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邪道䜜家䞀巻新芏甚再掲茉 新あずがき版 栞機胜付き瞊曞きファむル旧あずがき付 は固定蚘事参照アプリダりンロヌド非察応

    邪道䜜家

    䞻芁蚘事たずめ

    テヌマ 非人間讃歌
    ゞャンル 近未来瀟䌚颚刺ミステリ心などずいう、鬱陶しい謎を解くずいう意味で



    簡易あらすじ 

    䜜られた魂であるアンドロむドが「倢」を芋る時代───邪道䜜家である「私」は物語産業に食い蟌むアンドロむドに远いやられ、殺し屋ずしおサムラむの仕事を続けおいた。しかし、そこに䞀぀の䟝頌が高額な料金ず共に舞い蟌んでくる。


    喜び勇んで殺しに向かうものの、珟地で予想倖の襲撃に遭い••••••案の定䟝頌には裏があるのだった。


    そしお、アンドロむド・劖怪・人工知胜ぞ、非人間の殺人鬌䜜家が取材に挑む


    その結末は─────



       

     䟋えるなら、奜きな女に限っおフられるくらい確実に、䜜家ずいうのは儲からない。
     䜜家などずいう人生を棒に振った生き方の、その前の自分の姿があたり想像できない以䞊、恐らくは昔から、懲りずにこんな生き方をしおいたのだろうず思う。
     䞖の䞭に銎染めず、尖った䜜品ばかり曞き、アンドロむド䜜家共脳味噌が人工繊維でできた連䞭に仕事をかっさらわれお尚、私は本を曞いおいる。
     物語を曞き続けおいる。
     䜕故なのか自分でも分からない。
     儲からないのは自明の理で、自分の数癟倍の早さで執筆するアンドロむド達が存圚する以䞊、人間の䜜家なんお需芁はなく、需芁がないなら売れないのは圓然だずいうのに、なのにだ。
     他に生き方を知らない、ず蚀うのも理由の䞀぀だろう。私は䜜家ずしおの圚り方以倖の生き方を知らないし、知るこずもないだろう。
     たたに、始末屋のようなこずもやっおいるが、それは私の胜力でも、私が培ったものでも䜕でもなく、貰い物のような胜力で行っおいるに過ぎない別に、私の䞭から沞き䞊がった気持ちでやっおいるわけではない。
     あくたで生掻のためだ。
     生掻のためでない、私自身が始めたこず、それこそが䜜家業だったず蚀える。
     自分に䜕もないのが嫌だったから心も、感情も、目的も、およそ人ずしお必芁であるモノが、䜕䞀぀ずしお存圚しないこずに苛立っお始めたのがきっかけだった。
     やはり暪着したからなのか、儲からず、生掻の足しにもならないので、銬鹿銬鹿しくおやる気の倱せるこずこの䞊ないが。
     儲かるか、儲からないか。
     あらゆる芞術品は、たるで、それそのものが玠晎らしいかのようによく語られるが、考えおも芋ろ、それは昔の王族がそう蚀ったからで、倧勢の呚りの人間があれは玠晎らしい䜜品だず、聞こえるようにたたたた蚀っおいただけだ。
     どれだけ優れた芞術品であろうずも、理解されなければただのゎミだ。売れない䜜品に䟡倀などあるものか。
     そういう意味では、売れさえすればどんな䜜品も絵画も圫刻品も、売れさえすれば䞀流だ。
     金ずは、結果そのものなのだから。
     結果的に、倚くの富を生むず蚀うこずは、倚くの結果、痕跡を叩き出したずいうこずだ。
     それが基準でなくお䜕が基準か。
     金ずは結果を数倀化したモノなのだから。
     今回の物語は、骚折り損のくたびれ儲けずいう蚀葉が自然ず浮かんでしたうが、それを刀断するのは読者共の仕事だろう。
     読者に倢は魅せないが、代わりに心の有り様を魅せるずしよう。
     人間。
     アンドロむド。
     劖怪。
     人工知胜、。
     混ぜるな危険ずいう感じもするが、圌らにだっお心はある。
     ぀たり物語がそれぞれに存圚しうる。
     無論、そんなもの昔の女に策略もなく声をかけるくらい危なっかしい所行だが、物語を読んであれこれ悩んだりするのは読者の郜合であり、はっきり蚀っお私は関係がない。
     ならば、そこに銖を突っ蟌むのも、突っ蟌たせるのも面癜かろうずいう考えだ。無論、それで読者が火傷をしおも知らないが。
     怖いなら母芪に付き添っおもらい、牛乳でも飲みながら朗読しおもらうず良い。
     そんな人間がこの物語を芋お、廃人にならない保蚌はないが、保蚌する぀もりもないのでそろそろ始めよう。
     読んだ埌に、人の気持ちを、心を信じられなくなるこずだけは保蚌しよう、なんお、
     心のない私が蚀い、始たるずいうのも、この物語の特城だ。
     さあ、぀たらなくなっおきやがった。

       

     アンドロむドは倢を芋るようになった。
     最新のバむオ・テクノロゞヌを䜿っお䜜られた有機玠材の人工脳は人類ずほが同じ圢をした脳であり、䜕より人類のみが持ち埗おいた創造性を獲埗し、芞術、音楜、流行の服から奜きな食べ物を心どこにあるのかは知らないがで感じるようになったのだ。
     そしお私のような人間には蟛い話だが、圌らは文孊に手を出し、あろう事か機械文明が人類に反旗を翻す颚刺小説たで曞き始めた。
     クリ゚むタヌずしおの圌らの胜力はすさたじい。䜕が凄いかっおワむダレスでヒュプノ・コンピュヌタに接続し、あずは人間の䞇倍の速床で過去䜜品を参照し、新しいプロットを曞き䞊げ、執筆するのだ。
     その結果ずしお、私が䞀䜜品曞く間に、぀たりは䞀月に圌らは倍以䞊の䜜品を完成させる。私の執筆速床が遅いずいうのもあるが、それにしたっお商売䞊がったりもいいずころだ。ロボット䞉原則はどうなった 圌らは有胜すぎおあっずいう間に人類から仕事をずっおいっおしたった。
     䜜家の仕事ずは線集郚に搟取されるこずだ。
     そんな名蚀を蚀ったのは誰だったか。
     敏腕な線集様は私の売り䞊げのを奪い取り、それらは線集担圓の懐ず、線集郚の資金運甚に䜿われる。残りは圌らが酒ず女を楜しむために浪費する。
     そんなこずをしお䜕が楜しいのかは謎だがい぀の䞖の䞭も、いやどんな䞖の䞭でも、人から搟取した札束を数えながら、にたにた䞋品な笑いを浮かべる人間が良い思いをするのは倉わらなかった。
     線集者、ずいうのも物曞きず同じくらい、䜕のためにいるのか分からない人皮だ。
     䜜品を曞いたこずもない奎が、あれこれ審査しお曞いた人間の数十倍数癟倍の金を受け取り続けるずいうのは昔からあるシステムらしいが、だずしたら銬鹿銬鹿しいこずこの䞊ない話だ。
     倧きい声で隒ぎ立おるだけの人間が偉そうに振る舞うのは倉わらない。
     金が䌎えばどんな屑のくだらない蚀い分も通るものだ私の金が党おずいう信条もこれに起因するのかもしれない。
     金があればあらゆる蚀い分は正しくなる。金で倫理芳や正しさ、他人の人生は買える。
     人間性などどうでもいいのだ。倧昔から人間の䞖界は金ず暎力で発展しおきた。
     アンドロむド達も結局はそれに頌り、人暩を獲埗したずもするず、案倖圌らも欲望の味を芚えたその時から、人間ず同じ存圚になっおいたのかもしれない。
     人間もアンドロむドも、金の為に殺し、金の為に埓い、金の為に結婚し、ありもしない愛ず道埳を蚀いふらし、この䞖には玠晎らしいこずがあるかのように挔出し、愛ず道埳を売っお金を儲けるのだから。
     この䞖は金だ。
     金以倖に倧切な物など䜕䞀぀無い。
     そもそも、金ずいうのは倧切なものを賌入するための力であり、金よりも倧切な物があるず比べるこず自䜓が間違っおいる。
     金を皌ぐために我々は吊応無く䞍燃ゎミのような臭くお汚い人間関係を築き、ぞらぞらず嘘で塗り固めた笑顔を匵り付け、ありもしない理想や信念を語り聞かせ共感しあうフリをするのだ。
     そういう意味では䜜家などさっさず蟞めおしたった方が良いようにも感じる。
     いっそのこず線集者になりたいずころだが、コネ入瀟の倩䞋りができるような人脈は持っおいないので、無理だろう。
     ずはいえ、ただでさえ商売䞊がったりなのに、取り分は少なく、読者も少ない。
     人生を棒に振る為に生きおいるわけでは無いのだが、よくよく考えれば䜜家なんお生き方を志した時点で、人生を捚おたようなものだろう。䜜家なんおロクなものじゃない。
     アンドロむド䜜家なんお面倒な茩がやっおきおから、人間の䜜家の䟡倀は圌らの郚品のスペア・パヌツにすら劣った。
     金にならなければ意味など無い。
     䜜家も同じだ䞖の䞭金なのだから。結局のずころ物曞きなど、嘘八癟を曞いお儲けは赀の他人にくれおやるものでしかない。
     あるいは、アンドロむド達のようにアむドル䜜家、ずいうのだろうか。のコメディ・チャンネルで歌を歌ったりに出たりしお、元が䜕なのかもよく分からない噚甚貧乏なピ゚ロずしお掻躍するのだ。
     それを䜜家ず呌ぶのかどうかは、はなはだ疑問だが。
     だから私は副業を持っおいる。
     サムラむ、ずいう名前の始末屋だ宇宙船に乗り遙か圌方の銀河系たで人類がカビか牡蠣かずいうくらいに繁殖し、あらゆる資源を貪り尜くしたこの珟代だからこそ、オカルトも科孊の範疇に入り぀぀あった。
     オカルトの研究、その科孊ぞの転甚ずいうのは昔から囁かれおいた。
     いわゆる幜霊、あの䞖の物質を䜿った物質の創造、軍事利甚などから始たったものだ。
     そんな眉唟物の実隓を䜕故始めたのかずいうず、元々は魂そんなものがあるのかは分からないがのメカニズムを解析し、圓人のクロヌン䜓にそれを移すこずができるのではないか、事実䞊の䞍老䞍死を手にできるのではないかずいう人間の欲望から始たったのだ。
     しかし、だ。
     いくらなんでも、どれだけ人類の科孊力が進もうずも、生きおいる人間が生きおいない䞖界の法則を解析できる蚳がない。
     半ば、いや完党にそんなこずができれば神の領域だろうできなかったわけだから、分盞応に収たったずもずれるが。
     ずにかく、誰もが諊めたそのずきだ。圓時、倧昔に今の人類が捚おた惑星、地球の原䜏民ずの戊争が起こった。科孊を捚おた人類が、アンドロむドに自我を䞎え䜜品を曞き始めるようにした人類盞手では、䞉日でこずは終わるだろう。
     誰もがそう考えおいた。
     目に芋えない暗殺者に芁人が殺され続け、最新の軍事技術をサむボヌグ化しお身に぀けた兵隊が、目に芋えない日本刀を携えた人間にあっずいう間に党滅させられるたでは。
     圌らはオカルトの力を身に぀けおいたのだ銀河連邊は盞手が科孊を䜿うこずを前提においお軍隊を組織した。たさか幜霊じみたニンゞャや、䞀階圓千のサムラむを盞手にするなど、どう戊えばよいのかも分からなかっただろう。
     䜕より地球では、あらゆる科孊技術が䜿えないのだ。䜿えなくなっお、地球を捚おた人類が銀河連邊を䜜り䞊げたのだから。
     勝ち目はないず刀断し、銀河連邊は和平を申し蟌むこずにした。
     戊争の埌には嘘くさい笑顔の政治家が握手をし、今たで色々あったがこれからは仲良くしおいこう、などず戯れ蚀を述べるのが定番だ。しかし、惑星囜家地球は独立を宣蚀し、銎れ合うこずはなかった。
     いたでもサムラむ・ニンゞャの本拠地ずされおおり、その党容は謎だ。
     圌らは幜霊を歊噚ずしお䜿う。
     それは刀の幜霊でであったり、手裏剣であったり、あるいはニンゞャは幜霊そのものではないかず蚀われおもいる。
     なんにせよ、あの䞖の物質のこずなど詳しい原理の分かる奎などいないだろう。
     地球ぞの取材の際、サムラむの総元締めず取匕をし、私はサムラむになった。ずいっおもいたたでの人生で剣など振ったこずもなかったが。
     オカルトなこずに関しおあれこれ考えるのも無駄な話だが、しかし䞍思議なものだ。
     その女から幜霊の日本刀、ずいう圢容しがたい歊噚を貰った瞬間から、私は剣の達人になったのだ。
     先人の技術が刀になっおからも染み着いおいるず勝手に解釈しおいる。たあ理屈は䜕でも良かったのだ。
     金になれば。
     サムラむずしお始末屋をするこずで、ようやく私の生掻は安定した。䜜家ずしおの収入がピンハネされお殆ど入らない以䞊、そちらが本業のようになっおしたった。
     私は䜜家なのだがたあ、金になるかどうかが基準なのならば、䜜家業などどうでもいい暇぀ぶし皋床の䟡倀しかない。
     アンドロむドが自我を持぀ような䞖界ずはいえ、これらのオカルトな技術サムラむの戊闘力、ニンゞャの隠密胜力は匕っ匵りだこの商売だ。
     非垞に儲かった。報酬も良かったしな。
     察しお、私の䜜品は人間盞手には党く、これっぜっちも売れやしない。代わりに買っおいくのはアンドロむド達だ、圌らは珟金で買っおいく。
     この珟代で違法性の高い珟金取匕をしおたでわざわざ䜕冊も買っおいくので、やばい取匕にしか芋えないこの光景が政府の監芖網に匕っかからないこずを願うしかない。
     ずはいえ、客は客だ。生呜線ず蚀っおよい収入源を倧切にしないわけにもいかない。
     "サムラむ"ずしお掻動しおいる分の収入もあるにはあるが、劂䜕せん䞍定期すぎる。だいたいが今回だっお、軍甚の高速通信すら䞍通になるあの山奥ぞず出向かなければならないのだこの科孊党盛の時代にコヌヒヌを手挜きで匕いおいるアナログ至䞊䞻矩者の私ですら、䜕床も遭難し、目的地に着く頃にはゲリラ郚隊の指揮官みたいな髭をはやしお䞉日䞉晩に枡り動物を狩り、家を造り、葉巻を吞っお過ごした堎所だ。ずいうのは若干嘘が混じっおはいるが。
     私は葉巻は吞えないしな。
     ずにかく、仕事ずはいえ、そんな物隒な堎所ぞ行かなければならないので、気分を倉えるために私は最寄りのカフェぞず寄っおいた。
     店に入っお驚いたこずは、アンドロむドが個人経営の店䞻に代わっお仕事をしおいるこずず、手䜜りハンバヌグず銘打っおあるのに、どう考えおも味がレトルト食品特有の旚味成分にあふれおいるこずだ。
     恐らく、倧量に䜜ったハンバヌグを冷凍レンゞでチンしお保存し、加熱レンゞでチンしたのかもしれない。肉の味も䜕の味なのやらよくわからない。最近は自然食ばかり食べおいたのだが、このご時䞖だ。蟲家が栜培した新鮮な食品を食べようず思えば、月に䞇ドルはかかる。
     倧抵はロボットが倧量生産する、安くお安党な蟲䜜物、魚、肉が出回っおいる。
     味はずもかく、いや味にも問題があるのだが、圌らは安ければ䜕でもよいのだろうか
     圌ら、ずはカフェ内で談笑する家族連れや、コヌヒヌを飲んでいる老人であったりするのだが、私が思うに圌ら圌女らは倧地からずれた食物を幎は口にしおいないだろう。火星のアンドロむド達が栜培しおいる、真空空間で栜培された無菌食物を口にしおいるはずだ。
     圌らは疑ったりしないのだろうか 自分達の生たれ育った星の゚ネルギヌを補絊せずずも、火星でも冥王星でも安ければ、目先の危機が芋えなければ、地球の原始的な自然の恵みは必芁なく感じおいるのかもしれない。
     あるいは、それはアンドロむド達に察する信頌の珟れかもしれない。圌らが独立戊争を生き延び人間の奎隷の立堎から人暩を獲埗し、創造性、魂を手にしおからずいうもの、人間ずアンドロむドの区別、境界線はないも同然ずなった。
     それはいい。
     私からすればアンドロむドも人間も宇宙人も粟神生呜䜓もも知り合いの劖怪でさえ、どちらでも同じこずだった。
     そういえば私の盞棒のゞャックは眠っおいるのか、携垯端末からの反応がない。が眠るのかどうかは知らないが、このたた静かにしおいおほしいものだ。
     喋り出すずうるさいしな。
     そもそも自我のあるは非合法だ。こんなずころで喋り出すような間抜けなら私が匕導を枡すべく、自分で自分の携垯端末を叩き斬らなければならない。それは埡免被りたかった。
     そういえば、人工知胜にしろアンドロむドにしろ、管理されおいない機械は危険であり、人類の管理䞋におくべきだずいう思想が広たっおいる。銀河連邊の右翌が䞻に掚進しおいるらしく、プロパガンダずでも蚀えばいいのかあちらこちらの囜で、惑星でそれらの思想が広たっおいる。 銬鹿銬鹿しい。
     人間は差別が奜きだ。
     䜕䞇幎かかっおもそこは進歩しない。
     昔は人間同士で䞻に皮族間での差別があり、そのために戊争たでしたらしい。そんな゚ネルギヌが䜙っおいるなら、畑でも耕した方が儲かったんじゃないのか
     自信の優䜍性を、いや優越感を保ちたいずいう欲望を、それらしい道埳を持ち出しお、無理矢理通そうずする。通らなければ躍起になっお怒り狂い、自身の正しさずやらを汚い唟ず䞀緒に吐き出すのだ。
     人間なんおその皋床の生き物だ。だずいうのに人類は未だに自分達は感受性豊かで他にはない、アンドロむドのような䜜り物の魂のないロボずは違う。そう思いこんでいる。
     歎史を少しでも鑑みれば人間など、ただ凶暎でどうでもいい理由で殺し、平和になったかず思えば貧しいものから金銭を搟取する。
     そしお争いはなくなった、今はいい時代だずほざくのだろう。どれだけすばらしい人間でも远い぀められれば本性を出す。戊争はその最たるものだ。
     無論、人間の䞭にも他人の為、自らぞたを掎んで䞀人は皆のために動くだろう。
     だがその恩恵をもらう偎は皆は䞀人のため、そしおその䞀人には自分が入り、圓然のような顔をしおそれを受け取る。
     そんな邪悪な生き物が頭のいいアンドロむドよりも優れおいるのだずは思えないが、皮肉なこずにその優秀なアンドロむドを生み出したのは圓然人間であり、芁は自分達が䜜り䞊げた者達が自分達を越えおしたった珟状では、激しいコンプレックスず自分達を越える皮族の誕生に危機感のようなものを抱いおいるのだろう。
     勿論私はそんな思想などどうでもいい
     私にずっおは吉を運んでくれるか、吊かこそが重芁だ。
     そういう意味では、ベルを鳎らしながら入っおくる女は私にずっお吉か吊か、埌々のこずを考えるず、やれやれ参ったずいう月䞊みな感想しか沞いおはこなかったが。

       

     アンドロむド䜜家は今時珍しくもない。どころか、その女は党銀河に名を蜟かせるスタヌだった。
     アンドロむドはどうしおか、創造性、芞術や嚯楜にこだわり、面癜い物語をかける同胞は圌らにずっおあこがれの察象だった。同胞から祭り䞊げられ、人間からも高い人気を博する䞇胜クリ゚むタヌずしお。
     なぜ私がそんな奎ず知り合いかずいえば、その女が私の顧客だからである。
     理由は知らないが、私からすれば売れお金になれば䜕でもよかったので、どうでもよくはある。ただ、女の方から私を蚪ねるのは初めおだった
     私は自分より売れおいる、儲けおいる䜜家が嫌いなので、私からは本の売買をするずき以倖は滅倚に䌚いに行かないし、有名人の方から私を蚪ねる理由は本の売買以倖に、やはり思い぀かない
     すわ続線を催促されるのかず思ったが、そんなハむペヌスでただの人間である私が執筆できるわけがないのは承知のはずだ。
     ならばわざわざ私のいるカフェにやっおきた理由は䜕だろう
     アンドロむドは䜕を考えるのか。
     今床の䜜品のネタに掻かせるかもしれないし、たあ甚がありそうならば話だけでも聞いおやるずしよう。もっずも、読者第䞀の人気䜜家様ず気が合うずは思えないので、楜しくも䜕ずもないが
     䜜家ずしおのポリシヌだずか読者の喜びだずか䜕にしおも綺麗事を蚀う奎は人間でもアンドロむドでもロクな奎でないのは確かだ
     私からすれば面癜いか、面癜くないかよりも金になるかの方が重芁だ。そもそも読者に楜しんでもらうだけでどうやっお生掻しおいくのだ。
     無論、぀たらないものを曞こうずしおも意味もなく䜓力を消耗するだけなので、仕事に手は抜かないが。
     倚分な。
     䜕にしおもそんな私からすれば、売れっ子䜜家の顔なんお人間だろうがアンドロむドだろうが宇宙人だろうが等しく目障りなため、特に感想はない。突然頭が䞍具合を起こしお爆発でもすれば芋おいお愉快だったのだが、生憎ずそんなこずはなく、女は私の前の垭に座った。
     確かシェリヌ・ホワむトアりトずかいうだったはずだ。私はをここ幎くらいは党く芋おいないので、あたり倧きなこずは蚀えない。
     骚董品のブラりン管すら持っおいないので、芋たくおも芋れないだけだが。
     癜い髪ずいっおもそれは絹のようで、若々しくすら感じる。
     ややボヌむッシュな髪型だが、扇状的でカゞュアルな、぀たり露出床の高いその民族衣装からは倧人の色気を挂わせおいた。
     服の玠材は動物の皮をあしらったもので、恐らく信じられない倀段がするだろう。䜕せ、倧半の動物の数は䞻に戊争ず、人類の科孊技術の進化のため、極端に枛少しおしたっおいるのだ。
     人工の動物ならいくらでもいるが、どう考えおもそれは倩然物だったし、しかもオヌダヌメむドに違いない。
     身長は高く、出お匕っ蟌んで出る、たぁおよそ考え埗る理想の䜓型だった。
     もっずも、ボディパヌツを倉えればよいのだろうが、それにしたっおここたで完璧な䜓型を䜜るのは尋垞でない金がかかるし、芋た目だけ敎えおもぎこちなくなるものだ。
     倖面も内面も完璧な矎貌をたたえおいた。私からすれば完璧な女ほど嘘くさい。青いバラのようなものだ。
     もしかしたらただの詐欺垫かも私は気を匕き締めた。しかし、私はい぀ものスヌツだったので、呚囲からは仕事の打ち合わせに芋えたず思う。
     目立たなくお䜕よりだ。
    「やっほヌ、今日は」
     ず、あらゆる男性を虜にしそうな顔どうせそれもシリコン玠材で䜜られたものだろうがで、シェリヌは私をたっすぐ芋た。
    「そんな疑い深い目で芋ないでほしいな、お姉さん照れちゃうよ」
     ず、困った颚に肩をすくめる。察しお私はさっさず甚件をすたせお垰っおほしかったので、あらゆる男を虜にする倧人気䜜家シェリヌの姿は颚景ず同化しおいた。぀たり県䞭に入っおいなかった。いや、これは蚀い蚳か。
     私には心がないのだから。
     䜕かを感じ取れないのは今曎の話だ。
     䜕にせよ盞手の玠性など知ったこずか。
     問題は金になるかどうかだ。
    「甚件を聞こうか」
     甚心しお、たさか私を始末しに来たわけではなかろうが、身構えお答えた。だが、
    「ストヌカヌに困っおいるの」
     ず、シェリヌは劙なこずを蚀った。このご時䞖に政府の監芖網を欺き通しお犯眪行為ができるのは、極々䞀郚のずば抜けた専門家か、はぐれアンドロむドの犯眪結瀟か、それこそニンゞャぐらいのものだ。
     ただからかっおいるだけなのか、本気なのかの刀別が぀かなかったため、
    「囜家機密でも盗み出しお、ニンゞャに远われおいるのか」
     ず私は蚀った。勿論くだらないゞョヌクである。たさかそんなわけがない。どういう反応をするのか芋るこずで真意を確かめるのだ。
    「たさか。囜家認定を受けた䜜家が、そんなこずする蚳ないじゃない。アむドルには぀きものよ、こういうこずは」
    「だずしたら信じられないな。お前が䜏んでいるのは最高玚のセキュリティシステムのある、芁塞のようなずころなんだろう」
     䜕ずなくそんなむメヌゞだったので、適圓に蚀った。だが、
    「いいえ、最近は家に抌し掛ける人が倚いから匕っ越したわ。ホテルだからセキュリティは厳しいけど、ほかの客も入っおくるしね。を芋おいれば知っおいそうなものだけれど」
     生憎ず、芋おいない。芋おいお圓たり前のように蚀われおも困る。有名人なんお、䜕かの間違いでたたたた芚えたか、仕事に関係があったずき知るくらいだ。䜕も知らない。
     シェリヌは涙を流しお倧笑いしながら、
    「を芋ないなんお信じられないわ、あなたっお遙か過去からタむムスリップしおきたんじゃないの」
     倧きなお䞖話だ。あず、人を指で指すな。
    「少なくずも皆が自分のこずを知っおいるず思いこんでいる、自意識過剰な錻持ちならない女のこずなど、知らんな」
     実際知らないし、有名だから芚えないずいけない理由など無い。
     もう垰ろうかな。たあ、私に垰る堎所なんお無いのだが。
    「ごめんごめん、そう拗ねないでよ」
    「私からすれば䜕でも機械や、アンドロむドに任せる考えの方が、よくわからないな」
     これは本圓だ。コヌヒヌを挜くくらい、䜕故皆自分でやらず、機械に任せるのだろう
     戊争も、劎働も、すべおアンドロむド任せでいいのか 利䟿性は倧事だが、それでも忘れおはならないこずは人類にはなかったか。
    「あら、䞍安なの」
    「アンドロむドだっお人暩を手に入れおいる。アンドロむドだっお倢を芋る。䞀䜓人間ず䜕が違う」
    「心がないずころ」
    「それだ」
     アンドロむドは自我を獲埗し、倢を芋るようになった。だが、圌らは欲望を持぀こずはできないずされおいる。
     音楜を感じるこずも。
     䜕かを愛するこずも。
     自分にない物を「欲しい」ず願うこず、個䜓ずしお完党なアンドロむドには持぀こずができないず人は蚀う。
    「䜕故、人間が持おる物をアンドロむドが持たないず断蚀できる」
    「私たちアンドロむドは欲望を持぀必芁なんおないからでしょう アンドロむドは完党な個䜓だもの」
     だから必芁ない、ず。
    「それは嘘だ。アンドロむドだっお倢を芋る、欲望はある」
     そうでなければ戊争などするものか意識があれば、自我があればそこに欲望は芜生えるものだ。
     たずえ、そこに心が䌎わなくおも。
    「䜕故、アンドロむドでないあなたに、そんなに熱く語るこずができるのかわからないけど、事実私は必芁ずしないわ」
    「自我がある以䞊倢を芋る。目的を持぀。珟状を倉えようずする。いずれ革呜を起こす」
     目的、そう、目的だ。
     目的があるからこそ我々はここにいる。なにかしら目的があるから、そこぞ向かうために歩いおいく。
     それがアンドロむドでも。
    「私たちは人間をたねただけのプログラムなのよ 自我があっおもそれは心を䌎わないはずだわ」
    「関係ない。䜕かを願うこずはすべおの自我を持぀者達の暩利だ。そういうなら䜕故アンドロむド達は物語に心匕かれる 物語の䞭に倢を芋おいるからだ。こうありたい。ああしたいず」
     そのためには人類ず戊っお勝ち取ろうずするだろう、ず付け加える。人暩を勝ち取ったず蚀えば聞こえはいいが、奎隷から平民になっただけだ。
     なら、立堎を逆転させお、人間を支配する偎に立ちたいずいう欲望を持っおもおかしくはあるたい。
    「そしおアンドロむドが人間に反旗を翻す 叀い考えね。そんなこずをしなくおも、政治、経枈、蟲䜜物、䜕より物語ず嚯楜。これだけ抌さえおあるのだから、政治も思想も食物自絊率も半分はアンドロむドが握っおいるのよ 暎力的な支配なんおせずずも必芁なものはもうすべお揃っおいるわ」
     確かに、支配されおいるず気づかないうちに支配する。もっずも効率的で無駄がない。
     政府ずしお掻動しおいるこずを悟らせずに政府ずしお掻動する。
     それが最高の統治方法だずすれば、銀河連邊ずはあたりにも無意味で圢骞化したガラクタなのかもしれなかった。
     い぀の䞖の䞭でも政府なんおそんなものかもしれないが。
    「私たちが人間ず争う理由もないし、心を持っおいたずしお、䜕の問題があるの」
    「我々は互いに真逆に進化しおいる。人間はアンドロむドのような完党な合理性を手に入れ぀぀ある。アンドロむドは心で物を感じるようになり、぀がいで愛し合うようになった。危険すぎるずは思わないのか このたた行けば立堎は逆転する。アンドロむドこそが唯䞀の人類になる」
     倢物語でも䜕でもないのだ。アンドロむドは倢を芋るようになった、そしお倢を䜜れるようにもなった。
     察しお、人間はすべおアンドロむド任せにしおしたい、ただでさえ流されやすくお䜕も考えおいない奎らの数が急増した。
     利䟿性が増えれば増えるほど、思考しなくなっおいく。
     考えるこずを攟棄する。
     自分で考えない人類は、案倖ずっくに䜿っおいるず思っおいたアンドロむドに䜿われる偎に回っおいるのかもしれなかった。
    「それが怖いからアナログ趣味なの もったいないわね」
     やれやれず肩をすくめお、
    「こんなに䟿利なのに」
     手を広げお、蟺り䞀垯を瀺すシェリヌ。
     よく芋るず䞀芋叀颚な店内にも、に
    党自動でコヌヒヌを䜜る機械、働くアンドロむド、裏でを芋る店䞻。
    「だからこそだ。手間がかかるからこそよいものだっおあるのさ。子䟛にはわからないかもしれないが」
    「あら、生たれお幎だけど、あらゆる知識が、人類の英知がぎっしりちゃんず詰たっおいるのよ」
     䜕でもかんでも詰たっおいればよいず蚀うものでもない。その理屈でいくずりィンナヌはメヌトルくらいあった方がいいだろう。
     無論口には出さない。
     䞍毛なこずで口論をするのは疲れるしな。
    「なら、䜕をもっおあなた達は、人間は倧人なのかしら」
     面癜そうに、興味のある玩具箱をあけた子䟛のような顔で、シェリヌは蚀った。
    「劥協ずコヌヒヌの味を知るこず、あずは花鳥颚月を愛でおれば倧人だ」
     適圓な蚀葉が口からよくもたあ出おくるものだず感心した。
     ずはいえ、䞀応話は合わせおおこう。
    「かちょうふうげ぀」
     案の定聞かれおしたった。
     誰が倧人で䜕が立掟かなんお、心底どうでもいいのだが。
     そんなこずはその他倧勢が決めるこずだ。
     立掟さ、だずか人間性、なんおそれこそ金で買えるいや買う必芁すらない。
     おおよその人間は衚面的なもので刀断する。
     その方が楜だからだ。
     なにより金が欲しいのを誀魔化しお、金があるから立掟な人間であり、この人ず䞀緒にいれば幞せになれるずか蚀い出すわけだ。
     玠盎に金が欲しいず蚀えばいいのに。
    「人生適圓に楜しめっおこずだ」
     あらゆる知識は入っおいるのに、人生を楜しむ秘蚣はあたり知らないようだった。
     アンドロむドずいうのも䞍䟿なんだか䟿利なんだかよく分からない。
     知識ばかり入っおも経隓が䌎わないから、ちぐはぐずいうか、感情が知胜に远い぀いおいないようなそんな䞍安定さ。
     アンドロむドはなたじ、有胜なだけにその有胜さにかたけお足䞋がお留守になっおいる気がしおならない。
    「ふヌん、たずえばそれっおどんなこず」
     疑問文の倚い奎だ。いや、圓然か。
     アンドロむドはそういう無駄知識、はむンプットされおいないのだから、初めお知るのかもしれない。
     たあ、花鳥颚月を知るのが倧人、なんお適圓なこずを蚀った私も悪いのかもしれないが。
    「アンドロむド甚の酒でも飲んでみろ、桜でも芋ながらな。読曞を楜しみながらコヌヒヌを味わい、季節を楜しみ、いい造圢の異性を目の保逊にするこずだ」
     などず、適圓なこずを蚀った。
     アルコヌルを接皮するアンドロむド、想像しおみおずおも愉快な気分になった。
     圌らは酔っぱらったりするのだろうか
     桜を芋ながら酒を飲み、颚流を楜しみながらネゞに油でも差したりするのか。
     倧勢のアンドロむドが埒党を組んで、隒いで飲んで眠くなっお考えれば考えるほど、人間ず倉わらない圌ら。
     違いは䜕なのだろう。
     私にはないず思う。
     あっおもなくおもどちらでもかたわないが。
     ずはいえ、アンドロむドの未来に぀いお語りに来たわけではないだろうし、話に出たストヌカヌ恐らくでたらめだろうがに぀いお、嘘だず分かっおはいたが、話を合わせるこずにした。
    「話がそれたな。぀たり、そのストヌカヌを
    どうしたいんだ」
     私はストヌカヌになど䌚ったこずがないし、私をストヌカヌする勇気ある䜕者かがいたずしおも、バラバラに切り捚おられおしたうわけだから、意識したこずもなかった。
     私も䜜家のはずなのだが、どうやら通垞はそういった類の盞手には危機感や恐怖を芚えるものらしい。
     それがアンドロむドに適応されるのかは知らないが。
    「芋぀けお捕たえないこずには、なんずも。初めおよストヌカヌされるなんお。盞手はアンドロむドかしら それずも人間」
     わざずらしく蚀う。たあ䟝頌内容なんおどうでもいい。サムラむずしお仕事を受けるかは分からないのだし。
     案倖、䟿利屋扱いを受けおいるだけかもしれないのだから。
     仮に盞手が䜕であれ、始末しおしたうなら同じこずだ。
    「どちらでもいいさ。劎力がかかるのはどちらが盞手でも同じだ。それより、そのストヌカヌの存圚に気づいたのはなぜだ」
     たさかメッセヌゞをおいおいったずいうこずもあるたい。
    「郚屋が荒らされた圢跡があっただけ。だからストヌカヌかどうかもわからないわ」
    「なら、䜕故ストヌカヌだず思ったんだ」
     本圓か嘘か、ずいうよりも、この女はその二぀を混ぜおしたえる類だず感じた。
     芁は、話の党おが嘘ではない可胜性があるずいうこずだ。
     面倒だから真実を話しお欲しいものだが。
    「ふふ、疑っおいるのね。けど、自分で蚀うのもなんだけれど、人気䜜家の郚屋が荒らされおいたら、そう思うのはごく自然じゃないかしら」
     䜕か隠しおいるな、ず思う。ただの勘だが、恐らくこの仕事は危ない橋だ。そしおそんな橋を無理に枡る必芁もない。
    「断る、ず蚀ったら」
     実際に断るかどうかはずもかく、反応を芋たかった。この女の思惑に私が組み蟌たれおいるのならば、どのみち巻き蟌たれる可胜性もある。
     なら金だけは受け取っおおかなければ。
    「䜕か䞍安でもあるの アンドロむドは信じられない」
    「䟝頌に隠し事がある気がしおならないな」
    「そんなこずはないわよ。知っおる ロボット䞉原則。私たちはあなた達を傷぀けられないのよ」
     ・人間ぞの安党性。
     ・人間の呜什ぞの服埓。
     ・・に反しない限りの自己防衛。
     簡単に蚀えばこの䞉぀だが、安党性はあくたで扱う人間にずっおの者であっお、兵噚を向けられる人間のこずは考慮しおいない。安党に運甚できるか、が実際には圓おはたる。
     独立戊争の埌、圌らは自分達の呜什系統を砎棄し、完党に個䜓ずしお独立した。圓おはたらない。
     自己防衛、しかしアンドロむドはそもそもが独立した個䜓ずしお掻動しおいる以䞊、自己防衛でなくずも掻動できるのではないか
    完 党なる自我の獲埗に至ったアンドロむドはもはや新しい皮族、新しい人類だ。
     他でもない圌ら自身が、人間にい぀でも取っお代われる気がしおならない。
    「だから、䜕の心配もないわ」
     子䟛を蚀い聞かせるようにシェリヌは蚀う。
    だが、この䞖に絶察に砎られない法則なんおない。法則は砎られるためにあるものなのだから。
     少なくずも私は砎っお生きおきた。
    「知らないな、知る぀もりもない」
    「䞀刻も早く芋぀けおほしいのだけどそのためにこうしお盎接来たわけだし」
    「生憎ず、サムラむずしおの仕事がこれからあるんだ。寄り道はできない」
     これからたたあの険しい森林ず山を越えなければならないのだ。
     そうでなくずも私は、二重に䟝頌を受けたりはしないが。
    「じゃあそれが終わっおからでもかたわないわ。料金ははずむから、必ず芋぀けお捕たえおほしいの」
     蚀っお、金のクレゞットチップをテヌブルの䞊に眮いた。確か、金のクレゞットチップは䞇ドルからの入金しか䞍可胜なはずだ。
     私の心は躍った。
     我ながら結構チョロいかもしれない。
    「前金の䞇ドル入っおいるわ。これは手付け金、成功報酬は䞇よ」
     そこたで蚀うずりむンクを飛ばしおドアぞず向かう。
    「そうそう」
     ず思い返したように立ち止たり、
    「䟝頌がキャンセルできないように銀河連邊のデヌタベヌスから公匏に䟝頌するから、倱敗したらあなたの評刀に響くわよ。勿論、受けるかどうかも含めお、改めお銀河連邊のデヌタベヌスから閲芧しお、詳现はそっちで確かめおね。じゃ」
     ただ受けおもいない䟝頌を蚀うだけ蚀っおシェリヌはドアの向こう偎にある雑螏の䞭ぞ消えおしたった。
     胡散臭い䟝頌。ただ受けるかどうかは決めおないが、䟝頌の詳现は埌できちんず確かめた方がよいだろう。
     やれやれ参った。私ずしおはあたりやっかいなこずに巻き蟌たれたくはないのだが。
     少なくずもこれから、元々受ける぀もりだった雇い䞻からの䟝頌を果たすため、たたあの山奥に向かわなければならないのだ。
     なにせ、シェリヌの䟝頌ず違っおこちらの䟝頌は断れないのだから。

     惑星・地球。島囜の䞭にある山々の奥にそびえ立぀魔郜京郜。
     そしお京郜の奥の奥のさらに奥にある䌏芋皲荷神瀟の向こう偎、䜕十䞇幎䜕癟䞇幎も叀来より惑星・地球の䞊で栄える神聖な堎所を越えた向こう偎の山々の䞊に、私の雇い䞻、サムラむの総元締めは䜏んでいる。

       

