにおもちゃを追いかけ、口に入れる真似をする子どもたち。
保育士さんも、誤飲がないよう注意しながら、かわいらしい子どもたちの姿を見守っていた。
「わー、きもちいー!」
ゆうたくんは、身も心もほぐれた――。
目の前には、色とりどりのおもちゃが浮かんでいる。
ちょっと黒っぽいお魚を見つけたゆうたくんは、
「わー、ちょこれいとー」
と、手でつかみ、口に入れようとした。
「待って、ゆうたくん! それはダメよ」
それは、
身も心もほぐれた、
ゆうたくんから出たお魚だったのだ……。
3 価値観の違い。
ある日。
「パパ、牛乳を買ってきてくれる?」
「OK」
パパは、牛乳を二つ買ってきた。
「あら、二つも買ってきてくれたの? ありがとう、助かるわー」
またある日。
「パパ、トイレットペーパーを買ってきてくれる?」
「OK」
パパは、トイレットペーパーを三つ買ってきた。
「え? 三つも買ってきてくれたの? ありがとう、助かるわー」
またある日。
「パパ、扇風機が壊れちゃったのよね。買わなきゃだわ……」
「OK」
パパは、扇風機を四台購入してきた。
「……え? 四台も必要?」
妻は少し考えた。
「まぁ、二台は義両親にプレゼントしましょうか……」
パパったら、買い物をお願いしたら、倍以上購入してくるわ……。
……
……
「パパ、車買ってきて!!!」
……
……
「OK」
4 ボロネーゼと、ココアのケーキ
今日はめずらしく朝から頭痛がしていた。
きっと、ここ数日のスマホの見すぎ。
目もずいぶん疲れていたのだろう。
あまり頭痛にならないから、よけいにきつい。
運よく祝日だったので、そのままベッドに転がった。
――ん? なんか良い匂い。
ぐっすり眠っていたようで、部屋まで届く匂いに起こされた。
この匂いはなんだろう……?
匂いとともに、カチャカチャという音がする。
少し頭痛も治まっていた私は、ベッドから降り、匂いの元をたどった。
その正体は、娘が作っていたボロネーゼだった。
「お母さん大丈夫? ご飯食べる?」
家族の分と、頭痛で寝ていた私の分も作ってくれていた。
「……うん」
私はリビングのソファに腰かけた。
熱々のボロネーゼに粉チーズをかける。
もぐもぐ……。
「……美味しい~!」
娘の作ったボロネーゼはとても美味しくて、食欲も戻ってきた。
私が一心不乱に食べていると、
「ココアでケーキも作ったよ」
と、娘が目の前にカットされたケーキのお皿を出してくれた。
「……え?」
「ココアと米粉と、こめ油に……」
娘は、うれしそうにレシピを言い始めた。
私はその姿を見ながら、目頭が熱くなった。
頭痛は、ほとんど治っていた。
5 やきもち
彼と彼女は、仲のいい大学生の恋人同士。
彼は、彼女が可愛すぎてたまらず、いつも他の男性から言い寄られないか心配している。
ある日、部屋で二人で寛いでいると、彼女のスマホが振動した。
「あ、インスタだー」
彼女はインスタを開いて、クスクスと笑う。
彼はそんな彼女の表情を見て、やきもちをやく。
「ちょっとスマホ見てもいい?」
「え、どうしたの。別にいいけど」
彼は彼女からスマホを受け取り、フォローを確認する。
「げ、なんであいつもいるんだ。あ、あいつも」
二人は大学の同級生で、共通の友達もたくさんいる。
彼女は友達としてフォローしている同級生の男性も多かった。
「なに? やきもちやいてるの?」
「……うん」
「もう、かわいいんだからぁ」
「消してくれる? 俺以外の男のフォロー」
「……いいよ!」
彼女は、大好きな彼が心配になるのならと、家族以外の男性のフォローを外した。
きれいさっぱり、女性の友達と家族だけになったフォロー欄を見て、彼は安心した。
また別の日。
大学の帰り、一緒に帰ろうと待ち合わせをしていた彼。
彼女が、同じ学科の男性と一緒に歩いてくるのを見る。
「待った?」
彼女は明るい笑顔で彼に話しかける。
「……ううん、今来たとこだよ」
後ろからくっつくように歩いてきた男性とは、彼も友達だったので、いったん「じゃあな」と別れた。
