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#毎週ショートショートnote 紫陽花男子

    クリスタル純子

    爺ちゃんが空を見ながら僕に言ったんだ。

    「友や、黄瀬川のダム湖までドライブしないか」
    僕は、読みかけの本から眼を離し
    「良いけど、どうしたのいきなり」
    爺ちゃんは嬉しそうな顔で
    「ダムの湖を囲むように紫陽花が植えてあるんだ、もうそろそろ見頃かなって思ってね」

    僕は、爺ちゃんを車に乗せて片道一時間の山道をたどった。

    「着いたよ、爺ちゃん」
    爺ちゃんは少しよろけながら、ダムを見下ろせる休憩所に腰を下ろした。
    しばらく辺りを眺めながら、大きく深呼吸をした。
    「懐かしい匂いじゃあ」
    僕は、
    「爺ちゃん、この辺のことを知っているの」と聞いた、
    「あぁ、知ってるとも、爺ちゃんの生まれた里はこのダムの底にあったんじゃ」
    僕は思わず声を上げた、
    「このダム湖の下に沈んでいるの」
    爺ちゃんは話してくれた
    「このダムが出来たのは今から60年も前のこでな、その頃爺ちゃんは死んだばあちゃんと結婚したばっかりじゃった。新天地を求めて移り住んだのが今、友とすんどる土地やった。友達もぎょうさんおって、この里を離れるとき皆で誓い合ったんじゃ、一年に一度は集まろうって、その為に皆でダムの周りに紫陽花植えたんじゃ」
    僕は周りを見渡した、
    「ほんとだ、綺麗に咲いているねぇ」
    「本田さんはガクアジサイ、友田さんは山紫陽花、爺ちゃんはカシワバ紫陽花
    あの紫陽花達を眺めているとあの時の事が思い出されてね、だけど今はもう、爺ちゃんだけになってしもうたよ」

    爺ちゃんはそれっきり口を閉ざした

    僕は思いきって爺ちゃんにいった
    「今度は僕があの紫陽花を守っていくよ、また来年も再来年もここに来ようよ」
    「そうかい、有難いね」
    爺ちゃんは嬉しそうに僕の顔を見て
    笑ってくれた。

    帰りの車の中で僕はもう一度呟いた
    「爺ちゃんまだまだ、元気しとってね」

    終わり
    #紫陽花男子
    #毎週ショートショートnote


     
     
     
    こんにちは クリ純です。 真面目に取り組んでいるのは 俳句です。俳号増本空ふね または、空ふね(俳句てふてふ)にて 短歌 勉強中、 小説修行中 脳内は変幻自在の妄想癖 絵でも歌でも物書きも表現することが大好きな60代です。 どうぞよろしくお願いします。

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