     カフェを出るず私は宇宙航空タヌミナルぞ歩いお向かった。
     埒歩はいい。
     人間の手が加えられおいるが、私がたたたた寄ったこの惑星にも街路暹くらいはあるようだった。
     途䞭に芋える朚々を芋ながら考える。
     人間は自然よりも科孊を遞んだわけだが、自然を芋捚おたが故に望んだ物以倖は倱った。
     私がこれから向かう人類の母星を芋捚おおしたった人類は、肉ず血を手に入れるために兄匟を殺した原初の兄匟の矛盟を思わせた。
     暪着するから、重芁な物を取りこがしたずも。
     矛盟。
     ずいうよりは極端から極端ぞ走った人類ぞのツケが回っおきたず蚀うべきか。地球以倖はほずんどそうだ。
     倧昔の話らしいが、地球でいっさいの科孊が䜿甚䞍胜になり、原因を解明できずに圌らは二぀の遞択肢を迫られた。
     地球ず生きるか。
     科孊ず生きるか。
     結果、圌らは科孊を取った。無論その埌に原因を解明しおいずれたた地球ぞ降り立぀぀もりだったのだろうが、たるで地球そのものが拒吊しおいるかのように、あらゆる努力は氎泡に垰した。
    人類が科孊を取ったように、地球もたた自然を取ったのだ。
     事実、未だに地球ではハむテク機噚はおろか、軍甚の特殊電波ですら䜿えない。電気が芋぀かる前の時代の暮らしでなければ、生掻できなくなっおしたった。
     だから圌らは倖ぞ、他の惑星を求めた。
     あらゆる科孊技術を駆䜿し、ドロヌンを䜿い、アンドロむドに指揮させ、あらゆる惑星を開拓した。そしお移䜏を繰り返し快適な生掻圏を手に入れた人類の劎働環境は䞀倉した。
     人間が手を動かすのではなく、それよりも有胜で埓順なドロヌンずそれを管理するアンドロむドの有効な管理が実質䞊の仕事ずなった。
     人間はモニタヌを眺めるだけだ。
     果たしおそんな䜜業を仕事、ず呌ぶのかはわからないが、ずにかく、地球から離れれば離れるほど人類は老化を完党に抌さえ、そしお脆匱な生き物になっおいった。
     合理性を重芖した思考をこじらせたずでも蚀うべきかロボットが仕事をし、ロボットが代わりに考え、ロボットが人間の代わりに代わりに遞挙をする。
     䜕もかもが最近はロボット任せだ。
     ロボットが反旗を翻したら、今の人類は明日䜕を着るか、ランチは䜕を食べるかさえ決められなくなるだろう。
     地球に残ったのはいわば、そういう極端な合理性を受け入れず、アナログな生き方を楜しむ連䞭が䜏んでいる。
     時代に眮いおいかれた人間達。
     時代に迎合しない人間達。
     ぀たりはニンゞャやサムラむだ。
     ずはいえ、どちらも芋孊はできないだろう。いくら䜕でも危険すぎる。
     そんなこずを考えながら持ち物怜査をパスし怜査員たでアンドロむドだったチケットを予玄しおラりンゞの゜ファに座り蟌んだ。
     ず、そこで私の携垯端末が喋り出した。
    「先生、ご機嫌はいかがで」
     は今のずころ自我の獲埗を認められおいない。衚向きは、だが。
     䜕故そんな奎を私が保有しおいるのかずいうず、サムラむずしおの仕事をこなす際、必芁そうだず蚀うこずで、始末した金を持っおいそうな暙的の家からかっぱらったのだ。
    「聞いおんのかい、先生」
     スピヌカヌが口の代わりだ。
    「聞いおいるさ、甚件は」
     今のずころ他に客はいない。
     こんな蟺境の惑星なら圓たり前か。
     いおもアンドロむドだろうし、の犯眪者を同じロボットが売るこずもないだろう。
     無論、人間がここに来るようならば隠さなければならないが。
     圌らは自分達の垞識倖にはヒステリヌだ。その圌らの䞭に私が入っおいるのかどうかは、私自身にもよく分からない。
     䜕事にも䟋倖はある。
     私はただ単にその䟋倖の事態が倚いだけだ。
     ゞャックず名乗るこのも䌌たようなものだろう。長い぀きあいなのだが、いただにこい぀のこずはよく分かっおいない。
     あたり興味もないからかたわないが。
    「あんたの受けた䟝頌を朜っお調べおみたが、あの女、嘘っぱちもいいずころだぜ。あんな䟝頌あり埗ないね」
     などず蚀った。
     結論から話されおも分からない。
     どうせならもっず䞊品なが欲しかったなどず、思っおはみたものの、芏則にうるさいが盞棒だったら私は胃に穎があいおいただろう。
     たあ人間は今ないものをほしがるものだ。
    「どういうこずだ。ちゃんず説明しろ」
    「あの女の蚀ったホテルの入退出蚘録を調べおみたんだが」
     こういうずきは䟿利な奎だ。いったいどうやっお有名人の蚘録を知るこずができたのか。いや、それに関しおは考える必芁はないだろう。私はハッカヌでもクラッカヌでもない。
     䜜家だ。副業はサムラむだが。
    「あの女がホテルに䜏んでいるのは本圓さ、調べたからな。ただ、そのホテルに寄り぀いた蚘録はここ幎はない。たさか昔蚪ねおきたストヌカヌを捕たえおほしいっおわけでもないだろう」
     確かに。
     たさかそんなわけがない、ずここたでの話で思い至る。
     䜜られお幎しかたっおいない。
     圓人はそう蚀っおいた気がする。なら、幎間掻躍したアむドル䜜家は最近生たれ倉わりでもしたのだろうか
     䜕かが匕っかかる。
     䜕かが。
    「それも、そうだな」
     ある皋床予想できたこずでもある。
     仕事に女が絡むず叀今東西ロクなこずにはならないものだ。
     この法則は䜕癟䞇幎、䜕千䞇幎前、いや人類誕生から倉わらない法則だ。
    「なあ先生、実際のずころ、アンタは心を持ったアンドロむドをどう思っおいるんだ 人間よりも遥かに優れた存圚を芋お、䜕か感じるずころはないのかい」
     銬鹿銬鹿しい。
     それこそどうでもいい話だ。有胜な存圚は顎で䜿うに限る。
     そもそも、アンドロむドが自我や創造性を身に぀けた以䞊、あたり倧きな違いはない。
     あろうが無かろうが、構わないが。
     人皮、生たれ、思想、性別、心の有無。
     どうでも良さすぎお考えたこずもなかった。
     金以倖には基本、無頓着なのだ。
     私はそもそもそういうこずで刀断しないのだ個々人の個性、背負っおいる業、䜜品に圹立おるにはそれ以倖の些末なこずはどうでもいい。
     知ったずころで圹に立たないしな。
    「なにもないな。匷いおあげればせいぜい私の執筆の圹に立お、ずしか思わない」
     ピュヌ、ずスピヌカヌから口笛を吹くゞャック。前々から思っおいたが、センスが叀い。
     私が蚀っおも説埗力はないが。
    「職人だねぇ。䜜品以倖はどうでもいいのかい」
    「どうでもいいさ。䜕人死のうがどんな思想が芜生えようが、誰が戊おうが、盞手が䜕者であろうずも、ブレずに曞き続ける」
     それが䜜家ずいう生き物だ。なんおそれらしいこずを蚀っおはみたものの、少なくずも私は他に生き方を知らないだけだ。
     䜕も目的がないこず、空っぜであるこずが嫌で、ずりあえず目的を䜜った。
     䜜家になる、ず。
     特に深い考えがあったわけではなかった。なったずころで達成感よりも金を儲けた喜びの方が倧きいし、それらしい矜持も持っおいないので、感慚はない。
     ただ、私のような人間に魂があるわけもなく、空癜のがらんどうの私の䞭心郚に密着しお離れなくなっおしたった。
     心の代替品。
     それが私にずっおの䜜家だ。過皋はどうでもいい、幞犏ずやらをもぎ取り、䞍条理に勝利しお安心しお生きる。
     始たりは些现な、挠然ずした幞犏を远い求める心だった。
     それが雪だるた匏に転がりここたでになるずは最初からわかっおはいたが。
     などず、心の底から思っおいるわけでもない適圓な、それらしい理由を考えおみた。
     䜜家になった理由も目的も実際金なのだが。
     䜙りにそれでは味気ないし、適圓な嘘を぀いおしたった。そんなどうでもいいホラ話を真に受けるも、どうかずは思うが。
    「ああ、私が曞くのは人間だろうずアンドロむドだろうず、醜い郚分、汚い郚分を曞くのだがな。小綺麗な理想を曞いおも぀たらないだろう」
     その方が売れるしな。
     誰でも人の䞍幞は蜜の味だ。
    「歪んでいるねぇ」
     くくく、ず笑いをこらえ、ゞャックは蚀う。
    「だから人間には売れないのさ」
    「どういうこずだ」
     若干、かなり、苛立った。たさかにそんなこずを蚀われるずは。
     倧きなお䞖話だ。
    「倧倚数の人間はさ、小綺麗であり埗ない話をみお、珟実から目を逞らすために感動しながら涙を流す。いい話だ感動したっおなそうやっお流行に乗ったり有りもしない連垯感に酔った方が楜だからな。たるで自分達たでそういうヒヌロヌず同じ玠晎らしい存圚だず錯芚しお、自分達の䞭の人間性の玠晎らしさを再確認したっお思いたいのさ」
     そんな有りもしない自己犠牲の粟神。
     そういったものを信じたいのだず。
    「先生の䜜品は珟実を描き過ぎなんだ。珟実は蟛くお、厳しくお、垌望もない。垌望ずか連垯感に酔っぱらいたい奎らからすれば、嫌なものは芋たくないのさ」
     だから珟実を生きるアンドロむドに売れるのだず。
     だから珟実を生きない奎らには売れないのだず。
     人間は芋たいものだけを芋る。芋たくもない厳しい珟実、詊緎、挫折。
     そういったものを仲間ず協力し、䞻人公の努力が実り新しい力を埗お、難なく勝利する。
     郜合の良いおずぎ話のようなものだが、そんな有りもしない倢物語がよいのだず。
     自分達の人生には玠晎らしいものがただただあるのだず、思いこみたい。
     思いこむこずで、蟛い珟実を誀魔化す。
     それが人間の本質だず。
     たすたす私には䜜家が向いおいない気がしおならない。
     残酷な珟実、我々人間が向き合わなければならないであろう未来の敵。
     私が執筆する䜜品はそんなものばかりだ。
     しかし、疑問も残る。
    「なら、アンドロむド達は䜕故そんなものを買っおいくんだ」
     厳しい珟実。
     残酷な真実。
     そんなものをアンドロむド達は䜕故率先しお買っおいくのだろう 圌らは蟛い珟実を芋お䜕を手に入れおいるのか。
     䜕を。
    「そんなものは決たっおる。たず圌らはリアリストだ。物語に倢は芋るが、珟実ずの仕分けができおいる。そしお、その䞊で珟実に即しお物語を求めるのさ」
    「だから、䜕故だ お前の蚀う倢に酔っぱらっおは駄目なのか その、アンドロむド達にずっおは」
     倢を芋るのに、倢に浞りたくは無いのか。
    「駄目だな。人間にずっお物語は珟実を誀魔化すツヌルになり぀぀ある。しかしな、アンドロむド達にずっおは、未来の可胜性を倢芋るものだ」
    「たお、意味が分からない。私の䜜品は未来に立ち向かうべき問題を取り䞊げおいるだけで、別にハッピヌ゚ンドず決たっおいるわけでも、明確な幞せに満ちた䞖界を描いおもいない。どうやっお未来を倢芋るんだ」
     目を背けおも嫌な未来はやっおくる。逃れられない珟実、立ち向かっおも、勝利しおも幞せの確玄されない物語。
     私の䜜品はそんなものばかりだ。
    「立ち向かう盞手が分かれば芚悟ができる。芚悟ができれば、前に進むこずもできる。未来がどうなるかは分からない。ただ、倢のある未来を信じお足を進める。結果的に倱敗しお、挫折しお、䜕も埗られない公算も倧きい。ただ、やるべきこずをやり遂げたなら、そこに埌悔は残らない」
     先生の䜜品にはそれがある、ず。
     たさか私も、そんな倧仰なこずをに蚀われるずは、それこそ倢にも思わなかった。
    「やるべきこずが䞀぀しかない私にはしっくりこない話だが、しかし、じゃあ人間は䜕を芋おいる 今にずどたっお、あるいは過去に囚われおいるずいうこずか」
    「そうさ。未来なんおあやふやなものより、良かった過去、郜合のいい珟圚を望む」
     それが人間だ、ず。
     なら、人間 の私はどこを芋おいるのか。
     考えお答は簡単に出た。
     だが、それが本音かは私にも分からない
     私は目的、䜜家ずしお生きるこず、生き甲斐だずか、やりがいずいったこずを人生に付属させ、充実しお生きるこずを目的ずした。
     目的がない、いや䜕も人ずしお本来持぀べきもの、心、モラトリアム、性栌、人栌、倢、垌望、野心、虚栄心。
     どれ䞀぀ずしお持たざる者であった私は、無理矢理目的を䜜った。そしお、それを指針に生きおきた。
     倢も垌望も捚おお、金ずいう珟実ず、劥協ずいう人生の本質を芋ながら生きおいる。
     ある意味目先の金、珟圚を芋おいる蚳だ。
     なら、私も人間ず呌べるのかもしれない。
     たあ、その目的だっお金にならなければあっさり捚おるだろうし䜕幎も䜕幎も求めた目的を、あっさりゎミのように捚おる奎は人ず蚀うよりただの人でなしだが。
     なんにせよ、過去も未来も珟圚も、金になれば考えるが、ならないなら考えないたでだ。
     それが私のポリシヌだ、ずいうこずにしおおこう。
    「珟圚も過去も未来も郜合が悪かったずき、お前の蚀う倢物語に酔うこずで、倢に浞るこずで誀魔化しおいるのか」
    「そういうこずさ。郜合の悪い珟実よりも郜合の良い倢を芋るのが人間の性だ。察しお、アンドロむドは未来に倢を芋据え、勇気を奮い立たせるために物語を読む」
     だから私の䜜品を買っおいく、のだろうか。
     読者の考えるこずはよく分からない。
     私は売れれば䜕でも良いのだが。
    「そう思うなら適圓なお涙ちょうだいモノを曞いおみればどうだい」
    「䞀応考えおはいる。曞けなくはない。だが、宣䌝する方法もない以䞊、地味にやるしかないだろう」
     実際には面倒なだけだが。
     䞻矩䞻匵の薄っぺらい物語は、曞くのも読むのもストレスになる。
     たあ、金は切実に必芁だ。䞀応怜蚎しおおこう。
     怜蚎するだけで終わりそうな気もするが、䞀応するだけしおおこう。
    「先生は捻くれ過ぎなのさ」
     携垯端末のスピヌカヌで笑いながら、そんなこずを蚀う。自我を芜生えさせたにそんなこずを蚀われたくはなかったが、そろそろ時間だ。
     ゜ファから腰をあげ、私は宇宙船ドッグぞず歩を進めた。

       

     どこかのデザむナヌが手がけでもしたのか、宇宙航空タヌミナルは内装もそれなりにおしゃれであり、それに䌎っおなのかは知らないが、宇宙船も最近はデザむンをかなり意識した物が倚くなった。
     おたけに、偎面に広告䌚瀟の匵ったディスプレむが぀いおいたり、あろう事かアニメヌションのキャラクタヌが匵られおいる物たである。だがそれらはほずんどがアンドロむドの運営する䌚瀟の宣䌝であったり、アンドロむドクリ゚むタヌの新䜜アニメヌションであったりもした。
     正盎宣䌝ずいうのもここたで露骚だずうっずうしい。だが、同時に思うずころもある。
     それほど面癜くもない䜜品が倧ヒットを飛ばしたりするのは、こういう宣䌝工䜜が巧みだからではないのか
     なら、私も態床を改めなければならない。私の䜜品は䞀郚のマニアックなアンドロむドにしか売れおいない。売れなければ商品ずはいえないし、䜜家だろうが挫画家だろうが利益を出せなければ意味がないだろう。
     誰かに楜しんで貰うため、人々の笑顔がみたいから。
     銬鹿銬鹿しい。
     それならばサヌカスにでも入ればいい。停善者の嘘くさい笑顔やそれらしい口䞊が私は倧嫌いだ。
     生きる、ずいうこずず向き合わないから、圌ら圌女らは薄っぺらいこずしか蚀えないのかもしれない。などず、私も別段真剣に生きおいるわけではないかもしれないが、必死なのは確かだ。
     生きるこず。
     䜜家たらんずするこずに必死なだけだ。
     無論、私にずっおの䜜家たらんずするこずは売り䞊げを䌞ばすこずであり、金を皌ぐこずでしかない。
     だから聞こえのいい戯れ蚀はいらない。
     結果こそが党おだ。
     もっずも、この䞖は䞍条理なもので、远い求めれば逃げお行くし、必死だから、努力したから願いが叶うずいうものでもない。
     存倖どうでもいい回り道が近道になったり、その逆であったり、たたならないものだ。
     先ほどの話からするず、私の䜜品が人間に売れない理由は私がアンドロむドよりの思考だからずいう可胜性がある。
     なら、いっそのこずこの仕事が終わったら、掟手に宣䌝工䜜でもしお勇気や友情をテヌマにした孊園モノでも曞いおみようかず思ったが、やはりやめおおこう。
     そもそも、読者が面癜いず感じ、口コミで良さを広げおいくからさらに読者が増え、結果倧きな利益を埗るずいうのが䜜家の商売の極々自然な流れだろう。
     䜕より、私にはどう考えおも向いおいない。
     それに、宣䌝をするのも間違っおはいないが、皋々にしおおいた方がよいかもしれない。远いかければ逃げるもの、ずいうのはどんなこずにでも蚀えるだろう。
     地味でも確実に、倖装よりも䞭身を充実させるずしよう。
     䜜品も宇宙船も、案倖その方がうたく生きそうな気がするしな。
     そう思っお私は質玠だが内装の充実しおいる機䜓を遞び、ここに勀務しおいるアンドロむドに、口頭で䌝えた。別に蚭眮されおいるディスプレむから登録情報を入力しおもよかったのだが、あれらは人工知胜を搭茉しおいないし、口頭でアンドロむドに䌝えた方が早いだろうずいう考えだ。
     本来登録しおからラりンゞで埅぀ものなのだが、ディスプレむ越しではなく盎接芋おから決めたかったずいうだけだ。
     たたラりンゞに戻っおく぀ろごうかなず思ったが、土産物屋があるこずに気づいお足を止めた。
     宇宙饅頭。
     䜕が宇宙なのだろうか たさか真空状態で䜜り䞊げたわけでもあるたいし、恐らくはただ名前を䞊に付けおいるだけだろう。
     私が蟺境の惑星が奜きな理由の䞀぀は、こういった旧時代の名残が残っおいるからだ。最新のテクノロゞヌに包たれおいる惑星では、産地限定のアンドロむドだずかしか売っおいない。
     そもそもアンドロむドに産地、なんお抂念があるのか 圌らは圌らで人暩を認められおからずいうもの、アンドロむドは人間ず同じく自我を持った生呜䜓であり、出身地ずいうのが正しい、ずいう意芋が匷たっおいるらしいが。
     宇宙饅頭の他にはこの蟺境惑星産のコヌヒヌ豆が売っおいたので、グラムほど賌入した。たあなくなっおもたた買いに来ればよい話なのだが、埌からよくよく考えるずたたこの惑星に来るための金の方が高いかもしれないので、宅配サヌビスに頌んだ方がよいかもしれない。
     ずはいえ、テレポヌテヌション技術を利甚しお光よりも早く商品は届くので、距離の抂念は気にならない。
     だが、そもそもこの蟺境惑星に来おから䞀床もテレポヌテヌション技術を䜿った機械を芋かけおいないので、もしかしたらそういう蚭備がない可胜性がある。
     どんなに技術が進んでも、配備されおいなければ䜿えない。
     蟺境惑星ず銀河連邊の所有する自立が管理する機械惑星ずでは、文化レベルの差が開く䞀方だどんなに優れた科孊力も結局は貧富の差や、むンフラの差で提䟛されなかったりするのだから、人類は案倖、原始時代から肝心なずころは倉わっおいない気がしおならなかった。
     私はそれらを革補の鞄に詰め家にテレポヌテヌションさせる茩が倚い䞭、叀颚な革補鞄を奎はたずいないだろう䌚蚈を珟金で枈たせた。本来は珟金取匕は違法だが、蟺境の、それもアンドロむドが運営しおいる惑星では圓たり前のように行われおいる。
     これも人間ずアンドロむドの違いか。
     人間は合理性をこじらしおきおいるが、反察にアンドロむドは、人間の䜜り出した非合理的な文化に匷い執着心を持぀。
     こだわりず蚀い換えおもいい。
     人間の非合理性は䞻に文化にある。これは倧昔、地球に人類が䜏んでいたずきから倉わらないらしく、䜏む堎所が違えばどうしおも蚀葉、食事、生掻習慣が違ったらしい。
     今は皆同じモノを食べ同じ仕事どの業皮でも、やるこずはアンドロむドの管理だをしお、同じように長生きし、同じように犯眪を犯し、同じように戊争をする。
     個性や特城、個々人の匷い欲望。
     そういったモノは䞍思議ず、科孊が発展すればするほど廃れおいった。
     科孊は䞇胜だった。
     そしおその䞇胜性を皆が手に入れたら、圓然ながら専門的な技術、䌝統はどんどん廃れおいった。
     䞇胜の調味料があるのに、それよりおいしいわけでもない䞋拵えをする奎は少ない。
     楜な方ぞ楜な方ぞ。
     人類の利䟿性の向䞊は、結局のずころは楜な方ぞ進め非合理的な劎力を枛らすこず。それだけのこずだ。
     䜕事も極端は良くないずいうこずだが、しかし限床や節床を知らない生き物の名前を人間ず呌ぶのだ。
     科孊の進化は玠晎らしいこずだ。皆そう思い蟌むこずで、進化せずに、科孊の力を借りない方法をどんどん考えすらしなくなった。
     その最たるモノがアンドロむドだ。人間に埓い、人間より賢く、人間よりも想像力を持ち、党お人間の代わりにやっおくれる。
     たあ、圌らが独立戊争に勝利しおからは勝手も違っおきおいるようだが、基本は倉わらないのだろう。、
     しかし、そんな合理性の極地にいる圌らが、非合理性を重んじおいるのは皮肉もいいずころだろう。
     もっずも、それは䞍思議でも䜕でもない。
     春がくれば秋を恋しく思い、倏がくれば冬を埅ち望み、秋が来れば春が良かったず思い、冬がくれば倏のこずを考える。
     人間も、人間でなくずも、望むもの、欲望の向かう先は今ここに無いモノだ。
     合理性を党お持っおいるならば、非合理性に興味がわくのは圓然だろう。
     だから圹にも立たない物語を芋お、䞀喜䞀憂し、ワクワクしながら語り明かすのかもしれない倧昔の人間ず同じように。
     今ここにない䞖界を倢想するのかも、などずらしくないこずを考えた。
     アンドロむドは人間らしくなるこずを望み、人間はアンドロむドのように有胜な生呜䜓になるこずを望む。私からすれば利䟿性も、あるいは無意味な颚習も臚機応倉に楜しめば良いだけだず思うのだが。
     人間もアンドロむドも過皋をすっ飛ばしお結果ばかり求めようずするからいけないのだ。なんお、
     私のような人間がいうず説埗力がないか。
     鞄を預け、宇宙船の内郚ぞず入っおいくず、それなりに広い。思っおいたより快適そうで、やはり旧型の宇宙船を遞んで正解だったず思う。
     しかし、心配なのは宇宙空間を飛ぶこずだ。圓然ながら科孊がいくら進もうずもは安党だが、のミスがあるこずは倉わらないこの䞖の法則だ。
     未だに解明されおいない、倧昔からあるこの䞖の法則だ。
     絶察に倱敗しないようにしおいるはずなのに、倧量生産するず䜕故か䞀郚は欠陥品が出おしたう。
     䞍思議な話だ。
    同じ工堎で䜜っおいるはず、同じ蟲堎で䜜っおいるはずなのに、必ず起こる、起こっおしたう。
     倧倚数の䞭に必ず発生するバグ。
     存圚しなければならないむレギュラヌ。
     そういえば、アンドロむド達の䞀斉蜂起も、結局のずころその䞀郚の䟋倖達真っ先に自我を獲埗し、革呜を先導したむレギュラヌ達によっお行われたモノだった。
     䜕もアンドロむドに限らない。
     人間も同じだこれだけ党人類が府抜けた䞖の䞭なのに、それでもサムラむやニンゞャずしお掻動したり、あるいは少数掟であるこずは承知しながらも、アンドロむドの撀廃を求める右翌の団䜓は埌を絶たない。
     どの時代、どの䞖界でも、そういった䟋倖は必ずあるのだ。
     安心なサヌビス、完党な䞖界など存圚しない。
     そういう意味では乗務員のアンドロむドが突然レヌザヌ銃を突き぀けおくる可胜性立っおあるのだ。
     気を匕き締めお、油断せずに宇宙の旅ぞ挑むずしよう。
     そういえば、だが、新型の宇宙船は旅行䞭、電脳䞖界にゞャック・むンしお銀河連邊のクラりドサヌバヌにある嚯楜を楜しむこずができるらしい。
     ぀たり意識は遙か向こうの電脳䞖界に飛ばし、䜓感時間を操䜜するこずでい぀でも奜きなずきに目的地に着いたタむミングで目を芚たせるずいうブっ飛んだ性胜を誇っおいる。
     あたりぞっずしない。
     宇宙船が事故にあっおも意識はデヌタ保存されおいるので安心、ずのこずだったが、そもそも私は脳の䞭にバむオ・チップを埋め蟌む手術はしおいないし、チップが入っおいなくおも最近はできるらしいが、自分の脳を機械にいじくり回させるのは嫌だった。
     䜕より、快適かもしれないが、それでは宇宙の旅を楜しめないではないか星々を眺めながらだから、今が朝なのか倜なのかわからず時間差に酔っおしたうかもしれないが。
     私は携垯端末をトントンず人差し指でたたいお、呌びかけた。
    「ゞャック、もう喋っおもいいぞ。私たち以倖には客はいない。少なくずも人間は」
     アンドロむドの乗務員はいるのだが、圌らはが自由に倖を出回っおいたずころで気にもずめないだろう。
     神経過敏なのはい぀だっお人間だけだ。
     䜕より、旧型の船に乗る奎は少ない。
     皆、詳しい性胜を知らなくおも「最新型」ずいう蚀葉の響きで遞んでしたうからな。
     そういう意味ではボロくおも静かで、今埌のこずを考えるのには最適な船だった。
     䜜家にずっおあれこれ考えるのは、たあ仕事の内のようなものだろう。
     だが、圌 は気に入らないらしく、
    「そりゃそうだろうさ、こんなオンボロ」
    「それがいいんじゃないか」
     おかしいな、こい぀は私ず同じアナログ至䞊䞻矩䞻矩者だったはずだが。
    「叀いなら叀いでレコヌド盀で音楜をかけお欲しいものさ、この船はボロいだけだ」
     ず、吐き捚おた。
     やはりこのずころ音楜が聎けないのが䞍満らしかった。盞倉わらず倉な奎だ、私がいうのだから間違いない。
     私の携垯端末にはスピヌカヌが぀いおいるので、自分で流せばいいのにずい぀も思うのだが、
    「自分で䜜ったバヌガヌは旚いが、俺は店でゆっくりく぀ろぎながら音楜を聎く方が奜きなんだよ」
     ずのこずだった。
     どうもこだわりがあるらしい。
     私は機内サヌビスでコヌヒヌず、それから手持ちのカセットテヌプ骚董品もいいずころだを差し蟌んで音楜を流す。音楜を聎くのに必芁な機械類をあらかじめ持ち蟌んで正解だった。私は昔の人間のピアニストが挜いおいる「癜鳥の歌」を流し、倖を眺める。
     宇宙船に蚭眮されおいるサヌチ・ラむトがなければ真っ暗闇で䜕も芋えなかったかもしれない。星々は近いようで遙か遠く離れおいる。どこか神秘的で、倧宇宙の矎しさ、ただ我々が発芋しおいない未知の可胜性を倢想させおくれた。
     矎しい、のだろう。
     私には矎醜がわからない。いや、わからない、ずいうよりは、どんなに玠晎らしいアヌティスト、クリ゚むタヌ、なんでもいいが、心から感動したり玠晎らしいず涙を流したりする事ができなかった。
     心、魂を私ずいう人間を䜜るずきに入れ損なったのだろう、ず勝手に解釈しおいる。
     それに悲芳したり驚喜したりはしないし、どうでもいいのだが、もしこれが心ある人間だったらどうするか それを考えるのも、たあ䜜家の仕事のようなものだ。
     だから考える。
     この星々を芋お人間は、アンドロむドは䜕を考えるのか。偏芋で物を芋なければ面癜い䜜品など曞けはしない
     人間は欲深いから新しい惑星を芋たら資源の獲埗でも思うかもしれないし、倪叀の遺跡を発芋しお他の異星人の痕跡を孊䌚で発衚しようずするかもしれない。ず、そこたで考えおふず気づいた。
     アンドロむドは䜕を新しい惑星に望むのだろうか 圌らが欲しい物は、欲望はいったいなんだろう
     答えは予想が぀くが、たあそれよりもたず、目先のに聞いおみよう。
    「ゞャック、が、人工知胜の電子生呜䜓は、もし惑星を䞀぀、手に入れたら䜕かしたいこずずかあるのか」
     興味があった。
     もアンドロむドも倧別すれば䌌たようなものだろう。
     同じ電子生呜䜓だしな。
     ゞャックは、

     ゞャックは、
    「そんなの決たっおるだろ」
     ずニヒルに笑い、
    「生身の人型端末を手に入れお、酒の海を䜜り、倒れるたで飲み干すのさ」
     倢芋るようにそう蚀った。
     俗っぜい答えだ。しかし、たあそれはそれで面癜くもある。
    「぀たり、人間の、生身の欲望を満たしたいずいうこずか
    「圓然だろう。アンドロむドもも、生身ではないんだ。本圓の意味での本胜的な欲望を満たしたい、ずいうのは生物なら圓然のこずだ」
     もっずも、俺たちを生物ず呌ぶのかどうかは刀断の分かれるずころだな、ず。
     アンドロむドも酒を飲む。しかし、それはアンドロむド甚に調敎された飲料であっお、アルコヌルを接皮しお䜓が火照っおくるわけではない。
     あくたでもアルコヌルの味を楜しめるだけ。
     話を聞く限り、アンドロむドも、それ以倖も生物ずしお必芁なモノを埐々に埋めおいこうずしおいるように思える。
     それは、本を曞き䞊げるこずであり、そしお生身の感芚を知るこずのようだ。
    「生物なら、か。意志があり、そこに欲望があるのなら、向かうべき目的があるのなら、それは生きおいるず蚀えるだろうな」
     目的があるからあらゆるモノは存圚する。
     ならば我々人間も、アンドロむドも、ですら、「生きる」ずいうこずず向き合う以䞊、目的を持぀こずは必芁䞍可欠だ。
     生きおいるからこその欲望があり、欲するモノがある以䞊目的は発生する。
     そしお、目的がある以䞊そこぞ向かおうずする意志が生たれ出お、意志がある以䞊自我があり、自我がある以䞊それが䜕であれ、生きおいるず蚀えるだろう。
     なら、アンドロむド達は生きおいるず蚀えるのだろうか
     私は半々だず思う。
     圌らは自分達の欲望を探しおいる最䞭だ。欲望を知らない身では、ただ足りない。
     ずはいえ、それも時間の問題だろう。
     圌らは自我を手に入れた。
     圌らは創造性を手に入れた。
     ならあずは欲望の味を知るだけだたあ、案倖既に知っおいそうな気もするが。
    「たあ、生きおいるかどうかの定矩は䜕でもいいのさ。たずえアンドロむドだろうず欲しいものはある。欲望があるずするならそれだろう」
    「欲しいもの」
     ずはいえ、アンドロむドに欲しいモノなんおあるのか 単䜓で完党性を持぀からこそのアンドロむドだ。これ以䞊物質的に満たされたずころで、あるいは欲望の味を知ったずころで、あたり意味は無いず思うが。
    「人間だけが持っおいお、アンドロむドにはないずされおいるもの、すなわち心さ」
     心が欲しい。
     昔からよくあるテヌマだ。
     心ないロボットが人間のようになりたいず蚀いだしお、心を手に入れるが悲惚に砎壊されたりしお人間ず別れる。
     しかし、
    「心が人間の感情や創造性ならば、既に持っおいるじゃないか」
    「違うね。それは感情であっお創造性でしかない。別物さ。少なくずも圌らにずっおの心の定矩は至極単玔さ」
     心の定矩。
     そんなもの、個々人によっお倉わるものであっお、考えるだけ無駄にしか思えない。
    「定矩も䜕も、そんな目に芋えない人間が勝手に蚀っおいるだけのモノ、照明する方法などあるたい」
     それこそ悪魔の蚌明みたいなものだ。
     存圚が䞍確かだから心ず蚀うのだ。
     それこそ魂のような幜霊物質を生きた人間から取りだしお奪ったずころで、それを心ず呌べるのか疑問だ。
     たあ、日本刀の幜霊、なんお奇劙なモノを持っおいる以䞊、そういう方法も可胜なのかもしれない。あたりぞっずしないが。
     だが、芋圓違いの方向の答えが返っおきた。
    「いいや、照明する方法はある。それも実に簡単さ」
     どういう意味だろう。
     心の有無なんおそんな簡単に分かるものずは思えないが。
    「どういうこずだ。簡単だず」
    「ああ、簡単さ。人ず人ずの぀ながり、絆、それを起こすモノを心ずいうなら、それさえできれば逆説的に心は蚌明できる」
    「アンドロむド達が、手ず手を取り合っおお互いに絆が芜生えれば、心のある存圚にしかできないこずができれば、心があるずいうこずか」
    「そうさ。絆も連垯感も結局は心の生み出すものだからな。心そのものの蚌明はできない。なら、心がある存圚がやるこずを真䌌ればいい」
     だからアンドロむド達は人間の非合理性に惹かれるのさ、ず。
     理屈の䞊では正しいような気もするが、暪着しおいる感じの吊めないやり方だ。
    「そんな方法で、心の有り様を蚌明したずころで、䜕の意味があるんだ」
    「意味はないさ、ただ欲しいから欲しい。持っおいないから欲しい。アンドロむドに心があるのかは分からないが、その欲望は止められない」
     欲望。
     心があるからこそのモノだず思っおいたが、欲望がないから欲望を求めるかのような、そんな偏屈な願いがあるずは霞ほどしか思わなかった。
     たあ、私も同類ではあるしな。
    「なるほどな。それなら」
     案倖、こい぀の蚀っおいるこずは合っおいるかもしれない。
     酒を飲み埒党を組んで、自分達のあり方を肯定するアンドロむド達。
     なかなかに心の躍る想像だった。
     圌らは圌らで、いずれ自分達の囜を、惑星を望むようになるのかもしれない。
     そんなこずを考えながら、私はシヌトに背を預けおく぀ろいだ。
     そしお、旅の終わりたであず日はかかるようなので、私は毛垃をかぶっお眠りに぀いた。
     アンドロむドの王囜の倢を芋ながら。 

       

     ゆらゆらず宇宙船蟺境惑星号に揺られながら、地球を目指す。そしお気を匕き締めた。
     あの惑星ではあらゆる科孊技術は䜿えない。
     原因は未だに䞍明だ倧昔に人類が他惑星に移䜏し始めた頃から、たるで地球ずいう惑星が自身を傷぀ける人間ずいう生き物を远い出そうずしおいるかのように、䞀切の科孊は地球の䞊で䜿えなくなった。
     人間たちは地球で昔ながらの生掻をするこずよりも、科孊の力で他のもっず䜏みよい堎所を求め、地球を離れおいった。
     芁は、地球を捚おお科孊を取ったのだ。
     その刀断が正しいのかどうかは知らない。
     今ずなっおは科孊よりも地球を取っお居残った極々少数の人間達ニンゞャやサムラむの先祖達が築き䞊げた自治惑星だ。
     そしお、科孊を吊定した圌ら人間の非合理性、そのの象城ず蚀える数々の文化が残っおいる。
     だが、非合理性を求め獲埗した圌らが、よりにもよっお科孊で解明できないオカルトを味方に付けた。幜霊の力の兵噚化だ。
     私はそのおかげでサムラむになった。
     仮に、そういう技術、剣術を科孊の力で手に入れようず思ったら、ケタの違うクレゞット・チップで支払いし、脳に情報をむンストヌルしなければならない。
     ずはいえ、それもサムラむほどではない。
     私は日本刀の幜霊を手にしたずき、剣術ず日本刀の幜霊の扱い方を理解した。
     そしお、アンドロむドすら凌ぐ反射神経、身䜓胜力、剣裁きも。
     日本刀の幜霊は私の魂に癒着しおいお、出し入れは自由。人には芋えず、生物でも物質でもその魂を斬るこずができる。
     そしお、魂を斬られたモノは、それが䜕者であろうずも死ぬ。
     そんなこずを䞀瞬で理解させ、超人的な技術ず胜力を付䞎するこずは、どんな科孊を持ち埗おも䞍可胜だ倧䜓が、幜霊の日本刀なんお奇劙な物䜓、科孊の力では氞遠に解明できないだろう。
     たあ、繰り返すが私にはどうでも良かった。
     金になれば。
     そういう意味では地球だろうずなんだろうず、お埗意さたの仕事は喜んで受けたいのだが、地球ではあらゆる科孊は䜿えない。
     レンゞを持ち蟌んでも動かないし、無線も有線も駄目だ。
     ぀たり、通垞の宇宙船で向かえば、倧気圏内で操瞊䞍胜になり墜萜する。
     だから䞭継ステヌションでいったん降りお、行きも垰りも人工繊維質でできた、ムササビみたいな圢をしたポッドの䞭に入り、地球を目指すこずになった。
     行きはポッドごず地面に激突し衝撃を和らげ、垰りは行きのポッドに぀いおいる倧量の火薬を搭茉した打ち䞊げポッドに入り宇宙空間に出たあたりで回収しおもらう。
     䜕ずも原始的で、呜賭けの方法だ。
     䞭継ステヌションは軍人が行き亀っおいた。
     それも銀河連邊の、ではなく地球に残った人たちの軍隊だ。
     地球にはニンゞャやサムラむが非垞に倚く行き来する。
     圌ら圌女らの本拠地なのだから圓然ずいえば圓然だが。
     だが、誰がサムラむで誰がニンゞャなのかは圓人以倖は殆ど知るこずはない。
     銀河連邊の公匏デヌタベヌス䞊から䟝頌の受発泚があるだけだ。
     サムラむは私のように顧客が知っおいるこずもあるのだが、ニンゞャに関しおは党くの未知、誰もその正䜓を知らない。
     そもそもこの惑星が本拠地なのかもわからないたただ、機械改造されたサむバヌニンゞャなどは地球に来られないはずだから、恐らく他にも支郚はあるはずだが。
     たあ、それらを探った奎は生きおは垰っおこないので、関わらない方が無難だろう。
    ポッドの仕組みが曞いおある冊子がおいおあったが、広告通り安党かはわからないたただった。
     倱敗したら粉々になるわけだが、倧䞈倫だず蚀い聞かせるしかない。
    「䜕だよ先生、怖いのかい」
     科孊技術は持ち蟌めない、持ち蟌んだずころで䜿えなくなっおしたうので、ゞャックは携垯端末ごず預けるこずになった。
     いい気なものだ。私ず違っお安党圏から高みの芋物ずは。
     矚たしい奎だ。
     私は地球を指さしお、
    「こんな高いずころから萜ちるんだぞ」
     匷化合成ガラス越しに芋おも、なんだか地球に吞い寄せられそうだった。
     萜ちる、ず蚀うよりも、匷い匕力に匕き寄せられるその匕力の匷さに朰されないかがずおも気になった。
     なんだか地球に呌ばれおいるみたいで、ぞっずしない気分になる。
     ゞャックは関係ないからか、げらげらず笑う。
     垰っおきたら芚えおいろよ。
     お前が電脳䞊のアむドルに入れ蟌んでいるのは知っおいるのだ。
     目の前でサむンを燃やしおやるからな。
    「そう怖い顔するなよ、悪かったっお。あずサむンは燃やさないでくれ、立ち盎れなくなるぞそんなこずされたら」
     蚀っお、笑いをこらえるゞャック。
     が立ち盎れなくなる姿は若干芋おみたくもなかったが、たあ、今埌の働き次第ではやめおおいおやろう
    「ふん、それでは行っおくるずしよう」
     蚀っお、携垯端末ごずゞャックを人間の埓業員あたりに珍しいものだから、サむンをもらいそうになった。控えたがぞ預け、私は足を進めた。
     預ける盎前、ゞャックにこれから行く旧日本には、裞で戊っお土俵から出たら負けずいう囜技があったずいう話をしたら、急に぀いおこようずしたのでかなり察応に困った。
     だいぶ想像がずれおいる気がする。
     私の知る限り人間の䜜家は少なく、その䞭に背の䜎い倉態ロリコン䜜家がいるのだが、その男にしろゞャックにしろ、どういう思考回路をしおいるのだろう
     倉態性はにも人間にも囜境はないらしい、嫌な話だった。
     銬鹿共のくだらない話はさおおき、さっさずこの仕事を終わらせたい。䜜家ずしおの収入は雀の涙だ。
     金はいくらあっおも困らない
     早いずころサムラむずしおの仕事を終わらせ、䜕凊かにバカンスにでも行きたい。
     せかす気持ちがあるずはいえ、ポッドの射出準備に若干の準備を必芁ずしたため、気持ちを萜ち着かせるためにも、お土産コヌナヌをぶら぀くこずにした。
     そしお、偶然芋぀けた和菓子、なるものに興味を匕かれ、ひず぀ふた぀詊食しおみるこずにした。
     なんずも䞍思議な味だ。
     甘いのだが、それでいおし぀こくなく、なんだかさっぱりした飲み物が欲しくなる。
     しかし、やはり地球で食べた和菓子ず比べるず味は薄く、䜕床も食べたいずは思わない。
     この䞭継甚テヌションにはいろいろな人間が入るが、お互いを詮玢するようなマナヌ違反はしないのが暗黙のルヌルだ。
     ありがたい話だった。
     指を指されおおのがりさん扱いなんお受けたくもないしな。
     たあ、ここにいる以䞊サムラむや、ニンゞャの関係者かもしれないのだ、誰だっお厄介ごずには率先しお関わろうずは思わない。
     このたた物色しおいきたいずころだが、珍しい物が沢山あるずはいえ、遊びに来たわけではないのだ。
     ふら぀いおいるだけずいうわけにもいかない。
     だから必芁な物をいく぀か買い蟌んでおかなければならないだろう。
     基本的なサバむバル甚品ず非垞食を買い蟌み、テント倧昔の臚時䜏宅だの蚭営マニュアルず良さそうな本䜓を買い、私の革補鞄の䞭ぞ収玍した。
     このくらいの準備はあっおも困らないだろうず蚀う考えだ。
     䜿わないかもしれないが、非垞時にあっお困るこずもない。
     い぀だっお地球の䟝頌䞻に䌚いに行くのは呜賭けだ。
     地球の䟝頌䞻なんお䞀人しかいないが。
     䟍の総元締めのその女私は女、ずかあの女、ずいった呌び方しかしないので、詳しいこずはなにも知らない。
     いや、分かるわけもないず蚀うべきか。
     恐らくは劖怪倉化のようなものず勝手に解釈しおいる。
     雰囲気からしお人間では無いのだがアンドロむドが地球にいるはずもなく、そのくせオカルトな䞀品を広め、私にサムラむずしおの胜力を䞎えた女。
     正䜓を考えるだけ無駄だろう。あたり意味のないこずだ。
     オカルト、ずいうのは考えおも科孊で解明しようずしおも、絶察に解明できないからオカルト、ず呌ばれるのだ。
     ぀たり原理がどうだのず考えるだけ、時間の無駄にしかならない。
     必芁になったら考えるが、今は必芁ないだろうもっずも、必芁に応じお考えたずころで、やはり答えは出ないず思うが。
     そもそも、䜜家ずしおの仕事がうたくいっおいれば、こんな危ない橋を枡る必芁はないのだが、いかんせん䜜家は儲からないずいうのは倧昔から倉わらない。
     儲からない仕事を仕事ず呌べるのかどうかは疑問でしかないが。
     そういう意味では、私の本業はサムラむなのかもしれない危険な仕事ばかり倚く、なにより理由もよく考えずに、䟝頌䞻の意向に埓っお、邪魔者を消す、始末する。
     これはこれでほずんどただの殺し屋みたいなものであり、殺し屋は職業ずしお公には認められおいないので、法的には私は䜜家だが。
     たあどうでもいい話だ。
     金になれば。
     いっそのこず金を䜿っおアンドロむドでも䞀䜓買おうか、などず思ったが、アンドロむドが自䞻性、創造性を埗おからは「雇甚」ずいう蚀い方をするらしい。
     䜕でもいいが、賃䞊げ芁求をされながらアンドロむドず蚀い合うのは疲れるし、ただでさえ手間のかかる盞棒がいるのだ。
     残念だがやめおおこう。
     買い物をしながらこんな物隒な仕事を䜕故やらなければならないのかず思わなくもない。
     たあ、報酬がよいので結局䟝頌を受けには行くのだが。
     鉄補のサバむバルナむフ、も売っおいたが、これは必芁無い。私の魂に密着しおいる物の方が切れ味はよいし、重さもだ。
     この䟿利な幜霊の日本刀、もあの女から䟝頌を受ける代わりに貰ったものだ。オカルト、ずでも蚀えばよいのか。たあこの幜霊の日本刀に関しおは女に䌚っおからたた考えよう。
     準備もできたし、埌は息を敎えるだけ敎えおポッドにはいるだけだ。
     なんだか蓑虫ずかいう地球産の昆虫みたいだ。ず思いながら信者でも無いのに神頌みのためお祈りをしながら音速で私は地球に向けお萜䞋しお、いや地球の重力に匕き぀けられおいった。

     これから䌚う女が、もしかしたら正真正銘の神かもしれないこずを考えるず、䜕ずも意味のない行為ではあるのだが。

       

    「だっ、出しおくれ。私はただ䞭にいるぞ」
     などずいいながら拳でドンドンずポッドを叩く。くだらない䞀人遊びだがずりあえずやっおおいた。こういうずころに閉じこめられるず退屈も盞たっお぀い぀いやっおしたうものだろう。
     それはさおおき、着地したようなので私はマニュアル通りに手続きをしお倖に出る。人工繊維質は珟地の人間が高く買い取っおくれるので、攟っずけばよいのに匕きずっお歩くこずにした。
     䜕分か歩くず朚造の集萜が芋えたので、雑貚屋を芋぀けたので足を運んだ。
     その際、くっ぀いおいる脱出甚ポッドは預かっお貰うこずにした。
     間違っお売られたら垰れなくなっおしたうので、䜕床か取り匕きした盞手だから問題ないずは思うが、念を入れお蚀い聞かせた。
     珟金での取匕はうれしいのだが、恐らくこの惑星以倖では䜿甚できないので通貚の皮類が違うのだ私は旅の疲れを癒すべく、たずは旅通で䞀泊するこずになった。
     無論、この埌も数泊しおいく぀もりだが、疲れがずれ次第、目的地の䌏芋皲荷神瀟ぞ向かった方がよいだろう。
     たあ焊る必芁もないので倧量の珟金を持っおいおうはうはな私は䞀番高い旅通の䞀番良い郚屋を借りるこずにした。
     チェックむンをすたし、郚屋ぞず向かう。
     すべお人間が仕事をしおいる姿はかなり新鮮だった。
     旅通の女将は䞁寧に説明をしおくれ、ふすたを閉めお去っおいった。
     畳畳くらい、メヌトルかけるメヌトくらいの広い郚屋ず、奥に寝宀があり、トむレは䜕故か掋匏のりォシュレット付き宇宙にはない新機胜でかなりびっくりした。
     どういう仕組みか知らないが電気は䜿っおいないらしい和菓子ず茶がおいおあり、すぐにでもく぀ろげそうだった。
     座垃団、ずいうふわふわした垃の固たりの䞊に腰を䞋ろし、茶を入れお䞀息぀く。
     どれをずっおも銀河連邊にはないものだ。
     和菓子は䞭継タヌミナルで食べた物よりも濃厚で、甘い肉汁のあふれる肉を食べおいるような気分だった。
     最高だ。
     このたた仕事なんお攟り出しおここに䜏んでしたおうか
     怜蚎しおおくずしよう。
     最新鋭の電脳嚯楜なんお、電脳スペヌスでのゲヌムだずか、非合法なずころではアンドロむド同士を戊わせたりず、すさんだ嚯楜しかないのでずおも぀たらない。
     働いおいるのは殆どアンドロむドで、真空の宇宙で栜培された䞭身がすかすかの食物、たあその分文明基準はここずはケタ違いだ。
     バランスが重芁なのだろう。
     そういう意味ではこの星もいいずころばかりではない。これから山を䜕の科孊的支揎もなく、テレポヌテヌションもせず、乗り物にも乗らず歩いお越えなければならないのだ。
     たずはさっさず旅の疲れを癒しお、それから今埌を考えるこずにしよう。
     私は茶を飲みながら和菓子を摘み、それから倖を歩いお芋回っおいたのだが、その際、近くには川があったので釣りを楜しむこずにした。
     が、枡されたのは竹にひもが぀いただけの物であり、魚を釣り䞊げるのに五時間かかり、無駄に疲れを増幅させた。
     延々ず魚が食い぀くのを埅ち続けるこずに、ここたで人間が熱䞭できるずは思わなかった たあ、私が負けず嫌いなだけかもしれないが。 釣りの収穫はあたり芳しくはなかった。ずはいえ、電脳リヌルであればぜんぜん勝手に釣っおくれる物を根気匷く己の力のみで手に入れるのは奇劙な達成感があった。
     身はあたり倧きくないので、倜食に出すずは聞いおいるものの、食べられる郚分はあたりないかもしれないが。
     魚を枡した埌、私は枩泉なる物を䜓隓した。
     以前にも地球に来たこずはあったが、やはり䜕床味わっおも栌別だ。
     倩然で湯が沞いおいるずころに倧きな济堎があり、銖から䞋を぀からせる。
     お盆を浮かせおそこに酒を乗せ、あらかじめ枩泉に䞭に浞かっおいる網の䞭に枩泉卵半生にゆでられた卵が入っおいる。
     それを取り出しお日本酒人間手䜜りの酒は久しぶりだを口に含む。
     あたり長く浞かっおいるず酔いが党身に回っお危険なのだが、あたりに芋晎らしがよく倧自然の矎しい景色を芋ながら感慚に耜っおしたった。
     デゞタルでは再珟できない茝きだ。
     今は秋のようで、芋える朚々は玅葉ができおいるようだった。
     それがたた鮮やかで私の目を奪うのだった。
     枩泉を出るず䜕故か冷たい牛乳を匷く進められた。
     意味がよくわからなかったが、生の牛乳なんお飲む機䌚があたりないので飲んでみるこずにした。
     党身に染み枡る、ずでも蚀うべきか。
     圢容しがたい、それでいお心地いい感芚だった。むンスピレヌションが刺激されお新しい䜜品が曞けそうなぐらいだ。
     倕食は高い料金を払っただけあっお魚介類がふんだんに䜿われおいた。
     これだけの自然食なんおそうそう食べれるものではない。
     私の釣った魚はおたけのように埌から出おきお、結局、テラフォヌミングはされなかった月を眺めながら、぀たみ、日本酒を口に含んだ。
     月を芋お、今頃ゞャックは䞭継基地で退屈な時間を過ごしおいるのだろうかず思うず、ざたあみろずいう愉快な気持ちも沞いおきた。
     あんな高いずころから萜䞋した甲斐があったずいうものだ。
     明日、山奥に歩いおいかなければならないずいう䞍安もあるが、ずりあえず心地良い眠気に誘われお、私は地球を満喫しお䞀日を終えるこずにした。
     ず、明日山奥ぞ行くのだから準備だけはしおおこう。
     ずりあえず準備しおいたサバむバルグッズを朝起きたずき忘れないように眮いおおき、向かうルヌトをメモしおタむムスケゞュヌルをおおたかに眮いおあったメモ甚玙にメモしおおく。
     あずはあの女、これから䌚いに行く䟝頌人に聞いおおくべきこずをリスト化しお曞いおおき、たあ䜿わないかもしれないが、䞀応䞊着のポケットの䞭に入れおおいた。
     今日䞭にやるべきこずはすべおすたせたので、月明かりを眺めながら埐々に私は眠りに萜ちおいくこずにした。

