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KJourney | 辺境の島で@パナマ サンブラス諸島 🇵🇦

パナマのカリブ海側に、未だ文明がほとんど入らず、クナ族という原住民が昔ながらの文化と慣習で暮らす島々があるという。行ってみたいがどうやって行けばいいのか全く分からない。何の情報もない。
とりあえずパナマシティの国際空港から直で国内線空港に行ってみると、ひときわ小柄でカラフルな人たちの列があったので、きっとそうだろうと思って並んでみた。
カウンターのおじさんも原住民のようだ。

「サンブラスに行きたいんだけど」
「どの島だ?」
「どんな島があるのか知らない」
「じゃあ☆#÷♪◉☆★にしろ。何泊する?2泊か。一泊3食付きで20ドルでいいな?明日朝8時の飛行機に乗って、着いたらこれを見せればいい」

と、その場で何かの裏紙にボールペンでメモを殴り書いたものを渡された。
こんなんで本当に大丈夫なのか?と思いつつも40ドル払ってその紙とチケットだけをもらった。
旧市街の外れに宿を見つけて荷物を置き、その日はパナマ運河を見に行ったり、街をブラブラしたり、貧民街みたいなエリアに迷い込んだりして過ごした。

翌朝空港に行くと、ちっこいオンボロのプロペラ機がいた。
乗客は10人ほどで満席。頼りなく離陸したそのプロペラ機は太平洋側からパナマ運河に沿ってカリブ海側へとかなり低空を飛ぶため、眺めが楽しい。
カリブ海に出ると、小さな島々が点在している。これがサンブラス諸島か。
突然プロペラ機は向きを変えて細長い島に向かって下降を始めた。一気に高度を下げ、あっという間に地面。一本の細い道、のような滑走路があり、着陸。ガタガタと走る。あっという間に滑走路の終わりが近づき、柵もなにもない海がどんどん迫ってくる。なかなか減速しない。海は迫る。ヤバイヤバイ!あーもう落ちる!というところで、プイっと横を向いて水溜りの上で止まった。

そこは滑走路だけの島。他にあるのはオンボロの船着き場だけ。
プロペラ機はすぐに飛び立ち、降りた乗客が残された。
しばらくすると、周りの島から次々にカヌーがやってきた。
俺以外の人たちはみなカヌーに乗って島を去り、一人取り残された。

え・・・
これどうすればいいの?

途方に暮れていると、一艘のカヌーがやってきた。降りた男が俺のところに来て、笑顔で何やら話しているのだが、クナ族の言葉なのだろう、全く分からない。とりあえず空港でもらった紙を見せると、「オーケー!」と言って俺をカヌーに乗せた。
カヌーは海を静かに進む。無数の島が点在している。多くは無人島のようで、草だけが生えている。家が一件だけ建ってすぐ四方が海という島、数件の家からなる島、たまに集落と言えるような規模の島もある。

カヌーは比較的大きめの島に付き、眼の前の建物に連れて行かれた。どうやらここが宿らしい。気の良さそうな宿主のおじさんは、この家だけ電気が通っているんだぞ!と誇らしげに言った。
宿は島唯一の二階建てで、二階からは島の全てが見渡せた。島は、素朴だった。藁葺き屋根の家が30軒ほど。近くの家の庭から煙がモクモクと上がっている。豚のブヒブヒ鳴く声や、鶏のコッコッと言う声が聞こえる。子どもたちの大半は裸だ。

散歩をしていると、子どもが1人、2人と近寄ってきた。俺が「オラ!」と挨拶すると、元気に「オラ!」と言って笑う。すると遠巻きに見ていた子どもたちも集まってきた。みんな俺を囲み、俺の顔を覗き込みながら歩く。目が合うと、「オラ!」と言って笑う。それが彼らの知る唯一の外国語のようだ。俺達はオラ!を連呼しながら歩く。
そのうち1人が俺の手を掴む。するともう1人、もう1人と、左右に2,3人ずつが俺と手を繋いで歩く格好になった。俺をどこかに連れていきたいのか、たまに引っ張っていこうとする。すると別の子どもが引っ張り返し、俺の引っ張り合いになる。そこで喧嘩が始まる。すると別の子どもが俺の手を引いてまたどこかへ連れて行く。
子どもたちの唯一の遊びは逆立ちだ。そこら中で逆立ちをしている。上手い子どもたちは逆立ち相撲(逆立ちをしながら足で相手を押し合う)をする。小さい子は壁に向かって練習をする。散歩の時も、上手な子は俺に見せたくて、代わる代わる目の前で逆立ちをしてくる。

クナ族は小柄だ。大人の男でも150センチくらい。女の人は140センチほど。当然子供も小さい。
そんな島で、180を超える俺が小さな子どもたちを引き連れて歩く様はなんとも奇妙な光景だったろう。俺は島で只一人の外国人であり、ダントツの巨人だった。

宿のトイレは、海に突き出た板に穴を開けて便座を付けただけ。
透明度がもの凄く屋根がないため、穴から海底までよく見える。エメラルドグリーンの水の中を色とりどりのかわいい熱帯魚たちが泳いでいる。
当然、トイレで出したものはそのまま海に落ちる。

食事は、宿の娘さんが作ってくれる。魚料理、米、揚げバナナだ。何の魚だか分からないが素晴らしくおいしい。
おいしいよ!と言うと、キャッと笑って奥に引っ込んでしまう。

翌日、遠足に連れて行ってやるとカヌーに乗せられた。どうやら無人島に行くらしい。
30分くらい漕いだだろうか、白い砂浜と椰子の木しかないそれはそれは美しい小さな島に着いた。
また戻ってくるからと兄ちゃんはカヌーでいなくなった。
絵のように美しい島で1人きり。

ん、、、
とりあえず着ていた服をその場で脱ぎ捨て、全裸で島の周りをぐるぐると泳いで周った。
すっぽんぽんで砂浜に寝転んだり、すっぽんぽんで走ったりした。「ヒュー!」と叫んだりしてみた。体の中からおかしさが込み上げてきて、大きな声で笑った。
ふと、あれ?もしこのまま迎えが来なかったらどうなるの?と不安になってきた。
砂浜に大きく「HELP」とか書いてみようかなと思った頃に、兄ちゃんが迎えにきた。
帰る途中、イルカの群れがやってきて、カヌーの周りを遊びながら泳いだ。

夜、島唯一のライト、要するに宿の軒下で、男たちがラム酒を飲みながらサイコロのようなものでゲームをしていた。見ているとルールが分かってきたので、加わってみた。
とてもシンプルなゲームなのだが、勝ち負けが決まる度に勝った者は大いに喜び負けた者は大いに悔しがり見ている人も大盛り上がりして、負けた者はラム酒を飲む。俺がくいっと飲み干すと毎度大いに沸いて継ぎ足される。
スペイン語を「オラ」と「ビエン」しか知らない彼らと話す言葉は一切通じないのだが、素敵な夜だった。

翌日、プロペラ機の音が聞こえると、それが俺の島を去る合図だった。
船着き場に島中の子どもたちが集まってきた。大人もけっこういる。こんな盛大な見送りなんて初めてだ。
カヌーが出る時、オラー!オラー!と言いながら笑顔で手を振り合った。
遠くまで離れると、手を振るのをやめた子どもたちが逆立ちを始めた。

2001年夏


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