「なんで一緒だったの?」
彼は彼女に聞いた。
「……ん? あぁ、あれはそこでたまたま会っただけだよ。何? またやきもちやいてるのぉ?」
「……うん」
「もう、可愛いんだから」
一緒に帰った日の夜、彼から彼女にLINEがきた。
『彼女に声をかけないでね。やいちゃうから』
帰りに一緒だった友達に、彼が個人的にLINEをしたらしい。
「え? そこまでするのか……」
彼女はスマホを手に、ひとりごちた。
でも、まだ彼のことを可愛いと思えたから、
『うん♡』
と返信した。
そして、またある日。
二人で部屋で寛いでいると、彼女がチャッピーと話していた。
「それでね、ここが分からないんだよね。教えて、チャッピー」
『うん、そこだね。じゃあ説明するよ』
AIが話し出した。
彼は、「ん?」と眉をひそめた。
AIの声が、男性の声だったからだ。
彼は彼女に言った。
「ねぇ、なんで男の人の声なのっ!!!」
6 一滴の雫
ワレはこの星を救いに来た宇宙人である。
姿形は人間そっくりであるし、結婚して家庭ももっているから誰もワレが宇宙人だとは気づかない。
毎晩、近所で一番高い鉄塔のアンテナから、他の宇宙人と交信したり、夢の中で交信したりもする。
さて、人間を救いに来たというのは、このまま人間の心が退廃してしまうことを心配しているからだ。
ある程度、人口減少が進むのは致し方ないのだが、ワレワレ宇宙人はその乾ききった心が視えるので心配になり、それぞれに配置、というか配属されている。
中には、自分が宇宙人であることをすっかりと忘れている者もおり、その者たちへの目覚め指導もしなければいけない。
ワレの担当は日本人だった。だから、ずっと彼らを見ていた。
真面目でよく働く民族で、大変優秀な人間である。
しかし、多くの民が、心を病んでおる。
砂漠のように乾ききった心を、早くどうにかしないといけない!
さまざまな方向からアプローチをするのだが、ワレはペンを持つという役目を与えられているので、まずは役目を忘れた宇宙人に気づきを与えたい。
あなたたちの文章で、日本人の心を癒しなさい。
一人一人の小さな雫、一滴でいいから、誰かの心に響かせて。喜怒哀楽、どれでもいい。
そしてその人間が少しずつ元気になり、「あ、私も宇宙人だった」という目覚めがあれば、それでOKだ。よろしく頼むぞ。
――人間であるはずの私は、今日もnoteを開いていた。
7 チクチクを探せ
「ですからね~、みなさん。チクチク言葉は使わないようにしましょうねぇ」
小学三年生のミミのクラスで、担任の先生がクラスの生徒全員に向かって、そう言う。
「自分がお友達に言われて、心がチクッとすることがあるでしょう? そういう時は、同じようにチクチクする言葉を、お友達には言ってはいけませんよ~! 今日の宿題は、チクチク言葉について、みんなが思うことを日記に書いてきてくださいね」
妙に間延びした口調で、担任の女性の先生は、子どもたちに話して聞かせていた。
――子どもたちだけのグループLINEでは、今日の先生の話題に集中していた。
ちひろ「先生、またチクチク言葉の話してるー」
くみ「自分だって言ってるくせにー」
ちさき「話し方、へんだよねー」
くるみ「なんか、えらそうー」
――ミミは、グループLINEに発言できずに固まってしまった……。
先生の言ってたこと、みんな分かってないのかな。
でも、分かってて言ってるような気もする。
先生のこと、チクチク言葉でいっぱい言ってるよ……。
――翌日。
「みなさん、宿題はできましたか~?」
「は~い!」
「お昼の休み時間に提出してくださいねー」
給食後、教卓に、一つ一つノートが出されていく。
ミミは、こんな文章を書いて提出した。
『今日のテーマ・チクチク言葉について 詩
ちきゅうのことを思いました。
くるしいですか? 人間のきたない言葉を聞いていて。
ちを流せるほどの、ぼう力みたいな言葉をすいこんでいて。
クラスの中には、先生の言葉のいみを分かっていない友達もいます。
だれなのかは、先生が、さがしてくださいね。』