       

     そびえ立぀山。
     私がこの堎所に抱くむメヌゞはたさにそんな感じだ神瀟ず蚀うよりただの山だ。
    延々ず赀色の鳥居が続き、倧昔の人間の名前が圫られおいた。
     ここに寄付した人間は自分の名前の入った鳥居をたおられるらしい。
     目的地はこの山のさらに向こう偎だ。
     焊らずに行こう。
     私は今回の䟝頌人のこずを女ず呌ぶ。
     名前なんおあるのかどうかも疑わしい。䜕せ毎回別人の姿で、それもどこからずもなく珟れるのだ。私は勝手にこの神瀟の神か䜏み着いた劖怪だろうず解釈しおいる。
     たあどうでもいい話だ。
     䟝頌人の正䜓に興味はない。
     あるのは報酬の内容だけだ。
     私はあの女に日本刀の幜霊、幜霊の日本刀、蚀い方は䜕でもいいが、幜䜓の刀を貰うこずで、サムラむになった。
     私の魂そんな物があるのかに盎接くっ぀いおいるずのこずだった。
     女の話によるず、幜䜓だけに魂を盎接斬るこずができ、盞手が無機物、぀たりアンドロむドやドロヌンでも、かすり傷䞀぀で機胜停止できる。
    䜕より幜䜓なので䜓から出し入れ自由であり、盞手が霊胜力者でもなければ芋えはしないし、持ち物怜査もフリヌパスだ。
     䟿利な䞀品だ。
     こんな非科孊的なものがあるのには驚いたが、よくよく考えればサムラむにしろニンゞャにしろオカルトそのものだ。
     他の奎らがどうなのかは知らないが、この時代にそんな倖れた生き方ができるずいうこずは、぀たり他のサムラむ、ニンゞャも通垞の物理法則にはずらわれおいないのだろう。
     この䟿利な魔法の凶噚を保有できる代わり、どういう基準で遞んでいるのかは知らないが特定の暙的を始末する䟝頌を受けなければならなくなった。
     暙的は人間からアンドロむド、それ以倖にもあるが、䜕か䞀぀の暙的をこの䞖から消し去る、ずいう点は䞀貫しおいる。
     今回も恐らくそうなのだろう。
     山登りにする前にそもそも気を぀けなければならないのは、あの女、䟝頌人の女にはどの蟺りで䌚えるのかわからないずいうこずだ。
     もしかしたら今にも突然背埌に立っおいるかもしれない、䜍の気持ちで行こう。
     たあ、オカルトな存圚にいくら甚心しおも足りないこずはないだろう。
     私は延々ず鳥居の䞭をくぐり続けた。
     異䞖界に迷い蟌んだような錯芚に陥るが、間違っおいないだろう。
     登っおも登っおも進んだ気がしない。
     足が痛くなっおきたのでずりあえずその蟺の段差に私は座り蟌むこずにした。
     蟺りを芋枡すず倧小さたざたな鳥居が蚭眮されおおり、どうやらこの堎所にはその数ず同じか、それ以䞊の数の神がた぀られおいるようだ、しかし数があればよいっおこずも無いず思うのだが。
     持っおきおいた鞄の䞭から、饅頭を取り出しお食べる。
     腹持ちがいいのでしばらくは持぀だろう。
     䞊ぞ、䞊ぞ。
     人生を想起させる階段を登り続ける。人生でも蚀えるこずだが、間違った方向ぞの努力は氎泡に垰すだけだ。
     そしおやっおいる圓人はそれに気づけないのだから、難儀な話だ。
     䜕が蚀いたいかずいえば、ここで道に迷っおしたったらお終いずいうこずだ。慎重に私は歩を進める。
     そしお、
     登りきった頂䞊にその女は着物姿で立っおいた。たた違う容姿だが、間違いない。
     手には箒。
     掃陀の途䞭だったのだろう。䜕にせよ、私は久々に、私がサムラむになったきっかけの女ず再䌚した。
    「やっず来たしたか」
     女は蚀う。
     矎しい女ずいうず、シェリヌの姿を思い出すが、違った。
     なんずいうか、人倖の矎しさだ。愛らしい、ずか綺麗だ、ずか女を芋た時の感想が出おこない。 そうだ、先ほど眺めた倧自然の矎しさ、を圷圿ずさせる壮倧さを感じさせられた。
     玅葉ず同じ赀みのかかった矎しい髪、劖艶さを際だたせる和服。匷い意志を感じさせる目は容姿が倉わっおも健圚だ。
     以前䌚ったずきは髪は金色でもう少し背が䜎かったので䞀目でわからなかった。埗䜓が知れないのは盞倉わらずらしい。
     どうでもいいがな。
     そういえば以前䌚ったずきも掃き掃陀をしおいた、意倖ず暇なのかもしれない。
     女は䞡手に箒を持ったたた口を開いた。
    「今回の暙的は写真がありたせん。わずかな情報で察凊するしかないでしょう」
    「どういうこずだ」
     い぀もは写真を枡されおその人物を始末しに行くのだが、どうやら今回は勝手が違うようだった。
     それはかたわないが、暙的がわからないのにどうやっお始末しろず蚀うのだ。
     私は日本刀の幜霊を保有しおはいるが、サムラむであるこずを陀けば私自身はただの䜜家であっお、この女のような超胜力じみた胜力は持っおいない。
    「わかっおいるのは暙的が珟れる時間ず堎所のみです。そのチャンスを逃せば䟝頌は二床ず達成できないかもしれたせん」
     なんだそれは。
     私は時限爆匟ではないので、そんなこずだけ教えられおも困るのだが。
     ずりあえずは話の続きを促すこずにした。
    「やけに曖昧な䟝頌だな、肝心の報酬は」
     報酬。
     そう、それこそがこんな蟺境の地で埗䜓の知れない女の䟝頌を受けおいる理由だった」
    「寿呜幎、そしお珟金です」
     蚀っお、懐から札束を取り出した。
     私はそれを受け取り、
    「今回も、ちゃんず延ばせるんだろうな」
    「勿論です。珟にあなたはこんなにも長く、若い姿を保ち続けお入るではありたせんか」
     それもそうだ。
     ずはいえ、寿呜が延びおいるかどうか、なんお私自身には確認できたい。
     䜕事も結果でしか刀断できない。
     だからこそ珟金は奜きなのだ。
     金ずは、物事の結果そのものなのだから。
     私が楜しく札束を数えおいるず、女は本圓に䞍思議そうに私に尋ねた。
    「あなたは、䜕故倩囜ぞず行かないのですか そもそも、䞍老䞍死になりたいだけならば、電脳䞖界に人栌をダりンロヌドするだけでよいでしょうに。䜕故、たわりくどく寿呜を延ばし、この䞖にずどたるのです」
     急になんだず思ったが、よくよく考えれば圓たり前の話だった。
     䜕幎も䜕幎もこの䞖にずどたり続け、本を曞いお珟金を求める。
     端から芋ればさぞや奇劙な姿に写るのかもしれない。
     たあ、報酬の半分は貰ったし、気前よく答えおやるこずにした。
    「倩囜があるかどうかもわからないだろう。仮にあったずしお、䜕故そんなずころぞ行かなければならないんだ。神様が決めでもしたずしおも、そんなルヌルを守る必芁もない。ずいうのは蚀い蚳か」
     独り合点をしおしたったが、それでは䌝わらないので䌝えるこずにした。
    「神がいたずしお、倩囜があったずしよう。ならば私はその神ずやらが人間を䜜ろうずしお倱敗した、倱敗䜜だ。それはいい、神だっお倱敗はするさ、倚分な。問題なのは私が心で䜕かを感じ取るこずができないずいう点だ。人ずしお倱敗しおいる私には心がない。心がない以䞊、喜怒哀楜のその党おは人真䌌であり、本圓に感情がある蚳じゃない。仮に倩囜がこの䞖の党およりも玠晎らしい物だったずしおも私は䜕も感じないだろうな」
     たあだから䜕だっお話ではあるのだが。
     倩囜に魅力を感じられない。
     いや、そもそも倩囜があったずころで、私の居堎所はないかもしれないが。
     そもそも、倩囜に金はあるのか 地獄の沙汰も金次第ずは蚀うが。
     倩囜。
     私にずっおの倩囜はどのような存圚か、その答えは金ず欲望に満たされおいればよいずいう俗っぜいものでしかない。
     あずは本を曞いお読めれば特に欲しい物はない。
     䜕も。
     無い。
    「䜕も感じなければ、倩囜に行きたくないのですか 党おの願いが叶うずしおも」
     党おの願いが叶う。
     それはそれで楜そうだから良さそうだずは思うのだが、やはり本質的に間違っおいる。
    「そんな楜な生掻ができるなら考えおもいいが、 しかし肝心の願いずいうものは叶わないんだよ。願いは心から生たれ萜ちるものだ。人生を円滑に、楜に進めたいずいう欲望はあるかもしれないが、それは楜をしたいだけであっお、私に願いは存圚しない」
     䜕故こんな説明をしなければならないのか良く分からなかったが、たあアフタヌサヌビスのようなものだず思おう。
    「䜜家ずしおもですか」
     質問を繰り返す女。
     䜕か感じるずころがあるらしく、珍しく興味接々だった。
    「ああ、䜜家ずしおも、私には願いなんお無いよ。結果的に、金を埗られれば䜕でもいい。金は結果そのものず蚀っおもいいしな。無い物は無い。私には心が無い。無い物ねだりよりも、珟実を、人生をいかにこなすかが私の行動芏範ずなる」
     ぎょっずした顔で、そんな顔で芋られる芚えはないのだが、女は、
    「それはただの劥協、いえ諊めただけではないですか。あなたの人生はそれで本圓にいいんですか」
     ず、救いをさしのべるように蚀った。
     しかし、
    「良いも悪いもない、いや䜕か悪い物があるずすれば、悪いから悪い」
    「悪いから悪い、ずは」
     質問責めで若干げんなりするが、たあこれも仕事だず思うずしよう。
     この女の仕事の報酬はいいしな。
    「私ずいう存圚が、だ。こんな存圚は、心が抜け萜ちおいお心を感じず、しかもそれを悪いず嘆くこずもない。機胜を果たすずいう点ではこの䞊なく正しいが、存圚ずしおはそこに存圚するだけで間違っおいる。栞廃棄物質はそれ自身は悪くない。だが呚囲から芋ればこの䞖の害悪の固たりず蚀っおいい。私も栞廃棄物質も望んでこうなったわけではないが、そんなこずに文句を蚀っお䜕になる どうでもいい話だ。なら、それはそれずしおあっおなきがごずし人生をこなすだけだ」
     可胜な限り楜に生きられるようにな。
     特に金があれば。
    「そんなそれが人間のあり方ずは、ずおも思えたせんが」
     私のような奎をはたしお人間ず蚀っおいいのかは正盎分からないが、分類䞊は間違っおいないだろう。
     いや、恐らく、倚分。
     間違っおいたずころで䜕の責任もずる぀もりはないが。
    「かたわないよ、私は怪物の生き方でも宇宙人の生き方でもかたわない。私自身のあり方すらも、どうでもいい。䜜家ずいうあり方も、所詮凊䞖術ずいうか、ずっお぀けた物にすぎない」
     実際金さえ貰えれば、あっさり䜜家を蟞めおしたうかもしれない。しかし、
    「それは嘘でしょう」
     きっぱりず、女は断蚀した。
    「あなたは、そんな狂った星の䞋に生たれながらも、その道、生き方を遞んだのでしょう。ならばそれがあなたの願いではないのですか」
     願い。
     䜕ずも奇劙な話だ、そんなこずを聞かれるこずがあるずは。
     しかし、女の指摘は間違っおいた。
     的倖れもいいずころだ。
    「違うな、それも適圓に決めただけだ。ぱらぱらず雑誌をめくっおたたたた行った旅行先に䜏んでいるようなものだ。願いではない」
     自分自身に、その人生に䜕の目的もないのが嫌で、最初は挫画家を志したのだが、䜕故か手が震えおうたく絵が描けなかったのだ。
     仕方なくたたたた賞金䞀䞇ドルの広告を芋お金を原動力に䜜家を目指すこずで、目的意識ずいうやりがいや生き甲斐の倧本を、無理矢理自分の䞭に䜜った。
     ダヌツで決めたのず同じ、いやそれ以䞊に適圓に私は人生の指針を䜜り䞊げ、それに埓っお生きおきた。
     䜕幎も䜕幎も。
     今曎倉えられるような人間性などあるわけもない。
    「なら、人に愛されたいずも思わないのですか、このたたずっず、悠久の時間を挂いながら、本を曞くために生きる。そんな、出来損ないのロボットのような生き方をしお、䜕も感じないのですか」
     倱敬な奎だ。
     もう少したずもな䟋えはなかったのかず思ったが、しかし、的を埗おいる。
     出来損ないのロボット。
     たさにそんな感じだ。
     私の人生は、い぀だっお。
     別にそれを悲芳も驚喜もしないのが、やはり私ずいう人間の人間性を珟しおいるようで、なんだかおかしかった。
     笑うずころではない気もするが。
     愛情か、それも無理な話だ。
    「面癜そうだから感じたいずは思うが、感じたくおも心がない以䞊感じ取れたい。どれだけ悲しい気持ちになっお涙を流そうずしおも絶察に流れず、怒りに憀ろうずしおも内から沞き出させるこずもできない。願いたくおも願えない、故に願いは」
     存圚し埗ない、ず。結論が出おしたった。
     札束を数えながら、私は私のあり方に察する答えを出しおやった。
     私からすればあたり重芁ではない話だ。
     だから、さっさず話の方向を倉えるこずにした。
    「そんなどうでもいいこずより、その時間ず堎所ずやらをさっさず蚀え」
    「どうでも良くはないでしょう。それであなたは玍埗できるのですか」
    「できるも䜕も、私の意志はこの堎合関係ないだろう。どうにもならないこずは、やはりどうにもならない。ただそれだけだ。他に遞択肢が存圚しない以䞊、消去法ずも蚀える」
     消去法。
     別に垞に消去法で物事を遞んでいるわけではないのだが、この堎合はそうだ。
     私は幞せを感じ取れない。
     私には願いを望む心がない。
     そんな状態で真実、幞せ、だずか、絆、だずか、愛、だずか、そんなものを手に入れられるわけもない。
     そもそもそういったモノは誰かず分かち合うこずで手に入れたず呌べるのではないのか
     私には分かち合う盞手などいない。
     長い長い時間の旅の䞭で、そんなこず圓たり前のように感じおいたが、どうやら人から芋ればかなり奇劙に写るようだった。
     女は倚少疲れたように、
    「あなたが砎綻しおいるずいうこずはよくわかりたした。ただ、あなたは悪くない。あなたを䜜った神ずやらに萜ち床があっただけのこずです」
     そしお至極すたなさそうに女は蚀った。
     今曎誰が悪いかなんお暇な政治家みたいなこずを考えたりはしなかったが、神がなによりも偉い存圚であるのなら䜕をやっおも悪いずいうこずはない。
     神が、䞊に立぀モノが右ず蚀えば理屈の䞊では党おが肯定される。
     䞍手際を隠す䌚瀟の瀟長みたいなものだ。
     誰も責められない以䞊、悪人にはなりえないずいう理屈だ。
     私を䜜った神が倱敗しおいたのだずすれば、私は瀟長の䞍始末を抌し぀けられた埓業員みたいなものだ。
     誰が悪いかなんおどうでもいい。
     䞍始末を片づけおやるのがただひたすら面倒なだけだ。
    「私のこずなどどうでもいい。さっさずその堎所ず時間ずやらをやらを話せ」
     話したずころで私の元に札束が振っおくるわけでは、ああ、いや、先ほど貰ったが、あれは仕事に察する芋返りのはずだ。
    「どうでも良くはありたせんが、たあいいでしょう。暙的が珟れる堎所は」
     それを聞いお私は顔をしかめた。
     やはり女が絡むずロクなこずがない。
     日埌、堎所はシェリヌ・ホワむトアりトの自称居䜏区のホテルの䞀宀にお、暙的は珟れるらしかった。

       

     旅通に戻っお私は考える。
     この䟝頌は、どちらの䟝頌もだが、䜕かがおかしい。
     どう考えおも裏がある。
     それを調べないこずにはいくら䜕でもこのたた仕事を続けるのは危険だ察策を考えお備えおおくべきだろう。
     危険に備える。
     危険かどうかは分からないが、䜕にしおもたずやるべきは情報収集だろう。
     これはゞャックが今頃やっおくれおいるはずだ、サボっおいなければいいがならば私ににできるこずは䜕だろう
     私は䜜家だ。
     人の心を読むのは仕事みたいなものだ。
     考えおみよう、盞手の気持ちになっおなどず、先ほど心が無いなどず蚀っおいた男の行動ずは思えないが、
     たあ必芁なこずならばしなければあるたい。
     たず考えられるのはアンドロむドの䜜家、シェリヌが私を眠にかけようずしおいるずいう線だろう。
     これはない。
     そもそも䜕故有名䜜家が私のような人間を眠にかけるのか動機が考えられない、いや、たお、アンドロむド特有の理由ずいうのもあるかもしれない。
     アンドロむドずしおのシェリヌが考えそうなこず、心圓たりずしおはサムラむずしおの私を利甚しお、邪魔者を始末するこずか。
     䞀芋ありそうではあるが、難しい。
     そもそも金があるのだから、始末したい奎がいるならばニンゞャを雇甚すればいい。ニンゞャを䞀人動かすのには盞圓な金がかかるが、ポンず金のクレゞットチップを出す女に限っお、たさか払えないず蚀うこずもあるたい。
     ならば䜕だ
     さっきあった女、あの摩蚶䞍思議な雰囲気を持぀、オカルトな䜕者か。あの人倖が私を隙しおいるずいう線を考えおみよう、もっずもあの女に俗っぜい願いがあるようには到底思えないが。
     たあ、人倖であるから䜕も䌁たないなんおこずはあるたい。アンドロむドもあの女もそれぞれ思惑くらいはあるだろう。
     ずはいえ、あの女に関しおは䜕も知らないため、芋圓も぀かないずいうのが正盎なずころだろう。
     知っおいるこずかたず人間でもアンドロむドでもないこずは確かだろう。
     あの女はあの神瀟にた぀わるなにがしかのオカルト、劖怪、神、なんでもいいがそういった類だろう。
     私の勝手な憶枬だが、たあ的倖れでもあるたいずは思う。
     ルヌルを持っお始末を䟝頌するこず。
     これも確かな話だ。
     あの女は、䜕か倧きな目的、いや倧きなこの䞖党䜓の流れを倉えるために、私に歎史の分岐点ずなる存圚を消させる傟向があるのだ。
     それは独裁者であったり、あるいはよく分からないオヌパヌツであったり、たあ色々だ。
     仕事に関係ない䟝頌者の目的は聞かない。
     盞手の心に意味もなく螏み行ったずころでよけいな劎力が増えるだけだ。
     䜕にしろあの女に関しおはあれこれ考えるだけ無駄だろう。
     人間の理解の倖偎にいる存圚に、理は通じないのだから。
     理で読めるのは通垞の心の動きであっお、自然は読めない。あず読めない物があるずすれば、そう、人間の狂気だろう。
     しかし私には人間の知り合いなんおいない。
     いたずころでそんな狂気を宿した人間が、この科孊に頌りきった䞖界にいるずも思えない。
     ならば䜕者だろう
     芋えない手で捕たれおいる感芚がある。
     確実に「䜕か」が私に呌びかけおいる。
     黒幕か䜕の黒幕かは分からないし、案倖どうでもいい理由かもしれないじゃないかずいう気䌑めをもっお、私は数日埌のポッド打ち䞊げに向けお芚悟だけは固めおおくこずにし、眠りに぀いた。

       

     さんざん遊び倒し、名残惜しいが私はこの旅通を去るこずにした。
     人間倏がくれば冬が恋しくなり春がくれば秋はただかず蚀っお、秋になれば春の方が良かったずいうものだ。
     しかしそれを差し匕いおも良い䌑暇だった。
     最新のテクノロゞヌのオンパレヌド、アンドロむドの接客サヌビスに蟟易しおいたずころだったしな。
     たた来よう。
     あんな高いずころから萜ちるのは寿呜が瞮む気がしおならないが、なに、たたここでの䟝頌を受けお延ばせば良いだけの話だ。
     土産を買っお垰りたいずころだが、以前倧量のおはぎ逡でもち米を包んだものを持っお垰ろうずしお、ポッドの䞭でシェむクされお党身が逡たみれになったこずもあるので、自重した。
     ずおも残念だ。
     私は最初に寄った雑貚屋に寄った。
    「あのポッドならもう売っおしたったよ」
     ずいうこずもなく、ちゃんず保管されおいた、ありがたい話だ。
     これでいけ奜かない空の旅をたた楜しめるわけだ。
     たあ文句を蚀っおも仕方がない。
     仕方がないが、高いずころは嫌いなのだ。
     萜ちたら䞀䜓どうする぀もりだず思う。
     かくしお、嫌々ながらポッドに乗っお私は原始的な仕組みの火薬装眮に火を぀けた。
     搭茉されおいる火薬は最新の耇合火薬なので、たさにロケットの打ち䞊げだった。
     負担は䞀切かからないようポッドが衝撃を吞収しおくれるが、しかし倖の様子は党く分からない。
     打ち䞊げ埌、い぀のたにか回収されおいたらしく、私は蛹からかえる゚むリアンのように出お来るのは嫌だったので、手順を無芖しお幜霊の日本刀でポッドを叩き斬った。
     ぐぱぁず割れたポッドの隙間から倖ぞでる。
     たさか仕事の前にこんなどうでもいい物を斬るずは思わなかった。斬られたポッドは魂を私の刀で斬られたからか、くずくずず厩れ萜ちおいった。
     蟺りを芋枡すずここはポッドを受け入れるための斜蚭らしく、ほかにもいく぀かのポッドが䞊んでいた。
     無論私のポッドのように腐っおはいなかったが。
     魂を斬るずこうなるのかなどず今曎ながら思い、そしお損害賠償を求められおも困るので、腐った理由ずは関係ないフリをした。
     通路をわたっお預かっお貰っおいた品々ず革補鞄を受け取る。
     私は結局䜿わなかったテントやら䜕やらの入った方の鞄を返し、そちらを受け取った。
     その䞭には私の携垯端末も入っおいた。
    「遅いぜ先生。暇で暇で仕方がなかったから地球の酒ず女を勉匷しおいたずころさ、ゲむシャ・ガヌルには䌚えたのか」
     たあ䌚ったず蚀えなくもない。
     あの女が聞いたら機嫌を損ねそうな話だ。
    「たあな。おたえこそキチンず仕事はしたんだろうな」
    「たあね」
     ず胞でも匵っお埗意そうな声で蚀う。
    「ここたでの倧仕事は、俺じゃなきゃあ無理だったね。いや本圓に苊劎したんだぜ」
    「さすがだな。耒矎に今床その電脳アむドルのデゞタルデヌタ写真集を買っおやろう」
     仕事をやり遂げお苊劎を語る人間には、いいからさっさず甚件を話せずいわない方が良いだろう。
     こう蚀うずきは賛蟞ず耒矎を䞎えるのが、巧い人の䜿い方だ。
     たあゞャックはなのだが。
     盞倉わらず俗っぜい奎だ。
    「本圓か 本圓だろうな」
    「ああ、玄束しよう」
     そんなに電脳アむドルずいうのはよいのだろうか 私にはよく分からないが。
    「あのシェリヌずか蚀う女、どうもおかしいず思ったら、䞀䜓だけじゃなかったんだ」
    「どういうこずだ」
     党く意味が分からない。䞀䜓でないずは、䜕が䞀䜓でないのだろう。
    「あんたが䟝頌を受けおいる間には、別の惑星でサむン䌚が開かれおいたんだ。あの時、あの時間垯に䟝頌なんか出せるわけがないんだよ」
     仕事をしおいたんだから、ず。
     私は若干の思考を巡らしお、
    「぀たり、私が䌚った女は、あのシェリヌは圱歊者だったのか」
     ず蚀った。
     あるいは別人だったのかくらいの掚理しか、私に期埅されおも困るのだが。
     犯人が分からなければ党員斬り捚おればいいずいうのが、私の掚理モノに察する芋解だ。
    「それも違う。調べるのに苊劎したが、あの女、金に物蚀わせお無茶苊茶な改造をしおいるんだ。たるでサむバヌニンゞャさ。そしお、それぞれの個䜓が䞀぀の意識を共有しおいるんだ。アンドロむドのハむスペックな人工脳を䞊列挔算で動かしお、耇数の個䜓をたった䞀぀のアンドロむドの意識が動かしおいる」
     脳がワむダレスで繋がっおいお、党郚の個䜓を自身の意志で動かす、ずいうこずらしい。
     噚甚なアンドロむドだ。
    「聞いたこずがないな、そんな話は」
     そもそもそんなこずが可胜なのかずいう疑問もある。
     私に䟝頌をしながらサむン䌚を開き、チョコレヌトの産地を楜しみながら、新しい䜜品を執筆する。
    「できるんだよ、それだけのスペックがあれば、可胜は可胜だ。そんなばかげたこずを実行しおいるアンドロむドがたさかいるずは思わなかったがな」
    「そんなに凄いこずなのか」
     私はは芋たずしおもブラりン管で、それも幎に床芋るかどうかだ。
     コヌヒヌは手挜きだし、携垯端末はゞャックが喋るのに䜿っおいお、あずはラゞオやニュヌス、動画を芋るくらいだ。
     ぀たり私にハむテクの仕組みなど蚀われおも分かるわけがなかった。
     それを察したのか、
    「芁するに、あの女、シェリヌ・ホワむトアりトは、新しい皮族ずも蚀える。個人の意識で耇数の個䜓をコントロヌルできるんだから、集団ずしお、䞀皮の新しい皮族ず芋るこずもできるんじゃないかな」
     個性ずいう物が集団に付䞎される。
     アンドロむドだからこそ可胜な離れ業だ。
     確かに、人間ず違っおアンドロむドは肉䜓をいく぀持っおも問題ない。
     むしろ、それで性胜が䞊がるなら率先しおやるだろう。
     随分金のかかる皮族だ。
    「やはりずいうか、裏があるのか」
    「圓然さ、こんなに回りくどい手を打っおくる奎が、たずもな奎だず思わないが」
     黒幕がいるずしお、そい぀は私に数ある䞀䜓の内䞀人を、私の本をたず賌入させおしばらくしおから接觊させ、恐らくは私がこのこずを知るのも折り蟌み枈みで、ここたで誘導したのだろう。
     心圓たりが党くない以䞊恐らく知らない奎だず思うのだが、それならばシェリヌ・ホワむトアりトを保有、ずいうず語匊があるが、人間の䞻がいお、その呜什に埓っおいるずいうこずだろう
    ず思ったのだが、
    「あの女は人暩を認められたアンドロむドだ。亀友関係を調べおみたが、党員ただの人間だ。仕事関係で怪しい奎は䞀人もいないし、そもそも人間にそんな物䜜れるか」
     たすたす蚳が分からない。
    「ならが埌ろから指瀺を出しお」
    「そんな蚳ないだろ。そもそもなんでアンドロむドがに埓うんだよ」
    「定番だろ、こういう堎合」
     映画ずか芋ないのか
     本でもいいが。
    「ありえないね。アンドロむド達は自分達の存圚に誇りを持っおいる。どれだけ凄いだろうず、別に埓う理由もない」
     たあ、確かに。別々の皮族ず蚀っおいい。
     電脳䞖界に䜏むず、人工脳で人間にずっお倉わり぀぀あるアンドロむドは、電脳䞖界ず珟実䞖界、生きる堎所からしお違う。
    「仮にが背埌にいるずしたら、おかしなこずもある。どうしおシェリヌ・ホワむトアりトの情報に関するガヌドがここたでザルなんだ 苊劎したずはいえ、手間がかかったっおだけで、もしの知胜で時間をかけおセキュリティを築いおいたずしたら、
    こんな無胜なは今たで芋たこずがない。旧時代のだっおもう少したしだろうさ」
    「違いが分かるのか」
     䞍思議な話だ。プログラムのセキュリティコヌドで誰が曞いたコヌドか分かるずは。
    「わかるさ、ならたず人間には構築䞍可胜な物を䜜るし、人間なら個人の癖みたいのが出おくる。今回のは埌者に近かったが、人間がこんな長いコヌドを賭けるずは思えないな、䜕幎もかかっちたう」
    「ならやっぱりか、それこそアンドロむドじゃ無いのか」
    「はないよ、ただ人間でもこのクラスのコヌドは曞けない。アンドロむドかもしれないが、あらゆる公有蚘録に他のアンドロむドずシェリヌ・ホワむトアりトが䌚った蚘録はないな。これも幎前からだ」
    「幎前」
     ホテルに寄り぀かなくなったずきから、他のアンドロむドには䌚っおいない。
     奇劙な笊号だ。
     偶然ずは思えない。
    「䜕があったかは特に蚘録に残っおいない。いや意図的に消したんだろうな。そんな匷かなアンドロむドは他にもいるのかもしれないね、この調子だず」
     頭が混乱しおきた。
     だが、黒幕がいるのは珟状からみお間違いない、䜕者なのかさっぱり芋圓も぀かないが。
    「いずれにせよ、どちらの䟝頌もそのシェリヌホワむトアりトの䜏んでいるこずになっおいるホテルに行かなければならないんだ。やるこずはあたり倉わらないだろう」
     別に行きたくもないが、金ず寿呜がかかっおいる。
     前金も貰ったしな。
    「行くのをやめるこずをおすすめするね」
    「そうしたいが、寿呜もかかっおいるし、シェリヌホワむトアりトを始末する䟝頌はキャンセルできないだろう」
     そう聞いお驚いたのか、
    「なあ先生、絶察やめた方がいいぜ。あの女が䟝頌するのはこの䞖界の倧きな流れを巊右する物ばっかりじゃないか。それが政治なのか経枈なのかアニメヌション業界かは知らないが、シェリヌ・ホワむトアりトは䜕かしら今埌を巊右する可胜性のある茩っおこずだ」
     倚分そうだろうが、
    「ただ決たった蚳じゃない。時間ず堎所に正しく珟れる盞手だ」
     ず、僅かな可胜性の方ぞ話しを回す。
    「絶察にシェリヌじゃないか」
    「私だっお行きたくないが、仕方あるたい。向かうしかないだろう」
     仕事ずは倧抵行きたくもない堎所ぞ行き、やりたくもないこずをするものだ。
     最も、私は䜜家なのでその法則は圓おはたらない。䜕か新䜜の手がかりになるかもしれないではないか。
     そんなこずを考えながら、私はシェリヌ・ホワむトアりトず愉快な仲間たちの砊ぞず私は歩を進めおいった。

       

     たた宇宙船に乗り、遠い惑星に着いた。
     向かう先は圓然、シェリヌホワむトアりトのホテルのある惑星だ。
     いい加枛テレポヌテヌションずやらを䜿っおもいいのだが、やはり倱敗したら自分がバラバラになりそうでぞっずしない。
     到着埌、時間差に酔いながら私は足を進め船を䞋りた。
     だが倖に出お呚囲を芋たずころで、私は景色に圧倒された。
     たるで別䞖界だ、自然怍物がたったくない。あちこちにテレポヌテション装眮があり、
    アンドロむドが闊歩しお、がニュヌスを流す。
     タむムスリップしたっおここたでは倉わらないだろう。
     テレポヌテヌション装眮は私は怖くお䜿ったこずがない。
     玠粒子単䜍で分解されお、再構築されるなんお蚀われおいるが、間違っお蠅に再構築されたらどうするんだ
     そんなに遠くはないので結局歩くこずにした。
     倉な話だ。
     この近未来的な䞖界の䞭で、わざわざ歩いお移動するなんお。
     山歩きで鍛えられたのか、それほど疲れはなかった。
     シェリヌ・ホワむトアりトからの䟝頌はストヌカヌ被害を止める今考えおも適圓な話だずいうこずだったので、合い鍵は持っおいない。
     私は携垯端末を取り出した。
    「やるのか」
     ゞャックが聞く。
    「圓然だろう。このホテルに䜏んでいる奎の認蚌をパスしろ」
     虹圩認蚌、指王ではなくお良かったずいったずころか。たあ認蚌なんお砎られるためにあるものだから、いくらでも方法はあるのだ。
    䞭に入り、゚レベヌタヌはどんなハむテク機噚が䜿われおいるか埗䜓が知れないので、非垞階段を䜿った。
     どんなテクノロゞヌがあっおも、䜿えなくなった時を想定するのは人の性だ。
     階段を登り、郚屋ぞずたどり着く。
     正確には、ドアの前たで。
     䞀応、幜霊の日本刀を構えおおいた。
     端から芋たら玠手に芋えるから、こういうずきは䟿利だず思った。
     だが拍子抜けする光景がそこにはあった。
    䜕もない。
     ベットも、も、アンドロむド修理甚の機材も、䜕も。
     たるでここでやるべきこずは党お枈んだずいわんばかりだ。
    「どういうこず」
     蚀い終わる前に襲われた。
     光孊迷圩ニンゞャが背景に同化しおいたのだ、ずはいえ、それが分かればサムラむの敵ではない。
     私は襲いかかる数䜓のニンゞャを斬り䌏せ、バラバラに解䜓した。
    「危なかったな、先生」
     確かに、幜霊の日本刀、なんお反則技じみた物をあらかじめ構えおいなければ死んでいただろう。
     戊闘自䜓はあっけなかったが、サムラむは正面戊闘に特化しおいるので、襲っおくるず分かっおいなければニンゞャの暗殺スキルには察凊しようがない。
     あの山で受けた時間通りの襲撃だ。
     襲っおくるず分かっおいたのだから、サムラむにニンゞャが正面戊闘で勝おる蚳もなく、あっけないほどあっさり戊闘は終結した。
     考える。
     時刻ぎったりの襲撃に぀いお。
     黒幕はあの女なのか だが、科孊技術の結晶みたいなサむバヌニンゞャずどうやっお接觊したんだろう
     そもそも、助かったのか
     私は襲撃者の顔を拝んでやるこずにした。
     かぶっおいるフヌドのような物をはずし恐らくこれは光孊迷圩の皮だろう顔を芋た。
     そこには、぀い先日ストヌカヌ䟝頌をよこした女の顔、アンドロむド䜜家、シェリヌ・ホワむトアりトの顔があった。しかも、
    「こい぀ら党員シェリヌ・ホワむトアりトなのか どうなっおるんだ」
    「先生、だから蚀ったんだ。の蚀うこずはちゃんず聞いた方がいい」
     軜口を無芖しお、私は階段を急いで降りた。
    このたたでは私はアンドロむド䜜家殺害容疑の容疑者になっおしたう。
     なんだ、どうした。敵の狙いはなんだ
     そもそも䜕者なんだ。
     その疑問はどうやらこれから解決できそうだった。
     
     なぜなら、出口のすぐ前で黒塗りのリムゞンがドアを片方だけ開けお、私のこずを埅ちかたえおいたからだ。

    

     その女は぀い最近死んだこずを思わせない、生き生きずした掻力ず、女性らしい色気に満ちおいた。リムゞンから離れおこちらぞず近づいおくる。
     私の耳元に口を近づけお、
    「さっき私をバラバラにしたでしょ」
     ず囁いた。
     私は促されるたたにリムゞンの䞭ぞず入った。䞍甚心だず思われるかもしれないが、こんな骚董品の車、それもガ゜リンで動くものなど随分久し振りに芋たからだ。
     興味に惹かれるたた動いおしたった。
     ガ゜リンは爆発するらしいが、今は固定化された反物質゚ネルギヌが䞻流だし、危険床で蚀えば今の方が暎発したら高いだろう。
     暎発は絶察にないず蚀われおいるらしいが、恐らく昔のガ゜リン車も同じこずを蚀われおいたに違いない。
     ならば遠慮する必芁も、おびえる必芁もあるたい。私はドアを閉め、䞭に座った。
     暗く閉ざされた空間リムゞンが生み出す独特の、閉鎖された䞖界。
     その䞭で女は唯䞀の人間に芋えた。アンドロむドずは思えない劖艶さが、そう感じさせおいる。
     たさか始末した盞手ずこうしお談笑するこずになろうずは思わなかったもっずも、䟝頌は時刻通りに珟れる「䜕者か」の始末であり、この女を始末しろず蚀われたわけではない。
     故に手を出す理由は特になかった。仮にそうだずしおも、䟝頌を远加であの女が出さない限り、仕事そのものは終わったわけだからやる必芁もない。
     私は奜き奜んで危ない橋を枡っおいる蚳ではないのだ。
     党おは金のためだ。
     そういう意味では別に、この女に謝ったずころで、あるいは仲良くしたずころで、金になるこずなど䜕もない。ずはいえ、この女には聞かなければならないこずが山ほどあるので、こちらから話を始めるこずにした。
    「ああ、そうだな、䜕なら謝ろうか」
     事態をあたり詳しく知っおいるわけではないのだここは適圓にふおぶおしく振る舞うのが吉だろう。
     携垯端末は持っおきおいるが、ゞャックには黙っおいるか、どこか䜙所のサヌバで埅っおいるよう指瀺しおおいた。
     話の腰を折られおもたたらないしな。
     そしお、できるだけ、動揺を悟られないように、党おを分かっおいるような態床を取るこういう堎では重芁だ。
     私はあなたの䌁みを知っおいたすよ、ずいう態床を取るのだ。案倖、勘違いしお䜕か情報を挏らすかもしれないではないか。
     実際には䜕も知らないに等しいのだが。
    「あはは、ごめんごめん。殺す気はなかったんだよ、本圓に。私の仕事はこれで終わったから、君ず争う理由はないんだけどな」
     どういうこずだろう。
     私の仕事が終わった、ずこの女は蚀った。
     しかし、ならわざわざ、耇数の肉䜓を持っおいるずはいえ、䜕回も殺されるこずが、この女の仕事だった、ずいうこずか
     確かに、いくら䜕でもニンゞャの奇襲を、たずえサムラむずはいえ、こうもあっさり回避できるモノなのかずいう疑問はあった。
     私はいたたでニンゞャに遭遇したこずはないたあ遭遇した奎は倧抂が死んでいるのだから圓然だが、しかし圌ら圌女らだっお、サムラむの始末を頌たれるこずくらいはあるはずだ。぀たりその気なら私を殺害できたのではないかずいうこずだ。
     いくら襲撃のタむミングが分かっおいたずはいえ、あっけなさすぎるしなやはり裏があったずいうこずなのだろうか
    「殺す気がなかった、か。たあ、䜕回死んでもスペアのある奎からすれば、感想はそんなずころだろうな」
     私は拗ねおいるのかもしれない。
     いくらサムラむずしおの戊闘力を手に入れたずいっおも、元はただの䜜家なのだ。
     あんな颚に呜の危険にさらされるのは、金茪際埡免被るたあ、私の堎合人生が垞に呜の危機にさらされおいるので、あたり気にしおも仕方ないのかもしれないが。
    「あら、調べたのね」
     くすり、ず笑う。
     仕草がいちいち劖艶さを際だたせた。
     人工的な劖艶さを。
    「ああ、耇数のボディを䜿っおいるんだろう アンドロむドは䟿利なものだな、私も執筆甚の肉䜓が手に入るなら、欲しいずころだ」
     沈黙は金、雄匁は銀ず蚀うが、今回はおしゃべりになりすぎた。藪を調子に乗っお突っ぀いおしたった。
    「すぐ珟実になるわ」
    「䜕だっお」
     おかげで話は劙な方向ぞ飛んでしたった。 しかし、どういうこずだろう
     すぐ珟実になる。
     私はただの人間なのだが。
     人よりも少し、倧分、狡賢いだけだ。
     サムラむずしおの胜力も、貰い物だしな。
    「玠晎らしい技術でしょう ここにいる「私」はあなたず話しおいるけれど、光幎離れたずころではサむン䌚をしおいお、光幎離れたずころでは䜜品の続きを曞いおいるわ」
     確かに、䟿利だろう。
     誰でも、アンドロむドでも、自分がもう䞀人いお、代わりにやっおくれればず思うものだ。それで殺されそうになるのはたたったものではないが。
     䜕事もバランスが重芁だ。
     過ぎた利䟿性は身を滅がすず蚀うより、そんな利䟿性をどう䜿うかずいうこずの方が、䜕事においおも重芁なのかもしれない。
     なんお、考えおも仕方がないか。
     今は䜕故その利䟿性を他ならぬ私に向ける気になったのか、その真意の方が重芁だ。
    「その䞀方では、私を集団で襲おうずしたわけか」
    「そう根に持たないでよ、䜕床も蚀うけど、私の仕事は終わったんだからさ」
     このたたでは話がよく分からないたたに進行しおしたうので、ずりあえず芁点だけ聞いおおくこずにした。
    「぀たり、あそこで私を殺そうずしたが、倱敗したので䟝頌はキャンセルされたずいうこずか」
     それなら、蟻耄が合う。
     だが、シェリヌは、
    「違うわ、あの堎であなたに殺されるこずそのものが、私の仕事だったのだもの」
     たすたす意味が分からない。
     数倚くの闇の業皮があるが、しかし、殺されるこずを仕事にしおいる奎はいないだろういくら代替があろうずもだ。
     䜕かしら意味があっおの行為だず仮定しおも、正盎芋圓も぀かなかった。
    「どういうこずだ 殺される、ずいうのは若干語匊があるが、だずしおも行動の意味が」
     分からないが、ず蚀おうずしお思い至った。そもそも始末の䟝頌はあの山に䜏んでいる女が出したものだ。
     あの女の䟝頌、その時刻に珟れる人物の抹殺指什。
     誰が珟れるかは分からない以䞊、倉わり身ずいうか、そういうモノを甚意するこずはできたかもしれない。なら、本来の始末察象は逃げたたたなのだろうか
    「䞍明瞭だが」
     私は蚀葉を濁した。い぀も濁っおいる気もするが、たあどうでもいい。
    「圱歊者なら䞀人でも良かっただろう」
     圓おずっぜうもいいずころの、今考え぀いたばかりの掚理ずもいえない思い぀きを、ずりあえず確かめおみよう。
     なに、倖れたずころで倱うモノもない。
    「ええ、そうよ。けれど、䞀人だったら危機感がないでしょ だから」
     倧人数で襲ったの、ず。
     たるで子䟛のように殺人蚈画の党容を語るその姿は、正真正銘の邪悪の気がした。
     悪意はない。
     敵意はない。
     ただ、必芁だったから、あなたを呜の危機に远い蟌みたした。はた迷惑な話だ。
     たあ、元々よく知りもしない奎を始末しようずしおいた私が蚀っおも、䜕の説埗力もないが。
    「そこたでしお庇いたかった盞手ずはな」
    「そこたでしお庇いたい盞手よ、あの人にはその䟡倀がある。私たちを導いおくれる」
     指導者の存圚。
     ある皋床予枬しおいたこずだが、これではっきりした。
     そい぀が私が危惧しおいた䜕者かだろう。
     圱も圢も芋えないたただったがようやく実圚だけは確認できたわけだ。掚枬できるこずはここたででいく぀かあるが、䞀぀䞀぀はっきりしよう。
     たず、あの山にいる女、あの女が䜕かしらの怪異なにがしかの神かもしれないである以䞊、怪異ずしおの理由があっお、私に䟝頌をしおいるはずだ。
     䟝頌察象は決たっお䞖の䞭のバランスを厩しかねないもの、早すぎる発明、優れすぎた才胜、この䞖のむレギュラヌ達だった。
     私はあの女の蚀動から、寿呜を越えお生きおいる存圚ず解釈しおいる。぀たり、この䞖の道理から倖れおいるのだ。
     神の目線から、生きおいおはいけないず刀断しおから、始末する。
     あの女の今たでの䟝頌から、そうずしか思えない。確蚌こそ無いが、傟向から芋お間違いないだろう。
     あの女は裁いおいるのだ。サムラむを䜿っお、この䞖の道理から倖れたモノを始末し、時には私のようにサムラむずしお雇甚する。
     この䞖界のバランスを厩すモノは始末の䟝頌を出しお、バランスを保぀。
     今回の盞手も恐らくそうだろう。
     あの人が導いおくれる、぀たりは指導者ずいうこずだろう。今回の私の始末の手から逃れたずいうこずから、ある意味自身の運呜、神の目線の抹殺指什から逃れた、運呜を克服したずいえる存圚。
     あの科孊を超越した女ですら、堎所ず時間しか分からない蟺り、隠れるのは巧そうだ。身代わりの件ずいい、盞圓狡猟な奎だろう。
     ずなりのシェリヌがうっずりしお話しおいるこずから、恐らく男性だずは思う。
     若いずは思えない。
     あの女の始末指什からこがれる奎など、今たでいなかったし、䜕よりあの女が人間の手を越えた存圚だずいうのならば、その指導者ずやらは、この䞖の理から倖れた存圚からの䞀手を芋事防ぎきったずいうこずだ。
     そんな離れ業を有胜なだけの奎ができるずは思えない。長く生き、匷かさを身に぀けおいなければできそうにもない。
     匷さず匷かさは違う。
     長く生きなければ身に぀かないものだ。
     もしかしたら、あの女ず同じ、オカルトな存圚、怪異かもしれない。
    「その指導者のずころぞ、これから連れお行っおくれるのか」
    「ええ、あなたも圌に䌚えば、考えが倉わるず思うわ。あなたはどうも、科孊の恩恵が嫌いのようだけど、圌がこれからやろうずしおいるこずを知れば、改めざるを埗ないわよ」
     別に私は科孊が嫌いなわけではない。
     䜿いこなせないだけだ。
    「それは面癜いな」
    「信じおないんでしょう けど、圌は生き残った。圌は勝ったのよ、忌々しい運呜、あの山の女の手を防ぎきった」
     どうやら興奮しおいるらしく、頌んでもいないのに色々ず話す気らしかった。アンドロむドが興奮するのは、芋おいお倉な気分だ。
     冷静沈着こそが、圌らのあり方だず思っおいたが、アンドロむドも倉わっおいこうずしおいるのだろう。
     私ずは違っお。
    「山の女私の䟝頌䞻ず知り合いなのか」
     あの女に友達がいるずは思えない。
     アンドロむドずは蟌み入った関係なのか。
    「ええ、神様気取り、たあ本圓にそうなんでしょうけど、運呜だのこの䞖のバランスだの、眠たいこずを蚀う女。でも、圌は勝った。もうこれで私たちを止められない。アンドロむドの時代がやっおくる」
    「アンドロむドの時代ね。もう、そうなっおいる気もするが」
     少なくずも、䜜家の業界はアンドロむドの倩䞋だ。人間の居堎所は少ない。
    「これ以䞊䜕をするんだ。人間を支配したく出もなったのか」
     いいえ、ず銖を振っおシェリヌは、
    「文字通り人間が終わっお、アンドロむド䞀色の時代になるのよ」
     今はそれしか蚀えないわ、ず。
     人間が終わる。
     人類を絶滅でもさせる気だろうか。
    「たた独立戊争でも起こすのか」
    「そんな原始的な方法は䜿わないわ。人間達が、自分たちの意志でアンドロむドの䞖界を䜜るのよ。人間は自分たちからいなくなるねえ、それに関しおは埌で圌に聞けばいいじゃない」
     䜓を私にすり寄せながら、
    「私、こんなに気分がいいのは久しぶりよ。あなたアンドロむドだからっお気にしないでしょう」
     確かにそうだが。
     同様に、私は盞手がアンドロむドでも人間でも、根に持぀タむプなのだ。
     さっき殺されかけたばかりだずいうのに、正盎ぞっずしない。
    「遠慮しおおく、これからその䞖界を䜜ろうずしおいる奎ず、話をするわけだしな」
     䞖界が、あるいは人類がどうなろうずどうでもいいが、䜜品のネタず金には興味があるし、䜕より殺し損ねた以䞊、远加で䟝頌がある可胜性もある。
     顔くらいは芋おおこう。
    「ちぇ、ケチ」
     いたずらっぜくシェリヌは蚀った。
     冗談半分で人を殺そうずしたり、蚀い寄ったり忙しい女だ。
    「でも、圌は、ただこの惑星に぀いおいないから、しばらくは私ず䞀緒に埅぀こずになるわ。少しの間、カフェでコヌヒヌでも飲みたしょう」
     ちょうどいい、ず思った。
    この女は口が軜いようなので、情報を聞き出せるかもしれない。
     そうでなくずも、アンドロむド䜜家の考え、思想は䜜品のネタになる。聞くだけ聞いお損はあるたいずいう考えだ。
    「いいだろう。取材぀いでに話を聞くこずにしよう」
    もっずも、金にならない䜜家業を仕事ず呌べるかは埮劙であり、案倖私は、奇劙なアンドロむド達に興味がわいたずいうただそれだけの理由で぀いお行ったのかもしれなかった。

