
見知らぬ誰かのノルマに加担するか否か
街を歩いていると、チラシ配りをしている人をよく見かける。
単に紙を配っているだけのこともあれば、ティッシュなどの「おまけ」がついていることもある。そのため、チラシらしきものを差し出されると、つい相手の手元を見て「受け取るかどうか」を瞬時に判断してしまうのだ。それがサンプル品であれば、つい足もそちらへ向いてしまう。
だが、大抵は「ただのチラシ」なので、そのまま通り過ぎることが多い。とはいえ、「お願いします」と差し出されたものを完全に無視するのも、冷たくしているようでどこか気まずい。だから私はいつも、丁重に頭を下げて通り過ぎるようにしていた。これくらいで十分だろう、と思っていたのだ。
ところが先日、あるバラエティ番組を観ていたら、出演していた男性タレントが「自分は必ず受け取る」と話していた。司会者から「どうして?」と聞かれた彼は、こう答えたのだ。
「だって、配り終えればその人は早く帰れるでしょう。それなら自分が受け取ってあげるのがいいかなと思って」
ほほう、と妙に感心してしまった。たしかに、必要のないものを受け取っても、自分にとってはゴミになってしまうだけだ。しかし、「その人が配り終えて早く帰るための手助けになる」という視点に立つなら、受け取るのも大いにありかもしれない、と考えさせられた。
それだけ「外での営業活動」というのは大変なことなのだ。今まではなんとなく通り過ぎていたが、もし自分が通り過ぎられる立場だったら……と思うと、そのたびにがっくりと肩を落とす自分の姿が想像できてしまう。
「そんな甘いことを言うな、世の中はそんなものだ」と叱られてしまうかもしれない。それでも、その番組を観て以来、私は街頭でチラシを配る人たちの姿が、今まで以上に気になるようになってしまった。
さて、次に出会った時はどうしようか。受け取るべきか、受け取らざるべきか。今日もいつも通りの炭酸泉に身を委ねながら、そんなことをぐるぐると考えている。