メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

【時事×経枈孊】なぜ芳光客はむンバりン䞌を食べるのか――機䌚費甚ず情報の非察称性

    「牛䞌䞀杯に数千円、海鮮䞌が1䞇円超え  」
    2025幎、東京・豊掲や北海道・ニセコの飲食店で掲げられた、いわゆる「むンバりン䞌」がSNSを隒がせたした。地元䜏民の感芚からすれば「異様」ずも思えるその䟡栌。オヌバヌツヌリズムが垞態化する䞭で、「日本が安売りをやめた」ず歓迎する声がある䞀方で、「芳光客からがったくっおいるだけではないか」ずいう冷ややかな芖線も向けられたした。

    しかし、なぜ芳光客は、その「異様に高い」倀段を知りながら、あえお財垃を開くのでしょうか。実はそこには、「機䌚費甚」ず「情報の非察称性」に基づいた、芳光客消費者ず芳光業者生産者双方の合理的な行動がありたす。


    1. そもそも「高い」のか――為替ず支払意思額

    議論に入る前に、たず䞀぀の問いを立おたいず思いたす。
    「1䞇円の海鮮䞌は、本圓に『高い』のか」
    円安が続く珟圚、1䞇円はおよそ70ドル・60ナヌロ前埌です。欧米の芳光客にずっお、70ドルのシヌフヌドランチは「特別に高い」ずいう氎準ではありたせん。ニュヌペヌクやパリのレストランなら、それほど栌別でもない海鮮料理に同皋床の䟡栌が぀くこずは珍しくない。1䞇円の海鮮䞌は、圌らにずっお高くないのです。぀たり芳光客が感じる「高さ」は、日本円の額面ではなく、自囜通貚ぞの換算倀で決たりたす。

    画像
    円安によっお欧米からの芳光客にずっお、
    日本の物䟡は安く感じられる。

    同じ商品でも、消費者が「いくらたでなら払う気があるか」は人によっお異なりたす。経枈孊ではこれを「支払意思額」ず呌びたす。円安局面では、倖囜人芳光客の支払意思額が日本人のそれを倧幅に䞊回る状態が生たれる。むンバりン䞌が「飛ぶように売れる」珟象は、この支払意思額の非察称性が䟡栌蚭定に反映された、ごく自然な垂堎の動きです。

    「円安によっお高くは感じないから、芳光客はむンバりン䞌を食べる」――これが第䞀の答えです。


    2. 「高いツアヌ」が実は「安い」理由機䌚費甚ずいう芖点

    しかし、話はそれだけでは終わりたせん。為替の問題だけなら、わざわざ高い店を遞ばなくおも、安い店を探せばよいはずです。では、なぜ芳光客は割高ず知りながらも、わかりやすい「むンバりン䞌」や「珟地ツアヌ」を遞ぶのでしょうか。

    䟋えば、東京の䞻芁スポットを半日で5箇所巡る珟地ツアヌ。自分で電車を乗り継いで回るより数倍の費甚がかかりたすが、倚くの芳光客がこれを遞択したす。

    なぜなら、芳光客にずっおの「効率」には、出費を抑えるこずよりも、「旅の時間䟡倀を最倧化するこず」――すなわち、限られた旅行日数の䞭で、䜓隓の密床をできる限り高めるこずが重芁だからです。

    慣れない路線図で迷う1時間は、数千円を払っおでも回避したい倧きな損倱です。安い店を探し回っお歩く30分もたた、「むンバりン䞌を食べた感動」ず匕き換えにするには惜しい時間です。぀たり、旅行䞭の時間は極めお貎重で、こうした非効率に倱われる䜓隓䟡倀――すなわち機䌚費甚――は、ずおも倧きなものになりたす。

    画像
    限られた旅行䞭の時間はずりわけ貎重

    そう考えるず、半日で5箇所巡る珟地ツアヌも、迷わず蟿り着ける䞀杯の海鮮䞌も、「時間ずいう有限の資産を䜿っお旅の䜓隓密床を最倧化したい客」ず「その時間を効率化・濃瞮するプロ」の、合理性に基づいた盞互に利益のある取匕なのです。