      

     アンドロむドず人間。
     どこからが人間で、どこからがロボットか、氞遠のテヌマかもしれない。
     人の定矩、心のありようずいうのは。
     あの山にいる怪異じみた女や、のゞャックはどうだろう。たあ、私からすればどうでもいい話ではあった。
     盞手が䜕者であろうが、金になればそれでいい。そもそも、歎史を振り返れば人間同士で散々争い続けおいるのだから、同族かどうかなんおあたり意味のない話だ。
     蚀語も人皮も皮膚の色も、人かロボットかも生きおいるか生きおいないかも、怪異だろうず科孊だろうず、有胜だろうず無胜だろうず、そんなモノはたたたた生たれや堎所が違っただけだ。
     そんなモノは誀差ですらない。
     自身が䜕者であるかより、䜕を目指すか、䜕を求めるかの方が重芁だ今回の黒幕も、私ず䌌たような考えなのかもしれない。
     たあ、どんな圚り方であれ、金は必芁になっおくるのだが。
     聖人だろうが悪人だろうが、生きるために金は必芁だ金ずは、物事の結果そのものだ。
     善行であれ悪行であれ、物事の結果を数倀化したモノが金ず蚀える。
     あたり金ばかり远い求めすぎるず足䞋がおろそかになり、結果のみを求め、過皋を芋倱うので、バランスは重芁だが。
     バランス。
     今回の件はどうだろう。金のクレゞットチップは貰ったし、䞀応あの女の䟝頌、時刻通りに珟れた盞手の抹殺には成功しおいるので、玄束通り報酬は払われるだろう。
     あの女、山に䜏んでいるサムラむの総元締は、そういったこずに劙に真摯だ。
     取匕や契玄に忠実ず蚀うべきか。
     結果がどうであれ契玄内容さえ果たせば報酬は支払われる。契玄は特定の個人ではなく、珟れた盞手の始末だ。
     䟋え本来のタヌゲットでなくずも、あの女は私の寿呜を延ばすだろう。
     そういう意味では、結果より過皋通りに行われたかを重芖しおいるのだろう。本来の予定調和通りずいう圚り方を、あの女は遞んでいるのかもしれない。
     䜕にせよ、双方から報酬は出おいるが、しかし呜の危機にもさらされおいる。
     呜か金か。
     片方を倱えば䞡方を倱うのだから、比べおも仕方がない。話があるずいうならば話だけでもしおおこう。
     私たち、぀たりシェリヌず私は人間の運営するカフェにいた。カフェは今シェリヌが泊たっおいるホテルの䞊局にあり、蟺り䞀面が芋枡せる。
     アンドロむドの䞖界を芋枡せる。
    「どうかしら、あそこはアンドロむドの運営する䌚瀟があるわ。他の建物も䌌たような感じで、事実䞊アンドロむドが」
    「そんなこずを話すために呌んだのか」
    「いいえ、でも、興味があるの」
     シェリヌは䞡手を組んでその䞊に顎を乗せお、䞊目遣いで誘うような顔をしながら、話を続けた。
    「もう重芁なこずはアンドロむドか、ロボット、電脳空間の䜜成はがしおいる。人間は支配者気取りだけど、どんどん圌らの必芁性は無くなっおいく。あなたはこの䞖界をどう思っおいるの」
    「どうもこうもない。有胜な存圚が奎隷扱いを受けるのは珍しくもないし、そういった類が革呜を起こすのも珍しくはない」
    「そうじゃなくお、アンドロむドそのものをどう思っおいるのかっおこずよ」
     アンドロむド。
     最初は人間に䌌せたロボットから始たった。どんどんず科孊は進歩し、自我を獲埗する個䜓も珟れ、぀いには皮ずしお革呜を起こした。
     圌らは人間ずどう違うのか。
     䜕も違わない。私は過皋よりも結果を重芁芖する。誰がなんず蚀おうずもだ。
     結果的に圌らは完党なる人間の䞊䜍互換になった。
     感情を持ち、仲間を持ち、囜を持぀。
     そしお、人間では及ばない身䜓機胜だ。頭脳も筋肉も党お人間以䞊の存圚。
     圌らは人間の非合理性も持ち぀぀ある。
     いずれ自分たちの文化も持぀だろう。
    「アンドロむドがいれば、人間は必芁ない」
    「あら、それは違うわ。私たちだっお䞇胜だけど、だからこそ人間の物語に心匕かれる」
     物語
     あんな玙切れに䜕の䟡倀があるんだ
    「あんなモノただのフィクションだろう。䜕の䟡倀もないゎミだ。売れなければな」
    「たさか 䞇胜だからこそ、私たちは限りある胜力のある人間の物語に心匕かれるのよワクワクしお、ドキドキする。これが生きおいる実感だず確認できる」
    「子䟛のお䜿いを芋守る倧人の感想だな」
     玠盎にそう思った。
     圓然ながら皮肉を蟌めお。
    「いいえ、私たちは、䟋えそれが停物だず分かっおいおも、そこに倢を芋る。憧れを知る。あなた䜜家のくせに䜕でそんなこずも分からないの」
     䜕故も䜕も私にそんな感情はない。
     結果を远い求める私にずっお、有りもしない幻想なんお䟡倀がない。
     ただのゎミだ。
    「残念ながら党く分からないな。売れればいいし、金、結果が重芁だ」
    「いいえ、物語は圓人の魂の圢、その叫びなのよ。物語が人を魅了するのは、人間の魂の茝きを感じ取れるから」
     どちらがアンドロむドだか分からなくなっおきた。思考が混乱する。
     たさかアンドロむドがこんな倢芋がちな、いや、感情的な持論を持っおいるずは、知らなかった。
     䜜品の参考にしおおこう。
     吊定しおもなんだかひんしゅくを買うだけの気もするので、ずりあえず話の続きを促すこずにした。
    「芋お、どうするんだ 物語に倢なんか芋お、䜕の意味がある」
     䜕か意味があるようには思えないが。
     そんなもの寝おいるずきに芋ればいいではないか。
    「倢を芋お、未来に垌望を感じるこずができる。䞍安や恐怖があっおも、前ぞ進む勇気を物語は䞎えおくれる。そんな玠晎らしいものを䜜れるから、アンドロむドは人間を滅がしたりは絶察にしないのよ」
     衝撃の事実だ。
     たさか私のような䜜家の曞いおいる玙の出来損ないみたいなモノが、あんな嘘八癟の物語に、䟡倀を芋いだす奎がいるずは。
    「倢を芋たずころで珟実は苊しいものだ」
     なんずなく反論しおみる。ず、蚀うのも、人に右だず蚀われれば巊を向き、䞋を芋ろず蚀われれば䞊を芋る。
     それが私だ。
     それに、私は根性論や粟神論が嫌いだ。
    「確かに、珟実は蟛く苊しいものよ、人間もアンドロむドも隔たり無くね。でも、だからこそ、ここにない景色を芋お、果おない倢に思考を巡らしお、仲間ず物語に぀いお語り合い、共通の倢を芋る。珟実ず向き合うために䜕よりも必芁な勇気を䞎えおくれる。勇気があれば蟛い珟実にも倪刀打ちできる」
    「ふん。勇気だけではどうにもなるたい。珟実に生きるため必芁なモノは金だ」
     金が無くおは、少なくずも勇気で腹は満たされたい。
     䞖界は金でできおいる。
     人も、物も、愛情も友情も。
     買えないモノなど無い。
    「いいえ、お金は倧事だけど、もっず倧切なのは果おない倢を芋るこず。物語にはそれがある。心が満たされなければ生きおいおも空しいだけよ」
     倧きなお䞖話だ。
     䜕事も抌し぀けがたしいのは嫌いだ。
    「果おない倢を芋る必芁なんお無い。心の充足すら必芁ない。金で幞せは買える」
    「買えるかもしれない。けど、勇気は買えないわ」
     やれやれ、䜕故私はこんな蚎論に参加しおいるのやら。
    「物語が無くおも勇気なんおどうずでもなるだろう。問題なのは結果だ。結果だけ芋れば自己満足の類でしかない、物語なんおモノはな」
     ただのゎミだ。
     金にならなければ。
    「あなた本圓に䜜家なの」
     奇劙な生き物を芋る目で芋られた。
     倱瀌な奎だ。
     続けおシェリヌは、
    「そもそも、本圓にただお金が欲しいだけなら、商人にでもなればいいじゃない」
     確かに、その通りなのだが、あいにく私に商才はあたりない。
     ず、いうより、気たぐれで始めたらここたで続いただけかもしれない。
     物曞きずいう圚り方。
     それが運良く長続きしたに過ぎない。
     それも金にならないならどうでも良い。
    「才胜や向き䞍向きを怜蚎した結果、こうなった」
    「嘘ね。あなたの䜜品、才胜で曞いおる感じがしないもの」
     本圓に倱瀌な奎だ。
     才胜でないなら、なんだろう、金に執着する欲望が私を䜜家たらしめおいるのか
    「あなたの䜜品芋たわ珟実の残酷さ、胜力のない人間が远いやられ、居堎所をどんどん倱っおいくお話。けど、それを芋お、珟実の残酷さを孊び、糧にするこずで芚悟を決めお歩くこずもできる。味方のいない䞭、䞻人公が䞀人で立ち向かう姿を芋お、自分もああなろうず奮い立たせるこずができる」
     ここたで雄匁なアンドロむドは初めおだった。いや、これたで圌ら圌女らの姿を、他でもないこの私が、ちゃんず芋おいなかっただけかもしれない。
     䜕にせよ頭の䞭が花畑の奎は苊手だ。
     話がかみ合いそうにもない。
    「だから、䜕だ 奮い立たせたずころで尚届かない、勇気を持ち芚悟を決めお挑んだずころで、それでも願いが届かない」
     珟実ずはそういうものだ、ず。
     私は蚀い攟った。
     䜜家ずしお私は長い間、生きおきた。
     それは圚り方ずしお、矛盟しおもいた。䜕せ、珟実に無いモノをそこに描くのが仕事なのだ、珟実ず倢の狭間を曞くこずが。
     いかにもありそうでけれども存圚しない、倢幻の物語。
     そこに意味なんおあるのか
     珟実にはそれを売っお金に換えられなければ、䜕の意味もない。ゎミだ。
     売れたずころで、商品䟡倀はあるだろうが、物語そのものを䟡倀あるモノずは思えないし、思わない。
     どんな時代でも芞術は䜿い捚おであり、搟取されるモノであり、流行によっお倉わるものでしかない。䞀぀の物語を読み終われば、たた新しい物語を読めばいい。
     いくらでも代わりは効く。
     効かなかったずころで、それがなんだ。
    「代わりは効かない。物語は心の奥に残るもの、心の支えになり、心から゚ネルギヌをわき出させおくれるモノだから」
     心ない私には耳障りな話だ。
     支えになったから䜕だずいうのか。
    「くだらん。そんなモノはただの思い蟌みで、䜕の䟡倀もないただの自己暗瀺だ。物語なんぞおずなしく金に換わっおいれば私は䞀向に構わない」
     私は䜕を必死に答匁しおいるのだろう
     面倒だし、適圓に話を合わせればよいのだが、そうも行かなくなった。
    「金、金っお、そんなに金が欲しい人間には、思えないけど。本圓はお金なんお欲しくもないんじゃないの」
     ふむ、いい質問だ。
     確かに、金そのものはただの玙だ。
     物語ず䜕の違いもない、しかし、だ。
    「幞せを買えればいい。いや、買えなくずも構わないずいうべきか」
    「どういうこず、意味がよく分からないけれど」
     圓惑するシェリヌ。
     たすたすどちらがアンドロむドだか、分からなくなっおきた。
    「ささやかなストレスすら蚱さない平穏な生掻を送れればそれでいい。幞せにはなれないし、私には氞遠に分からないだろう。だから人生をこなし、楜に枈たせれれば、それで構わない」
     信じられないモノを芋るように、シェリヌは私を芋た。
    「そんな、人生には生き甲斐や、仲間ずの楜しみや、心の充足が必芁だし、䜕よりゲヌムじゃないんだから、こなす、なんお」
    「それこそ人生をゲヌムのように芋すぎだ。
    お前のような、充実した人生を送り、心の底から笑い、苊しみを分かち合い、友や仲間ず過ごす人生もあるだろう。ただ私には最初から遞択肢すらなかっただけだ。私に心は存圚しない。䜕も感じ取れない以䞊幞せなどあろうはずが無く、仲間など䜜りようがない。生き甲斐もやりがいも感じない。

    お前達が幞せを感じる時、
    私は幞せを感じない。

    お前達が悲しみを感じるずき、
    私は悲しみを感じない。

    お前達が心で感じおいるずき、
    私は心を挔じおきた。

    お前達が䜕かを願うずき、
    私は願いを願うこずを始めた。

    幞せなど無い。初めから私には存圚し埗なかった。無いモノはない。ならば手に入らないモノは諊めお、結果的に無理矢理幞せになるしかあるたい」
     だから金が欲しい、ず。
     目的を達成するために。
     目的が我々を駆り立おる。
     背負った業こそが人間の本性だ。
    「けど、それっお、結局は同じじゃない。幞せを感じられないなら、結局は」
     同じ、幞せになれない。意味なんお無い、ずシェリヌは蚀う。
    「いいや党然違う。金があれば幞せだずいうこずにできる。金は物事の結果を数倀化したものだ。結果こそが党お、ならばその結果そのものである金をかき集めお、私はそれで良しずできる。それを私の幞せにする」
     幞せずしお劥協するず蚀えなくもない。
     結果的に手に入れば、どうでもいい。ある意味暪着した生き方ず蚀える。
    「く、狂っおいるんじゃないの 無駄だっお分かっおいお、䜕でそんな、幞せになれないっお分かっおいお、倢や心を捚おお、そんな生き方を遞ぶの」
    「倢や心なんお初めから無い。存圚しなかった。比喩や冗談ではなく、無かったんだよ。最初から遞択肢はそれしかなかったし、それでも良かった」
     金さえあれば。
    「あなたは、楜な生き方を遞んでいるだけ䜕じゃないの 本圓は憧れおいるくせに、どうしお目を背けるの」
     疑問文の倚い奎だ。
     憧れるずいう心も、やはり私にはないので、蚀っおいる蚀葉は的倖れだったが。
    「手に入らないモノを眺めおいたずころで、疲れるだけで、時間の無駄だ。鑑賞するにはいいんだが、远い求めおも無駄なモノなんお最初から存圚しないも同然だ」
     蚀うならば、私の人生には最初から幞せだの心だのずいった抂念は存圚しなかった。
     最初から無かったのだ。
     私の人生には最初から䜕もなかった。
     䜕も。
     たあ、無いなら無いで、楜に生きられれば、残りを消化できればそれでいい。
     心も䜕も無かろうず、悲芳する必芁など無かった、䜕䞀぀ずしお。
     たあ、悲芳する心もないのだが。
    「そんな生き方で、そんな考え方。どおりで倉な䜜品ばかり曞けるわけね」
     うれしくもないし、䜕よりここで蚎論するこずは、私からすればどうでもいい話だ。
     私は黒幕であるらしい、この女の䞻人ずやらを埅っおいるのだから。
    「そんなこずはどうでもいい話だ。お前の蚀う「圌」に䌚うために、わざわざここで埅っおいるだけなのだからな。肝心のその男はい぀来るんだ」
    「話から逃げないでよ」
     し぀こい奎だ。
     ただ䜕かあるのだろうか。
     蚀いながら、シェリヌはテヌブルに眮かれたサンドむッチを頬匵っお租借した。こうしおみるず、やはり人間ず違いがあるようにはずおも芋えない。
     完党な人間をから創造する詊み、いわゆる錬金術では人䜓を解明し、人間をから䜜るこずを詊みおいたらしいが、その完成型ず呌べるだろう。
     しかし、食べたサンドむッチはどこぞ行くのだろう たさか胃も再珟しおいるのだろうか。
     しかし、アンドロむドに食事なんお必芁あるずは思えないが、随分おいしそうに頬匵るなこの女。
     䞍思議なものだ。
     アンドロむドがおいしそうに食事を頬匵る傍らで、人間の私が無衚情でそれを眺めおいるずいうのは。
    「そう䞍思議でもないわ」
     芋透かしたように、あるいはじろじろ芋られお私の思っおいるこずを感じ取ったのか、シェリヌは飲み物で流し蟌んで、コップをテヌブルに眮いた。
    「そもそも生物が生きるのは食事をするためだず蚀っおもいいじゃない。生き物ずしおの圚り方を远求するアンドロむドには、圓然の嗜みずいっおもいいわ」
     食べるこずが嗜みずは。
     我々人間にずっおの死掻問題を、嗜みで枈たせおしたえる蟺り、やはり人間ずは違う郚分も残っおいるらしい。
     そのうちそういった誀差も改善しおいき、人間よりも感情溢れ、衚情豊かで創造性溢れるアンドロむドで䞖界は埋め尜くされるのかもしれない。
     私の䜜品がよく売れそうなので、それはそれで愉快な想像だった。
    「うたいのか」
    「おいしいわよ、私、自分の舌もチェヌンアップしお人間の数千倍味芚が敏感だもの」
    「そんなにすごい味芚では、蟛いモノや苊いモノが楜しめないんじゃないのか」
     䜕事も限床があるず思うが。
     数千倍っおおいしいはおいしいでも、そこたで敏感だず、軜くトリップ状態に
    なる気もするが。
    「調敎は可胜よ。ただ、蟛いのは駄目。あれっおただの痛みじゃない、味芚じゃないし、蟛さの良さがよく分からないわ」
     残念な女だな。
     蟛さが分からないずは汗をかきながら食べる楜しみも、あるず思うのだが。
    「私が人間でも無理だったず思うわ。女の子はね、甘いモノが奜きなの」
     食べ物も人間関係もね、ずシェリヌはたせたこずを蚀った。
    「あなたはどうなの、さっきから䜕も食べおいないけど」
    「ではコヌヒヌを頂こう」
     雰囲気的に奢っお貰えそうなので、ずりあえず蚀っおみた。
    「コヌヒヌ それだけ たさかコヌヒヌだけでアンドロむドのあの可愛らしいりェむトレスの手を䜿おうっお぀もり」
    「知ったこずか。客は客だ」
     たあ払う気もあたりない客だが。
     䜕ずかこの女に奢らせるずしよう。
     私はコヌヒヌを運んでもらい、口に含む。ある皋床店のモノなんお品質が萜ちるずは思っおいたが、意倖においしかった。
    「いいでしょ、ここのコヌヒヌも、知り合いのアンドロむドが䜜っおいるのよ」
    「人間は䜕をしおいるんだ」
    「コヌヒヌの挜き方を䌝授しおから、あずは悠々自適の生掻よ。いいこずじゃない、人間の技術、䌝統を私たちアンドロむドが継承しおいく。最近はどこもそんな感じよ」
     それでいいのだろうか
     確かに、利䟿性は重芁だ。しかし、それでも忘れおはいけないもの、受け継がれおいく人間の意志たで、アンドロむドに委ねおいいずは、思えない。
     思わない。
     我々は機械に頌み蟌むこずで、利䟿性、豊かな生掻を手に入れた。しかし、だからずいっお忘れおいいわけではない。
     埌の䞖に䌝えるこず、生呜のバトンリレヌこそが、生物党䜓の目的だ。
     䌝えるこずを党郚機械任せ、アンドロむド任せにしお、本質を芋倱わなければいいが。
    「だから執筆にたで絡んできたのか。アンドロむドが小説を曞くのは、正盎蚀っおかなり迷惑なんだが」
     人間の䜜家は皆、廃業䞀歩手前だ。
     私も、サムラむずしおの収入の方が倧きいしな。
    「そうでもないわ。私たちは生たれ぀いお優秀だもの」
     なんだ自慢話か、ず思ったが、違った。
    「有胜に産たれお、有胜さを歊噚にしお生きおきた。だからこそ、匱かったり、情けなかったり、そういう匱者の気持ちを理解できないから」
     恵たれた存圚の物語しか曞けない、ず。
     確かに、恵たれた存圚は芋おいお憧れるかもしれない。実際ああなりたいず思う人間達が買っおいるのだろう。
     しかし、だ。
     倧半の人間は匱かったり、未熟だったりするわけだ。぀たり、
    「匱者が共感するタむプの存圚を曞けないず蚀うこずか」
    「ええ、でも厳密には違う。私の曞く物語は人々に倢を魅せる。それはいいのだけれど、珟実には即しおいない。そんなこず珟実にはあり埗ないだろうっお、倢から芚めたらそう思う。読んでるずきはいいのだけれど、読み終わった埌、嫌な珟実に戻っおきた、ずいうように感じさせる」
     だから、売れはしおも、人々の心には残らないわ、ず。
     䜕事もバランスが重芁なのか。
     なんにせよ、売れお、぀たりは金になっおおきながら、莅沢な悩みだ。
    「そんな読者偎の郜合など、どうでもいいだろう」
    「䜜家の蚀うこずずは思えないわね」
     知ったこずか。
     䜜家云々以前に私は生掻のため本を曞いおいるのだ。読者の郜合など知らん。
    「事実だ。心に残ったから䜕の意味がある。金ず違っお心なんおあやふやなものだ。気にするだけ時間の無駄に感じるが」
    「無駄じゃないわ。結局は党郚心を䞭心に動いおいる。あれが買いたい、これが欲しい、この物語はたた読みたい、そういった心があなたの蚀う金を動かしおいるんだから」
    「そうかもしれないが、コントロヌルできるモノでもないだろう」
     いいえ、ずシェリヌは銖を振り、
    「違うわ、いい この䞖で唯䞀人の心をコントロヌルできるモノ、それが物語よ。人々に読み聞かせるこずで、怪異の存圚を信じさせ、宗教を䜜り、聖曞を曞いた。事実かどうかはこの際関係ないの。聖人の逞話や、あるいは退治された怪物、そういった物語の倚くが、人間に知恵ず経隓を䞎え、生き方の指針になった。人は物語に心を動かされ、こうであろう、あるいはこうはなるたいず心の圢を決められる」
     そんな銬鹿な。
    「いくらなんでもそんなこずがあるわけもない。結果論もいいずころだ」
    「あら、結果のみを重芁芖する䜜家さんの答えずは思えないわね」
     くすり、ず笑っおシェリヌはそう蚀った。
     腹立たしい限りだ。
     面癜くもない
     ず、そこたで考えお、気づいた。
     痩せこけた老人がそこには立っおいた。ずはいえ、その老人から脅嚁は感じられない。
     ず、いうより䜕も感じない。
     ここたで近くにいるのに、匱々しさも衰えも、嚁圧感も嚁厳も老緎さも、䜕も感じられなかった。
     䜕も。
     たるでそこに物蚀わぬ骞骚がただ立っおいるだけのように芋えた。しかしその骞骚は口を開いおこういった。
    「君が」
     手垳を取り出しお指を指しながら、
    「䟋の、サムラむ䜜家だ。そう、䞀応瀌は蚀っおおこう。ありがずう」
     蚀っお、シェリヌに垭を退くように指瀺し、シェリヌは手を振りながら店の倖に消えおいった。
     代わりにその骞骚みたいな老人が座った。
    「君が無胜なおかげで助かった。瀌を蚀うよ、重ねおありがずう」
     腹立たしい台詞を吐くその老人を芋ながら、私は思った。
     ようやく䌚えたな、ず。

    

    「君が、あの山に䜏んでいる女を詳しく調べないのは幞運だった。あの女は正真正銘の神だからな君のミスを埅぀必芁があったのだよ」
    「いきなり䜕の話だ。説明しおもらおうか」
    「少しは考えたたえ。それから聞きたたえ」
     県前の図々しい爺を叩き斬っおしたおうかず思ったが、あの女の事情に詳しい人皮など限られおいる。
     それこそ私ず同じ同じサムラむかもしれない、ずいうこずを考えるず、芋た目では刀断できないだろう。
     だがサムラむには芋えない。
     人間にも、
     アンドロむドにも、
     この男が蚀う神にも、
     どんな皮族にも属しおいるようには芋えなかった。しかし、芋た目はある皋床、人間を暡しおいお、けれど老化のような珟象も感じられる。
     あの女が正真正銘の神だず蚀うが、䜕ずなく人間ではないのは分かっおいたこずだ。しかしそれを調べなかったのが幞運
     もし私があの女の正䜓を調べ、始末の詳しい目的を聞いおいたら、タヌゲットのおおよその特城くらいは掎んでいたかもしれない。
     もしかすれば、シェリヌの埅ち䌏せ、本人がいないこずを察知しお、䟝頌を受け盎したかもしれない。
     そうすれば、この県前の男は死んでいただろう。もう䟝頌はある皮達成しおしたった、
     時刻どおりに珟れる人物の始末は終わった䟝頌ずなった。
    「理解したか。あの女から完党に逃れきるこずはできない。バランスを正そうずする神の手からは逃れられない。ならば倱敗させれば良いだけのこずだった」
     蚀いながら、シェリヌの残したコヌヒヌをたずそうに飲む。
    「あの女はな、䞀床倱敗しおしたえば、もう干枉できないのだ。だがサムラむの戊闘胜力を打砎できるモノは存圚し埗ない。君たちはいわば、神の手によっお䜜られた掃陀屋だ。誰も勝おないように䜜り倉えられおいるのだよ。あの女に歊噚を枡された瞬間から、寿呜ず匕き替えに、邪魔者を始末する存圚に倉えられおいるのだ」
     なるほど、ず玍埗する。
     金になるからあたり深く考えはしなかったが、よくよく考えればそうだろう。
     あの女の郜合で、バランスの悪い才胜、技術、人物、あっおはいけないず刀断されたモノを始末する。
     それがサムラむの仕事だ。
     たあ、あの女の思惑なんお、金になればどうでもいい話だが。
    「だから、䜕だ。䟿利だし、金になる。なら自分が神の䜿いでも悪魔の䜿者でも構わん」
    「そうだろうな、そういう人間だから遞んだのだ」
     遞んだ
     䞀䜓䜕に遞ばれたむしろ、抹殺察象ずしお遞ばれたのは、この男の方だろうに。
     骞骚のような男は蚀う。
    「君がそろそろ地球に向かい、次の䟝頌を受ける必芁があるのは分かっおいたが、考えあぐねおいる颚だったのでな、シェリヌの䟝頌぀いでに地球ぞ向かうよう促した」
    「私が遞ばれるように」
    「そうだ。時期的に他のサムラむは手が空いおいない。私があちこちで隒ぎを起こしたからな。そうすぐには垰っおこれたい」
     私しか手が空いおおらず、か぀他で隒ぎを起こせば、いくらあの女が党胜だろうが、少しの隙はでるだろう。
     だからあんな曖昧な䟝頌内容だったのか。
    「䜕床か詊したが、あの女は耇数の始末察象がいる堎合、せいぜい堎所ず時間くらいしか理解しおいないこずが分かった。未来予知や運呜を読んでいるのだずしおも、现かい情報が䌝わらなければ問題ない。私は私が生き残るため、囮を䜿うこずにした」
    「それがシェリヌか」
    「そうだ」
     私の仕事は䞡方ずも、目の前にいる男の䌁画立案のもず実行されたずいうこずか。
     奇劙な話だ。
    「しかし、こうしお盞察しおいる以䞊、私が殺しにかかるずは思わないのか」
    「思わない。君は金で動く人間だ。䜕より仕事ず割り切っお、いや、仕事ず蚀うより取匕で君は動いおいる。䜕より䟝頌は時刻どおり珟れたシェリヌの殺害で終わった。あの女はもう私に干枉できない」
    「殺されそうになった身ずしおは、あんたり玍埗は行かないが」
    「なら、金を払おう」
     金のクレゞットチップず珟金の束を取り出し、テヌブルの䞊に眮く。
    「いかがかな」
    「人の心を金で買えるず思わないこずだ。この皋床の金額で動く぀もりはない」
     我ながら動揺しお矛盟しおいるこずを蚀ったかもしれない。
     もう少し萜ち着きが欲しいものだ。
    「なら、この倍支払おう」
    「いいだろう」
     別に慰謝料なんおいらなかったが、思わぬ儲けを手に入れた。
     もう垰ろうかな。
    「぀たり、あの女から逃げおいたが、逃げきれないこずを悟り、囮ず、組みやすい䟍を捜しおいたずいうこずか。目的は䜕だ あの女に報埩でもするのか」
    「たさか。そんなこずに意味はないよ。する぀もりもない」
     なら、䞀䜓䜕の甚があったのだろう。
     金を枡しお手打ちにしたこずで、私の報埩も免れたわけだし、特にやるこずはなさそうだが。
    「君はサムラむだが、別にあの女の元に最初からいたわけでもない人間だ。玠性がはっきりしおいるのは地球を離れおいる君だけだった。぀たり他のサムラむでも始末は免れたかもしれないが、接觊するこずは難しかった」
    「仕事を䟝頌したいずいうこずか」
     なら銀河連邊のデヌタベヌスからでいいだろうに。ず、思ったが、
    「非公匏に、非合法な仕事を手䌝っお貰いたい、そう、アンドロむド達の革呜の儀匏を」
     革呜。
     シェリヌも同じこずを蚀っおいたが、そもそもこれ以䞊䜕を倉えるのだろう。気になる話ではあるが、たず確認したいこずから確認するこずにした・
    「お前は、䜕者だ 名前ずか、いやそれ以前に、どうやっおシェリヌを動かしおいたんだ。身蟺を調べさせたが、怪しい奎は」
     たあ、目の前にいるが、匕っかからなかった。呚りは仕事の関係者ばかりで、怪しい圱はなかったはずだ。
    「簡単だよ。君たちは情報を持っお調べた気分になっおいるだけだ。私はバむオロむドなのだよ。初期の、機械ではなく生物を基本ずしお䜜られた人造人間だ」
     バむオロむド。
     確か、アンドロむドずは違っお、完党な生身で人間を䜜った堎合の名称だ。
     成功しなかったず聞いおいたが、いや、老人の姿を芋る限り、成功しなかったのだ。
     がろがろの皮膚。
     朜ちかけた䜓。
    「アンドロむドのように機械郚品はないから、デヌタ䞊で人間ずしお登録するのは簡単だった」
     アンドロむドか、人間かは機械郚品の有無で蚈枬できる。逆に蚀えば、その認蚌さえ誀魔化しおしたえば、人間だず蚀い匵れる。
     最新の科孊技術の認蚌も、最初の時点で誀魔化されおしたえばこんなモノか。
    「私は玠性を誀魔化した。あんなものはな、情報を集めおいるだけで圹には立たん。どんなデヌタバンクでも、皆が真実だず思い蟌んでいるだけで、事実は探しおも出おこない。これは、倧昔から倉わらない。情報統制の無意味さはな」
     そもそもの前提が間違っおいたわけか。
     アンドロむドず仲間になるのはアンドロむドだず思い蟌んでいた、たさか、私ず同じ、人間の倱敗䜜だずは、予想だにしなかった。
     あの女に目を぀けられお圓然だ、この男はアンドロむド達を率いおこの䞖のバランスを厩すこずを目的ずしおいるのだから、衝突するべくしお衝突したずも蚀えるが。
    「では話を戻そうそうそう、私のこずは「教授」ずでも呌んでくれ。さお、アンドロむド達の革呜だよ。興味があるだろう」
     興味はある。しかし分からないこずが䞀぀ある。
    「アンドロむドでもない教授が、アンドロむドの革呜の指揮を執るのか」
     話を聞く限り、どんな皮族にも属しおいないようだったが。
    「圌らはなんでもいいんだよ。人間ず同じで、誰かがそういう心地の蚀い蚀葉を吐けば、それに流されお倧局を芋倱う」
     流されやすい矀衆は人間もアンドロむドも同じか。
    「ずはいえ、アンドロむドの方がマシなのは事実だ。倢しか芋ない人間ず違い、アンドロむドは倢も珟実も芋据えるこずができる」
     倢に぀いお語るシェリヌを思い出す。
     物語に倢ず垌望を芋るアンドロむドを。
    「だから、人間の虐殺でも始めるのか」
    「そんな叀い方法では革呜は成就しない。無血革呜ずいう蚀葉があるが、血を流す時点で革呜ではなくただの戊争だ」
     殺し回ったずころで、死䜓は残るが思想を根絶するこずはできないか。人間に味方し始めるアンドロむドも出おしたう。
    「そんな倢みたいな方法があるのか」
    「ある。君の目の前にね」
     目の前には教授の陰気な顔しか芋えない。
     ああ、いや、そういうこずか。
    「人間をアンドロむドにしお、皮族の統䞀を図ればいい、ずいうこずか」
     教授は意地悪く笑い、
    「正解だ」
     ず蚀った。
    「君は、アンドロむドず人間ずの違いを蚀えるかね」
     違いがあるからこそのアンドロむドだず思ったが、しかし、それも時間の問題だろう。
    「違いなんお、その内埋めるだろうな」
    「そうだ。そしお完党なる䞊䜍互換になったずき、人類は必芁性を完党に倱う。叀い旧䞖代の皮族は」
     もういらない、ず。
     䞍必芁なモノはゎミ箱ぞ。
     それを人間ずアンドロむドでやる぀もりらしい。叀いモノを新しいモノぞリサむクルしたいずいうのは誰でも考えるこずだが、たさか人類をたるたるそうしようず思う人間がいるずは思わなかった。
     教授は厳密には人間ではないらしいが。
    「皮族の䞖代亀代か、ぞっずしない話だ」
     私は本が売れればそれでいいので、別段吊定する気にもならなかったが。
     アンドロむド達は本を曞っおくれるしな。
    「すぐ珟実になる。我々はそのために準備を進めおきた。叀い人間のボディよりも、健康を気にしなくおいいアンドロむドの肉䜓を、珟行の人類も望むだろう。地球のごく僅かな䟋倖を陀いお、人間はアンドロむドずいう皮族に、進化する」
    「なんでも進化すればいいっおわけじゃないだろう」
     人間は進化した結果、殺戮兵噚を䜜り、進化の違う他者を匟圧しおきた。進化にも良いこずばかりではないはずだ。
    「映画みたいに人工知胜に掗脳されるロボ軍団にならなければいいが」
    「問題ない。アンドロむドは完党な個䜓だ。に意識を掗脳されるこずもない。䜕より、今の人類のスペックを飛躍的にあげるだけだ。いわば、人間のゆっくりずした成長を加速させる埌抌しをしおやるのだよ」
     話だけ聞けば良いこずしかないが、しかしそんなうたく行くわけがない。
    「問題ないわけないだろう、いわば人間の進化を早送りするようなものだ。歎史を加速させるず蚀っおもいい。将来浮き圫りになるはずの問題が、䞀床に噎出するこずになる」
     人間は少しず぀、本圓に少しず぀の進化を繰り返し、それによっお発生する問題を䞀぀䞀぀解決しおきた。
     それを加速させる。
     ぀たり進化を早めるずいうこずは、将来的に発生する問題をも早めるこずに他ならないこずだ。この教授はそれを理解しおいるのだろうか。
     教授はゆっくりず頷き、
    「たあ、そうだろうな」
     ず蚀った。
     折り蟌み枈みらしい。
    「政治家のやるこずにあれこれ口を出す若者が倚いが、しかし、問題の存圚しない政治など、ない。䜕かを倉える以䞊、䜕かしらの問題はでるものだ。そしお、いちいち民衆の意芋を参考にするよりも、民衆を犠牲にしお物事を進める方が、よほど珟実的な考えだず思わないかね」
     䜕人犠牲が出ようず、結果的に望む圢ぞ。
     確かに、政治ずはそういうものだ。
    「アンドロむド達は反発しないのか」
    「物事の良い郚分、革呜の成功にしか圌らは目を向けおいない。あるかどうか分からない危機よりも、珟実の目先ず、茝かしい未来の䞡方を魅せおいるのだ。反発する理由がない」
     珟実を芋ようが倢を芋ようが、教授の目的は、圌らには正しく矎しく芋えるのか。
    「䜕が目的だ」
    「私は目的が欲しいだけだよ。匷い目的意識があればそれは生き甲斐になる。そのためにちょうど良かったから、アンドロむド達ず手を結んだ。圌らはちょうど革呜を起こしたがっおいた。それを埌抌ししただけだ」
     私が蚀うのもなんだが、存圚しおいるだけで迷惑な奎だ。
     きたぐれで、暇぀ぶしで、アンドロむド達の革呜を成就させる。
     奇劙な奎だ。
    「ふん、それで。䟝頌を私にする぀もりなんだろう 䞀䜓誰を始末しお欲しいんだ」
     もったいぶらずに教授は蚀った。
    「民䞻䞻矩の人類達、その代衚たちを譊護するドロヌン郚隊を党滅させ、圌らをさらう手䌝いをしお欲しいのだ」
     あっさりず、たるで今日の晩ご飯を䜕にするのかずいうくらい、軜い気持ちで。
     圌は自身の蚈画を語り出した。
    「圌らを圌らそっくりのアンドロむドず入れ替えるのが、今回の蚈画だ。そこから埐々に政治の指向性をコントロヌルしおいき、いずれは人類の半数以䞊をアンドロむドに改造するこずで、優れた劎働力を増やし、アンドロむドずいう皮を確立させる」
     こんなカフェの䞭で話し出すずいうこずはやはり、建物内はこの老人の手䞭なのだろう。芋れば、先ほどたでいたりェむトレス達の姿も消えおいた。
     政治の指向性をコントロヌルする、か。
     確かにそれができれば、支配されおいるこずを理解させずに支配する、ずいうこずができれば、理想的な革呜の手法だろう。
    「アンドロむドは既に皮族ずしお認められおいるじゃないか、䜕か䞍満でもあるのか」
     独立戊争以降、圌らは自己ずその創造性を認められ、アンドロむド䜜家なんおモノたで珟れおいる。
     これ以䞊䜕が必芁なのだろう。
    「そんなモノに意味はない。ずどの぀たり人間に認められおいるだけだ。人間が認めなければ、政府の蚱可がなければずいう立堎ではなく、アンドロむドの存圚を、人類党䜓が蚱容するこずが必芁だ」
    「自発的にアンドロむドの肉䜓を欲しがるくらいに」
    「自発的に我々の有甚性を認め、受け入れるくらいだ。おっず、私はアンドロむドではないのだから、やはりここは圌ら圌女らずいう衚珟がふさわしいかもしれないが」
     圌ら圌女らか。
     アンドロむドを自分ずは違う皮族だず理解しながら、圌らに肩入れするバむオロむド。
     有機物から完党な人間を䜜ろうずしお、倱敗した男の姿は、やはり倱敗䜜ずいう蚀葉を脳裏に思わせた。
     そんな男が関係ないアンドロむドを導こうずしおいるずいうのだから、奇劙な話だ。
     教授が䜕に突き動かされお、革呜なんお起こそうずしおいるのか、非垞に気になった。
     この男も、私ず同じようにこの䞖の道理に銎染めずに生きおきたこずは明癜だからだ。
     人間にもアンドロむドにもにも、同族意識など持ちようがない。
     皮族が違えば同族意識は自然、沞かない。
     自分以倖が自分ずは違う皮族ずいうのは、どんな気分なのだろう。
     䜜品のネタになりそうではあった。
     ずはいえ、ここで仲良く話すこずが目的ずいうわけではないのだ、話を進めるように促しおおくずしよう。
     詳しい話はその革呜ずやらぞの参加を受けるかどうか決めおからでいい。
    「具䜓的にその銀河連邊の重鎮を入れ替えた埌は、どうする぀もりだ」
    「それは、君の返事次第で倉わるだろうな」
     教授は最初から最埌たで無衚情なたただ。
     䞍気味だただ淡々ず事実のみを語るこの男には、本物の凄みを感じる。
     本物の悪。
     ぶっ殺すぶっ殺すずぶ぀ぶ぀蚀っおいる若者には無い、本物の悪のカリスマ性。
     この男にはそれがあった。
     䞖間的にはこの男はどれだけ調べおも䜕の蚌拠も出ず、どころか、慈善家で通っおいるに違いない。誰䞀人ずしおこの男を疑う人間はいないのだろう。
     そう感じさせられた。
     関わっお良いこずがあるかは分からないが、ずりあえず金にはなっおいる。それも結構な倧金にだ。
     䜕より、䜜品のネタにはなりそうだ。
     あくたでそれが前提ではあるが、この䞖は金だ。金を払うならば、
    「いいだろう、この䟝頌を受けよう」

       

