人は「2つあれば辞めない」──職場に踏みとどまる3分の2の法則
私が働く業界は、社員の出入りはそれなりに激しいように思います。
『あの人辞めるんだって』という会話は日常茶飯事ですし、特定シーズンになると、“転職”というワードをよく聞くようになります。
そんな現職を私は15年以上続けているのですが、ふと「なぜ続いているんだろう?」と不思議になることがあります。
今回は、そんなお話。
「働くモチベーションと環境のバランス」について、自分のキャリアに迷っている方や、社員の離職に悩む人事・管理職の皆様に届くように語ってみたいと思います。
1. 離職を防ぐ「3分の2の法則」とは
あなたは、仕事において何を重視するでしょうか。
いきなり哲学的な問いを投げかけてしまいましたがw、以前、どこかのWeb記事で
人が職場に在籍し続けるために必要な要素は、3つに集約される
という説を見ました。その3つとは具体的には以下になります。
1. やりたいこと(仕事の内容・やりがい)
2. 十分な報酬(給与や待遇)
3. 人間関係(職場の雰囲気や信頼関係)
このうちの2つが崩れると、人はその職場を去る決断をするのだとか。
逆に言えば、もし1つが欠けてしまっても、残りの2つが強固であれば人はなんとか踏みとどまれる。非常に現実的なバランスですよね。*1
私自身、これまでのキャリアを振り返ってみると、見事なまでに当てはまっていると感じます。
2. やりがいに固執しないという生存戦略
ここで少し私の個人的な話をさせてください。
実は私、驚くほどに「これがどうしてもやりたい!」という強いこだわり(1. やりたいこと)がありませんw
その時々で目の前にある選択肢から『これだったらやってもいいかな』と思えるBetterなものを選んで生きてきました。
もちろん、選んだ後は“自分の選択”になるので、Bestに近づけるための努力をするのですが、本質的な価値観としては、「2. 報酬」と「3. 人間関係」の2軸の安定を通して、十分に納得して生きてこられたタイプです。
もちろん「やりたいこと」を強く持つのは素晴らしいことです。
が、同時に選択肢を狭めてしまう側面もあるように感じます。
私はやりがいに固執しないからこそ、どんな環境でも「じゃあ、ここでどう生きていこうか」と考えながら過ごしてきました。
それが理由なのか、現職でも、1つのプロジェクトに参画すると数年規模で在籍するのが普通になっています。そのおかげで、戦友と呼べる存在がたくさんいると思えるのは、本当にありがたいことだと思います。
ただ、仕事の内容への執着が薄い私にも、唯一譲れないポイントがあります。
それが裁量です。
私は、マイクロマネジメントをするのもされるのも大っ嫌いですw
「自分の判断と責任で動ける自由」があること。それが私にとって、実質的な「1. やりたいこと(やりがい)」の代わりになっています。
好きなことをやるのがやりがいなのではなく、「自分のやり方でゴールを目指せる自由」が、強いて言えば私のモチベーションの源泉なのだと思います。
3. 努力不足は人間関係に侵食する
しかし、そんな私にも大きな試練がありました。
仕事の人間関係の面で最も辛かったのは、中堅クラスの頃に参画していたとあるプロジェクトで、自分の能力が周囲の期待に追いつかず、成果が全く出せなかった時期です。*2
このときは、私を支えていた「3. 人間関係」の土台が崩れかけました。
露骨に攻撃されたわけではありません。ただ、周囲が何となくよそよそしい。それがひたすら胸に刺さるのです。
ほぼ全面的にフォローしてもらう申し訳なさ、他人の時間を大量に奪っている罪悪感。それがどんどん重くのしかかりました。
しかし、乗り越えた今になって思うのは「申し訳ない」という罪悪感で立ち止まってしまうのは、結局のところただの逃げだということ。
本質的に改善したければ、なぜそのギャップが起きているのか? 自分の能力の何が、どう不足しているのか?その「弱さ」を直視し、自力で泥臭く打開しようとする時間を、決して避けては通れません。
そこを逃げずに乗り越え、再び「自分の足で立つ」ことでしか、一度崩れかけた人間関係 = 信頼は修復できないのだと痛感した出来事でした。
4. 「自分はどの2つで踏みとどまっているのか」という問い
ここまで、私自身の経験をベースに話をしてきましたが、これは決して特別な話ではありません。
重要なのは、「今の自分は、どの2つで踏みとどまっているのか?」という視点です。
たとえば、
人間関係には多少のストレスがある。でも、仕事内容と報酬でバランスが取れている
報酬はそこまで高くない。でも、やりたいことができていて、チームも信頼できる
仕事は正直あまり面白くないこともある。でも、人間関係が良くて、報酬にも納得できる

こうして整理してみると、「満たされていない要素」よりも、「自分をこの場所に留めている要素」の方が、実はずっと重要であることに気づきます。
人は、欠けているものにばかり目が向きがちです。
しかし、「まだ残っている2つ」に意識を向けることで、今の環境に対する見え方は変わります。
一方で、もしあなたがそれでもなお、強い違和感や限界を感じるのであれば、すでに2つ以上の要素が崩れているサインなのかもしれません。
その場合、頑張り方を変えるのではなく、環境そのものを見直すタイミングに来ている可能性もあります。
環境を見直すことは逃げることとは違います。
自分が最も輝ける、自分らしくいながら成果を出せる場所を探すことは、何も悪いことではありません。
5. 最後に
ここまで「どの2つで踏みとどまっているのか」という話をしてきましたが、この問いは、私自身にも常に向け続けているものでもあります。
3つ全部が満たされるのが最高ではありますけどね。
離職が止まらない組織や、あなたが今「もう限界かも」と感じる場所は、もしかしたらこの3つの要素のうち「2つ以上」を同時に失わせている環境なのかもしれません。
私が今もこの場所にいられるのは、やはり「報酬」と「人間関係(信頼)」(ここでは、自分が信頼してもらえる、ということだけではなく、信頼できる・信頼したいと思える仲間に恵まれていることを含みます)の2軸が今も私を支えてくれているからだと、改めて気づかされます。
あなたもこの3軸で今の環境を棚卸ししてみると、今の自分が踏みとどまっている本当の理由や、逆に足りないピースが見えてくるかもしれませんよ。
注釈・関連記事
1:当時読んだ記事とは違いますが、同様の説を語っているブログがありました。
従業員が辞める理由は以下の3つのうち2つがなくなったときです
2:この時の経験を乗り越えた先に見えた世界の話を、別の記事で書いています。もしよければ読んでみてください。
