
恋愛遍歴|回遊していた私の20代|3人の彼女と妻にたどり着くまで
初投稿です。
自分の恋愛の軌跡をひとつの物語として書き留めてみました。
ドラマチックな物語ではないけれど、忘れることのできない当時の香り、触れた体温、些細な選択の揺らぎが、今の自分を形づくっている──そう実感できるようになり、書けた文章です。
少し長いですが、もしよければ、あなたのペースで読んでいただけたら嬉しいです。
振り返れば、私の恋愛遍歴は、
ある種の「回遊」のようだった。
男子校から医療系大学に進学し、そこで出会った最初の彼女は、私の青春そのもので、学生生活のすべてだった。
運動部での活動を中心にした日常、
季節ごとに重ねた想い出──。
無味乾燥な高校生活を送り、
恋愛などとは一切無縁だった自分。
ようやく青春らしい時間を送り始めたのが、
彼女との日々だった。
惹かれたきっかけは、まず声だった。
声優のように通る低めのトーンに、
わずかなハスキーさが混ざる独特の響き。
そして見た目。
アクシーズファムのような可愛らしいワンピースが似合う、女の子らしい雰囲気。
だが、何より強烈だったのは、匂いだった。
柔らかくて、少し甘くて、
言葉にできない安心感が本能を揺さぶった。
同じ部内で関わるうちに、
彼女の内面の魅力にも気づく。
他者には無理して元気に振る舞っているが、実は根暗で、不安定だった。そのアンバランスさにも惹かれてしまった。
気がつけば、もう…
──抜けだせないほど好きになっていた。
当時、無意識に抱いていた恋愛への憧れの影響も少なからずあったと思うが、十年以上経った今もなお、彼女の声や匂いを忘れることができない。
不器用に初めて「恋愛らしい恋愛」をして、徐々に親密度を上げていった日々を、昨日のことのように鮮明に思い出す。
現実問題として家族の反対などの障壁があり、
交際当初からその関係は永遠ではなさそうだ、
ということに心の奥底で気づいてしまった。
それでも、彼女に尽くさずにはいられなかった。
彼女が部活動で遅くなる日、5分でも10分でも会えるならと、大学の図書館で何時間も待ち続けた。
理想の彼氏になろうと必死すぎる自分に気づきつつ、止められなかった。
しかしそれも一年半ほどで限界が来て、
交際関係はついに幕を下ろした。
未熟だった私はその後も完全に諦めることができず、彼女もまた、それを拒絶するわけではなく、応じてしまっていた。
ダラダラと連絡を取り続け、時には二人で大学から帰路につくことすらあった。微妙な距離感のまま、ずるずると時間だけが過ぎていった。
そんなとき、彼女に新しい恋人ができたことを知る。当たり前のことなのに、受け入れることができなかった。
彼女の貴重な学生生活の多くを奪ったのは私のほうだったのに、それでも気持ちは追いつかなかった。
その後の私の恋愛は、いわば
「最初の彼女」を基準にした旅
になってしまった。
次に付き合ったのは、
偶然出会った年下の女子大生だった。
穏やかで、真面目で、とてもよく尽くしてくれた。私の心に空いた穴をそっと埋めてくれるような、大切な存在だった。
しかし、無意識のうちに基準と比較してしまっている自分がいた。
最初の彼女と行く予定だったが実現しなかった伊豆旅行。
新しい彼女と行ったのに、心のどこかで「比較のメモ」を取っている自分がいた。
今振り返ると、本当に失礼だった。
一緒にいるときは安心感はあったが、
「一生添い遂げる」イメージは持てなかった。
そして結局、私は「他に気になる人ができた」という身勝手な理由で別れを告げた。
──この件については深く反省しているし、
批判は甘んじて受けます。
次に交際したのは、職場の後輩だった。
同じ環境で働き、将来に対する価値観も一致していた。一人目の彼女と描いていた「学生の夢」より、より現実味のある未来を想像できる相手でもあった。
しかし⋯
どうしても埋めきれない感覚的なズレがあった。
最初の彼女の身体的イメージ──ふっくらと柔らかく、どこか包まれるような体型。
それに対して彼女は、すらっとしていて、
身体のラインもまったく違っていた。
もちろん、どちらが良い悪いという話ではない。ただ、自分の中に根づいてしまっていた「安心できる身体のイメージ」とは、少しだけズレている感覚が拭えなかった。
そして香り。
デパートのコスメ売り場のような、華やかで少しだけ人工的なイメージの香りがした。
悪くはないのだけど、僕の本能的な好みからは、どうしても少し外れていた。
ちなみに身体的な相性そのものは悪くなかったし、真剣に交際を続けていた。
もし、この彼女と結婚までいたったことを想像すると、ボディーイメージや匂いなどは些細な問題だから、彼女ともうまくいっていただろう、と今では振り返ることができる。
それでも、根っこの相性の違和感は、
最後まで消えなかった。
結局、私はまたしても「乗り換える」形で、
別れを告げてしまう。
今思えば、「乗り換える」なんて言葉で済ませてはいけない別れだった。
次に交際した相手が現在の妻である。
不安定さに惹かれた一番最初の彼女とは対照的で、彼女は情緒が安定していて愛情表現も素直だった。
少しだけふくよかな体型が、どこか最初の彼女と重なる部分があったのも事実だ。
その「少しの共通点」は、
僕にとって安心感につながった。
しかし、性格や情緒面では全く似ていなかった。気持ちを素直に受け取ってくれる安定感。
一緒にいると、呼吸が自然と整うような感覚。
時間を重ねるほどに、
「ああ、私の居場所はここなんだ」と思った。
少し似ていて、それでいて根本は違う相手。
そのバランスのおかげで、
最初の彼女への未練は完全に消えた。
恋愛というフィルターではなく、「人生の安定」という視点でパートナーを選んだ最初の経験だった。
恋愛の旅路の果てに
私の人生のパートナーの選び方は「妥協」ではなかった、とはっきり断言できる。
むしろ、若い頃の情熱、拙さ、失敗、反省。
──そのすべてがあったからこそ、今の安定と満足に辿り着けた。
…ここまで読んでくれた方へ、
ここから先は余談だ。
私は、いまだに最初の彼女のSNSを覗いてしまうという、やめたいけれどもやめられない癖がある。
彼女は数年前に結婚したようだが、まだ母親にはなっていない。
写真越しの空気感も、どこか当時のまま──。
かつて宿泊したホテルが、外観だけは当時のまま残っている。そんな感覚に近いのかもしれない。
その変わらない景色に触れると、一瞬だけ、心のどこかで小さな風がさざめく。
誤解を避けるために繰り返し申し上げるが、大好きだった最初の彼女に、いまだに未練があるわけでは決してない。
ただ、旅先で一度だけ泊まったホテルを、
もう行くことはないのに口コミ検索してしまう──そんな癖に近い。
スマホ画面を閉じると、隣の妻の横顔が──
いま自分が落ち着くべき「本当の帰る場所」としてそこにある。
……ここまで読んでいただき、感謝します。