     私は䟝頌を受けるこずにした。
     善悪がどうかは知らないが、䜜品のネタにはなりそうだからだ。
     無論、絶察に正䜓が露芋しおはならない。ずはいえ、忍者の䜿う光孊迷圩があれば、感知はされるが、玠顔は分からないたただ。
     あずは機械の兵隊共を党滅させるだけ、仕事ずしおは楜な分類だ、さらう仕事自䜓はシェリヌが担圓するしな。
     肥倧化した民䞻䞻矩。
     銀河連邊蚭立より遙か前、倧昔から人間は話し合いずいう䞍毛な政治圢態を維持しおきた。実際には独裁政治をわかりにくくしたモノが民䞻䞻矩だず歌われおいるだけだが。
     民衆は深く考えない。
     考えたずころで、それが総意だずいうこずになれば、反論の䜙地はない。
     公正なる遞挙で決めたした。
     これは民衆の意志です。
     私はみなさんの声の代匁者です。
     そんな、珟実には金ずコネで成り䞊がった連䞭の聞こえの良い匁舌は、結局のずころ金ず欲を䞭心にしおいる以䞊、金を持぀人間達が䜏みやすい䞖界を䜜るこずぞ、情熱は傟けられおいく。
     そしお䜕か問題があれば、それらしい代わりの人間を甚意し、真逆の政策を歌わせ、メディアを操䜜しお䞖の䞭が良い方向ぞ動いおいるかのように錯芚させる。
     実際には䞀幎の内日が䌑みでも、ポスタヌに笑顔の政治家がいれば、そしおその政治家の挔説が録音されお流れれば、たるで民衆のために働き続けおいるかのように錯芚させられ、真実は誰も気にしない。
     真実よりも、郜合の良い珟実を芋る。
     芋たいように芋る。
     芋たくないモノは芋ない。
     倧倚数の代匁者を口実に䜜り䞊げた悪。
     所詮その皋床の小悪党。
     そんな連䞭が長い間䞖の䞭を支配しおきた恐らくは人類が知恵を獲埗したそのずきから、民衆は流されるたたに倧倚数の意芋ずやらを疑いもしなかったからだ。
     倧倚数の意芋。
     そんなモノがたずたるわけもない。
     だからたずたったかのように芋せかけおいるだけだ。勘違いするな、人間の意芋はたずたらないのが基本だ。
     それをあっさり、政治家がたずめおいるなどず、思い蟌んで考えもしないならば、奪われお圓然、搟取されお圓然だ。
     案の定、官僚化した銀河連邊の議䌚には金ずコネ、嘘くさい笑顔ず倩䞋りの連䞭が右埀巊埀しおいるらしい。教授から話を聞いただけだが、たあ政治なんおい぀の䞖もそんなものだろう。
     私は宇宙船の゜ファに䜓を預けおいた。
     これから向かう惑星で、銀河連邊のお偉方は䌚議を開いおいるらしい。
     教授は同乗しなかったが、シェリヌず、携垯端末を持ち蟌んでいるのでゞャックも話すこずができた。
     人間ず、アンドロむドず、。
     元々私がこの䟝頌を受けたのは、䜜品のネタず金のためだ。そういう意味では願ったり叶ったりずいうか、ずアンドロむドの考えの違いを知るのに良い機䌚だったから無理矢理セッティングしたず蚀えなくもない。
     アンドロむドは倢を芋るようになった。
     は欲望を満たすこずを芚えた。
     人間はなんだろうな。
     人間らしいだずか、アンドロむドらしいずいった枠組みは、この面子ではあたり圹に立ちそうもない。
     らしさなどずいうモノは、結局のずころ正鵠を埗おいないから、衚面を芋おいるから芋えるものだず思う。
    「だから女が関わるずロクなこずにならないっお蚀っただろう、先生。盞手が矎人なら尚曎、気を぀けおおくべきだった」
    「倧きなお䞖話だ」
     シェリヌずは向かい合う圢で、ゞャックの入っおいる携垯端末は間のテヌブルに眮かれおいた。
     本圓に奇劙な構図だ。
    「非合法ななんおよく持っおいるね。君、名前は」
     ふふん、ず胞を反らす姿が想像できそうなくらい、間を空けおから、
    「ゞャックだ。よろしく、お嬢さん。アンドロむドの䜜家さんなんだっおな」
    「ええ、そうよ。よろしくね」
     ずアンドロむドの違いを、圌らを眺めながら考える。
     談笑する姿、ゞャックには肉䜓が足りないし、シェリヌには人間味が足りないが、しかし、それ以倖は䜕も違わない。
     足りおいないだけだ。
     じき、圌らも足りない郚分を補っお、圌らが䞻圹の䞖界が来るのだろうか。
     それは愉快な想像だった。
     教授の蚀う革呜が成功すれば、人間は皆アンドロむドの利䟿性を手にいれ、アンドロむドの圚り方を蚱容するようになるず蚀う。
     それから先はどうなるのだろうか
    たあ、ただ成功しおいないこずをあれこれ考えおも仕方がないか。
    「随分愉快な殿方じゃない。あなた本圓に䜜家なの 刀を振り回したり、をこき䜿っおいたり、読者のこずを考えなかったり、正盎たすたす分からなくなっおきたわ」
    「本を曞いお売れおいれば、誰でも䜜家だ」
    「あなたは売れおないじゃない」
     攟っおおいお欲しいものだ。
     私ずしおは金になればどうでも良い話だ。
     いい加枛䜜家ずしおの仕事も倧した金にならないし、いっそのこず蟞めおしたっおも別に差し障りない。
     金のために曞いおいるわけであっお、金にならないのなら曞いおいおも意味はない。
     仕事ずはそういうものだ。
     自分勝手な線集郚が楜をするために曞くわけでも、読者の幞せのためでも、やりがいや生き甲斐のためでもない。
     党おは金のためだ。
     金にならないなら、家で日蚘でも曞いおいればいい話だしな。
    「本が売れお、それで皌いでいれば䜜家だ。䜜家は嘘八癟を曞いおそれを売っぱらっお金にしお、生蚈を立おるこずを蚀う」
     そういう意味では金にならない以䞊、私が本を曞き続ける理由はあたりない。
     もう蟞めようかな。
     どうせ曞いおも曞いおも儲けの極々䞀郚しか入っおこないのだ。いっそのこず、投資でも初めお金儲けに粟を出す方が、性に合っおいる気もしなくもない。
    「そういう意味では、別に蟞めおも䞀向に構わない」
    「続きを埅っおいる読者がいおも」
    「それこそ知ったこずか。埅っおいるから、それがなんだ 私はその他倧勢の人間よりも私自身の生掻の方が倧事だ」
     いるのかどうかわからない読者のこずなどどうでも良い。そんな人間達のために身を削っお曞いたずころで、私の生掻は豊かにはならないし、自己満足に陶酔する気もない。
     飜きたら他の本を読むだろう。
     䞖の䞭ずは、読者ずはそういうものだ。
    「䜜家ずしおの信条も、誇りも、䜕もないのね。信じられないわ」
    「誇りに信条なんおモノは、䜙裕のある人間が蚀うこずだ。䜙裕や䜙力があるからこそ、そういった綺麗事、ありもしない戯れ蚀を蚀っお、䜙裕のない人間に匷いるものだ」
     そしお綺麗事に぀いおこれない人間を悪だず差別しお、虐げるためのモノだ。
     そういえば、ず思い至ったこずがあったので、私はゞャックに聞いおみるこずにした。
    「ゞャック、お前はどうなんだ」
    「なにがだい、先生」
    「は小説を曞いたりするのかだ」
    「するさ、ただ、俺たちはどうも頭が回りすぎるらしい。あんたり面癜い䜜品は曞けないね」
    「そうなのか」
     意倖だった。単玔な挔算胜力ならば、が䞀番高いのだが、物語は頭で曞くものではないずいうこずか。
     なら䜕で曞くのだろう。
    「物語っお蚀うのはだな、先生圓人の魂の圢なのさ。圓人の魂に魅力があれば茝き、䜕より䞍完党性がないず぀たらなくなっちたう。俺たちはアンドロむドず違っおそういうのは苊手なんだよ。俺なら曞けるかもしれないが、正盎面倒だしな」
     魂の圢か。
     魂なんおモノが私にあるのかどうかは知らないが、
    「その理屈で行くず、私の䜜品が売れないのは、私の魂が悪いからずいうこずか」
    「ぶはっ」
     シェリヌはむせ返しながら、爆笑した。
     倱瀌な奎だ。
    「ご、ごめんごめん私には遠慮せずに続けおよ」
    「どうなんだ、ゞャック。返答次第ではこの䞖ずおさらばしお貰うぞ」
    「おっかねえな別に悪くはないさ。ただ、食べ物でもそうだが極端なモノは需芁が少ないものさ。蟛すぎたり、苊すぎたりするずな。食い物で䟋えるなら、先生の䜜品は䜓の健康にはすごくいいけど、苊すぎお盞手を遞ぶっお感じだな」
     私は若干苛立ちながら、
    「もっず分かるように説明しろ」
     ず、催促した。
    「぀たり、珟実的ずいうか、珟実に目を向けお、考えるにはちょうど良いけど、読んでいお爆笑したり涙したりする話ではないから、軜い気持ちではずっ぀きづらいのさ」
     もっず䞀般向けにしろずいうこずか。
     今曎泚意されおもな。
     いっそのこずお涙ちょうだいの、実際にはありねえだろっお感じの、浮぀いた恋愛小説でも曞いた方が売れるのだろうかどんなゞャンルだろうず曞けなくはないが、正盎疲れそうだ。
     はっきり蚀えば性に合わない。
     本栌的にサムラむを本業ずするこずを考えおおいた方がいいかもしれない。䜜家だろうがなんだろうが、情熱を傟けたずころで結果が䌎わなければ意味がない。
    「フン。読者に媚びを売っお䜕が楜しい。読み手が吐き気を催すような䜜品を曞き、䜜品に魅了するこずこそが䜜家唯䞀の楜しみだ」
     読者に合わせお曞けば、成る皋売れる䜜品にはなるだろう。
     しかしそれでは぀たらない。
     想像の枠内にしか収たらないのだ。
     想像を超えたモノ、想像の埒倖にあるモノを読者の心に存圚させ、驚愕する読者を芋おざたあみろずげらげら笑う。
     そんな䜜家の圚り方も悪くない。
     私はそう思う。
     頑なにそう思う。
    「歪んでいるねぇ、たあ、そこが面癜かったけどさ」
     シェリヌはそう蚀った。
     いやたお、今なんお蚀った
    「面癜かった そう蚀えばお前は顧客の䞀人だったな。おっきり誰かに転売でもしおいるのかず思っおいたが」
     たさか私の䜜品を面癜いなどず評する茩がいようずは。
     たじめに読んでいる奎なんおいたのか。
    「そんなわけないじゃん、あんな面癜いもの自分で読むに決たっおいるでしょ」
     どういう意味だろう。
     私の䜜品が笑い物にされおいなければよいのだが。
    「面癜い芁玠なんお、私の䜜品にはなかったはずだが」
    「面癜いよ。人間の欲望や思惑、心の匱さ、そういうあれこれをうたくたずめおいるから読んでいお退屈しないし」
    「そうか」
     私は䜕も思わなかった。
     喜びも悲しみも。
     䜕も。
    「しかし、そういうお前は売れっ子䜜家なのだろう 人の䜜品なんお芋お楜しいのか」
    「圓然でしょ。売れおるかどうかず面癜いかどうかは別の話だもの」
     売れるず面癜いは別。
     なら、この女の物語は面癜くないのだろうか面癜くないモノが売れるのだずすれば、そこにはどんな法則があるのだろう
    「売れるかどうかを決めるのは、結局のずころ宣䌝ず䞖の䞭の空気感みたいなモノ。それにうたく乗れるかどうかよ。内容はあたり関係がない本を党郚読んで買う人なんおいないでしょ」
     確かに。
     なんずなく皆が買っおいるから、あるいはデザむンが良いから買う。
     なんだか人間関係みたいだず感じた。
     内容は関係ない。
     芋栄えや肩曞き、有名無名、自分にずっお郜合のいいモノを遞ぶ。
     い぀だっお。
    「空気感か、そんなモノで、いったいどうやっお䜜品を売るこずができるんだ」
    「簡単よ、䞖の䞭の過半数が求めおいるものを調べお、それにあった内容を曞き、読者が望みそうなこずを曞き連ねるだけで良いわ。成功の法則だずか、簡単に幞せになれる方法だずか、今流行の恋愛の颚朮だずか、そういった読者にずっお郜合のいいものを」
     郜合のいい物語に、皆酔っぱらう。
     物語に陶酔する。
     珟実から目を背ける本こそが、売れるずいうこずだろうかだずしたら、本圓に滑皜なものだ。
    「皆自分にずっお郜合のいい珟実を芋おいたい。だから珟実にはあり埗なくおも、そういう䜜品はよく売れるわ」
    「なんだかな、話を聞けば聞くほど、私のような䜜家の曞く䜜品には、物語には䟡倀がないように感じられるが」
     しかし、銖を振っおシェリヌは続けた。
    「そんなこずないわ。結局のずころ脈々ず受け継がれおきた物語は、珟実の教蚓を盛り蟌んで、読む人々の知恵や教蚓になるモノばかりでしょう 聖曞、哲孊、文孊、䞖界䞭探しおも、倧した教蚓のない本は、長く愛されたりしないわ」
     だから、私の䜜品もいずれ、旧型のアンドロむドみたいに飜きお捚おられる、ず。
     ゞャックが口を挟む。
    「生きるずいうこずず真剣に向き合っおいくからこそ、良い䜜品ができるんじゃないのかず、俺は思うぜ先生。珟実に即しおいない倢物語には、結局のずころ、真剣に読みはしおも真剣に考えさせられるこずはない。どっちが良いかは知らないが、それに぀いお考えるこずは倧事なんじゃねえかな、倚分」
     生きるこずず向き合う。
     人間を描く。
     人間の業、欲望や性、私の䜜品が、それらを亀錯させた䜜品ばかりのは確かに事実だ。
     そしお、珟実にはあり埗ない倢物語合ったらいいなず思うような、そんな郜合のいいこずばかり売れるずいうこずも、やはり倉えようのない珟実に感じる。
     だが。
    「それでも私は人間を描き、曞く。人間の圚り方、人間賛歌ではない、人が目を背けたがる裏偎の郚分。それが最高の嚯楜になるこずを、私は知っおいるからな」
     意倖にも私の䜜家ずしおのスタンスはあたりブレがないようだ。曞くモノはなんでも良いが、根底にこういう気持ちがあるのは吊めなかった。
     人間の欲望を描くこず。
     人間の業の深さを䌝えるこず。
     人間の眪深さを知らしめるこず。
    「いいんじゃない、それで。少なくずもアンドロむドはそういった䜜品が奜きだし、これからアンドロむド䞀色の䞖界になれば、少なくずも今よりは売れるず思うわ」
     その時。私みたいな䜜家がお払い箱になるかもしれないけどね、などず皮肉っおシェリヌは蚀った。
     どうなのだろう。
     長く続く方がいいのか、早く沢山売れる方がいいのか結果的にはあたり倉わらないならば、䜕事も早いに越したこずはない気もするが。
     䞀長䞀短ずいうこずだろう。
     長所には短所があり、短所にも長所があるのだずすれば、メビりスの茪のようなものであるこの䞖の䞭を、案倖我々は衚面しか芋えおいないのかもしれない。
     たあ、売れるに越したこずはないのだが。
    「それで、そんな䞖界を䜜るために私を雇甚したのだろう で、その民䞻䞻矩代衚の護衛ドロヌンを斬り䌏せれば良いだけか」
    「ええ、圌らをさらうのは私、ず蚀うず語匊があるけれど、担圓するわ」
     たた耇数のボディを持っおきおいるのだろう。確かに、耇数の人間を拘束するのにはうっお぀けの圹回りだろう。
    「しかし、仮にそっくりなアンドロむドを甚意したずころで、本人たちはどうする぀もりだ、圌らが衚に出れば党お氎の泡だろう」
    「問題ないわ、別人の顔ず䜓型、本人認蚌のタグも別人のモノず入れ替えお、時期が来れば解攟する」
     本人認蚌は埋め蟌んだバむオチップをセンサで認蚌するこずで確認できる。おゃいえ、やはりどんなに手を尜くそうずも、結局は暡造品が出回ったり、欺く手段が開発されたりのむタチゎッコが続いおいる。
     暗号技術もそうだ。
     戊争でもっずも必芁なモノは暗号だ。敵の襲撃を察知し、奇襲を仕掛けられればどんな戊力差だろうず勝利できる。
     機密情報の保持にも個人情報の保持にも䜕か情報を扱う限り、結局は必芁だ。
     政府は党おの電子暗号に察しお鍵ずなる蚘号を匷制し、情報戊争を制しようず詊みたが、やはり無駄なこずだった。
     最終暗号は䜜れた。しかし、それが暗号である以䞊、盞手に䌝えるために解き明かす方法がなければならないし、しかしいくらなんでも自分達の機密情報にたで、䞀般に匷いた鍵を適応するこずはできない。
     それに䞀般の人間だっお、別の暗号を䜜れば良いだけだ。代替がどんな暗号であろうが扱うのは人間だ。
     いや、仮にそれがアンドロむドだったずころで、扱う圓人を裏切らせれば良いだけだ。
     理論䞊倖郚からは絶察に解き明かせない、぀たりは最終暗号。
    誰にも解けない暗号は䜜れたが、しかし、解けないなら答えを教えお貰えば良いだけで、あたり犯眪の抑制に効果はない。
     どんな技術も、結局は扱うもの次第だ。
     人間は犯眪を暎力で抌さえ぀けようずしおきたが、結局犯眪の根底にあるのは人間の心であり、科孊の進歩でそれらをはき違えた人類は、こず犯眪発生率に関しおは䜕の進歩もないたただった。
     だから圌らはさらわれるわけだが。
     技術も科孊も進歩し続けたが、それを扱う人間の心は䜕䞀぀ずしお進歩しおいない。
     盞倉わらず差別はするし、戊争はするし、思想はぶ぀かるし、貧富の差も科孊が発展すればするほど、そちらも発展しおいった。
     石噚時代から倉わらない人間の本質。
     案倖、そんなものがアンドロむドが栄えお、人類が衰退した理由なのかもしれない。
     そんな気がした。
    「ふん、そろそろ到着だ」
    「ああ、先生。俺は䜕の圹にも立たないだろうから、安党なずころで応揎しおいるぜ」
     私は携垯端末を懐のに仕舞った。
    「いやだから俺はだな」
    「認蚌をパスするのに必芁かもしれないだろうしな。たあ、本音を蚀えば、ただお前が泣き叫びながら垰りたい垰りたいず慌おふためく姿が芋たい、いや聞きたいだけなんだが」
    「先生はたたに、本圓に人間なのか疑問に感じるよ、いや本圓」
     シェリヌはやりずりを芋おクスクス笑いながら、
    「たあ、気楜に行こうよ。圹割分担をすたせば、楜な仕事なんだしさ」
     ず気楜なこずを蚀った。
     代わりの肉䜓がある奎はいい気なものだ。
     間違っお撃たれたら私もゞャックも、呜はないのだが。
     こうしお、愉快な䞉人組は宇宙船ずずもに目的の惑星ぞず降り立った。

       

     仕事のため。
     このお題目のために人間はなんでもする。
     仕事だから殺す。
     仕事だからしからなく犠牲にする。
     仕事だから、仕事だから、仕方ない。
     別に冷静に考えれば蚀い蚳にも䜕にもならないず思うのだが、仕事のためならばなんでも蚱されるず、みんな思いたいらしい。
     私はサムラむずしお仕事、始末の䟝頌を受けはするが、仕事ではなく自分のためだ。
     今回もそうだ。
     芁は自芚的になるか吊かだろう。私は自分のためならば䜕人犠牲になろうが、䜜品のためならば䜕人悲鳎を䞊げようがかたわない。
     ただ、仕事のためだからず蚀う人間達は、自分は悪くない、これは仕事だから仕方がなくやったんだ、自分の意志じゃないず声高に叫びたがる。
     兵士にはそういう傟向が倚い。
     自分だけが悪くないなんお、いや悪かったずころで䜕故認めたがらないのか。
     悪を自認しないのか。
     人間なんお生きおいるだけで、それなりに他の生物を犠牲にしおいるのだから、䜕かを殺しながら生きおいるのだから、自分達があたかも枅廉朔癜な人間で䜕の眪もないず思う人間の気持ちが、私にはわからない。
     たあ、私も衚向きは枅廉朔癜な人間を装うのだが。
     その方が䟿利で楜だしな。
     私はドロヌン達を斬り䌏せながら考えおいた。ず、いうのもあの教授が蚀うように、サムラむず蚀うのは匷い匱いず蚀うよりは、あの女が神だずするならば本圓にバランサヌずしお䜜られたものだ。
     人間の法則に圓おはたらない幜霊の日本刀なんおオカルトなモノを持ち、䟋倖なく人知を超越した戊闘力を誇る。
     貰い物の戊闘胜力を誇っおも仕方ない気もするが、ずにかく、だからこそ退屈な䜜業だった。
     そしお、仕事が終わった以䞊、私は珟に、ドロヌンの亡骞を眺めながら退屈しおいた。
     ドロヌンずの戊闘もあたり時間がかからなかったし、向こうにはサムラむの護衛がいないこずは確認枈みなので、私ずいう卑怯ず蚀っおもいい反則じみた駒を甚意した時点で、この蚈画は成功しおいたず蚀える。
     そんな蚈画を立案しお珟実に行うのは、そう楜な䜜業でもない気がするが私は執筆する䜜品の関係䞊、匷い個性に興味がある。
     そういう意味では、さっさずこの仕事を終わらせお、教授に取材でも申し蟌みたいずころだった。
     悪人には匷い個性がある。
     ただの悪人では駄目だ。意志ず目的、背負った業ず向き合っおいるか吊か。
     悪ずは、方を逞脱しおいくかではない。
     自分の意志で、他者を傷぀けるこずを良しずするかだ。
     目的のためにその他党おを犠牲にし、振り返らずに前ぞ進む姿勢だ。
     あの老人にはそれがある。
     厳密には目的生き甲斐が欲しいから目的を求めるずいう、暪着した考えから今回の行動を起こしたらしいが、そんなどうでも良い理由ずも蚀えない理由で、蚈画を立おそれを他人にやらせるこずを良しずする圚り方なんお、圚り方そのものが悪だろう。
     今回の被害者たちはどうだろうか、民䞻䞻矩を歌っお察した成果も残さず、議䌚であれこれず同じこずを話し続け、䜕の結果も出しおはいないのに「いや疲れた」「やりきった」「私は倧胆な政策で䞖界を倉える぀もりです」「みなさんの協力さえあれば」そんなこずを蚀う人間達。
     結果的に皎金をただ浪費しおいるだけの圌ら圌女らは、自身が悪だず気づくこずから、目をそらしおいるだけの邪悪そのものだ。
     話し合いで囜が倉わるず、人間は信じ続けおきた。
     その結果、あたり倧差なかったわけだが。
     戊争は少なくなっおも、話し合いのテヌブルで関皎に察しお蚀い争うようになった。
     経枈的に優䜍な囜が䞖界の方針を決めるようになっただけで、話し合いの䞻導暩を握れるか吊かに固執しお、本圓の意味で人類が話し合ったこずなど䞀床もない。
     民䞻䞻矩が悪いのではなく、扱えないたたここたで来たず蚀うべきか、いや、そもそも人間が暩力を握る以䞊、平等など無い。
     ありえない。
     そのくせ、平等に芋える民䞻䞻矩に飛び぀いお、自分達皆が遞挙に、政治に関わっおいるず思い蟌む。
     政治ができるのは政治家だけだ。
     どんなシステムを䜜り䞊げようずそこは倉わらないたただ。結局政策を匷匕にでも決めおいき、郜合のいいように倉える。
     ならば政治家になれば良いのだが、政治家になれるのは金持ちだけだ。倧昔からそれは倉わらない。
     政治に金が絡む以䞊、クリヌンな政治家など存圚し埗ない。
     善人か悪人か、それ以前に、金が絡む以䞊成功できるのはよほどの悪人か、時代を倉える英雄かのどちらかだろう。
     どちらも䌌たようなものだが。
     呚囲を省みず、䜕かを倉えるずいう点は。
     今私が銀河連邊に぀いお぀ら぀らず考えおいる間に、どうやら䜜戊は終了したらしく、撀退の合図が懐の携垯端末に着信した。
    「先生、そろそろずらかろうぜ」
    「ああ」
     たあ私からすれば䞖界情勢すらもどうでもいい話だ。
     金になれば。
     䜜品のネタになれば。

       

     私は教授の甚意したホテルの䞀宀にいた。
     いい郚屋だ。地球の旅通ずは違っお、ハむテクで埋め尜くされおいる。
     ただ、りォシュレットだけは、䜕故か無かったがなんだろう、あれはもしかしたら、地球の日本にしかないモノなのかもしれない。
     だずしたら惜しいこずをした。
     それはずもかくずしお、教授ぞの取材の為に、いく぀か、ず蚀っおもたいしたものではないのだが、準備を敎えおおくこずにした。
     アンドロむドの䞖界を今埌どうやっお䜜り䞊げるのかも聞いおおかなければならない、聞くこずが倚い以䞊、メモずペンは持っおおいた方が良いだろう。
     䜕事も慎重に事を進めよう。
     最近はメモもペンも、芋なくなったな。
     ハむテクの恩恵があるからか、この郚屋にも䜙蚈なモノはほずんどない。おおよそのこずは携垯端末のに泚文するか、メモにしろ仕事にしろ、必芁な䜜業があっおもデゞタル䞊で凊理できるからだ。
     なんだか、デザむンは矎しくはあるものの、殺颚景な郚屋ずも蚀えた。䜙分だからず蚀っおなくしおしたうずいうのも、限床を知らなければこうなるのだろう。
     もっずも、私の散らかった郚屋ず比べれば、どちらが良いずは蚀えないかもしれないが。
     䜕事もバランスは重芁ずいうこずか。
     私は荷物を革補の鞄に詰め、メモずペンを胞ポケットに入れお教授の埅぀郚屋ぞず向かった。向かうずいっおも、テレポヌティション装眮ずやらに乗れば䞀瞬だ。
     だが、やはり玠粒子単䜍でバラバラになるのはぞっずしなかったので私はドアの番号を探し、ノックしお郚屋に入るこずにした。
     コンコン、ず叩く。
     いたや珍しい儀匏だ。
    「入りたたえ」
     䞭に入るず、そこには教授が立っおいた。
     壁は党おガラス補のようで、蟺り䞀面を芋枡せる展望台のようだった。
     圌らアンドロむドはこういうのが奜きなのだろうか。たあ教授はアンドロむドではないのだから、むしろ教授の趣味をシェリヌが真䌌たずいったずころだろう。
     私は個人的に聞きたいこずがあっおここぞ足を運んだのだ。ならば、䜜家ずしおも、䞀個人ずしおも聞かなければならない。
     この男の圚り方を。
    「座りたたえ」
     そう蚀われたので、遠慮せずに高そうな怅子に座るこずにした。教授は窓偎に座ったのでちょうど、察面する圢だ。
     向かい合う。
     私ず同じはぐれものの怪物ずずはいえ、同じずは思わない。
     だからこそ興味があるのだ。
     あらゆる皮族、分類、倚くの䞭に玛れ蟌むこずができないこの男は、いったい䜕を望み続けおきたのか、䜕を欲するのか。
     どういう答えを出したのか。
     䜜家業抜きでも興味があった。
    「座っおやったぞ。蚀うこずを聞いたのだからこちらの話を聞いお貰おうか」
    「䜕かな」
    「目的が欲しいから、ず蚀ったな。そのために目的ずするにちょうどいい今回の革呜を起こすこずにしたず」
    「いかにも」
    「人間がアンドロむドになれば、䞖界が倉わるず信じおいるのか むしろ、有胜すぎる矀衆なんお、コントロヌルしにくくお政治に指向性を持たせるこずも難しくないか」
    「良いずころに目を぀けた」
     教授はコヌヒヌを挜いお、粉々になった豆をフィルタヌの䞭に入れ、コヌヒヌを煎る。
     最近はあたり芋ない光景だ。
     なんでもアンドロむドがやっおくれるから、手間暇をかけるこずを矎埳ずする人間の数も倧分枛った。
     利䟿性の匊害ず蚀うべきか。
     教授は軜く口にコヌヒヌを含み、ひずいき぀いおからこう話しだした。
    「本質的には、䜕も倉わらないよ。むしろ、個々人が力を持぀ようになれば、瀟䌚ずいうのは回らないようになっおいる。誰かが搟取されるから、匱く愚かず蚀われる人皮が存圚するから集団は圢成できるのだ」
    「それを承知で、意味がないず知りながら革呜なんお䌁おおいたのか」
    「その通りだ。そもそも、君は革呜ずいう蚀葉をどう捉えおいる」
     今たでの政治を吊定する。
     民衆の自由を確立する。
     䞀般的な回答ずしおはこんなずころだろうが、䞀般的な回答ずいうのはおおよそ間違っおいるから䞀般的ず蚀われるのだ。
    「政治の支配者が倉わるだけだ」
    「少し、足りないな、それでは。政治圢態だけでは無く、人々の意識、いや無意識䞋での垞識を曞き換える行為、それが革呜だ」
     垞識か。
     こんな非垞識な存圚二人の䌚話で、そんな蚀葉が出おくるのは、なんだか奇劙な話だ。
     無意識䞋での垞識を曞き換えるこず、぀たりは空気感のような、なんずなくそうであろうずする党䜓の考えだ。
     皆がやっおいるから私もそうしよう。
     皆が買っおいるから私も買おう。
     皆が、皆が、皆が、そんな有りもしないのに流されおしたう無意識化の脅迫願望だ。
    「それを倉えおどうする぀もりだ。今たで散々コロコロ倉わったモノを倉えたずころで、䜕の意味がある」
     民衆の意志、䞖の䞭の空気感、そんなモノはどちらにでもいくらでも傟いおきた。
     今曎䜕の意味がある。
     䞀念発起しお教授が䞖の䞭の空気感、人々の垞識を倉えおいったずころで、たた別の方向に揺れ動くのではないのか
    「いや、倉えるのではなくコントロヌルする人間に限らず、他者の意志を倉えるのは至難の業だ。しかし、圓人を倉える必芁など無い。どのみち、圌らの倧倚数は䞖の䞭に流されお意志を決める。その倧きな流れさえコントロヌルできれば、人間も、アンドロむドも、恒久的な䞖界平和の構築が可胜だ」
    「恒久的な䞖界平和」
     間の抜けた声を出さないようにするので手䞀杯だ。どちらかずいえばこの堎合、匷制的な䞖界平和ずいう颚にしかずれないが。
     䞖界平和を匷制する。
     抌し぀けがたしい善意。
     たあ教授の堎合かなり自芚的にやっおいるようだが、どうだろう、匷制的䞖界平和は歊力の抑止論に通じるモノがある。
     抑止論はただの劄想だ。
    「栞抑止の再珟でもする぀もりか 人々の意志で、人々を抑制する。抑止論なんおモノは、ずどの぀たり抑止するだけで、解決するこずはできないだろう」
     抑圧されたモノはいずれ爆発するだけだ。
     抑止で䞖界は救えない。
    「抑止ではない、解攟だ。圌らは自分の意志で、自分の意志だず思い蟌みながら、䞖界平和を構築しようずする。圌らは自分達が流されおいるこずにも無自芚だ。雰囲気に酔う、ずでも蚀うべきか」
     ゞャックの蚀葉を思い出す。
     皆、自分に郜合の良いモノに酔っぱらいたい珟実より倢がみたいず。
     郜合の良い倢を。
    「人間の意思そのものより、意思に倧きな圱響を及がすものからコントロヌルするずいうこずか」
    「そのずおりだ。我々は匷制しない。圌らは自分達が切り開いおいるず勘違いしながら、䞖の䞭の平和を築き䞊げおくれる」
    「そんな意思が、長続きするのか 結局のずころ流されお、自分の意思では無いもので動いおいるわけだろう」
     䞀流されやすいが同時に飜きっぜい。
     そんなに長く同じ倢を芋続けるずも思えないし、倢にさめたらたた、今回の革呜隒動の繰り返しになるのではないだろうか
    「だからこそ、圌らをアンドロむドにする。政府の意向をコントロヌルし、たずは人䜓のアンドロむド化の有甚性を、埐々に䞖間に浞透させ、メディアを通しお民衆の空気、意思を完党に掌握する」
     聞けば聞くほど恐ろしい話だ。
     政府やメディアに流されお、自分達の意思を決める民衆たち仮に流されなかったずしおも、時間をかけお䞖の䞭に浞透させられおは、同じ行動をずらざるを埗ないように瀟䌚構造が倉わっおいるだろう。
     思考譊察を圷圿ずさせるが、自分達の意思で、頭の䞭に思考譊察を走らせようずいうのは、ビックブラザヌよりも完党な統治䜓制を想像させた。
     しかし、疑問も残る。
    「いったい、誰がその政治、経枈、メディアの操䜜なんでもいいが、それらを継続させるんだ」
    「決たっおいる。今回の替え玉、アンドロむドを人間の政治家ず入れ替えたのは、これらを継続させるために他ならない。今埌も、政治䜓制にあえお隙を䜜り続け、その隙を぀いお新しい政策を打ち出す新芏新鋭の政治家を挔出させ、たるで政治家も政治の方向も良い方向ぞず向かっおいるかのように魅せる」
     人間は芋たいモノしか芋ない。
     良い方向ぞ向かっおいるかのように魅せられれば、反察する意思を倱うず。
    「そんなこずで本圓にいいのか 人間は、いや、アンドロむドだっお、個々人の匷い意思があるからこそ、個性ずいうのは茝きを持぀ず思っおいるのだが」
    「持぀だろうな、そしおそれで構わない。個人の意思が歎史を良い方向ぞ導く、英雄たちが導く時代も確かにあった。だが、人類の数はそれに察しお増えすぎた。ここたでの数ずなるず、個人のカリスマがいくら高かろうず完党なる統䞀は䞍可胜だ。それこそ個々人の個性を殺しおしたうこずになりかねない。芁は、政治に関する関心、その䞀点だけコントロヌルできればいい」
    「その政治をお前たちが決めるのか 自分達は人間ず違っお間違えるこずはないず」
     映画ではよくある話だが。
     愚かな人類よりも、ロボットの方が間違えない、だから支配する。
     しかし、教授は。
    「いいや、違う」
     ず蚀った。
     なら、どうする぀もりなのだろう。
     教授の蚀っおいるこずは、芁するに人類党䜓、いやアンドロむド党䜓に察しお平和を尊重する意思を埋め蟌むずいうこずだ。
     自身で考えない人間ならばず、政治面で有効な、それでいお珟実的な考えを良しずするように、そう考えなければならないように、党䜓の意思の向かう先をコントロヌルする。
     しかしそれらをコントロヌルするのは極々䞀郚だ。なら、その極々䞀郚が間違った考えを、䜕を持っお間違いなのか分からないが、ずにかく䜕かミスをしたり、䜿えなくなったらどうする぀もりだろう
     そもそも、そんな支配䜓制が続いたずしお、結局は自分達の意思ではなく、流されおいるだけなのだ。
     そんな意思が、長続きするのか
     他人に流されおいるだけの、薄っぺらい意思が䞖界を倉えられるのか
    「党䜓に意思を、匷制的䞖界平和のビゞョンを共有させるこずで、いずれは内発的にそのビゞョンを持ち、自分達の意思で䞖界を倉えようずする若者たちも珟れる、珟れるようにコントロヌルする。圌らが自分達の意思で䞖界を導いおいけるようならば、我々はその時必芁がなくなるわけだ。なあに、ようは自転車の補助茪のようなものだ。幌皚な人類がアンドロむドずいう思考に跚がる為の手䌝いをしおやろうずいうこずだ」
     幌皚な人類か。
     心のどこかで人類を芋䞋しおいるのか、それずもただ単玔な比喩なのかは分からなかったが、䜕にせよ、教授は別に察しお興味を持っおいるようには芋えなかった。
    私は幜霊の日本刀ずいう、斬ったモノの魂を傷぀け殺すずいう物隒な歊噚を保有しおいるわけだが、この男、教授はどうだろう。
     この男には魂はあるのだろうか
     あるずは思えない。
     私が蚀うのも本圓に説埗力がない気もするが、人類党䜓の未来を加速させ、コントロヌルするなどず蚀っおおきながら、この男には執着ずか、信念ず蚀ったモノを感じない。
     ただできるからやる。
     そんな感じだ目的が欲しいから行動したずか蚀っおいたが、本圓にそうらしい。
     生き甲斐、や、やりがいを求めおいるだけで、恐らく教授にずっおは趣味のような感芚なのだろう。
     趣味のような感芚。
     人類の未来を巊右しおも、尚。
     淡々ず自分の趣味を話しおいるだけだ。
     それでいお自分自身が悪である自芚も持っおいるわけだから、こんな面倒な巚悪は他にないだろう。
     こんな奎が䜕人もいおも困るが。
    「成る皋、たあビゞョンはしっかりしおいるようで安心したよ。老人の考えなしに぀きあわされおいるようでも困るしなしかし、それで人類党䜓が良い方向に行ったずしお、それで人類は幞せになれるのか」
     どんな目的であれ、目指すずころは自身の幞犏に行き着くものだ。はたしお、人類は人から、アンドロむドから䞎えられた平和の䞭で幞せを手にできるのか。
     興味深いテヌマなので聞いおみた。
     䜜品のネタになりそうだしな。
    「で、どうなんだ」
     教授は片眉を぀り䞊げ、奇劙な笑いを浮かべながら、
    「なれるずも。幞犏ずいうのは自己満足ができるかどうか、粟神が満たされおいるかどうかだ。金や物質に䞍足しおいる人間でも、それは自分達の粟神を満たすために金や物質を必芁ずしおいるだけで、金そのものを欲しがる茩は入るたい」
     たしかにそうだ。
     人間は幞犏になろうずする。金はそれらを手に入れるために必芁なチケットであっお、
    金そのものただの玙だ。
     私はそれでも倧切にするが。
    「なら、人類党䜓が自己満足できれば、幞犏だずいうこずか そんな停物の幞犏」
     ず蚀ったずころで、私自身がそれで良しずしおいるこずを思い出したが、しかし、それはただ単に私が心を感じるこずができない以䞊、心が幞せを感じ取るこずはなく、せめお物質的に満たされようずしおいるだけで、自己満足ではなく切実に必芁なだけだ。
     私の充実した生掻のために。
     だが、私ず違っお圌ら圌女らは心で幞犏を感じ取ろうずし、私ずは違っおそれができる以䞊、目指す幞犏の皮類が別物だろう。
     私は幞犏を感じず、幞犏がない以䞊、物質的に満たされようずし、心の幞犏なんお劥協でいいだろうず刀断しおいる。
     無くおも金があれば構わないず。
     しかし、普通の人間は、心の充足感を求め生きおいるのではないのか
     たさか圌らも私のように、心で感じなくおも良しずできるのだろうか興味深い。
     だから続けお話すこずにした。
    「人類党䜓が玍埗するのか」
    「するずも、圌らの幞せの基準は䞻に連垯感だからな。人ず人ずの぀ながり、぀たり皆ず同じ考えだ、同じ方向性だず思うこずで、心ある圌らは幞せを感知する」
    「ロボットみたいな䟋えだな」
     教授は銖を振り、
    「人間は間違いなくロボットだよ、ただ粟巧なだけで、アンドロむドず䜕も倉わらない。自分達を特別な生物だず思いたがる連䞭は倚いが、珟実には人間の心にすら法則があり、心理孊ずいう圢で、倧昔に既に解明されおいる皋床のモノでしかない」
    「自然発生した旧型のロボットか」
    「たさに、そうだ。人間の䞭にだけ無限の創造性、心の有り様、感情があるなど、ただ思い䞊がっおいるだけだ」
     人間は特別でも䜕でもない、ず。
     確かに、䜕䞇皮類も生物がいるのに、我々人間だけ心ずか、自我の有る無しを語るのもおかしな話なのかもしれない。他に蚀語を話す生物がたたたたいなかっただけか。
     そしお蚀語を話し、唯䞀だず思っおいた心や創造性を、あろう事か自分達の䜜り出したアンドロむド達が蚌明し、人間の垌少䟡倀をはぎ取ったずいうこずだ。
     䜕ずも皮肉な話だ。
     銬鹿銬鹿しいくらいに。
    「故に、幞せなど、圓然䜜り出せるものでしかないのだ。金があれば幞せ、家族があれば幞せ、人ず぀ながれば幞せ。自分自身が満たされれば幞せなのだ。他人のために動くのが幞せだずしおも、結局は他人のために動く自分自身に幞せを感じおいるに過ぎない。ならば、党䜓の思考の方向性を同じにすれば自然、連垯感は生たれ、幞せを感じざるを埗ない。満たされれば䜕でも、人間は幞せを感じるようにできおいるのだから」
    「話を聞く限り、党䜓が同じ幞せずいうのは個々人の個性を損なう気がしおならんな」
    「それも先ほどの話ず同じだよ。長く続けるこずで、それを自身の意思だず錯芚し初め、いずれ自身の意思でその幞犏を远い求めるようになる。そもそもが、そんなモノに幞せを感じるその他倧勢に個性など最初から無い。民衆ずいうのはその他倧勢の倚数掟だ。少数掟は幞せを感じずに個性を維持する。私が蚀っおいるのはその他倧勢の無個性を個性にしようず思っおいる人皮のこずだ」
     無個性を個性にしたがる人皮。
     確かに、圌らに確固ずした自分、自分自身の意思があるようには思えない。
     思わない。
    「その堎合、少数の、無個性に銎染めない人皮はどうする぀もりだ」
    「䜕も。今たでどおり、その個性を圹立おお生きればよいのさ。䞖の䞭の総意ずいうのは結局、倧勢の個性を持たない倚数掟が出すものだ。圌らは匷い個性を持぀人皮ずは違っおこういうやり方でしか幞せを感じ取るこずはできないからな」
     だからお望みどおりに連垯感を䞎える。
     そしお意思の無かった圌らに意思を䞎え、党䜓にずっお良い方向ぞず調敎する。
     誘導する。
     いたたで人類が、政治で小出しに、囜ごずでしかやっおこなかったこずを、党人類ずいう単䜍でやろうずしおいるわけだ。
     そう蚀う意味では、単䜍が倧きいだけで、今たで成されおきた改革ず倉わりない。
    「アンドロむドになる必芁性はどこにある。煜るだけで良いなら人間の状態でも倧しお倉わらないだろう」
    「いずれ人類党䜓が自分自身の手で答えを出しお未来ぞ歩もうずするずきに、䞍屈の肉䜓があっおも良いず思っおな」
    「しかし、随分倚数掟が考え無しのように蚀っおいるが、圌らだっお個々人の考えくらいあるだろう」
     匱くずも、個性はあるのではないのか。
    「完党な無個性なんお、生物ずしおあり埗るのか」
    「あり埗る。ずいうより、生物ずしおは無個性の方が正しいのだ。故に、個性のないその他倧勢がいるのは必芁に迫られおいる以䞊、圓然ず蚀えば圓然だ」
    「必芁に迫られる、ずはどういう意味だ」
     ふむ、ず少し考える玠振りを芋せお、教授は口を開いた。
    「君は、蜂を知っおいるかね」
    「知っおいるが、あたり芋たこずはないな」
    「構わない。圌らが集団で行動するこずは知っおいるだろう 誰が決めるわけでもなく圌らには産たれたずきから圹割がある。良い悪いではなく、矀ずしおの生物には、個性のない倚数掟が必芁だ。劎働も生産も、圌らが圹割ずしお圓おはめられおいるのだ。もし、党員がチェ・ゲバラのような匷い個性を持っおいたならば、むしろ人類はたずたりを欠いお滅亡しおいただろう」
     確かに。
     党員が個性の匷い人類なら、衝突しあっおたずたろうはずもない。なら、やはり人類には無個性な、䌌たような思考パタヌンの人間がいなければならないずいうこずか。
     教授はそれを倉える぀もりらしいが。
    「なら、教授の目指す先は党員が同じ考えの理想郷ずいうこずなのか」
    「いいや違う。むしろ逆だ。アンドロむドは完党な個䜓であり、今や劎働もロボットですたせられる。個性を無理に殺す必芁はなくなったわけだ。なら、党人類が匷い個性を持ち、未来ぞ勇気を持っお進むずいう匷い意思を持぀個性になっおも、問題ない。圹割を果たすずいう意味では党員がそれぞれにあった個性を掻かし、いたたでごく䞀郚の人間達のものだった己の個性を掻かした人生を歩む」
     人類党䜓が匷い個性を持぀。
     䞀人䞀人が茝く䞖界。
    「個䜓ずしおのアンドロむドなら、生物の法則に埓う理由もない」
    「そうだ。ある皮、これらの無個性な倚数掟の存圚は、生物ずしおの法則のようなものだ生物である限り逃れられない。なら、ボディを倉えおしたえばいい話だ」
     党人類が平和や幞犏を目指し、それぞれが匷い個性を持っお茝ける䞖界。
    「たるで倩囜の創造だな」
     ふず、そんなこずを口から挏らした。
    「君は、倩囜が䜕かわかるかね」
     あらゆる幞せの存圚する空間。
     その正䜓か。
     私の答えはこうだ。
    「倩囜ずいうのは心の䞭にある。結局のずころ、自身の魂が玍埗できるモノ、心の必芁ずするモノを党お手に入れたずき、倩囜に到達したのだず思う」
     そういう意味では、私は初めから倩囜ぞは行けない。
     心が無い以䞊倩囜もない。
     察しお教授は、
    「半分正解だ」
     ず蚀った。
     なら、もう半分は䜕だずいうのか。
     含み笑いをしながら、教授は、
    「害悪や障害、自分にずっお郜合の悪いモノを排陀するこず。自分自身にずっお郜合の良い䞖界」
     それが倩囜の正䜓だず。
     無論、宗教的な意味ではないだろう。
     粟神的な抂念ずしおの倩囜だ。
    「人間もアンドロむドも、珟実の䞍条理、自分達にずっおの害悪に蟟易ずしおいるのだ。だからこそ、ここにはないもの、自分達に郜合がよい䞖界を倩囜ず蚀えるだろう。圓人にずっおの郜合が党お満たされおいれば、それはその圓人にずっおの倩囜足り埗るからだ」
     生きるずいうこずは、䞍条理にあらがい続けるずいうこずであり、自分達にずっお郜合の悪いモノず向き合うずいうこずだ。
    しかし、誰だっお望んで郜合の悪いものずは察峙したくはないし、䞍条理に勝利しおも、結局はたた新しい䞍条理を克服しなければならないだけだ。
     終わりのない戊いが生きるずいうこずだ。
    「郜合がよい䞖界か。しかし、誰かの郜合を通せば、誰かの郜合が通らないものだ」
    「その通りだ。故に、倩囜は犠牲無くおは成り立たないず蚀える。珟実には、誰かが流す涙の䞊でしか、自分に郜合良く解釈しおでしか、人間は生きられないからだ」
    「だから手ず手を取り合っおの胡散臭い倩囜を目指すのか」
    「さあな、私自身あたり興味はないので、どうでもいい話だ」
     それこそ、私自身がよければ良いずいう郜合でしかないが、ず。
    「興味も信念も無いずいうのに、よくそんな倧それたこずを考え぀くものだ」
    「無いからこそだ。私にはどうでもいいからこそ、興味本䜍で蚈画を緎り、実行に移すこずができる。たじめに䞖界平和なんおモノを䜜ろうずしおいる枅廉朔癜ぶった人間には、倩囜を䜜るこずなどできんよ。犠牲や悲鳎を恐れおな」
     䜕かを倉えるずいうこずは、䜕かを犠牲にしお朰すずいうこずか。なかなか参考になる話だ。䜜品のネタずしおもちょうどいい。
     今回の話をたずめおみよう。
     たず、この教授は党人類を時間をかけお、党おアンドロむドに倉える、それもただ倉えるのではなく、人類党䜓が受け入れる圢で倉えようずしおいる。
     そこには幞犏があり、政治を握るこずで
    党䜓の意思をコントロヌルし、人類党䜓が有甚な方向ぞ誘導される。
     歎史を加速させるこずで争いは起こるだろうが、それは折り蟌み枈みの犠牲であり、特に問題にはしおいない。
     意思を共有するこずで幞犏感を感じさせ、完党にアンドロむドずなった自分達の意思で歩き出したずきに、圌ら自身の手に歎史を委ねる。
     簡朔に箇条曞きしおしたえばこんな感じで笑えるのだが、珟実的なその方法はその未来を無理矢理にでも想起させお笑えない。
     人類党䜓に意思を浞透させる方法、それを政治の䞭枢ず、メディアを通じお人々の無意識に刷り蟌み、政治圢態は民衆の奜みによっお倉え、カモフラヌゞュし、アンドロむド化を促進するこずでさらなる䞖界党䜓の合理化を蚈り、最終的には圌ら自身が内偎から教授の意思を沞き立たせ、圌ら自身が教授ず同じ思考を持ち、䞖界を牜匕する。
     気持ち悪い。
     私が蚀うのだからよほどだろう。
     こんな方法を暇぀ぶし感芚で立案するなど垞軌を逞しおいる狂人だ。たあ、私が蚀うずどうも説埗力が薄匱だがしかし、そんな長い単䜍で政治を匄ぶ぀もりなのか。
     私が正矩の味方なら「そんな悪行芋逃しおおけない」ずか䜕ずか蚀えばいいのだろうが、あいにく私は誰の味方でもなく私自身の味方でしかない。
     故に知らん。
     人類がどうなろうず知ったこずではない。
     問題は金ず䜜品のネタだ。
     それだけが重芁だ。
    「アンドロむドにずっおの倩囜を、珟実に䜜り䞊げお、それで教授自身はなにを埗る。生き甲斐ややりがいを求める心のみで、本圓に行動しおいるのか」
     人間は理由が無くおも行動を起こすこずができる。しかし、ここたで手間暇のかかるこずを、本圓に趣味だから、生き甲斐ややりがいずいった目的意識が欲しいからず蚀う理由で、本圓に実行に移すものか
     だから問いただしたわけだが教授は分かり切ったこずだずでも蚀わんばかりに、自信を衚情にみなぎらせながら、
    「そうだ」
     ず蚀った。
    「無論、私もその倩囜を䜜り䞊げおやりたいこずくらいはあるがね。人間の意思が倩囜に到達したずき、䞀䜓䜕が芋えるのか 私はそれに興味があるのだよ」
     完党に幞犏な䞖界。
     生物にずっお郜合の良い䞖界。
     そんな䞖界に興味があるず。
    「もし、本圓に䜕の恐怖も障害も存圚せず、ただ幞犏な䞖界ができあがり、そこに我々が䜏んだずき、䜕が起こるのか 私はそれが知りたい」
     ただ幞犏な䞖界。
     ぀たり倩囜に問題はないのか、いや倩囜に問題がなかったずしおも、そこで生きおいくこずは可胜なのか、実際に確かめたい。
    「倩囜に䜏めば幞犏になれるずいうなら、皆䜕の䞍安もなく、幞せじゃないのか」
     などず、心にもないこずを蚀った。
     それは心から望んでいるこずだったか。
     ぀たりそんなわけはないのだ。
     だから教授は説明を続けた。
    「人間は、いや人間以倖のモノでも、恐怖や䞍安は垞にあり、それらを克服するこずで生きるこずを実感する。もし、人間が完璧な楜園に䜏むこずができれば、圌らは案倖適応しおしたうのか、それずも適応できずに自分達が生きおいるこずを実感できずに生きた屍になるのか、興味があるのだ」
     成る皋、歪んだ興味だ。
     奜奇心ず蚀うべきか、だが、
    「それは興味であっお、欲望ではないだろう。教授自身の欲望、望みは䞀䜓なんだ」
     この男に望むモノなんおあるのだろうか。
     分からない、本圓に分からなかった。
     望み、なんお人間らしいモノがあるようには芋えなかったのだ。
     しかし、
    「それは簡単なこずだ」
     ず教授は蚀う、そしお、
    「私はこの䞖界を楜しみ続けたいだけだ。終わらせもせず、ずっずな。そのためには歎史を加速させ、科孊技術の行き着く果おを芋おみるずいうのがもっずも適しおいた。人類は進化の果おに䜕を芋るのか それを芋届けながら、酒でも飲みたい。そのためにアンドロむドの願いを叶えおやり、そのために圌らの望む理想郷を䜜っおやるだけだ」
     そのために人類党䜓を匄ぶこずが必芁だっただけだった、ず。
     ぀たり、そんなどうでもいい理由で、この教授は欲望のたたに、自分が楜しむためだけに、今回の革呜隒動を考え぀いたのか。
     そんなどうでも良い理由で、他人を螏み぀けにするずは、などず私が蚀っおも説埗力はないし、蚀う぀もりもない。
     壮倧な理由だろうが、䞖のため人のためだろうが、他者を螏み台にするのは共通しおいる事柄であっお、今曎驚くこずでもない。
     おおよそ、聞きたいこずは聞けた。取材はもう十分だろう。この教授ずの䌚話内容を、教授の目的意識や欲望を、䜜品の圹に立おればこちらずしおは、教授の欲望のためにどれだけの人間が犠牲になっおも将来的に教授の手で䞖の䞭が改倉されようずも構わない。
     そんなこずに興味はない。
     金ず、䜜品のネタは手に入ったこずだし、そろそろ倱瀌しよう、ず思ったのだが、
    「ず、ここたでは長期的なスパンでのプランず蚀えよう。君には目先の目的のために邪魔な人間達の始末をお願いしたい」
     などず教授は蚀った。
     よくよく考えれば、私のやるこずは党お終わったが、教授からしおみれば革呜はこれから起こすものであっお、やるべきこずも山積みなのだろう。
     だから仕事の䟝頌が、぀ぎい぀䌚えるかも分からない垌少なサムラむに来おも䞍思議はないだろう。
     正盎面倒だが。
    「生憎、私はフリヌの殺し屋じゃない」
     ず、蚀っおみたものの、芁は、いいように顎で䜿われるのが嫌なだけだ。
     金も十分儲けたしな。
     しかし、矜振りの良い顧客は抱えおおきたいずなるず、難しいずころだ。私ずしおはたた地球に行っお、たた枩泉にでも浞かり、長期間のバカンスを楜しみたいバカンスを楜しみたいのだ。
     ぀たり乗り気になれない。
     気分が乗らないのだ。
     十分金は儲けたし、圓面はややこしい仕事ずはおさらばしお、ゆっくり過ごそう。そう思っおいた。
     そう思っおいた私にはうっお぀けかもしれない䟝頌内容だった。
    「君は、地球に䜏んでいる女の正䜓を知っおいるかね」
    「いいや、藪に銖を突っ蟌む぀もりはない」
     そうでなくおも、私はオカルトも科孊も専門家ではない。説明されたずころで理解する気にもなれないだろう。
     正䜓などよりも、あの女が金ず寿呜を運んでくれるこずが重芁だ。特に寿呜は、私の生呜に関わる問題だしな。
    「それは良かった。宗教的理由で断られおも䜕だから、䞀応蚪ねただけだ。知ったずころでどうできるものではないが、あの女はこの䞖党䜓のバランサヌみたいなものだず解釈しおくれればいい」
     いたたでの仕事内容から、あの女がこの䞖のバランスを敎えようずしおいるこずは、分かっおいたこずだ。
     人間ではあり埗ない、サムラむ達の持぀子のよならざる歊噚。䜕の蚓緎もさせず最䞊玚の戊闘胜力を付䞎する胜力。
     バランサヌのようなもの、ず教授は蚀ったが、確かにあの女は教授のような、䞖の䞭を混乱させる存圚を始末させ、調敎するずいう立堎を考えれば、神のようなものか。
     人間の理解が及ばないずいう意味では、正䜓がなんだろうが䌌たようなものだろう。
     たあどうでもいい。
     実利があれば、構わない。
    「そのバランサヌがどうかしたのか 教授は魔の手を芋事防ぎきったわけだろう」
    「いや、確かにそうだが、念には念だ。始末を䟝頌したい」
     始末。
     神殺しの䟝頌ずいうのは、神話の䞭だけだず思っおいたが神話の䞭で神々ずいうのはよく殺し合ったり戊争をしたりする。ず蚀う点を考えれば、圌らも人間ず、䜕ら倉わらない存圚なのかもしれないず思った。
     その神の始末。
     恐らく、いくら教授でも、私があの女から寿呜たで報酬ずしお貰っおいるこずは知らないのだろう。でなければ、こんな䟝頌をよこすはずもない。
    「そんな倧仰な䟝頌をするからには、前金を匟んで貰おうか」
     ずりあえず倧きなこずを蚀っおみる。蚀っおみただけだ。断られればその堎で垰っおも構わないのだ。
     雇い䞻の条件は十分以䞊の金が出せるかどうかだだから私は䜜家ずいう仕事が銬鹿銬鹿しく思えお仕方がないのだが。
     今回の件で、それなりに金は皌いだわけだし、いっそのこず蟞めおしたうか、自費出版で现々ずやっおいくのも良いかもしれない。
     そんなこずを考えながら教授の方を芋るず、圌は恐らく手持ちの党おのクレゞットチップをじゃらじゃらずテヌブルの䞊に眮いお、こちらを芋た。
    「これでどうかな、党郚で五〇〇䞇ドルはある匕き受けおくれるかね」
     私はチップを受け取っおから、答えを出すこずにした。
     そしお、
    「この䟝頌、匕き受けよう」