    3. 公的二重䟡栌は「受益者負担の適正化」

    䞀方、話題の「姫路城の二重䟡栌垂民1,000円、芳光客2,500円」などは、少し性質が異なりたす。これは芳光客に利䟿性を提䟛するものではなく、「皎負担の公平性」ずいう䟛絊偎の論理です。
    䜏民は日頃から玍皎を通じお文化財を支えおいたす。この䟡栌差は、「䜏民が負担しおきた維持コストを、受益者である芳光客にも応分に負担しおもらう」ずいう、「受益者負担の原則」に基づく公平性を担保しようずする詊みです。


    4. 玍埗の「Tourist Menu」ず、䞍圓な「二重メニュヌ」

    私が孊生時代に経隓したペヌロッパの「Tourist Menu芳光客向け定食」は、品質の割に高䟡でしたが、芋知らぬ地で「正解」を探す手間を省く情報のフィルタリング代ずしお玍埗感がありたした。倖囜語のメニュヌを芋おも、どれがどんな料理なのか分からない時、芳光客ぞのお勧めが提瀺されおいるのは䟿利なものです。

    しかし、䞍圓な高䟡栌も存圚したす。東南アゞアで経隓した「日本語版だけ高いメニュヌ」や、゚ゞプトの土産物屋での吹っかけ。これらは利䟿性の察䟡ではなく、「非反埩的ゲヌム䞀回限りの取匕」においお「盞手が盞堎を知らないこず情報の非察称性」を突いた搟取です。䞀芋さんである芳光客に、できるだけ高い倀段で売ろうずする、いわゆる「ボッタクリ」です。


    5. 日本の芳光業が盎面する「信頌」のリスク

    ここで、冒頭の「むンバりン䞌」に話を戻したしょう。
    もしそれらが「圧倒的な䜓隓や利䟿性」を提䟛しおいるなら、芳光客も玍埗する正圓な商売です。しかし、もし「䞀芋さんなら盞堎を知らないだろう」ずいう情報の非察称性に甘んじおいるのだずしたら、それは極めお危険な姿勢です。

    芳光客個人ずしおの解決策は「事前の䞋調べ」による自衛です。日垞の比范的機䌚費甚が䜎い時間を䜿っお情報を仕入れ、旅先での䟡倀の高い時間を守る。しかし、䟛絊偎日本にずっおも解決すべき課題がありたす。

    芳光客を「二床ず䌚わない䞀芋さん」ず芋なし、䞀回限りのゲヌムずしお利益を搟り取れば、短期的には最うでしょう。しかし、それは「日本」ずいう芳光ブランドの信頌を損ない、リピヌタヌを倱うこずを意味し、芳光業の衰退に盎結したす。

    画像
    「ボッタクリ」は情報栌差を利甚

    結びリピヌタヌを生む「合理性のある䟡栌蚭定」ぞ

    合理的な芳光地䟡栌ずは、本来「時間をお金で買いたい芳光客」ず「ここでしか手に入らない䟡倀を提䟛する芳光業者」の盞互に利益のある取匕の結果です。

    䟡栌に芋合った䜓隓が䌎っおいれば、䞀芋客は「たた来たい」ず思うリピヌタヌになりたす。逆に、情報の非察称性を利甚した割高な䟡栌は、SNSで即座に拡散される珟代においおは、長続きしたせん。「高いけれど、それ以䞊の䟡倀があった」ず芳光客が感じる䟡栌蚭定こそが、䞀芋客をリピヌタヌぞず倉え、䞀過性のブヌムではない持続可胜な芳光立囜・日本を支えるのではないでしょうか。


    あずがきに代えお

    私が教壇に立぀暪浜商科倧孊の芳光マネゞメント孊科の孊生たちにも、よく話すこずがありたす。芳光業ずは、究極的には「お客様の時間ずいう有限な資産を、いかに䟡倀ある䜓隓に倉換するか」を競うビゞネスです。芳光客の時間は極めお倧きな䟡倀を持っおいたす。これが芳光業のビゞネスモデルの栞になりたす。

    むンバりン䞌の是非を議論する際も、その䟡栌が「時間のショヌトカット代」ずしおの䟡倀を䌎っおいるのか、それずも「情報の栌差」を利甚した䞀過性の搟取なのか。その芋極めは、次䞖代の芳光を担う圌らに持っおいおほしい芖点です。


     
     
    経枈孊の研究者・教員です。孊生に経枈孊を身近に感じおもらうためにnoteをはじめたした。専門は経枈政策論、公共遞択論。暪浜商科倧孊商孊郚教授、孊校法人玔真孊園理事、日本経枈政策孊䌚理事

    あなたぞのおすすめ