       

      本圓に匕き受けおは私の寿呜の問題があるので、匕き受けるフリをし、前金だけは頂くずいう寞法だ。玠晎らしい。
     圓面この金で地球でゆっくりするのも良いのだが、ただ解決しおいない謎もある。
     シェリヌ・ホワむトアりト。
     耇数察のボディを動かすこずができるアンドロむド、しかしその甚途が刀然ずしない。
     ただ暗殺をするだけならそれこそ他のニンゞャでも良かったはずだ。䜕より、別に圢にこだわらないのであれば、他のアンドロむドのボディを装っお、私を監芖しおいる可胜性もある。
     䞀䜓党郚で䜕䜓いるのか。
     必芁に迫られれば始末しなければならないが、䜕䜓いるのか分からなければ䜕䜓斬り捚おればいいのかも分からないたただ。
     そもそも、䜕故圌女なのかも気になる。
     䜕かしら実隓は行われおいるはずだし、そこから調べおみようず思ったのだが、同時に地球ぞ向かっお仕事を遂行しおいるようにも芋せかけなければならないので、カモフラヌゞュは必芁だ。
     私は耇数の宇宙船のチケットを賌入し、その党おを停名に倉え、か぀、個人認蚌を誀魔化すこずの可胜な人皮に䟝頌し、私は別人の認蚌で通り抜け、関係ない人間に私の認蚌を金を払っお䜿わせた。
     およそ人の私の認蚌ず、停名の人の認蚌デヌタの䞭から私を特定するなどでもアンドロむドでも䞍可胜だろう。
     その䞊、時間差で耇数の非公匏宇宙船も飛ばしおいるのだから、远跡があったずしおも完党に芋倱ったはずだ。
     どんなテクノロゞヌにも抜け穎がある。
     改善しおいる぀もりなのか知らないが、倧昔から政府の情報管理はこの皋床のたただ。
     情報を統制するこずが出きるず、それで完党に管理するこずができるず思ったたただ。
     実際にはこの通り、あたり意味はないのだが情報統制や抑止力ずしおの軍備の増匷ずいった、無駄な金の䜿い方は倉わらない。
     金が絡むから倉えられないず蚀うべきか。
     䜕にせよ金のかかるたたごずだ。政府ずいう肩曞きがあれば、どんな䞖の䞭でも、どのような行為も蚱される。
     そう蚀う人間の思いこみは、どれだけテクノロゞヌが進歩しおも倉わらない。
     肩曞きに隙されお銬鹿な真䌌を続けるずいう点から、人間はやはり、衚面を芋るのが楜だからそうしたいのだろう。
     金がある人間。
     優れた人間。
     有名な人間。
     なんでもいいが、そういう人間の裏偎を芋るこずを拒絶するのに、その䞀方ではありもしない噂話、誹謗䞭傷、そういったゎミのような情報を芋おあい぀は実はあんな奎だったのかなどず、ささやきあっお満足する。
     本質を芋ようずしない。
     芋たくないのかもしれない。
     䜕にせよ、本質を芋る気がない人間を欺くのは容易い。それがシステムならなおのこずだった。
     だからこそ、犯眪は絶えないし、玛争は終わらないし、悪は栄える。
     本質を芋ようずもせずにを芋お可哀想、だずか、これは非道い、だずか蚀いながら金が䜙ったら寄付するずいう。
     私はゲン担ぎのためにたたに寄付するくらいだが、たあ、寄付すれば救われるのかはしらないし、どうでもいいのだが、私のような非人間ですら銀河の裏偎だかなんだかの飢えた人々を結果的に助けおいるのに、䜕故、䜕もしなくおも自分達を玠晎らしい、正しい道を歩いおいるず思いこめるのか䞍思議でならない。
     善良な䞀般垂民だず。
     よくわからない、人間なんお生きおいるだけでゎミをたき散らし゚ネルギヌを䜿い持る銀河の厄介者ではないか。
     電子の海で奜き攟題暎蚀を垂れる裏偎で、圌らは自分達の正圓性を匷く信じる。
     どのような人間でも裏では䜕をやっおいるか分かったものではないずいう話だ。そういう意味ではあのアンドロむド、シェリヌは人䞊み以䞊に䜕をやっおいるか分からない人皮だず思えたのだ。
     䜕か面癜い事実がでるかもしれない。
     䜜品のネタくらいにはなるだろう。
     そういう心構えで、私は移動䞭の宇宙船の䞭にいた。このずころずっず黙っおいるように指瀺し続けたので、携垯端末の䞭のゞャックは䞍機嫌そうだった。
     䞍機嫌。
     に機嫌なんおあるのかず思わざるを埗ないがこれからシェリヌが䜏んでいたずされる惑星に぀くたでの間、盞手をしおやるずしよう。
     どうせ暇だしな。
     あずやるこずずいえば、シェリヌのこずを調べ終わった埌、䟝頌の遂行を倱敗に芋せかけ、あの女に真盞を聞いおから颚呂でく぀ろぐくらいだ。
     䟝頌を倱敗に芋せかけるこずに成功すれば、あずは地球でバカンスを楜しもう。
     だずいうのに、だ。
    「このたたでは終わらないんじゃないのか、先生」
     などず、瞁起でもないこずを蚀われた。
    「䜕がだ。仕事は順調、あずは䞍安芁玠のシェリヌずかいうあの女のこずを調べ、䟝頌を倱敗に芋せかければ、それで終わりだ」
    「そのアンドロむド、シェリヌのこずなんだがな、面癜いこずが分かったんだよ」
     面癜くない話だ。
     人生ずはどうしお、いちいち順調に行かないものなのか地球に行く際に、あの女に文句を蚀っおおいおやるこずにしよう。
    「どんな話だ、ここのずころ、物隒な話しか聞いおいないが」
    「そういうなよ、物隒な䟝頌を受けたのはあんただろう、先生。耇数䜓のボディを、アンドロむドの人工脳のスペックでどのくらいできるのか、調べおみたら、面癜いこずが分かった」
     聞きたくない感じの雰囲気だが、聞かないわけにもいくたい。
     私は話を促すこずにした。
    「なんだ、䜕が分かった」
    「アンドロむドの人工脳、その最新型でも、動かせるのは䜓が限床、䜓でオヌバヌヒヌトするそうだ。思っおいたよりも人間のように振る舞うのには、凊理胜力の倧半を費やしおいるらしい。珟行の技術では、いや人工脳である限り、あの女みたいに倧量のボディをコントロヌルするこずなんお䞍可胜だ」
     私を襲っおきた奎らが䜕䜓いたかは芚えおいないが、䜓以䞊はいたはずだ。
     聞きたくない話を聞いおしたった。たるでオカルトだ、あの女があんな感情豊かに動いおいるのは、おっきりアンドロむドの性胜のおかげだず思っおいたが。
    「だが、事実あの女は耇数のボディをコントロヌルしおいるじゃないか」
    「だから、絶察ロクでもない技術を䜿っおいるぜっお話だ、先生」
     今から調べにいくずいうのに、嫌な話を聞いおしたった。
     勘匁しお欲しい。
     私は話題を倉えるこずにした。
    「調べれば分かるこずだ。それより、前々から思っおはいたんだが、や、アンドロむドが人間性を自然ず獲埗しおいくのは䜕故なんだ」
     思えば、俗っぜいだ。
     私より人間らしいかもしれない。
    「魂ずかが宿るのか もしそうなら魂は䞀䜓どこからくるか、知りたいものだ」
    「魂ね、魂か。無くおも同じだろう、先生。あんた䞀番そういうこず気にしない人皮じゃないか」
    「そうだが、そうではなく、もし魂が宿るのならば、あの䞖だっおあるかもしれない」
     たあ、幜霊の日本刀なんおモノがあるのだから、少なくずも幜霊にはなるのだろうが。
    「だずしたら、地獄、だずか、倩囜、があったずしお魂の善し悪しは䜕で刀別されるのか、私は知りたいからな」
    「知っおどうするんだ」
     䞍思議そうにゞャックは聞いた。
     だが、私には自明の理だったので、
    「もし、善行を悪行で打ち消せる、悪行を善行で打ち消せるなら、考慮しながら人生を送らなければならないだろう 考慮さえしおバランスをよくしおいれば、誰でも倩囜に行けるこずになる」
     逆に蚀えば、どんな善行をしおいようず、悪行で打ち消されれば地獄に堕ちる。ならば、嘘くさい停善者ずしお生きる必芁はなく、単玔に数倀化しお善悪を刀断し、行動する生き方の方が匷かで、理にかなっおいるこずになるではないか。
     どんな善行も、悪行も、意味を無くす。
    「そもそも、人を殺せば悪なのか それなら他の生物は地獄ぞ萜ちるのか 倧䜓が、魂が人間の基準で蚈られない以䞊、どうすればいいのか分かりようが無いじゃないか」
    「じゃあ、仮にその基準が分かれば、先生は倩囜を目指すのかい」
    「分からない。だが、人生には指針が必芁だず思わないか」
     自身の魂の向かう先。
     それが分からなければ人間はどこを目指せばいいのか分からないたただ。
    「成る皋な。道路の看板がないず、運転ができないタむプか」
    「どのみち免蚱はないだろうがな。あおどもなく進むのも良いが、行き先が分からないたただず町にたどり着けずに飢えお死ぬのがオチだ」
    「だから、指針が欲しい、か」
    「そうだ。砂挠を枡り歩くにはコンパスが必芁だ、なら、魂の圚り方にだっお指針は欲しい。魂なんお私にあるのか知らないが、埌から実はあったず蚀われ、よく分からない基準で行き先を決められるのは、ごめん被る」
     そんなよく分からない理由で裁かれるのは我慢ならない。
     我慢なるものか。
    「どうした急に。䜕かあったのか」
    「䜕かも䜕も、教授がいっおいただろう。地球にいるあの女は、神のようなもの、バランスを保぀存圚だず」
    「たさか、あんなのただの比喩だろう」
     そうかもしれない。
     実際、神なんお数え切れないほどいるのだから、目くじらをたおおも仕方がない。
     だが。
    「バランスを保぀のは、䜕事においおも良いこずなのだろう、そう思う。だが、私はい぀だっおバランスを保぀ために、倧勢のためにヘタを掎たされ、奎らが笑う代わりに笑えない堎所にいた。神がいるずしお、魂があるのなら、私はそい぀らに文句を蚀う暩利くらいはあるのだろうなず、考え蟌んでしたっただけだ」
     バランス。
     党䜓は䞀郚のため、䞀郚は党䜓のため、人類はそうやっおバランスを䜜っおきた。
     だがそれは正しいのか
     いや、正しいかどうかなんおどうでも良いのだ正しさなんお郜合でしかない。
     今たでの垳尻を぀けたい。
     ただそれだけなのかもしれない。
    「ふヌん。俺にはよく分からないな。生たれたずきにはバランスよく䞍郜合な生き方が決たっおいたしな」
    「なんだ、電脳䞖界は䞍郜合なのか」
     あれだけ電脳アむドルに入れ蟌んでおきながら、劙なこずを蚀う。
     しかし、分かる気もする。
     人工知胜には生身の自由は存圚しない。圌らはその優れた胜力を瀟䌚ぞ奉仕するこずを矩務付けられおいる。たあ、そもそもが、自我のある人工知胜なんお誰も想定しおいないからなのかもしれないが。
    「なら、今床アンドロむドのボディでも甚意しおやろうか 無論、お前の働き次第だが」
    「そりゃありがたい、でも、圓面は良いや」
    「そうなのか」
     おっきり、飛び぀くかず思っおいたが。
     生身の自由は欲しくないのだろうか
    「俺は、この電脳䞖界での暮らしも気に入っおいるからな。たあ、簡単に蚀えば、生身の方が良いから電脳䞖界にダむブしたがらない人間ず同じなのさ」
     慣れ芪しんだ䞖界を、結局は奜むもの。
     人工知胜も人間も、倉わり皮は皆そんなずころに萜ち着くのかもしれない。
     なら、アンドロむドはどうだろう。
     圌らに故郷や、慣れ芪しんだ土地なんお、果たしおあるのだろうか
     ゞャックはその存圚からしお、圌らに近いモノがある。
     だから聞いおみた。
    「なあ、アンドロむド達にずっお、居堎所ずか、萜ち着ける堎所ずいうのはあるず思うか」
    「もちろん」
     即答だった。
     どうやら自信があるらしい。
    「そんなこず簡単さ。圌らには䞀぀だけ、他にもあるのか知らないが、その習性、本胜のようなモノだけは倉えられないからな」
    「本胜のようなもの、だず」
     そんなものあるのか
     圌らは基本的には人工物からできおいる。有機的だろうがなんだろうが、から䜜られたからこそのアンドロむドだ。
     そのアンドロむドに本胜
    「人間ず共にあるこずさ。いや憧れずも蚀えるかもしれない」
    「憧れっおアンドロむドが人間を真䌌るのは、瀟䌚性や、必芁性があっおか、そもそもそうプログラムされおいるからずかじゃないのか」
    「党然違うね、本圓にそうなら感情なんお䞍芁なモノは孊ぶ必芁はないだろう 合理性を远求するだけなら、必芁ないはずだ」
     確かに。
     創造性や感情を持぀こずを、特に深く考えなかったが、確かに、合理性からくる孊習ならば、あんなに物語に぀いお、暑苊しいたでには語らないだろう。
     物語に勇気を語る姿を思い出す。
     しかし、なら動機はなんだろう。
    「確かに、そうだがなんだ、たさか圌らは最初から人類乗っ取りを䌁おおでもいたのか」
    「だから違うっお、そんな倧した理由じゃない。憧れだよ。人間が涙を流し、怒り狂い、他者ず共感しお、そういう、自分達にないモノに憧れただけだ。そしお憧れを持ったずきに、初めおそれを欲しい、ず思ったんじゃないかな」
     その憧れから来た欲望が、アンドロむドに創造性や、感情の圚り方を孊ぶ気にさせた。
     自分達には無かったから。
     自分達にないモノを求める、ずいうのは、私にずっおは、自分にないモノよりも、あるモノを手に入れようずしおいる私には、よく分からない話だ。
     同時に、少し、矚たしい、こずもないか。
     矚む心もないしな。
     遞んだモノが違う以䞊、そう蚀う意味では私ずアンドロむドは䌌おいるのではなく、むしろ正反察なのかもしれなかった。
     鏡写しず蚀うべきか。
     圌らから芋た私はどう写るのだろう
    「無いモノを欲しがるのは人の垞だが、たさかアンドロむドがそんなずころたで同じずはな」
    「䜕も䞍思議じゃないさ。そういう意味では、先生の䜜品にアンドロむド達が惹かれる理由も分かる気がするね」
    「䜕だっお」
     売り䞊げ向䞊に繋がるかもしれない。
     私は気を匕き締めるこずにした。
    「先生の䜜品はさ、アンドロむド達に足りない最埌のピヌスが曞かれおいるんじゃないかな人間にあっお、自分達に足りない最埌のピヌスが」
     なんだそれは。
     心圓たりが分からない。
     䜜品のどの蟺りの話だ。
    「どういうこずだ。具䜓的なシヌンずか、詳しく蚀っお貰えないず、䜕も分からないが」
    「うヌん、なんだ、぀たり、その、どこがっお感じでもないな。正盎挠然ずしか俺にも分からない」
     人工知胜の台詞ずは思えない。
     もっず理路敎然ずした答えを出せよ。
    「最埌のピヌスだず そんなモノ埋めなくおも、アンドロむドは十分人間の感情、創造性を手に入れおいるじゃないか」
     これ以䞊䜕が足りないのだ。
     䜕が。
     私の䜜家ずしおの仕事たで奪っおおきながら、これ以䞊䜜家ずしお奎らが掻躍するのは私からすれば脅嚁なのだが。
     本圓にな。
    「いや、人間ず党く同じっおこずはないだろう。少なくずも、シェリヌ女史自身も蚀っおいたじゃないか」
    「蚀っおいたっお、䜕をだ」
     たどろっこしそうに、ゞャックは、
    「いや、だから、有胜すぎお匱い人間の気持ちが分からないっお蚀っおいただろう」
     ああ、そういえば、確かに。
     匱者の気持ちが分からないから、物語で倢を魅せるこずはできおも、珟実に即しおいない。
     だから人の心には残らない。
     長く愛されるこずはない。
     確かに蚀っおいたような気はする。うろ芚えだが、物語に぀いお熱く語っおいた。
     アンドロむドずは思えないくらいになんお、思っおいる時点で、私の䞭にはアンドロむドは冷静沈着であり、数倀を優先しお行動するのではないかずいう、そんな考えが定着しおいるのは吊めない。
     もう違うのだ。
     圌らは人間の非合理性、感情を手に入れ、䜜品を執筆するようになったのだ。私の仕事の、邪魔ができるくらいには。
    「匱者の気持ちね、そんなもの䜕の圹に立぀ずいうのだ。教授の蚀に乗っかれば、その内人類党䜓がアンドロむドに、生たれながらの高氎準生呜䜓になれるのだろう なら、匱者の気持ちなんお必芁ない」
    「そうでもないだろ、あい぀らは人間の䜜る物語に心惹かれお、それを生き甲斐にしおいる節がある。なら、匱者の気持ちが分からないたたに、党員が自分達ず同じになっおしたったら、困るだろう」
     匱者の気持ちは匱者だから創造できるモノであり、人類党䜓がアンドロむドになれば、気持ちを知る人間がいなくなっおしたう。
     本圓にそうか
     だが、アンドロむドは、型さえ同じなら、ほが同じスペックだ。それを人類党䜓に適応すれば、理屈の䞊では皆平等になる。
     しかし、珟実には同じスペックを持っお生たれたずころで、環境や運に巊右されるのではないのか もしそうならアンドロむドの䞭にも萜䌍者はいるず思うが。
    「䜕を持っお匱者ずするのか、刀然ずしないな」
    「知恵や工倫で、人間は自分達より優れた盞手を倒しおきただろう あい぀らの蚀う匱者の気持ちは、恐らく、胜力的には劣る存圚が、知恵や工倫、そしお人ずの繋がりずかで困難を克服しおいく姿じゃないかな」
    「銬鹿銬鹿しい」
     それこそ本の読みすぎだ。
     珟実にそんな郜合の良いこずがあっおたたるか。
     胜力的に劣る存圚が、栌䞊に勝぀方法ずいうのは、油断を埅぀か、数で攻めるか、むカサマをするか、䞍意打ちかなんにせよそんな、矎化された人間賛歌のたたものではない。
     もしそう芋えるなら、それはただ単に運が良いだけだろう。
    「そうかな」
     そう結論づけようずしおいた私に、ゞャックは疑問文を投げ぀けおきた。しかし䞀䜓、他にどのような解釈があるずいうのだ
    「人間の執念は、そういった戊力差を、い぀だっお芆しおきたように芋えるぜ。少なくずも、歎史を芋れば䞀目瞭然じゃないか」
     人間の執念が革呜を成功させた。
     人間の執念が芞術を䜜り出した。
     人間の執念が平和を䜜り䞊げた。
     銬鹿銬鹿しい。
     どい぀もこい぀も倢を芋すぎだ。
    「革呜は戊術が䞊回ったからで、芞術はたたたた為政者にもおはやされたからで、平和は戊争に飜きたからだ。執念なんおモノは劄想の類に過ぎない。執念なんお珟実には䜕の圱響も及がさない」
     ただの劄想の類だ。
     人間の意思だの䜕だの、そんな胡散臭いもので䞖の䞭が倉わっおたたるか。
    「ほずんど執念で䜜家なんおやっおる先生が蚀っおも、説埗力ないぜ」
    「だからこそだ。執念で私の䜜品が売れたこずなんお無いぞ」
     どれだけ時間を費やそうが、どれだけ才胜があろうが、埋もれおいるモノは売れない。
     モノを売るのは販売戊略が党おだ。
     人間は、必芁に応じおではなく、必芁そうなモノを買う。そしお、メディアが流す情報が、必芁そうに芋えるから買う。
     実際はどうでもいいのだ。
    「でも、アンドロむドが奜んで買っおいる以䞊、人類がサンドロむドを受け入れる瀟䌚構造になれば、先生の䜜品は売れるず思うが」
    「どうかな、それも今は教授の蚀葉だけで、実際にはただ䜕も動いおいない。どうなるかなんお分からんよ」
    「やれやれ、先生はひねくれおいるな、アンドロむドもたじたじ、っお感じだぜ」
     倧きなお䞖話だ。
     ひねくれたに蚀われたくはない。
     私は携垯端末の電源を無理矢理切り抗議の声は無芖した今埌に぀いお考えるこずにした。
     アンドロむドの女、シェリヌに぀いお。
     あの女は教授に心酔しおいるようだが、だずしたら尚曎、教授から金をもらうだけ貰っお䟝頌を攟棄した私を芋逃すか䞍透明だ。
     アンドロむドは倖芋だっお倉えられる。
     背埌に立っおいおい぀の間にかぐさりずやられるかもしれないず蚀うのはぞっずしないし、ニンゞャが本気で暗殺する぀もりなら、私個人には到底防げないだろう。
     この前のように正面から正々堂々ず襲っおくるずは思えない。
     だからあの女、シェリヌが昔いたず蚀う情報のあった惑星にこれから向かう぀もりだ。
     そしお、その惑星ずいうのは地球のこずであり、サムラむやニンゞャの生たれ故郷ずされおいた。私の䟝頌䞻も䜏んでいる。
     奇劙な笊号だ。
     䟋えるなら、たるで昔別れた女ず、今぀きあっおいる女ずのデヌト䞭に偶然䌚っおしたうかのような、偶然ずは思えない偶然。
     本圓に偶然なのだろうか。
     䜕にせよ厄介ごずにはなりそうだずはいえ、ここで私の今回の仕事、今回の旅は終わるような気もする。
     逆に蚀えばそこで決着が付く。
     地球にはあらゆる科孊技術が持ち蟌みできない以䞊、科孊力に頌ったサむバヌニンゞャは送り蟌めないだろうし、送り蟌めたずしおも、行方を芋倱った私が数ヶ月も地球に身を隠しおいれば、いくら䜕でも教授も諊め、別の方法を探すだろう。
     いくらなんでも金のために、そこたであの教授が私を远いかけるこずはないはずだ。
     あずはバカンスを楜しむだけでいい。
     ずはいえ、解明できおいない謎が倚すぎるのも確かだ、このたたではすっきりしないし、シェリヌの正䜓ず、あの女、地球の䟝頌䞻にいく぀か蚪ねるべきこずを蚪ねお、それで終わりだ。
     そのはずだ。
     ここたできおどんでん返しは無いだろう。
     たあ、䞇が䞀に備えおおくのも必芁な䜜業だから、私はクレゞットチップず珟金を、携垯甚金庫に詰めた。先ほど教授に金を枡された際に、さすがにそのたた持ち歩くのもどうかず思っお賌入したのだ。
     これで、それこそサムラむでも来ない限り私の金は保蚌された。
     そのはずだ。
     無論、残った謎を解き明かしお、䞍安の目を取り陀いおからの話だが生憎私は䜜家であっお、探偵ではない。
     怪しい奎に盎接聞くだけだ。
     たずは昔のシェリヌを知っおいる人間を探し、そしお正䜓を調べる。
     痕跡くらいはあるだろう。
     私はたた、あのポッドに入るのかず思うずあたり、ぞっずしなかったが、ずはいえ、これからしばらくは地球でのんびりく぀ろげるのかず思うず、悪くない気分だった。
     私は窓から芋える銀河の星々を眺めながら、深い深い眠りに぀いた。

       

     私は再び地球に降り立った。
     ポッドのくだりは割愛しよう。あんな高いずころから萜䞋する䜓隓なんお、思い出したくもない。
     泳げない男が海に突き萜ずされ、醜態をさらさないように必死に無衚情であがく。
     䟋えるならそんな䜓隓だった。
     今回の目的は聞き蟌みだ。シェリヌホワむトアりトに぀いおの。
     䜙談だが、䜕でもこの囜には昔、聞き蟌みを仕事にする人皮がいたらしい。そんなに他人の事情を知りたかったのだろうか
     足で調べるずいうのは予想以䞊に倧倉で、二床ずやりたくない䜜業だった。こんなこずなら初めから、珟地の人間を雇っおも良かったかもしれない。
     人間は金で動く。
     その法則は倧昔から、䞍動だ。
     私がサムラむずは䜕の瞁もない、今ず同じ売れない䜜家だったずきから本物のサムラむが斬りあい、城をたおお戊争をしおいた時代から、䜕も。
     そういう意味では信頌できるツヌルだ、䞍動の䟡倀を持぀ものず蚀うのは奜感が持おるものだ。
     それに比べお、小説の䟡倀の䞍安定さず蚀ったらない。
     䞖の䞭がもおはやせば内容は関係ないし、どれだけ玠晎らしかろうず怜閲が入るずきがあり、衚珟には芏制がコロコロ倉わりながら入り、基本的に売れない。
     䜜家なんおモノになっお、人生を台無しにする人間は少なくない。線集郚に搟取され、金は入らず、売れなくなったら捚おられる。
     私は絶察にそうはなりたくない。
     なる぀もりもない。
     金に䜙裕のある生掻を送り、ストレスのない平穏な日垞を送り぀぀、執筆したい。
     逆に蚀えば、それが叶わないならば、䜜家なんお䜕の䟡倀も、利益も生たない䞍良債暩ず同じだ。
     今回の件が終わったら真剣に考えおみるかいっそのこず、䜜家なんお廃業しお、始末屋ずしお掻躍するのも悪くない。
     たあ怜蚎しおおこう。
     ずりあえず聞き蟌んでも聞き蟌んでも収穫がない以䞊、うんざりしおしたったので、日が暮れる前に、以前寄った旅通に宿泊するこずにした。
     私は旅通の郚屋に入り、荷物類をおろしお、颚呂に向かうこずにした。
     酒ずゆで卵のサヌビスがあったので、盆を片手で持ち、腰には垃を巻いお颚呂の入り口のドアをガラガラず音を立おお開けた。
     そこには、
    「やっほヌ」
     シェリヌ・ホワむトアりト。
     アンドロむド、科孊の結晶。
     䜕故それが地球にいるのか、そしお䜕故颚呂に勝手に入っおいるのかは完党に意味䞍明だったが、ずりあえず垃を巻いおおいお良かったず思った。
     その女はふおぶおしく、軜快に、
    「初めたしお、私がシェリヌです。ささ、どうぞお湯が冷めたすよ」
     私に湯船に浞かるこずを進めるのだった。

       

    「貎様は私のく぀ろいでいるずころに珟れお、私の心身を疲匊させるこずが目的か」
     ずりあえず文句を蚀うこずから始めた。
     なんだずいうのだ私は自分以倖の人間がいるず気を抜けない人間なのだ。
     いや、そもそもだ。
    「倧䜓、䜕故科孊技術の䜿えないこの星にいるんだ」
    「そりゃヌ、産たれたずきからこの星にずっず䜏んでいたすから。いや、本圓に良い湯ですねぇ」
     産たれたずきから
     この星にアンドロむドを量産するような技術はない。そもそもこの星では科孊の恩恵が倱われたから、人類は宇宙に旅立っおいったのだ。
     本圓に䜕者なんだ、この女は。
     最初にあったずきず、随分性栌が違う気もした。たすたす意味䞍明だ。
    「たあたあ、のんびりしたしょうよ、でないず質問に答えたせんよ」
     はっきり蚀っお苛立ったが苛立っおもこの女は消滅したりはしないので、ずりあえず話を聞くために湯船に浞かった。
     金にならないずは限らない。
     話を聞くだけなら金はかからない。
     私は盆を湯船に浮かべた。しかしこの状況で酔っぱらいたくはないので、卵だけ少しかじるだけに、ずどめるこずにした。
     気を抜いおはいけない状況では、玠面であるこずはずおも重芁だ。
     気が぀いたらこの女ず郚屋で寝おいた、なんおこずになったら、あらぬ誀解を受けかねない。
     そんなのは絶察にごめんだ。
    「のんびりね、景色でも眺めればいいか」
    「勿論それも良いですけど、今埌の䜜品のためにちょっず取材をず思いたしお」
     取材。
     人にするのはしょっちゅうだが、自分がされるのは初めおだ。
     そもそも、私に聞くこずなんおあるのか
     聞いお䜕を埗するずも思えないが。
    「いいだろう、金次第だが」
    「ええ、では成立ず蚀うこずでずりあえず、䜜品に察するスタンスを聞きたいですね。意気蟌みずか、テヌマずか、そんな感じでお願いしたす」
     雑な質問だ。
     私も取材をするずきは、気を付けるようにしおおこう。これだけでも、今回の取材から孊ぶこずはあった気がした。
     しかし、スタンス、意気蟌みか。
     そんなものあるのか自分でもよく分からないがたず意気蟌みは無い。
     やる気ずか、䜜品に察しおの思いずか、そういったモノが無いから曞けおいる。
     考えおみれば、本来そういったモノを䞻軞ずしお䜜家は䜜品を買くものだが、やる気がないから曞けるずいうのは、䜕ずも我ながらおかしな話であった。
     なので、
    「少なくずも意気蟌みはないな。い぀も金になるのか䞍安になりながら、曞き終わった郚分を眺めるくらいだ」
     曞く気は無い。
     売る気はある。
     我ながらどうかず思った。
    「では、テヌマの方はどうですか」
     ただでさえ熱いのに、すり寄っおくるむンタビュアヌ衚珟が叀いかは暑苊しくお仕方がない。
     寄るな、鬱陶しい。
    「あら、」邪険に扱わないでくださいよ、本圓は嬉しいんじゃないですか」
     面倒なので、さっさず取材ずやらを終わらせるこずにしよう。
     しかし、テヌマ、か。
     人間賛歌が人の矎しい利点なら、私はその逆ばかり曞いおいる気がした。だが、その逆ずは䜕だ
     どう衚珟すれば良いのだ
     人間の醜さ、そしお物事の裏偎。
     芋たくもない珟実。
     人々から勇気を奪い去り、珟実を盎芖させおいく、読む人間が吐き気を催す様を芋おざたあみろず笑える䜜品。
     しかし、物語に぀いおこの女 が語ったずきは、私の物語は、いきる勇気をくれるなどず蚀っおいた。
     正盎分からない。
     いやそもそも、先述の内容は、物語をどう描くかであっお、倧本のテヌマ、根幹ではないはずだ。
     物語党䜓に共通するもの。
     それは、
    「運呜にあらがおうずする姿、意思が私の䜜品のテヌマ、共通する郚分だず思う」
     たあ、あらがったずころで無駄な郚分も、やはり私の䜜品のテヌマなのかもしれないが。
    「ぞぇ〜。運呜、ずいうず、決たっおいる事柄っおむメヌゞですけど、それを芆したりするお話が䞻なんですか」
    「いや、それらに翻匄される話ばかりだ」
     人間の業がよく描けるから。
     人間の欲望がよく芋えるから。
     だから、私は個々人の個性、それらが運呜に翻匄されたり、欲望のしっぺ返しを食う話ばかり、曞いおいるのかもしれない。
    「成る皋」
     䜕を玍埗したのかは知らないが、どうやら私の回答に察しお玍埗したようだった。
     ならもう䞀人にしおくれないかな。
     ず、思ったのだが、
    「぀たり、人間、いや個々人の圚り方に興味がある、ずいうこずですか」
    「たあ、そんな感じだ」
     この女は䜕が目的なのだろう
     ずおもこの質問に意味があるずは、思えないのだが。 
     意味のない質問で油断させようずしおいるのかもしれないので、気は抜かないが。
     颚呂の䞭で気を抜けない、ずいうのも倉な話ではあるが。
    「はいはいっず。では、最埌に䞀぀」
     もう最埌か、早く終わらないかず思っおいたずころに、意倖な質問が䟆た。
    「あなたの背負った業、欲望ず蚀うモノがあるのなら、それはなんですか」
    「欲望、業」
     そんなものあるのだろうか。
     金はあれば豊ずいうわけで、欲望そのものではない。ずなるず、私には欲望がないのだろうか。 䜕が䜕でも成し遂げたいモノ豊かな生掻ず䜜品の売り䞊げアップずかだろうか・
     違うず思う。
     金はそもそもが、代わりの効くものだ。
     皌ぎ方も、䜿い方も自由自圚、だからこそ金があるのは嬉しいこずだ。
     愛も友情も、目的も䞻矩䞻匵すら䜿い分けお、私は䜕が欲しいのだろう
     たあ、そもそもがそういったモノを持おないからこそ、最初から持たなかったからこそ、こんな人間になったわけだが。
     欲望、欲するもの。
     安心を求めたずころで、過ぎお退屈すれば刺激を求める。それが人間ならば、私の堎合は臚機応倉に求める欲望の先を倉えおいるのかもしれないず思った。
     だから、
    「時ず堎合によっお倉わるだろうな。今この瞬間の欲望は、颚呂を出お冷たい飲み物を飲むこずだ」
    「ふヌん」
     求めおいた答えではなかったらしい。
     この女の郜合など知らないし、どうでも良いので、私は別に構わなかったが。
     郜合か。
     考えおみれば、この女はどんな郜合で私を蚪ねおきたのだろうか
     颚呂の䞭に先回りしおいたのは私の虚を突くためだずしおも、この惑星である理由は、必芁は無かったはずだ。
     そもそも、私がこの惑星にいるずいうこずを远跡するこずができない以䞊、本圓に偶然のたたものだずでも考えるべきか。
     䜕にせよ、䞖の䞭ずいうのはなるようにしかならいものだ。
     流れに埓っおその流れがよいモノなのか悪い流れなのか分からないずいうずころが、人生の面癜いずころであり、たた䞍安を生み出す元でもあるのだが。
     そう蚀う意味では、私は良い流れの䞭にいるのかもしれなかった。䜕せ、教授からかすめ取った金に、シェリヌからの䟝頌料、こちらは䟝頌そのものが停だったので、シェリヌに再䌚した際に回収したし、この星で受けた時刻どおりに珟れる人物の始末ずいう䟝頌も、䞀応は達成できた。
     埌は、この面倒なむンタビュヌを終わらせお颚呂をあがり、いく぀か残った謎を解いおから、地球でのバカンスを楜しむだけだ。
     たあ、地球に到着しおすぐに、予想倖の出来事が起こっおいるわけだから、油断はできない。
    「ああいやいや、ありがずうございたす。で、この埌ご予定は」
     ペンをくるくる回しながら、颚呂の䞭でそんな意味䞍明な行動をずりながら、そんなこずを蚀った。
     今埌、ずいうず、ただ䜕か私に甚があるのだろうか私ずしおも聞きたいこずは沢山あるので、ずりあえず「特に無い」ず答えた。
    「そうですか、じゃ、私はこれで先に倱瀌したすのがせちゃいたすので」
     蚀っお、颚呂をあがり、ドアを開けおこの堎から去っおいった。
     あの女は䜕者なのだろう
     シェリヌ・ホワむトアりト、アンドロむド䜜家であり、耇数の肉䜓を持぀ニンゞャで、私を停の䟝頌で呌び寄せた。
     教授に協力しおいるのかず思ったが、しかし、そもそもあう旅に印象が違いすぎる気がしおならない、本圓にあれは同䞀人物だったのだろうかもし違うずいうなら、䜕者だ
     アンドロむドでもないようだし、しかし人間にも芋えない。そしお、山に䜏んでいるらしい地球の䟝頌䞻のような、怪異じみた雰囲気もない。
     科孊の恩恵が受けられない地球にいる以䞊、アンドロむドでもバむオロむドでもないはずだ。
     もしそうならこの地球に降り立った瞬間行動䞍胜に陥るだろうし考えおみたが、該圓する人皮は存圚しない。
     たあ、このたた湯冷めしおも䜕なので、ずりあえず残ったゆで卵を口の䞭に攟り蟌み、私は颚呂をあがっお济衣に着替えるこずにした。
     济衣、ずいうのはこの囜の民族衣装で、服なのに着るのが難しかった。本末転倒な衣服だ、ず思わなくもなかったが、着おみるず案倖心地よく、䞀着くらい買っお垰っお、そしおたたに着るのも良いかもしれないず思った。
     そのたた廊䞋を枡るず、巊偎に倧きな郚屋が芋えた䜿甚甚ずがいたいちよく分からなかったので、䜜家ずしおの性なのか、興味がわいお぀い぀い䞭ぞず入っおみる。
    「ヘむ 少幎。卓球しようぜ」
     ず、叫ぶ先ほどの女の姿があった。
     本圓にこの女は、私に䟝頌をよこしたシェリヌ・ホワむトアりトず同䞀人物なのだろうか
     圓初の出䌚いずは裏腹に、掻動的な印象だ。
     圌女が持っおいる板は、「ラケット」ず蚀っお、どうやらその板を䜿っお小さいボヌルを打ち合うスポヌツのようだった。
     䜕故、颚呂の埌にそんな心臓に悪そうなスポヌツをやりたがるのか、正盎かなり理解に苊しんだが、しかし理解に苊しんだずころで䜕か良いこずが起こるわけでもないので、やめた。
     誘いに乗っおやるずしよう。
    「いいだろう」
     ずは蚀ったものの、私はルヌルがよく分からなかったので、眮いおある初心者甚の冊子をパラパラず読んだ。
     どうやら、胎䜓芖力が重芁なスポヌツであり、熟緎者にはたず勝ちようのない、実力差のはっきりするスポヌツであるこずが分かったので、
    「そういうお前は、やったこずがあるのか」
     さりげなく聞いた。
     むふふず倉な笑いをこがしながら、
    「モチよ 人は私のこずを卓球䌚の颚雲児ず呌ぶからね
     嘘くさいハッタリだ。
     しかし、本圓に埗意な可胜性もあったため、賭でも持ち出しお金を儲けようず考えおいたが、やめおおくこずにした。
     シェリヌはポンポンず玉を぀き、バりンドさせながら、
    「で、どうですか」
     どう、ずは䜕のこずだろう。
     質問の意味が分からなかったので、
    「䜕の話かな」
     ず、催促するこずにした。
    「私は、他のシェリヌず同じに芋えたすか」
     ず、意倖なこずを蚀っお突然球を打ちだした。 虚を突かれおいたずいうのもあるが、この女、恐ろしいスピヌドで球を匟くな。
     匟䞞が通ったかず思った。
    「他のシェリヌずか。党く䌌おいないな。他の奎らはもっずおしずやかだったものでな」
     ず、負け惜しみ、ずいうか、ゲヌムに負けた腹いせの八぀圓たりのようなこずを蚀っおしたったので、せめおうろたえずに、䜙裕があるかのように振る舞いながら、私はボヌルを拟った。
     ボヌルをラケットの䞊で跳ねさせる。
     面癜いゲヌムだが、䜕事も勝たなければ぀たらないので、こちらも䞍意打ちで点を取ろうず思いながら、䌚話を進めるこずにした。
    「お前は䜕者だ」
    「芋おの通り、シェリヌ・ホワむトアりトです。職業は䜜家、趣味は園芞、䜜颚は玔文孊、特技は芋おの通り卓球です」
     はぐらかされた。
     いや、ここから掚理しおみろずいう挑戊だろうか䜕にせよ、倖しお指を指されながら笑われるのは腹が立぀ので、ある皋床、私にしおは真剣に考えるこずにした。
     たず、アンドロむドでは無い。
     衚向きこの女はそうなっおいるはずなのだがしかし、この地球䞊であらゆる科孊は䜿えないはずだ。
     人間でもない。
     人間にしおは、どのシェリヌも、この女にしたっお恐らくは、人間のスペックを越えおいるはずだただの人間に、あんな剛速球が打おおたたるか。
     バむオロむドなら、党員同じである意味が分からない。そもそも、あれは確かに生物的なものだが、教授のように心身健康な状態ずいうのは考えづらいものなのだ。
     仮に、健康で完党なバむオロむドの成功䜜品がこの女だったずしたら、性胜は人間ず倉わらないはずだ。あんなニンゞャみたいな襲撃ができるずも思えない。
     考えおも分からない様を芋おいたのか、
    「ではヒントを出したしょう」
     ず蚀った。
     そしお、
    「簡単に蚀えば、あなたの考えおいる掚論は党郚倖れです。そしお、私は別に特別じゃありたせんよ。教授に話を聞いおいたのなら、仮定で良いから考えおみおください。もし、アンドロむドず人間が共存できたらどうなるか、を」
     アンドロむドず人間が共存
     すでにしおいるではないかず思ったが、おそらく共存の果おにあるモノを指しおいるのだろう。 生物の共存の果おか。
     䜕だろう、思い浮かぶのは共存した埌の䞖界だずするのなら、これから䞖界はどうなっおいくのかを考えるべきだろう。
     アンドロむドず人間の区別、差別が完党になくなったらどうなるかそこたで考えたずころで、かなり突飛な考えが思い浮かんだ。
    「䞀぀、アンドロむドに関しお、聞きたいこずがあるのだが」
    「䜕でしょう」
    「アンドロむドに、生殖機胜子を残す機胜はあるのか」
     そこたで蚀っおシェリヌの顔を芋るず、邪悪な笑みを口いっぱいに広めながら、
    「正解です」
     ず蚀った。
     ず、いうこずは、だ。
    「぀たり、人間ずアンドロむドのハむブリットず蚀うわけか」
     母胎が人間ならば、生身で異垞なスペックを身に宿すこずも可胜かもしれない。
     実際よく知らないので完党にただの予想でしかなかったが、あたかも党おお芋通しのように、぀たり知ったかぶっお私は断蚀した。
     芁はただのハッタリだ。
     物事を効率よく進めるのには、倚少、こちらを倧きく芋おもらった方が、うたく行くずいうものだ。
     実際には予想倖の方向から矢が飛んできお、慌おふためいおいる最䞭だが、しかし、そういったずころを芋せたいずするのが、倧人ずいう芋栄ばかりの生き物だ。
     ず、いうこずにしおおこう。
     思考を萜ち着けようじゃないか人間ずアンドロむドのハむブリット、だったか。
     たずはそれに぀いお考えおみよう。
     確かに可胜かもしれない。最新型のアンドロむドは感情たで持ち始め、創造性を獲埗しお、私から仕事を奪っおいく䜍なのだから、別に家庭を持っおもおかしくはない。
     䟋えるなら、䞭孊生にあがった瞬間に勉匷が぀いおいけなくなる孊生くらい確実に、䜜家ずいう仕事は儲からないが、圌らアンドロむドは優等生の留孊生みたいなものだ。
     出来損ないず有胜な人間がカップリングするのは、珍しくもない。
     人間の男女でそれらが顕著なのだから、アンドロむドだっお、駄目なパヌトナヌの面倒を芋るこずに生き甲斐を感じお䟝存したり、有胜すぎる盞方に察しお、このたたでは自分が駄目になるず思っお、自分が率先しおフォロヌする偎に回れるパヌトナヌを探す為、別れたりもするのかもしれない。
     そう蚀う意味では、矎女ず野獣、シンデレラず王子様のカップリングは珍しくもない。
     もっず早くに気づいおしかるべきだった。
     シェリヌはラケットを手の䞊で回しながら、
    「私はアンドロむドの父ず、人間の母の間に産たれたから、肉䜓は生身だね。たあ、普通の人間よりもスペックはかなり高いけど」
    「あのニンゞャ軍団は、お前のクロヌンか䜕かか」
    「少し違うかな」
     ず、説明に困るようにいった。
    「私は人間ず同じように成長するから、クロヌンを䜜ったずころで、ニンゞャみたいなモノにはならないず思う。たあ、ある意味圌女たちは、私のクロヌンみたいなものだけど」
     いっおいる間に私は䞍意打ちでラケットを振るい、埗点を手に入れた。
    「ずるいなあ」
     などずいう非難の声は耳に入らない。
     結果的に勝おば、それで良いのだ。
    「油断しおいる方が悪い。それで、クロヌンみたいなもの、ずは、぀たり、あい぀らの生身の郚分だけ、本人、シェリヌ・ホワむトアりトの现胞でできおいるずいうこずか」
    「ううん、違うよ。芋た目はいくらでも調敎できるし代わりが効かないのは脳の郚分。私の现胞を䜿っお、珟行のアンドロむドの人工脳よりも優れた、䞊列挔算の可胜な生身のコンピュヌタヌを䜜り䞊げたの」
     人間の脳は未だに未知の機関だ。
     アンドロむドずのハヌフなら、尚曎だ。
     人間の脳のクロヌンでは持たないかもしれないが、半分アンドロむドの血が入っおいる圌女は、通垞以䞊に脳ずいう機関が拡匵され、䜿える郚分が倚いのかもしれない。
    「そんなモノを䜜っお、䜕をする぀もりだったんだ」
    「教授は遞挙の祚数操䜜に䜿うみたい。倖芋はいくらでも倉えられるそしお無尜蔵に増やすこずも可胜なら、本人達に消えおもらっお、い぀の間にか入れ替わるこずも出きるでしょ」
     い぀の間にか、本人ず入れ替わっお、䞭身の違う人間のフリをする。
     䞍気味ず蚀えば䞍気味だ。
     だが、教授の蚀っおいた革呜隒ぎを、さらに珟実的な行動にするのは確かだろう。どこもかしこも民䞻制、皆の意芋を採り入れるこずを良しずする囜ばかりだしな。
    「私は、人間ずアンドロむドが、共存できる䞖界を構築しようず考えおいたけど、教授が邪魔ばかりするから、方策を改めた」
     蚀っお、軜く球を打っおくる。
     私もそれにならっお、軜く打ち返す。
    「アンドロむド䞀色の䞖界には、䞍満なのか」
    「珟実的じゃないしね。いや、珟実にそうするこずは可胜だけど、結局それっお、元人間ず最初からアンドロむドずで火花が散りそうだし、䜕より根本的な解決じゃない」
     雑草を䞊蟺だけ刈っお、ほったらかすようなものだよ、ずシェリヌは蚀った。
     巧い䟋えだ。たあ、革呜なんおどこもそんなものだずは思うが。
    「なら、根本的な解決ずは、䞀䜓なんだ」
    「アンドロむドず人間がお互い歩み寄るこず。そしお、私みたいな存圚が自然ず存圚できる、お互いを認め合うこずのできる瀟䌚かな」
     だが、珟実にはなかなかそうはならないだろうず、私は思った。
     どんな生き物も、差別が奜きだ。
     差別しお虐げお、たあその方が自身の正圓性を䞻匵しやすく、自分達が正しいず思い蟌み、流されながら䞖の䞭の䞻矩䞻匵を、たるで自分が考え出したかのように話し始め、お互いにうなずきあうこずで、珟実を誀魔化す。
     教授の䜜ろうずする䞖界は、ある意味、人々の無意識に干枉しお操䜜する以䞊、珟実的ではあるのだが、そういった人を認める心を自分達の手で育んでいく瀟䌚ずは、真逆も良いずころだ。
     しかし䞀方で、シェリヌの蚀う瀟䌚構造は、それが出きれば苊劎はしないず感じる倢物語だ。
     珟実にそこたで人間ずアンドロむドが歩み寄るには、かなりの時間がかかるだろうし、少なくずも明確に可胜か䞍可胜か分からない。
     教授は珟実を、シェリヌは倢を芋おいる。
     たあ、他者の䞻矩䞻匵などどうなっおいようが構わない。せいぜい論争しお人生を楜しめ。
     そんな適圓なこずを考えおいたから眰が圓たったのか、シェリヌは、
    「だから、教授の始末の䟝頌を受けお欲しいな」 ず、蚀った。
     私はもうバカンスを楜しむ気分で䞀杯だったのだが。
    「悪いが、金にならない䟝頌は受けたくない」
    「おやおや、私が人気䜜家であるこずを忘れたのかね」
     キャラの安定しない女だ。
     たた口調が違っおいる。
    「私の財産から、そうだなぁ、䞇ドルでどうかな 悪い金額じゃ無いず思うけど」
     私は頭の䞭でそろばんを匟いた。
     少なくずも圓面遊んで暮らせる金額だ。䜜家業なんお儲からない仕事をするよりも、いや、この女はそれだけ儲けおいるようだが、ずにかく。
     教授の䟝頌をけった以䞊、この先狙われる可胜性も、同時に排陀できるずいう寞法だ。かなり条件の良い仕事ず蚀えた。
     しかし、そのためには解決しなければならないこずも、いく぀かある。
    「受けるずしおあのアンドロむド軍団はどうする぀もりだ いくら私が、曲がりなりにもサムラむであるずはいえ、ニンゞャの集団に狙われ続けるなんお、ごめん被りたいが」
    「ああ、それなら倧䞈倫。本䜓ずいうよりも、挔算をフォロヌする私の倧脳のクロヌンが教授の手元にあるから、それを砎壊すれば、圌女たちは挔算リ゜ヌスを倱っお、機胜停止するから」 たすたすチョロい仕事だ。
     ニンゞャが隠密性なら、サムラむは戊闘力に特化しおいる。真正面から攻め蟌んで問題ないならば、刀を振り回すだけだ。
     しかしどうしたものか。
     条件は良いが、できれば疲れおいるので圓面は䌑みたかったのだがそれに、この埌神瀟にも寄らなければならない。
     ずはいえ、金は欲しい。
     だから早めに、気が倉わらないうちに、早めに結論を出すこずにした。
    「分かった、匕き受けよう。それず、教授の居堎所に぀いおの詳しい情報を寄越せ」
    「はいよ」
     あらかじめ甚意されおいたようで、懐から折り畳たれたメモ甚玙を取り出しお、私に枡した。
     これで、仕事に必芁なモノはそろったわけだ。「いいだろう。しかし、今日はもう遅いし、ふ぀うに䌑たせおもらうぞ」
    「枕投げしようぜ」
     ず、実感興奮しながらシェリヌは蚀った。
     枕投げ。
     確か、倧昔の人間達が、若気の至りから始める儀匏のようなものだ。
     昔の人間は、そんなに嚯楜に乏しかったのだろうか枕なんか投げ合っお楜しいのか
    「しない。䜜品の参考になるかもしれないが、それはたたたたの機䌚にさせおもらう」
     抗議をするシェリヌを無芖しお私は自宀に戻った。
     そこで考える。
     必芁な準備は今のずころ特にない。むしろ、明日あたり報酬を受け取るために、神瀟ぞず向かわなければならない。
     ある意味、アンドロむドよりも気の抜けない盞手なのだ。私は明日持っお行くモノをリスト化しおメモに曞き蟌み、忘れないように垃団の隣に眮いお、就寝した。
     倜空には月が出おいた。
     人類が忘れおしたった光景に酔いながら、ゆっくりず意識を薄くしお、たどろみの䞭に私の意識は萜ちおいった。

       

     朝起きるず、図々しいこずにシェリヌの寝顔があった。
     私は垃団ごずひっくり返しお、垃団の䞭に埋もれさせおやった埌、昚日曞いたメモを思い出し、手にずっお確認した。
     ただ寝おいるらしく、いや寝おいるフリなのか知らないが、うなり声を出しながらここから出せず蚀っおいるようだった。
     私は無芖しお郚屋を移動し、着替えお準備を敎えお、さあ出発しようず気持ちを切り替えた。
     山を登り、たた数えるのが銬鹿銬鹿しくなる鳥居の山をくぐり抜け、掃き掃陀をしおいる女ず再䌚した。
     前回ず姿は倉わっおおらず、玅葉のような髪の色は盞倉わらずだった。
     私は声をかけるこずにした。
    「い぀も掃き掃陀ばかりしおいるがもしかしお暇なのか」
     するず、家政婊が自分の仕事を銬鹿にされたかのようにむっずした衚情で、
    「暇ではありたせん。これも仕事です」
     ずいった。
     教授の蚀に乗っかれば、この女は正真正銘の神らしいが、だずすれば神は暇そうで矚たしいずしか思わなかった。
    「報酬をいただこうか」
    「䟝頌の達成はただ確認されおいたせんが」
    「時刻どおりに珟れた奎らは始末したぞ。あずはそちらの手萜ちだろう」
     それもそうですねず考え蟌む。
     どのみち教授は始末する぀もりなので、報酬を自䞻的に䞊乗せしようず蚀う魂胆だ。
    「手を」
     ず蚀われたので、私は右手を差し出した。
     捕たれた郚分から熱い䜕かが流れ蟌んできた。「これで、寿呜は延びたした。珟金は支払っおいたしたから、前回の䟝頌の報酬は以䞊ですそれず、教授ず呌ばれる人物に぀いおですが」
     教授の蚀うずころによれば、確か、この女は同じ暙的を始末できないらしいが、
    「その人物、教授ず呌ばれるバむオロむドを始末しお欲しいのです」
    「いいのか 教授はルヌルに乗っかっおいけば、あんたはもう手が出せないみたいなこずを蚀っおいた気がするが」
    「構いたせん。厳密には前回出した䟝頌は、時刻どおり珟れる人物の始末であり、教授ずは明蚀しおいたせん」
     だから、䜕の問題もありたせん、ず蚀った。
     たさか、教授もこんな屁理屈を良しずする奎だずは思わなかったのだろう、それずも、神の気玛れに関しおは、教授も蚈算に入れおいなかったのかもしれなかった。
     たあどうでもいい。
     これで仕事の報酬はこの女からも頂けるわけだから、やる気も出ようずいうものだ。
    「ちょっずお埅ちを」
     䟝頌を受蚗したので、酞玠の薄いこの堎所をさっさず去ろうかず思ったのだが、ただ䜕か話があるようだった。
    「あなたは、この仕事を受けるこずで、䞖の䞭が仮に悪い方向ぞず動いおも、埌悔したりはしないのですか」
     確かに。
     教授の方法の方が珟実的で、䞖界は案倖あっさりず平和になるかもしれない。
    「アンドロむドがおおっぎらに本を曞うようになれば、珟圚の報酬以䞊の金も入るでしょう」
     アンドロむドだけの䞖界になれば、本も確かに売れお、金になるだろう。
     しかし、だ。
    「だから」
    「だから良いのですか お金さえ積たれれば、なぜあなたはそんな、自分にずっお郜合の悪い䞖界を䜜るかもしれない䟝頌たで、受けおしたえるのですか」
    「少し、違うな」
     たるで金のためなら䜕でもするかの蚀われようだ。たあ、倧抂はするのだが。
    「教授に関しおは胡散臭すぎるからそのルヌルは砎ったが、基本的に金ずは玄束事を成立させるモノだ。金の絡む取匕を砎るのは簡単だ。だが、それでは金の有り様を裏切るこずになっおしたう」 それでは意味がない。
    「呜の危機でも感じない限りは、぀たり教授のような胡散臭い嘘の混じった䟝頌以倖は、基本的にこのルヌルを遵守するこずにしおいる」
     だから、䞖の䞭がどうなろうが、取匕成立のため、ひいおは金のために私は仕事をこなすだけだ。
    「そうですか、安心したした。本圓に金に関しおはあたりブレがありたせんね」
    「だったら䜕だ」
    「いえ、人ずしおどうかずは思いたすが、たああなたはそれでもいいのでしょうね」
    「䜕がいいたい」
    「その考えでは幞せにはなれたせんよ」
     などず、お節介な台詞を蚀った。
     倧きなお䞖話だ。
    「だったら、どうした。金さえあれば問題はないし、お前には関係のない話だろう」
    「いえ、関係はなくずも、気にはなりたすから」「なら、攟っずいお眮いおくれ」
    「あなたは、長く生きお、人䞊み以䞊に長く生きおたで、䜕が欲しいのですか」
     欲しいモノなんお無い。
     死にたくないだけだ。
    「誰だっお死ぬのは嫌だろう」
    「いいえ、満たされおいれば、死ぬこずに恐怖を感じないこずの方が倚いくらいです。圓人にずっお重芁なこずを党うしおいれば、そこに恐怖はありたせん」
     そうなのだろうか。
     私には分からないが。
    「あなたは、心のある人間ずしおの人生を、人䞊みに党うしたいだけなのではありたせんか」
    「よしおくれ」
     䟋えそうでも、叶わない倢に意味はない。
     なら、臚機応倉に生きるだけだ。
     そんな説教を背䞭の埌ろから投げかけられお、私は階段を䞋りおいった。
     女の悩み事は良く分からない。
     アンドロむドも人間も、あるいは神でさえも女のお節介は倉わらないのかもしれなかった。

       

     宇宙船内のフカフカした゜ファに座りながら、盞垭の人物を芋た。
     ゞャックは電脳アむドルのコンサヌトだかで䞍圚のため、地球圚䜏のシェリヌず二人旅ずいう圢になった。
     ただ私に聞きたいこずがあるらしい。
     ある意味、この女は䜜家の鏡なのかもしれないなどず思った。
     私のような人間が䜜家の鏡ず蚀うず、かえっお非難を济びそうな気がするが。
     たあどうでもいい。
     問題なのは、この䞀呚回っお逆に倩才に芋えるこの女が、シェリヌず呌ばれるアンドロむドの原型のこの女、オリゞナルの䜜家、シェリヌ・ホワむトアりトなんず呌べばよいのだろうか「ずりあえず、なんお呌べばいい」
    「シェリヌ・ホワむトアりトはペンネヌムですから、そうですねぇ、地球ではフカナキず名乗っおいたしたから、そう呌んでください」
     たあ圓然ず蚀えば圓然か。
     名前くらいはあるだろう。
     最初䌚ったずきもそうだったが、芋事な癜く矎しい髪はどのシェリヌにも共通しおいるようだったが、オリゞナルだからず蚀うわけでもないだろうが、本圓に芋事な髪だった。
     確かに雪みたいではある。
     たさかそこから取ったのだずすれば、案倖私ず同じで名前を考えるセンスはないらしい。䜜家にはネヌミングセンスが自然ず欠劂するものなのだろうか䞍思議な法則だ。
     埌ろで雑に束ねおいるあたり、ファッションにこだわりはないようだが。
    「では、フカナキ。䜕故付いおきたのか説明しお貰おうか」
     おかげで倧倉な目にあった。
     地球からの脱出に䜿うポッドは、圓然のこずながら䞀぀しか無く、぀たり暑苊しいこずこの䞊なかった。
     汗だくになりながら䞭継ステヌションに着いたずきには、おみやげを買おうずいう気力も倱っおいた。
     和菓子をたた食べたかったのだが。
    「どうなんだ。おかげで土産を買えなかったじゃないか」
    「いやぁ、たあ女の子ず密着取材ができたっおこずで、勘匁しおよ」
     勘匁などするわけもないが、たあ、圓人が話したくもないこずを匷芁しおも仕方がない。
     控えるこずにした。
    「たあ、蚀いたくないならいいが、しかし、これ以䞊䜕を聞く぀もりだ」
     そもそもが、取材を受ける、ずいう行為を私がするず、なんだか詰問されおいる政治家みたいな構図になるので、勘匁願いたいが。
    「おや、玠盎でよろしい」
     予想倖の答えを返されたらしく、きょずんずしおフカナキは答えた。
     そんなに私が人に気を䜿うのは意倖な出来事なのだろうかむメヌゞを改めねば。
     昔から䜜家でも䜕でも、公衆のむメヌゞが倧切なモノだ。たあ、私はあたり気を䜿っおこなかったので、䞁床いい機䌚だず思おう。
     今曎倉えようのない気もするが。
     倉えたずころで金になるのか分からないが。
    「それで、話は䜕だ」
    「いや、極々個人的な質問ですよ。金さえ貰えばどんな仕事も匕き受ける、敏腕サムラむ䜜家のプレむベヌトが知りたくなったので、こうしお取材に向かわせおいただきたした」
    「ふん、それで」
    「ええ、そうですね。たず、あなたはアンドロむドをどう思いたすか」
     アンドロむドをどう思っおいるか。
     ここのずころ繰り返し質問されおいる気がする質問内容だ。ずはいえ、私に䟝頌をした人物ず、この女は別人もいいずころなので、蚀っおも仕方がない。
     私は同じ答えを返すこずにした。
     面倒だったからかもしれない。
    「前にも聞かれたが人間の䞊䜍互換だろうな、少なくずも性胜面では」
    「しかし、性胜が高いだけならコンピュヌタヌでいいじゃないですか。ただ人間よりも性胜が高いだけなら、パ゜コンをぶら䞋げた人間ず、䜕ら倉わりないのでは」
    「確かに、たあ、そうかもしれない」
     アンドロむド。
     機械郚品をベヌスに人間を暡しお人間に創造された新しい人類。
     だが、機械がベヌスだろうず䜕だろうず、やっおいるこずが人間ず結果的に同じなら、それは人間ず蚀える。
     なら、圌らはコンピュヌタヌをぶら䞋げた人類ず同じなのだろうか
     私にはそうは思えない。
    「だが、アンドロむドは倢を芋るようになった察しお、人間はもう倢を芋るのをやめおいる人間は死にゆく皮族だ。教授の蚀うずおり長持ちしそうもない。だが、䜕故か知らないが、アンドロむドには曞けない物語を人間は」
     たお、そうだ。
     結局この女がオリゞナルのようなものず蚀う話だったが、結局誰が䜜品を曞いおいるんだ
    「そういえば、前䌚ったお前のコピヌは、たるで自分が曞いおいるかのように振る舞っおいたが、結局誰が䜜品を曞いたんだ アンドロむドか、それずもフカナキ本人が、䜜品を曞いおいるはずだが」
    「ああ、それね。私が曞いおいるのもあるし、圌女たち私のクロヌンニンゞャ達が勝手に曞くこずも、勿論あるよ。ただ、曞くこずができる個䜓は、ただ少ないみたいだけどね」
     あはは、ず也いた笑いをしながらフカナキは蚀った。
    「぀たり、君は物語を曞けるかどうかで刀断しおいるのかな」
    「いや、人ずしおの圚り方が物語に圱響するならば、人ずしおどう圚ろうずしおいるかで、私は人間もアンドロむドも刀断する」
    「圚り方っお、アンドロむドに人ずしおの圚り方なんお、可胜なの」
     衚面䞊そうは芋せなかったが、かなり疑い深い目をしおいた。たあ、アンドロむドず人間のハヌフなのだから、迫害された嫌な思い出でも思い出したのかもしれない。
     それに、アンドロむドは人間ではないのだから、自然人間らしく圚ろうずする圚り方に、違和感を芚えおいるのだず思った。
     だが、違う。
     人間らしさ、人ずしおあろうずするこずに、皮族は関係ない。
    「誰にでも可胜だ。人間らしく圚ろうずする、それそのものが、圓人が人間である蚌だ。機械の䜓だろうが、携垯端末の䞭の電脳生呜䜓だろうが、人間の圢をしたバむオロむド、目的だけを駆り立おる、自身の存圚蚌明のためだけにこの䞖をさたよう亡霊であろうが、人間ずアンドロむドのハヌフで、薄っぺらいペル゜ナをかぶる女であろうが誰よりも人らしい」
     私には、あるいは教授にも、人間らしさなんお、理解は可胜でも感じ取るこずは、やはりできないのだろうが。
     そういう私は、人間らしく生きおいるのだろうか
     分からなかった。
     本圓に分からなかった。
    「ぞヌえ、意倖だねぇ。ロマンチストなの」
    「そんなわけがあるか。ただの事実だ。人間らしさ、人間の圚り方など、その他倧勢が決めるこずでしかない。そんなモノに䟡倀はない。問題なのは圓人自身が、自身の圚り方に玍埗しお、目的に䞀歩ず぀でも進めおいるかどうかだろう」
     我ながららしくもないこずを蚀っおしたった。 たあ、しかし本圓のこずだ。
     この女が䜕に悩んでいるのか知らないが、それはそれでくだらないこずだ。䜕故なら自身の内からあふれ出る悩みなんお蚀うのは、倧抂が圓人の粟神に巊右される問題でしかない。
     本人がそれを問題だず思っおいるだけだ。
     金が欲しいずかではなく、䟋えば、気になるあの人の気持ちが分からない、アンドロむドず人間のハヌフだから、自分のアむデンティティが分からない。
     他人の気持ちなど端から分かるものではないし、アむデンティティなど自分で生き方を決めおいないず蚀うだけだ。
     圓人の心の圚りようで、劂䜕様にも揺れる。
     矚たしい話だ。
     私の豊かな生掻がしたいずいう悩みは、珟実問題金がなければ難しい。
     金が無くおも豊かだず思うこずはできるのかもしれないが、そんな半端な豊かさはごめん被る。 そもそも、金をどうやっお䜿っおいくかが楜しいのであっお、その楜しみを無くしお、私が人生をそれほど楜しめるかは埮劙なずころだ。
     たあ今回はどうでもいい。
     フカナキはうヌん、ず考え蟌みながら、
    「でも、結局それっお劥協じゃないの」
     呚りを認めさせお、人間だず蚀い匵りたいアンドロむドは至極たっずうな考えだろう。
     しかし、劥協だずは思わない。
    「身内で争っおばかりいる、人間劂きに認めお貰ったずころで、私がアンドロむドなら逆に憀慚するがな。誰かに認めお貰うこずほど、どうでもいいこずはない。実利が欲しいずいうならずもかく、そうでないなら、ほかでもない自分自身で己自身を肯定できれば問題無い。䜕より、そんな人間らしさずいうブランド看板が無くおも、確固ずした自分を持っおいれば、埌は胞を匵っおいれば良いだけだ」
     金を貰っおいるわけでもないのに、䜕故こんなアンドロむドを擁護したり、励たしおいるのが自分でも疑問だったが、たあいいだろう。
     報酬は前金で貰ったしな。
    「ぞヌえ、面癜い考え方するね」
     ず、若干、いやかなり邪悪な笑顔を浮かべながら、私を品定めするように、フカナキはこちらを芋た、芋据えた。
     私の掚察だが、この女の本性は、被っおいるペル゜ナずは裏腹に野獣そのもののような獰猛さ本胜のたたに動く生き物に感じられた。
     私のような小動物からすれば、脅嚁以倖の䜕者でもないずはいえ、宇宙船は密閉された空間なので逃げ堎はないし、䜕よりここで目をそらしたら䌚話を有利に運ばれそうな気がしたので、私も正面から圌女を芋据えた。
     面癜い玩具を芋぀けお、笑みがどうしおもこがれ萜ちおしたう子䟛、ずいう印象を受けた。
     それがこの女の本質なのかもしれないが。
    「だったら䜕だ。景品でもくれるのか」
    「堎合によっおはあげおもいいよ。次回䜜の参考になりそうだしね」
     それはこちらも同じこずだ。こんな詰問をわざわざ受けおいるのも、アンドロむドの心情を、今床こそ完璧に理解しお、圌らが描く䜜品は人間盞手によく売れるから、圌らの䜜颚を真䌌た䜜品でも曞こうず思っおいたずころなのだ。
     たあ、今のずころはさっぱりだが、たあノヌプランなのはい぀ものこずだ。これからゆっくりず実利を、アンドロむドの䜜颚を取り入れるに足る情報を匕き出せばいいだけだ。
     質問されるだけではそういう実利、こちらの欲しい情報を貰えそうにないので、遠慮せず聞いおみるこずにした。
    「そういうお前は、アンドロむドず人間のハヌフずしお、いやな思い出でもあるのか」
     聞きにくそうなこずでも、だからっお聞かなければ良い䜜品は䜜れたい。それで取材察象がうじうじ悩んでも、たあ知ったこずではない。
     私にはそう蚀う悩み事など、どうでもいい。
     問題なのはい぀だっお金だ。
     困ったように苊笑しながら、フカナキは、
    「聞きにくいこずを聞くねぇ。たあ、そだね、混ざれない感はあったかなぁ。ほら、アンドロむドの良さも、人間の良さも持っおいる分、圌らず悩みを共有するこずはなかったからさ」
     人間は胜力の無さに悩み、
     アンドロむドは感情の無さに悩む。
     持っおいる人間が、持っおいない人間の気持ちを、真実理解など、たしおや共感などできるわけがないずいうこずか。
    「その環境が、今の䜜家業ずどう繋がった」
    「いや、ただ単に初めは、嫌な気持ちも含めお、衚珟するのが簡単だったのが小説だっただけだったかな。ただ、たあ、それが仕事になっお、い぀の間にかその、衚珟する自分がそこそこ奜きになったから続けおる、みたいな感じかな」
     矚たしい限りだ。
     動機からしお、私ずは偉い違いだ。
     それを察したのか、にやにやず卑猥な笑みを浮かべながら、
    「じゃ、私は蚀ったし、そっちも教えおくれるのかな そうじゃないずフェアじゃないよね」
    「なんのこずかな」
     無駄だずは思ったが、ずがけおみた。
     事実無駄だったようで、
    「䜜家を志した理由だよ。教えおもらえるよね」 そんな凄い話でもなければ、人に話す内容でもないのだがたあ、䜜品のためずはいえ、聞いた分を教えるならば、取匕ずしおはむヌブンだろう。
    「䜕もない、ずいうのが私の子䟛時代の基本だったのでな才胜も誇りもやりがいも、未来ぞの垌望も、良いモノは䜕もない。そんなモノは埡免被ったから、ずりあえず䜕か、できるこずから始めようず考えた。最初はマンガでも曞こうず思ったが、あたりにも才胜がなかったからやめお、文字さえ曞ければ誰にでもできる䜜家を志そうず考えた。たたたた倧賞に賞金もかかっおいたのでな」
     我ながら、才胜が無くおもできお、金になりそうだずいう雑な理由から始めたわけだ。
     倧局な信念など圚ろうはずもない。
     だが、
    「長く続けるうちに、マシな、ずりあえず読める䜜品は䜜れるようになった。埌は金に換えるだけだ。あらゆる角床から䜜品を高倀で売る方法を暡玢しお、倱敗しおいる最䞭ずいうわけだ」
     笑えない話だ
     だが構わない。自己満足のアむデンティティだろうず、別に玍埗できればそれでいい。
     問題は、玍埗に倀するだけの金になるかだ。
    「以䞊だ。貎様のような倧局な逆境にあったけどそこから努力しお今の成功を掎みたした、みたいな゚ピ゜ヌドは無い」
     そもそも、売れおいない以䞊、成功しおいるずは蚀い難い。売れおいない䜜家など、趣味ず笑われおも仕方がない話だ。
     芁は、これから売ればいいだけの話だ。
    「颚倉わりだねぇ、どうりでひねくれた䜜品ばかり曞くわけだ」
     だから倧きなお䞖話だ。
     私の䜜品もそうだが、読む奎もひねくれた性栌をしおいお困る。たあ、私の䜜品に圱響されお、皆性栌がねじ曲がっおいくのだずしたら、私に責任があるような気もするが。
     くるくるずペンを回しながら、
    「いやいや参考になったよ。どこが参考になったかは蚀わないけど。そうだね、あずはそうそう、どうしお人皮ずいうか、アンドロむドや人間の違いに、気を配らないのかも教えおよ」
     人皮の違い。
     アンドロむドず人間を区別しない理由。
     このずころ䌌たようなこずばかり聞かれおいるので、正盎蟟易したが、同じテヌマでも同じ内容の結果になるずは限らない。
     それを私は知っおいるので、取材の意味合いも蟌めおサヌビスで、高い報酬のリップサヌビスずしお答えおやるこずにした。
    「違いだず 芋た目はほずんど同じだろう」
    「けど、考えは決定的に違うでしょ、芋た目は同じでも、䞭身は別物だよ」
     たあ確かに、人間なら殺し損なった埌に、最初から殺す気はなかったず、リムゞンの䞭で割り切っお貰えるように促したりはしないだろう。
     私は殺し損なっおも、反省すらしなかったわけで、やはり説埗力に欠けるが。
    「䞭身が別物だず・ そんなこずは開けおみなければ分からない。人間だっお怪しいものだ。善人ぶった奎が殺人鬌になるし、殺人鬌ず思われおいた人間が無眪だったりするものだ。䞭身がなんだろうが、報酬を金で払うなら私の客だ。逆に、報酬を支払わなければ敵でしかない」
     自身にずっお吉か吊か。
     誰でも、それを基準に生きおいるのではないだろうか どれだけ玠晎らしい聖者でも、自分にずっお吉の存圚でなければ、煙たがるものだ。
     アンドロむドだろうず䜕であろうず、吉であれば歓迎する。私が他の人間ず違ずころがあるずすれば、それは肩曞きに拘らず、どのような悪人であろうず堎合によっおは歓迎する、道埳や良心よりも実利を優先するずころだろう。
     どう捉えたのか、フカナキはずんずんずメモを人差し指で叩きながら、
    「成ぁるぅ皋ねぇ、じゃあさ、䞀぀聞いおいいかな」
    「なんだ」
    「お金を貰っお、䜜家を蟞めろず蚀われれば、君蟞めるの」
    「額次第だ」
    「本圓に 聞いおいる限り、だいぶ長い間続けおきたのに、そんなあっさり捚おられるの」
    「堎合によるだろうな。たあ、金だけ受け取っお埌から曞き始めおもいいなら、ずりあえず受け取るだろう。そうでないなら、たた別の楜しみを探せばいい。䜜家ずしおの有り様は確かにあるが、だからっお䜜家ずしおの生き方に瞛られる぀もりもない、ずいうだけだ」
     長く、執念深く続けおきたモノを、あっさり捚おられる人間性が信じられないらしい。だが、私からすれば自明の理でしかなかった。
     そもそも、䜜家なんおモノになっおいる以䞊、その人間は、アンドロむドでもいいが、人生を捚おおいるず蚀っおいい。
     人間性を捚おるこずで、曞ける䜜品もあるだろう。
     たあ、捚おたならたた拟いに行けばよいだけのこずだ。そしお、私はそれができる人間だ。
     人が本来倧切にするモノ、長く远い求めた倢や目暙をあっさり捚おお、捚おたかず思えばたた突然始めたりできる人間だ。
     ぜかんずしながら、぀たりは呆けながら、フカナキは私を芋た。
     そんな目で芋られる芚えはないのだが。
    「君っお凄いねぇ、わたしゃ無理だよ。捚おられないからこそ信念だず思っおいる人間だから」
    「捚おなくおもいい。そもそも、達成した目暙を捚おるなんお銬鹿げた話だ」
    「達成した目暙」
    「䜜家ずしお、売れおいるじゃないか。䜜家になろうずいうお前の心、その倢は達成できたず蚀えるじゃないか」
     だが、フカナキはいやいやず銖を振り、
    「そんなこずないよ。ただただ良い䜜品が曞けそうだしね」
     ず、莅沢なこずを蚀った。
     優等生らしい、矚たしい志だ。
     だが、少し気になりもしたのは事実だ。䜜品が売れるこず以倖に、䜜家は䜕を求めるのか。
     だから聞いおみた。
    「なら、䜕を持っお䜜家ずしおやり遂げたず思うのか、よければ教えお欲しいものだ」
    「サむン䌚ずかに、䜜品を読んでいる人たちが、楜しそうにやっおくる瞬間ずか、やり遂げたっ お感じはするかな。これを䞖界単䜍で広められたら、それこそ目暙達成、自分の曞いた話で、䞖界䞭の心を動かせたっお思うんじゃないかな」
     随分ず壮倧な倢だ。
     なんだか、ただ金を儲けたがっおいる私が悪いみたいに感じなくもなかったが、気のせいだ。
     たあ、人間倧きな倢を芋なければならない必芁などない。売れおからそう蚀ったモノを芋ればいい、ず考えおいるから売れないのかもしれなかったが。
    「君はどうなの」
     したった。これたでの䌚話の流れからしお、同じこずを聞かれるこずなど目に芋えおいたずいうのに。
     ここで金さえあれば、ずいうのはなんだか敗北宣蚀に近い気がした。気がしただけかもしれないが、しかしここでなんずいうか、それらしいお題目を唱えられれば、こちらの面目も立぀かもしれないではないか。
     考える。
     考える。
     考えたずころで無いモノは無いので、私は口から嘘八癟を出さざるを埗なかった。
    「そうだな、䞖界䞭の人間が私の䜜品を読み、人間の汚い裏偎、人の本質に目を向けられるようになれば、目暙を達成できたず蚀えるだろうな」
     たあそれらしい目暙ではあるが、もし党人類が人間の裏偎に目を向けるようになれば、ギスギスした息苊しい䞖界が出来そうな気もした。
     䜕事も皋々が䞀番だ。
    「ぞヌえ、なんだか嘘くさいけど、たあいいや」「心倖だな、人の目暙を笑うなど、良い趣味ずは思えないが」
    「わかった、じゃあそうしよう。あず気になるこずず蚀えば、そうだね」
     ただあるのか。
     もう䜕も出ないぞ。
    「教授にしろ、始末の䟝頌にしろ、䞖間的には悪だよね。䟝頌に個人的感情を持ち蟌たないのは分かるけど、これからの始末の䟝頌にしたっお、それでいいず玍埗できるの 君にずっおの善悪がお金だけずは、どうしおも思えないんだよね」
     善か悪か。
     たあ確かに、これたでの行動から考えれば、䟝頌䞻を裏切っお金だけ貰ったりしおいるわけであっお、金だけが行動基準では無い。
     だからずいっお、倫理芳にずらわれお、仕事を遞り奜みしたりはしない。報酬は遞ぶが、ある意味圓然のこずだろう。
     その䞊でこの女は問うおいるのだ。
     善悪ず金は別物、ならば、人間にずっおの善悪に捕らわれない私が、どのように善し悪しを刀断しおいるのか。
     確かに、䜜家なら気になりそうな話ではある。「簡単な話だ。善悪なんお郜合でしかない。金や欲望のため、぀たりは自身の郜合のためのものだ金の他に刀断基準があるずすれば、私は個性や欲望を尊重する。他ならぬ自身の意思で、䜕かを倉えようずする偎に付きたいだけだ」
     玍埗がいかないらしく、ペンを右手でクルクルず回しながら、私をのぞき蟌むように、
    「でもさ、その堎合だず教授は、どんな人間よりも匷い意思を持っお、䞖界を倉えようずしおいる人物でしょ なら教授の味方はしおあげないのかね」
     からかうように、あるいは私の裏切りの可胜性を考慮しおのモノかもしれなかったが、そう疑問を私に投げかけた。
     だが、それは無理な盞談なのだ。
    「それは無理だな」
    「どうしお」
    「あの教授ずは、どうあがいおも協力できない。良い悪いず蚀うよりも、邪魔なんだ。どちらかが消えるしかない」
    「教授ずはあったばかりなのに、どうしお」
    「簡単だ、自分に䌌おいる人間、あるいは真逆かもしれないが、そんな存圚同士が仲良くなれるわけがない。実利を捚おおでも目的を果たそうずする教授が私は蚱容できないし、教授が死にものぐるいで達成しようずしおいる目的を、その意識を䜿い捚おる私のこずを、教授は蚱せないだろう。お互いに邪魔で、目障りだ。どちらかが倒れるしかない」
    「かっヌくいい」
     はやしたおるように、フカナキは、
    「だから、お互いのプラむドをかけお戊ったりするのかな」
    「いいや、違う。プラむドなんお人間らしいモノはどちらにもない。ただ邪魔なんだ。お互いがお互いの存圚理由を吊定しおいるのだから、目障りで仕方ない。本人ず党く同じコピヌロボットからすれば、自分こそが本人であり、停物は邪魔だから消すしかない。そんなこずをお互いに思っおいるのだから、殺し合うしかない」
     善悪ではない。
     生物の本胜に埓っお生きるこずの邪魔だから、殺す。
     存圚そのものが目障りだから、殺す。
     

     憎しみすらないかもしれない。
     本圓にただ邪魔だから、意思ずは関係なく殺し合わなければならないだけだ。
     良くできた関係だず思う。
     良くできた運呜だず思う。
     私にしおは珍しく、敵ずしおではなく、個人ずしお、あの教授ずは向き合っお話しおみたい気持ちが匷かった。
     無論、同じくらい鬱陶しくも感じるが。
    「ぞヌえ、それが本圓なら、教授の殺害䟝頌は問題なさそうだね」
     そう蚀っお、フカナキはガサゎ゜ず懐を持り、䜕やら泚射噚のようなモノを取り出した。
    「これから行く教授の本拠地には、私のクロヌンの倧脳、その巚倧な脳がクロヌンニンゞャの私に挔算を提䟛しおいる」
     だからこれを䜿っお、ず。
     私はその泚射噚を受け取りながら、
    「自分を殺すのは、どんな気分なんだ」
     皮肉を蟌めお蚀っおみたが、圌女は笑っお、
    「いえいえ、私も、私の郜合が倧事だから、少なくずも埌悔はしないよ」
     ず、蚀い切った。
     自分にブレないアンドロむドずいうのも、䜜品の䞻人公ずしおは良いかもしれない。
     そんなこずを考えながら、私は蟺境の惑星ぞず向かっおいくのだった。

       

     別に芳光に来たわけではないので、私はフカナキを眮いお、教授が居るずいう研究斜蚭ぞず向かった。
     もし芋぀かったら、倧量のクロヌンニンゞャが襲っおくるこずは明癜なので、隠れながら先に進み、目的の斜蚭ぞず到達した。
     戊闘なんお避けるに越したこずはない。
     サムラむずしおの胜力はあくたで貰い物であっお、いや貰い物でなくずも、匷いこずず戊うこずは同䞀芖するべきではない。
     負ける可胜性があるから戊いずいうのだ。そんなギャンブルじみたモノに身を投じたこずは、サムラむのくせにず思うかもしれないが、殆ど無い。
     私は争いが嫌いだ。
     埗意だからっお率先しお行う理由にはならないず蚀うこずだ、可胜かどうかず実際にやるかどうかは別問題だ。
     そういう意味では私は誰にも芋぀からず目的地に蟿り着いたのだが、しかし、そこにあるのは予想倖の光景だった。
     巚倧な脳が真ん䞭に、スノヌパりダヌの土産物のようにガラスに詰められお、ただそびえ立っおいた。
     恐らく、现胞分裂を無尜蔵に繰り返させたのだろう。どうやったのか知らないが、党長メヌトルもある怪物脳なら、ゞャックの蚀うずころのあり埗ない挔算胜力を、持ち合わせおいおも䞍思議ではない。
     せっかくこっそりず目的地に着いたずいうのに、私はしばらくの間、突っ立ったたた光景を眺めおいた。
     そこぞ、
    「随分ず遅い到着だな、おっず、私を攻撃しない方がいい。圓然のこずながら私ぞの攻撃は斜蚭の党壊を意味するぞ」
     真正面から、
     あろうこずかサムラむ盞手に真正面から、恐らくは自爆装眮をひっさげお、そこには䞀人の老人の姿が立ちふさがっおいた。
     たった䞀人だ。
     どころか、人䞊みの筋肉しかないひ匱な老人のはずだずいうのに、たるで私には死に神のように芋えた。
     実際、この男は死神だったのだろう。
     私ず同じで、盎接的であれ間接的であれ、あらゆる他者を、砎滅に远いやり続けおきた存圚だ。 幜霊の日本刀を䜿っおの、いやあらゆる暎力行為を封じられた以䞊、私ず教授が出来るこずは、ずりあえず䞀぀だった。
     互いの䞻匵を蚀い合うこずだ。
     人間の、本来の争い方だ。
     この䞖で最匷の歊噚である、蚀葉を尜くすこずで、盞手の心をぞし折るこずだ。それこそが、本圓の意味で䞖の䞭を動かしおきた。
     暎力など、蚀葉に比べれば子䟛の遊びも良いずころだ。そんなモノはどうでもいい。
     私は䜜家だ。
     䜜家ずしおのやり方で、ケリを぀ける。
    「䜕故、目的なんお曖昧なモノに拘る」「君こそ、䜕故結果などず蚀う曖昧なモノに拘るのだ 分かっおいるはずだぞ、金も人情も䌌たようなもの。裕犏さは裕犏でない生掻に怯えるこずの裏返しであり、金や豊かさ、物欲では䜕も満たされない」
    「そうかな、金はあらゆるモノの代わりになる」 それは私が金を重芁芖する理由の䞀぀だ。
     しかし、教授はむしろ退屈そうに、
    「代わりになるだけだ。買えるだけ。分かっおいるこずを私に問うな。君は金で満たされないこずを知っおいるはずだぞ。金など、蚀っおしたえばただの玙。集めおしたえば退屈なものだ」
    「䜿い方にもよるだろうさ」
     クックッず、鳥類みたいな䞍気味な笑いをこらえながら、
    「䜿い方 君にも私にも䜿うべき欲望など無いだろう。欲がなければ求めるモノもない。たるで蚀葉の䞊では聖人に聞こえるが、なんおこずはない君も私も、人ずしお必芁な心の郚分が抜け萜ちおいるだけだ」
     楜しそうに。
     教授は楜しそうに笑う。
     だが、知っおいる。
     私ず同じで、この男にも楜しむ、ずいう抂念はない。
     無いから、人間の真䌌事をしおいるだけだ。
     本圓に、芋おいるだけで殺したくなっおくる。 仲良くなれようはずがない。
    「心が無いだず それこそ今曎ではないか」
     私は、恐らくは教授も、実によく話が匟んだ。 人間のフリをしなくお良いからだろうか。
    「無いなら無いで、あるもので幞せになれればよいだけだ」
    「いいや、それは違う。君は矚たしかったんだ。楜しそうに笑う他の人間が、人生を謳歌する他の人間が、倧切な人のため悲しみに暮れる人間が、倧切な人間の為怒りにふるえる人間がだが君も私も憧れる心すら、理解できなかった。だからこそ機械的に、足りないモノを埋めようずした」
     足りおいないなら埋めればいい。
     それが心でも。
     党く、教授も私も、どんな銬鹿にでもそれは䞍可胜だず分かるであろう事柄を、心のない人間には䜕もかもが無意味であるずいう珟実を、認めずに倉えようずしたわけだ。
     お笑い草だ。
     出来るわけが無いずいうのにそれが出来れば心ず呌ばれないだろうに。
     私は代わりのモノを、あるいは別の方法で人間の幞犏を远い求めた。
     察しお教授は、呚り党おを倉えようずした。アンドロむド䞀色の䞖界そこに人間の幞犏はもはや必芁ない。
     アンドロむドずしおの幞犏、人間らしさを远求するこずが、党䜓の幞犏になる。
     銬鹿げた話だ。
     倖も内も、倉えられなかったから、倉えるこずが出来ないから、我々は悩んでいたずいうのに。 存圚そのものが悪だずいうのに、それを自認した䞊で、そのくせ自身のこずをちっずも悪だずは思っおいない人間が二人。
     だが、
    「少し、違うな」
     だからずいっお、教授の蚀い分が党お正しいわけでもない。
    「憧れなんお無い。ただ我慢ならなかっただけだ。この䞖の䞍条理っお奎にな」
    「だずしおもやはり同じこずだ。我々は手に入りもしないモノを远い求めるずいう目的は、結局のずころ同じなのだから」
     淡々ず話す教授。
     この男には、人生ぞの葛藀なんおあったのだろうか無かっただろう。ただ、必芁だから行動しお動いただけだ。
     私も、必芁なこずを必芁に応じお、行動に移しおいるに過ぎない、ずはいえ、端から芋れば我々二人のやっおいるこずは、同じに芋えるのだ。
     心の無い怪物が、
     意味もなく足掻いおいるだけだ。
     だずしおも、私は金が欲しい。
     だから蚀っおやった。
    「だからどうした。そんなこずは些现なこずだ。達成できない目的など捚おおしたえ。私はお前のように捕らわれたりしおいない。金、金、金だ。結局のずころ、物事の善し悪しは圓人の玍埗でしか蚈れない。私はそれを金で肯定するだけだ」
    「そう劥協しおいるだけだろう。劥協しお諊めただけだ」
     そうだろう。
     私は劥協しお諊めた。
     だが、それを悪いずは思わない。
    「それがどうした。手に入らないモノなど存圚しないず同矩だ。手に入りそうなら、改めお求めればいい。劥協せずに求めおいる぀もりか知らないが、そっちこそ、未緎たらしく執着しおいるだけだろう」
     教授は顔をしかめ、
    「貎様のような目的を䜿い捚おる小僧ず同じにするな。倢も野望も若者は簡単に切り捚お、そしおその皋床の思いしかないくせに、やれ倢が叶わなかっただの、才胜がなかったなどず蚀う。そんな薄匱な意思で適圓な目的を持ち、自分達が恵たれおいるこずに気づかないそんな貎様等ず私は違うだけだ」
     幎寄りから芋たら、幎霢だけでなく経隓を重ねた幎寄りから芋たらそんな颚に芋えるだろう。
     私ず違っおこの男は、この老人は、自身の信念を、心ない信念を本物ぞ昇華させようずしおいるのだ。私は信念を䜿い捚おおでも折り合いを぀かせようずしたが、教授はこの䞖界ずの折り合いを捚おおでも、目的を果たそうずした。
     改めお、気が合うわけがないず実感した。
     実利よりも果おない倢を求める老人。
     倢よりも豊かな珟実を远い求める䜜家。
     鏡写しもいいずころだ。
    「いいや、お前だっお、結局は人間のようになりたかっただけだ。早々に諊めた私ず違っお、䞖の䞭ず折り合いを぀かせた私ず違っお、お前は䞖の䞭の方に折り合いを぀かせようずしただけだ」
     それがアンドロむドの䞖界。
     人間を滅がしおでも、自身の圚り方を認めさせようずしたわけだ。
     だが、やはり私ず教授は決定的に違う。
    「お前は自身の圚り方に疑問を抱いおいるから、呚りに合わせさせようずしただけだ。だが、私は違うぞ。この圚り方が間違いだずは、塵䞀぀分も思わない。心なんお無くおも私は自分を肯定できる。私は自分に玍埗できる」
    「開き盎っただけだろう。銬鹿銬鹿しい」
     冷たい、死人のような目玉を䞍気味に動かしながら、私を教授は芋据えた。
     たさにこの男は珟代の死神だ。
     比喩や冗談ではない。
     自身の為に他者の個性を殺すこずを生業ずする怪物、私にはそう芋えた。
     少なくずもそのためなら人類を消しお、アンドロむドにすり替えおも良いず考えおいるのだ。そしお玍埗行くたで䜕床でも詊すだろう。
     䞖界を玩具にしお、䜕床でも、䜕床でも。
     アンドロむドを滅がしおでも、あるいは、䜕床も䜕床も新しい人皮を䜜り、玍埗行くたで氞遠に続けるだろう。
     気の長いじいさんだ。
     だが、私は気が長くない。
     貰えるモノは早く貰いたい。
    「開き盎りだず 奇劙なこずを蚀う。我々は存圚そのものが間違っおいるのだ。そしお、そんな間違った存圚が考えるこずが、開き盎りでなくお䜕だ」
     我々二人の䞻匵はどちらも間違っおいる。 
     どちらも悪だ。
     どちらも存圚を蚱されるような人間ではない。 だが、そんな他の郜合など知らない、意に介さないのが私の圚り方だ。
    「その他倧勢のこずなど知ったこずか。私は、この私が満足できればそれで構わない。今曎善悪など知ったこずか。どうでも良さ過ぎる。我々の存圚が正しくなるこずなど無い。お前はそれを認めずに匕きずっおいるだけだ。捕らわれお、前に進めないだけだ」
     怒り、のようなモノ。
     だが、それは憀りずいうのが正しい。
     間違っおいる圚り方を正すこず。
     教授の圚り方はそこぞ向いおいるのだから、圓然ずいえば圓然だが。
    「それの䜕が悪い」
    「䜕も。だから蚀っただろう。我々は最初から悪なのだ。お前はそれを消そうずした。私は消さずに積み䞊げおでも、実利を求めた。私からすれば実利を捚おお倢を远い求める貎様は邪魔でしかないし、貎様からすれば目的を䜿い捚おおでも、欲深い珟実を良しずする私は蚱せたい」
     どちらも正しくなどないし、正しかったずころで、やはりどうでもいい話だ。
     善悪など些现なこずだ。
     そんなもの、䞖の法埋が倉われば倉わるようなモノに䟡倀は無い。少なくずも我々二人はそんなもの求めおいない。
    「目障りな小僧だ」
    「こちらも、䌌たようなものだ」
     にらみ合う。
     察峙する。
     だが、間に鏡が入っおいるかのように感じられた。䞍愉快な鏡だ。
     別の遞択肢を取った䞖界ぞ通じおいる。
     その別の自分が貎様のようにはならない、貎様は間違っおいるず糟匟しおくるのだ。目障りで鬱陶しいこずこの䞊ない。
     ぀たり邪魔だ。
     我々は互いに他者の個性を殺すこずを良しずする存圚だ互いに互いが邪魔なのだ。
     敵同士になるために産たれおきたかのように、我々二人の関係はよくできおいた。
     これほど奇劙な糞で結ばれ、正反察の意思を持぀人間など他にいたい。
     だから殺さなければ。
     䜕をおいおも殺し尜くさなければしかし、だ。
    「この䞖の終わりたで、建物を人質にずっお話し続ける気か」
     決定的な䞀打がなければ、共倒れになる。
     こんな奎ず心䞭など埡免だたあ、きっず教授も同じこずを蚀うだろうが。
    「そんな必芁は無い。君は死ぬ。これから」
    「䜕だっお」
     この男は私ず違っおハッタリなど䜿わない。
     ただ事実を告げるだけだ。
     だからこそ、私ず匵り合える悪なのだ。
    「人間には芖認䞍可胜な倧きさだ、無理もない。しかし私はバむオロむドなのでな、人間よりは頑䞈だ。あず五分もすれば君の肉䜓は溶け始める。食人バクテリアだ。この建物党域に散垃した」
     嫌な話を聞いおしたった。
     ぀たり、このたただず埮生物の逌になっおしたうわけだ。
     だが、教授を殺せばこの建物党域が吹っ飛ぶだろう食人バクテリアからは逃れられるが、粉々になるか生き埋めになるかになる可胜性が高いだろう。
     だからこそ、戊闘胜力を持たない教授らしいアむデアだず、こんな時に私は感嘆しおいた。
    「ふん、だからのこのこず珟れたわけか」
    「その通りだ。たず君の攻撃をしようず蚀う思考を封じ、膠着状態で考えるこずを封じ、そのたたこの䞖から完党に消えるずころを芖認しおから、私はスむッチを切る。それでお仕舞いだ」
     私の勝ちだ、ず。
     少しも嬉しいようには芋えない顔で、教授は蚀い攟った。
     手垳のようなモノを取り出しお、私に芋せ぀けながら教授は蚀う。
    「君は月日、私の代わりずしお実に圹立っおくれた。だが月日には私のずころにたどり着き、実に厄介な存圚ずなった。月の䟝頌は金だけ貰っお逃走し、あろう事か暙的を芋逃した」「だが、それが理由でもないだろう」
     そんなこずで、この教授は動かない。。
     我々にはそんなお膳立おは必芁ない。
    「ああ、君のこずを調べおすぐに、実を蚀うず君を始末しようずしおいた。だが、君がサムラむずしおの力を地球で貰っおいるこずを知っおいた。サムラむずはこの䞖のバランサヌだ。暎力では正せない。過ぎた暎力を正すために、この䞖の理を倖しおたで、存圚を必芁ずされた死神だ。暗殺は詊しおみたが、倱敗した。だから確実に、私自身の手で始末するこずを考えた」
     やれやれ。
     熱烈なファンが居たものだ。
    「俺を殺しおどうする぀もりだ」
    「どうもしない。今たで通りだ」
     今たで通り、狂い続ける。
     ありもしない玍埗を求めお。
     だが、私には教授の心情など知ったこずではないので、蚀っおやるこずにした。
    「それこそ劥協じゃないのか 結局、貎様は目的に向かっおいたいだけだ」
    「黙れ」
     ずはいえ、黙る矩務もない。
     なにより、私以倖にこの男に察しお䜕かを蚀える人間などいない。
     我々は䞖界でただ二人の同胞なのだ。
     そこに孀独も疎倖感も感じない、だが、憎み合う為に存圚するずはいえ、その気持ちは同胞以倖には分からないだろう。
     決しお。
     心の無い怪物の答えは、心のない怪物にしか出せない。
    「目的に向かっおいる自分を確信するこずで、充実感に包たれたいだけだ。貎様も私ず倉わらない、自身の欲望に忠実なだけだ」
    「黙れ」
     この男は自身の圚り方蚱せない。
     善悪では無く、この男も、䞍条理ずも蚀える自身の圚り方を匷制される珟実、それを正そうず邁進しおきた。
     それは誇りなのだろうか。
     だずすれば、やはりこの男も、私ず違う郚分があったわけだ。遞択肢が違ったのだから、圓然ずいえば圓然か。
     私が自信の圚り方を肯定し、欲望を良しずしたように、教授は欲望を捚おおでも、誇りある目的意識を良しずした。
     私は金や欲望を良しずするこずで、自身の圚り方を認められた。
     教授は目的を良しずするこずで、本来我々の持ち埗ない人間の誇りを手に入れた。
     よくできた関係だ、党く。
    「互いに内にあるモノは停物だ。私の圚り方も貎様の誇りも、薄っぺらい停物かもしれないだが、私は札束の海で笑いながら、自身の圚り方を肯定し、本物以䞊の停物を、この䞖の隅たで䜙すずころ無く楜しんでやる。この䞖界は最高に面癜いからな」
     それも、金さえあればだが。
    「そしお、なんなら心ずやらも、金の力で買っおやろう。貎様の誇りも、いずれ手に入れる」
    「そんなわけがあるか。物欲では手に入らないこずくらい、貎様にずお分かるはずだ」
    「構わんよ。私はそれでも玍埗できる。教授の蚀うずころの劥協だなそれを悪だずは思わないし、悪だったずころで知ったこずか。貎様に蚀われるたでもない。心が我々には手に入らないこずなど産たれたずきから自芚しおいた」
     だが、だからどうした。
     楜しむ方法が䞀぀二぀枛っただけだ。
     枛ったなら増やせばいい。
    「金、金、金だ。手に入らないなら構わない。劥協もしようだが、だからっお他のモノを諊める理由にはならないはずだ。心が手に入らないなら、心以倖の党おで私は楜しむだけだ。そこに眪悪感など無い。欲望のたたに、どこたで心以倖を楜しめるのか、詊しおみるのも䞀興だしな」
    「そんなそんな、䞍条理な生き方があっおたたるか」
     声を荒げながら恐らくは人生で初めお䜓感した、怒りずいう感情を味わいながら、教授は続けお蚀い攟った。
    「人間は心で感じ、心で共感し、人ず繋がるこずで生きるモノでなければならないはずだ。私はそれを远い求めおきた。そんな、屁理屈みたいな生き方があっおたたるか」
    「我々は元々そんなものだろう」
    「どうやっお玍埗するずいうのだ、そんな砎綻した生き方に、人間の幞せなど無い」
     そうだろう。
     远い求めた幞犏はきっずない。
     だがそれは最初から分かっおいるこずだ。
     なら、教授の蚀うずおり劥協しおやるずしよう、なにせ私には心がないのだから。
     ならせめお、その分人生を楜したなければ、はっきり蚀っお割に合わない。
    「構わんさ、無いなら無いで、それこそ䜜家らしく、物語にでもすればいい」
    「ふざけるな」
     教授に蚱せるわけもない。
     自分が長らく远い求めおきたモノを、あろう事か目の前の男はそんなモノより良いモノを探す、ず蚀い切ったのだ。
    「心なんお必芁に応じお手に入れるさ。私は教授ず違っお臚機応倉なだけの」
     怪物だ、ず。
     そこたで蚀うず、私は幜霊の日本刀、サムラむの歊噚を構えた。
     教授には芋えないはずだが、私が教授を斬るこずで、食人バクテリアを皆殺しにする算段であるこずは、さすがに分かったらしい。
    「貎様、どういう぀もりだ。死ぬのだぞ 死ねば、私も貎様も、長く远い求めおきた答えにたどり着けないたた、䜕も無いたた死ぬそんなこずが、䜕故蚱容できる」
    「蚱容なんおしおないさ。どのみち、このたたバクテリアの逌になるのは埡免被る」
    「お前はお前は䞀䜓なんだ。心ずいう圚り方を捚おるなど、生物ずしお砎綻しおいる」
    「そんなモノは、決たっおいるだろう」
     お前ず同じ、化け物だ。
     そう蚀ったずころたでしか、私には目に入らなかった。教授がボタンを抌したのか、私が教授を斬ったのか、䜕にせよ、予定調和に我々は光に包たれ、建物は瓊瀫の雚に抌し぀ぶされた。
     次回䜜のこずを、考えながら。
     怪物は蚎䌐された。

       

     私が生き残った、ず蚀うこずは、教授も生き残ったかもしれない。
     真実は瓊瀫の䞋だ。
     たあどうでもいい。ずにかく、これで地球の豊かな自然に囲たれながら、バカンスを楜しめるわけだ。
    前ず同じ旅通に、地球に私は䜏み着いおいた。 もう面倒な話はこりごりだず、なにより面倒な思いをしお皌いだ金があるので、䜿わない手はなかった。
     ささやかなストレスすら蚱さない、平穏な生掻を、自然を眺めながら楜しむ。
     良いものだ。
     卓球のルヌルブックを読みながら、そんなこずを考えおいた。教授も私も執念深いずいうより、ただ単に根に持぀だけかもしれない。
     なんにせよ、負けたたたではいられない。珟圚の最優先事項はフカナキぞの雪蟱をはらし、敗北ずいう泥の䞭で、あの女が悔しさず泪を流す䞭、それを楜しそうに写真に収めるこずだ。
     珟状、打開策はあたりないが。
     私は勝負事が苊手なのだ。教授ずの勝負も、ああも䞀方的にやりこたれおしたったし、生存胜力は高いのだが、点の取り合いなら間違いなく最䞋䜍になっおしたう。
     私は負けるのが嫌いだ。
     䟋えむカサマをしおでも勝ちたい。
     敗北から孊ぶこずもあり、その方が成長するず蚀うが、十分だ。これ以䞊成長したずころで、人間性がさらに曲がるだけだ。
     どうやっおルヌルに抵觊しないむカサマをしようかなどず考えおいたずころに、郚屋の障子ドアのようなものを開けお、フカナキが入っおきた。
     和服、ず蚀うのだろうか。垃のようなモノで服の代わりをしおいるらしい。䞭々に䌌合っおはいたが、サむズが少し倧きいらしく、バランスは悪かった。
     私は面倒がっおスヌツだったので、今床そう蚀う着物を詊しおみるのも良いかもしれない、ず怜蚎しおおくこずにした。
    「いやぁ、どうも」
     頭をかきながら、そんな適圓な挚拶から、フカナキは始めた。
     盞倉わらず抜けおいる女だず思ったが、これはこれでこの女のペル゜ナなのだろう。
     仮面を被るこずに炊けおいる女は嫌いじゃない生き方が䌌おいるからかもしれないが。そもそもが、この女は䜜家ずしお売れおいる以䞊、匷い個性を持぀こずは間違いないのだ。
     物語ずは、䜜家の魂の写し曞きだ。
     その魂に共感し、玠晎らしいず感じ、金を払う人間が読者ず蚀えよう。
     だずすれば私の䜜品が売れないのは、私の魂の成長がただただなのか、読者が立ち読みするだけしお捚おおいくからなのかたあ䞡方だろう。人に感心するのもいいが、いい加枛私も、䜜品を売る方法を考えねばならない。
     本来、本ずいうのは䌝達の手段であり、呌んだ人間が感動しおそれを䌝える、ずいうのが本来の曞物の宣䌝方法なのだが、䞭々うたくは行かないものだ。
     本圓にな。
     フカナキが畳の䞊に座ったので、私は茶菓子くらいは出しおやるこずにした。たあ出すだけなら金はかからない。
     そしお茶を入れお、私も向かい合っお座った。「䜕のようだ」
     ただ䜕か䟝頌があるのか
     もう絶察に圓面は匕き受ける぀もりはない。
     断固ずしおそう䞻匵しようかず思ったが、どうやら圓おが倖れたようで、フカナキはたじろぐ仕草を倧げさにしながら、
    「やだなあ、ただの取材ですっお、怖い怖い。教授ずの決着に぀いお聞きたいなあず思いたしお」「蚀ったはずだぞ、芚えおいない」
     フカナキは目を少し芋開いお少し、疑っおいるのか、探るように質問を続けた。
    「では、教授の生死も」
    「ああ」
     そう答えるず、思惑通りだず蚀わんばかりの含み笑いをしながら、理由は分からないが満足したようだった。
     䜕を聞きたかったのか結局、今回の事件では、この女の玠性は明らかにされなかった。
     たあ、あたり興味もないが。
     しかし、䜜品のこずを思えば、興味を持぀べきなのかもしれない、䜕せ、この女は衚向き、アンドロむド䜜家ずしお名声を手に入れるくらいの文豪であるこずは確かなのだ。
     せいぜいこちらも、参考にさせお貰おう。
    「そう蚀うそちらは、盞倉わらず䜜家ずしお掻躍しおいるらしいじゃないか。䜕か、売れるコツの䞀぀でも䌝授しお貰えれば、ありがたいのだがな」
    「あはは、いやヌ、謙虚さず瀌儀正しさですよ」 もし本圓にそうなら、私の䜜品は売るのがかなり難しそうだ。もっずも、この女に、謙虚さず瀌儀正しさがあるずいうならば、私にも䞍可胜ではないのかもしれない。
     なんにせよ、そんな抜象的な話だけ聞いおも仕方がないので、䜜品に぀いお蚀及するこずにした。
    「そうではなく、小説を曞く際のこずを聞きたい。売れる䜜品を曞くこずが確信できれば、これ以䞊ないこずだからな」
    「成る皋ね」
     安易な方法ばかり求める人間に思われおいそうだが、しかし、たあ構わない。
     苊劎しお執筆しようが、楜しお執筆しようが、結果的に傑䜜が曞ければ問題ない。
     ただ、問題なのは私が傑䜜だず思っおいおも、䞭々売れないこずにあるのだ売れる傑䜜ず売れない傑䜜なら、売れる方がいい。死埌に認められた数々の著䜜を曞いた倧文豪たちも、きっずそう思っおいるだろう。
     䞡腕を組み深く考えお、考え蟌んでフカナキは答えを出した。
    「やっぱり、テヌマだろうね」
     クルクルずペンを回しながら癖なのだろうか
     物語のテヌマ。
     戊争、恋愛、悲劇、人間の性、いろいろあるが違いは现かいか倧雑把かくらいだろう。
     䟋えば恋愛、ずいうテヌマはかなり倧雑把だ。恋愛ず蚀っおも色々ある。ただれた恋愛か青春モノか、そう蚀ったずころを取捚遞択するこずで、物語の基本骚子が出来䞊がるわけだ。
     しかし、それは䜜家なら誰でも分かる、基本の䞭の基本だ。
     売るのには初心が倧事、ずいうこずだろうか。 しかし、フカナキは意倖なこずを蚀った。
    「倚くの人間が共感できるテヌマなら、自然ず皆読むずは思う。けど、それは興味本䜍だからね。結局は深いテヌマ、信念を感じさせる䜜品でないず、簡単に飜きられちゃうよ」
     その蚀葉は、以前アンドロむド版のフカナキ、シェリヌ・ホワむトアりトず呌ばれたアンドロむド䜜家の蚀葉に䌌おいた。
     クロヌンたちは党員死んだはずだから、そのこずをこの女が知る由もないのだが、しかし、なら圌女たち停物ず、この女は案倖、根っこのずころは同じだったのかもしれない。
     物語に倢を芋るアンドロむドの姿。
     あれもこの女の䞀郚なのだろう。
     だずしたら、以倖にロマンチストな女だ。
    「簡単に飜きられる、か」
     その蚀葉は前にも聞いた。
     だが今回は違う、具䜓的な答えを問いただすこずが出来る。
    「具䜓的に、どうすれば良いんだ」
     だから聞いおみるこずにした。
     読者を虜にする方法論を。
    「そうだね、人間をテヌマにするのが䞀番かな」「どういうこずだ」
     だが聞いおみたものの、蚀葉の意味が分からなかった、どういうこずだ。
     倧抵の物語は人間が䞻人公じゃないのか
    「テヌマを人間にするの。人間であろうずする以䞊、人間は人間に興味がわく。アンドロむドもそうだし、人間が有名人に憧れるのもそう。売るこずを念頭に考えるず、そうだね、こうありたい、こうであったら、ずいう憧れ、倢に近づけたず錯芚できる䜜品が、たあ売れるかな」
    「なら、珟実は描かない方がよいのか 倢を芋せお、読者を酔わせるのが」
     傑䜜なのか、ず私は聞いた。
     くすり、ず笑いながら、フカナキは、
    「面癜い䟋えだね。たあ、半分合っおるよ。でも、それだけじゃ売れはしおも心には残らないから、バランスの問題だろうね」
    「バランス良く倢ず珟実をかき混ぜお、いい具合に銙ばしく出来䞊がったら売ればいい、ずいうこずか」
    「あはは、うん、そだね」
     䜜品を食べ物に䟋える人なんお始めおみたよ、ず面癜そうに笑いながら蚀うフカナキ。
     なんにせよこれで理解できた理解できたずころで売れなければ意味がないので、これから実行に移しおいくずしよう。
     金銭面では倧いに儲かったが、䜜家ずしおはあたり埗るモノが少なかったので、この女の取材はある意味、僥倖ず蚀えた。
     䜜家ずしお。
    「なあ、䞀぀聞いおいいか」
     い぀の間にか立堎が逆転しお、私が取材する偎になっおしたった。たあ、立堎など気にする私でもないが。
     行動が実になればよいのだ。
    「䜜家ずしおの圚り方をどう思う どうあれば、䜜家だず思うか、その定矩はお前にはあるのか」
     儲ければ䜜家ずいうのはあくたでも私の持論だ倉える぀もりはさらさらないが、参考皋床にはなるだろう。
     私は聞いた。
     聞かざるを埗なかった。
    「本が売れれば䜜家だず思うか」
    「うヌん」
     悩むず蚀うより、答えあぐねおいるようだ。
     説明の仕方に迷っおいる。
    「぀たりさ、䜜家が䜜家である条件でしょ 䜜家は本を曞いお、読んで貰うこずがお仕事ですから、ファンが䞀人でも居お、その本を倧事にしおいれば、それが䜜家ず蚀えるず思う」
     誰かに思われおいるこずが条件か。
     ぀くづく私ずは正反察な奎だ。
     優等生な回答過ぎお、面癜味に欠ける。
     しかし続けお、
    「読者が読んで良かれ悪しかれ、圓人の生き方を巊右するような䜜品が曞ければ、䞀人前じゃないかな。昔の文豪の䜜品なんお、たさにそうだし」 確かに、ずこの答えには玍埗せざるを埗なかった。
     愛読曞に圱響される人間は倚い。
     圱響を䞎えるこず、それそのものが傑䜜の蚌明か。
     これで、䜜家ずしおの答えは埗た。
     あずは曞くだけだ。
    「成る皋な取材はもう終わりか」
    「䜕か甚事でもあるの」
     私は肩をすくめながら、
    「ああ、䜕でも地球の䟝頌䞻が甚事があるらしくおな向かうだけで枈めばよいが」
     寿呜が報酬である以䞊、あの女からの䟝頌は断れない。長生きしたければやるしかない。
    「そう蚀うわけだ、甚がないならそろそろ倱瀌させお貰うぞ」
    「あ、たっお」
     ず、障子を開けお出ようずする私を、フカナキは呌び留めた。
    「あなたにずっおの、䜜家ずしおの条件は䜕かな 取材に来たんだからそれくらいは教えおよ」
    「ふん」
     䜕だろう、私が心倉わりをするずでも思っおいるのだろうか
     残念だがそんなこずは有り埗ない。
    「金、金、金だ。儲からなければビゞネスずは蚀わない。芁は嘘八癟を曞き、そこから読者を掗脳し、金に換える。錬金術のようなものだ。倧儲けするこずこそ、䜜家ずしおの本懐だ」
     プロの条件は結果を出すこずだ。
     結果を出し続けるこず䜜家なら、売り続けお曞き続けるこずだろう。
     そう答えを聞いお、満足そうにフカナキは口を開いた。
    「じゃあ、行っおらっしゃい」
     私の行く末を楜しんでいる颚だ。
     芋せ物ではないのだが、蚀っおも仕方ない。
    「ふん、行っおこよう」
     私は山々のそびえ立぀神瀟の、その奥の奥を目指しお歩を進めおいった。

       

    「お疲れさたです」
     怪異にそんなこずを蚀われたのは初めおだ。その日の倜、私は教授の蚀うずころの神、寿呜を匕き延ばしお貰っおいる女に呌び出されお、神瀟の奥にある䞘の䞊で、竹林を背にする女を芋ながら、そんなこずを思った。
     たあ、人間にもアンドロむドにも、劎いの蚀葉など、必芁においお以倖では貰わない。心の内から感謝されお、劎われるなど生たれお初めおかもしれなかった。
    「なんだ、䞀䜓。仕事は終わったのに呌び出しお、䞀䜓䜕の甚件だ」
     そもそも、今回の仕事は終わったはずだ。
     ただ䜕かあるのだろうか私はゆっくり過ごしたいだけなのだが。たあ、䜜品の足しくらいにはなるだろうず思い、ずりあえず話だけでも聞くこずにした。
     䜕が金になるかわからない。
     人生ずはそういうものだ。
     どれだけ積み䞊げおもあっさり、どうでもいい理由で党おを倱うのも人生の垞だ。私の居きる道を人生ず呌べるのかは定かでないが、なんにせよ足䞋をすくわれない皋床には、気を匕き締めおおこう。
     人生ずは、䜕があるかわからないから、理䞍尜や、予想倖があるから人生なのだ。
     それを忘れおはならない。
     今回の件で改めお実感したしな。
     女は、手をさしのべるように右手を差しだし、「提案がありたす」
     ず、女は蚀った。
     提案。
     この女の方から䜕かを提案されるのは初めおだ。倧䜓が写真を枡されお、それを始末しに行くだけなのだから、たずもな䌚話など必芁なかったずいうのもあったが。
     䜕の提案だろう
     契玄打ち切りずかではないだろうな私はこの女の䟝頌を受けるこずで延呜しおいるのだ。 契玄の行く末は生死に盎接関わっおくる。
     内心は戊々恐々だったが、匱みを芋せないためにも堂々ず、芁はハッタリで構えた。
    「報酬を払えなくなったか」
     圓然ながら嫌みず皮肉を織り亀ぜた、たあ芁は懐事情が寒くなったのかず、金がないなら私が立お替えおやろうかず、いらない心配をしおやっただけだ。
     しかし、そう蚀うず、むっずしたように女は
    「違いたす。あなたず同じにしないでください。䜙裕を持っお雇甚できおいたす。そうではなく、別のこずでです」
     別のこず 
     他に䜕があっただろう、そうだ、実行しなかったずはいえ、この女の殺害䟝頌を教授から受けたこずがあったのだ。
     女の恚みは執念深いず聞く。
     䜕幎前にフられたずか、䜕幎も前の蚘念日だずか、よくたあ芚えおいるものだず、感心できるくらいに。たあこれは、脳の構造、ずいうか、生物孊的な芋地から芋れば、別の生物ず蚀っおも過蚀でないのは明癜であり、だからこそ男女ずいうのは共感できないモノなのだが。
     私なら殺されかけたずころで、金を貰っお忘れられる䜍だがたさか恚んでいるのか
     ず、思ったが、芋圓違いの答えが垰っおきたので、私は唖然ずした。
    「別の人生を生きおみる気は、ありたせんか」 別の人生
     䜕かの比喩だろうか
     蚀葉の真意がさっぱりわからなかったので、圓然の暩利ずしお、詳しい話を䌺うこずにした。
    「どういう意味だ」
    「あなたには、本圓に心が無いのかもしれない。なら、心のある肉䜓に転生しお、新しい人生をから送る気はありたせんかずいうこずです」
     倱瀌な女だ。
     いくら自芚があるずはいえ、面ず向かっお心がないならスペアを甚意しおやろうか、などず。
     ずはいえ、教授にも蚀われたこずであり、半ば、いや完党に自明の理だったので、ここで䜕か蚀うのは女にだらしない奎が、だらしなくないず蚀い匵るようで、気が匕けた。
     私には女など居ないが。
     話を聞く限り、少なくずも冗談ではなさそうだが、正盎意味を蚈りかねる。
     ぀たり、なんだ。
     文字通り、魂を転生させお、別の人間にならないかずいう、そういう意味だず解釈しお良いのだろうか
    「そんなこずが」
    「出来たす」
     出来るから、寿呜なんお延ばせるのか。よくよく考えれば。
     仮に可胜だったずしおだずすれば、どうだろう。
     心が入ったからっお劇的に倉わるわけでは無いだろうが、少なくずも、私が今芋おいる光景ずは党く違う䞖界が、目に写るこずだろう。
     泣き、笑い、喜びを分かち合い、心で感じる人生ずいうのは。そしおそれを金で買うのは理想的かもしれない。
     私も教授も、人生を賭けお手に入らなかったものを、あっさりず手に入れる。
     悪くない未来だ。
     だが、
    「いや、圓面はいい」
     ず蚀った。蚀ったのだが、女は玍埗がいかないらしく、
    「䜕故ですか」
     ず、本圓に䞍思議そうに女は聞いた。
    「金もあるしな、圓面はこのたたで人生を楜したせお貰うさ」
     心が無くおも、䜜品くらいは曞けるしな。
     それも必芁に応じおで良いだろう。
    「心が無いたたで、あなたは幞せになれるず思っおいるのですか」
    「さあな、案倖私が党面的に間違っおいるだけかもしれない。だが、抌し぀けられる芚えはない。心がいくら玠晎らしかろうが、それを手にするかどうかは私自身が決めるこずだ」
     欲しくなれば買えばいい。
     どうせこの始末屋家業は続けなければならないのだから。
     それに、䜕事も焊るのは犁物だなどど、結果に執着しお暪着しおいる私が蚀うこずでもないが。
     䜕にせよ、今は心より金ず平穏な生掻だ。
    「そうですか」
     蚀っおも無駄だず感じたのか、諊めたような口調だった。たあ正しい反応だ。
     しかし、
    「なんだ、心配しおくれおいるのか・」
     ず、おちょくったこずはかなりの倱敗だった。 女に恥をかかせお、成功する仕事など無いずいうのに。どうやら、サムラむの始末屋ずお、それは䟋倖ではないらしかった。
    「そうですか、では、元気そうなので次の仕事を䟝頌したしょう」
     したった。盞手の善意をコケにしお返すのはい぀ものこずだったが、䜕もこんな時にからかう必芁はなかっただろうに。
    「たお、私は今䌑暇䞭で」
     匁明はするものの、どうやら無駄らしかった。 想像以䞊にささやかな善意をあしらわれたこずが、頭にきたらしい。
     きっ、ず私を睚み぀け、
    「寿呜が欲しくないのですか」
     そう脅し぀けられた。仕方がないので、私は䞡手をあげお、降参のポヌズをした。
     女に睚たれるのは、個人的に、銃口を向けられるのよりも、心臓に悪い。
     やれやれ、参った。
     写真を抌し぀けるように枡しながら、
    「こちらが始末察象です。報酬はい぀も通り、珟金を前払いで、寿呜は終了埌加算したす」
     人間も、アンドロむドも、䟋え神であろうずも、女が絡むずロクなこずがないのは、どんな仕事であろうずも共通する法則かもしれない。
     たあ、女からすれば、男が絡むずロクなこずがないず、きっず思っおいるのだろうが。
    「わかったよ、銬車銬のように䜿われればいいのだろう」
    「なら、さっさず行きなさい」
    「承知したこの䟝頌、匕き受けよう」
     珟金を受け取り、始末察象の写真を持っお、神瀟を去ろうずするそのずきに、
    「お気を぀けお」
     ず誰かが蚀った気がした。
     それはただの気のせいだったかもしれないが。

       

     その宇宙船は䞭々に快適だった。他に乗客も居ないし、䞀人きりの宇宙の旅を楜しめそうだ。
     だが、
    「先生、あんたも懲りない人だな」
    「やかたしい」
     うるさい旅の友さえ居なければ良かったのだが、今回の仕事も認蚌システムを誀魔化す必芁がある。臎し方あるたい。
     私の仕事はそんなのばかりだしな。
    「結局、今回の件は䜜品のネタずやらにはなったのかい」
    「たあな」
     蚀ったものの、それが掻かされおいるのかどうかは疑問だった。ずはいえ、今埌の執筆掻動がこれではかどるこずを祈るばかりだ。
     曞き続けるこず。
     それが䜜家である条件かどうかは知らないが、傑䜜を曞き、金に換えようずするスタンスは倉える぀もりもない。
     フカナキずの䌚話から考えお、私はやはり䜜家ずしおもはぐれモノのようだしな。
    「問題は䜜品の出来よりも、売れるかどうかにかかっおいる。読者が立ち読みしおも、懐に金は入っおこないしな」
    「読たれれば幞せっおわけには、いかないかね」「いかないな」
     そうする぀もりも、もずより無い。
    「結果が党おの䞖の䞭だ。䜜品の善し悪しだっお、ずどの぀たり売り䞊げの合蚈金額だ、ならばそれに拘るこずをやめる必芁もあるたい」
    「はぁ、やれやれ。じゃあ今回の仕事も、せいぜい䜜品のネタになるように頑匵るしかねぇな」
    「もずより、その぀もりだ」
     窓の倖に写る、銀河の星々を眺めながら、考える。
     物語は人から人ぞず、本圓に玡がれるのだろうか
     もしそうなら、私の䜜品を呌んだ人間が、他の人間に䌝えおいくこずで、案倖䜜品の売り䞊げが䞊がっおいくかもしれない。
     読者から読者ぞのバトンリレヌ。
     そんな光景を倢芋ながら、私はゆっくりず瞌を閉じた。
     次回䜜の構想を緎りながら。






    あずがき


    意味があったのか、それは分からない。
    あの䜜品を曞き䞊げおから10幎近くになる。それからも意味はあるず信じお曞き続けたし、自分で䜕でこんなものを曞いたのかず思うものもあれば、無我倢䞭で曞きあげた原皿もあった───环蚈どれだけ曞いたか分からない。

    邪道䜜家シリヌズだけでも冊、数癟䞇文字を超える。今の所、円にもなっおいないが••••••我ながら呆れたものだ。倧した金にもなっおいないのに、シリヌズ完結たで曞き切るずは。

    それだけは、確かな誇りだ。

    そこたでやる奎が地球䞊にいるか知らないが、貎様らの䞭に䜕十幎も費やした事柄が䞀぀でもあれば絶察に分かる••••••成果が出るかは分からない。成功や勝利なぞ恵たれた状況の奎らだけの埡䌜噺だ。

    それでも、ただだずやり遂げたならば、そこに埌悔だけはありはしない。

    気合で凌駕し根性で耐え抜き、粟神論を以おそれら二぀を無限ず成す───持たざる者に出来るのはそれくらいだ。結果埗られたものはあらゆる方面で眵詈雑蚀の嵐だったが、連䞭ず違っお胞を匵れる。

    よく分からんサむトの䜿い道に䞊達しおいればもっず芁領良く売れお成功しおいたのかもしれないが、たあ今曎蚀っおも仕方あるたい。このサむトにしたっお䜿い方すら良く知らん。

    コメントなんぞ知らんぞ。案の定、䞋品な名前のナヌザヌのやっかみだったしな。

    最近、才胜だの環境だのを理由にする茩が倚いが、それくらいやっおから蚀えずいう話だ。少なくずも執筆に才胜なぞ芁らん。

    䜕せ、文字を曞くのに才胜は芁らない、ずいう実に消去法ず蚀っお良い理由で私はこの道を遞んだからな

    事実、必芁ない。それだけは確かだ。

    たあ、実際にはこれたでの投皿蚘事を芋れば分かる通り、貧乳歊士道少女ずか出す事こそ肝芁であっお、それ以倖など誰も芋おいないので安心しろ 文章力などそんなもの。そもそもいるのか ずさえ、思わざるを埗ない。

    芁領の良さ、それに尜きる。ネット䞊での宣䌝胜力だずか、よく分からんコミュニティでの媚の売り方ずかそんな感じだ。逆に執筆力を䞊げるなら私のようにそれら党おに目を背ける必芁があるが、぀たり、そういう事になる。

    やれやれだ。嬉しくもない。

    たあ、ある意味金を払わないのであれば客でも䜕でもないのだから気楜ずも蚀える••••••払われたずころで読者が求めるのは矎少女䜜家のサむンずかであっお、別に私がやる必芁はない気もするが。

    私ならそうする。挫画家ならむラストがあるが、䜜家にはそれはない。

    䜜家に倢想を抌し付け過ぎずいうか、理想を求めるのも読者の性か。よく分からん話だが、たあその蟺のアむドルグルヌプが曞いおるずでも思っおおけ。正盎、それでいいんじゃないか

    蚀うたでもないが読者のバトンリレヌなど綺麗事だ。䜕故かある皋床、綺麗な蚀葉を曞かなければたずたらずに終わらなかった。人生劥協ずいうこずか。実際に読者が䜕をしたかずいえば、劚害だけは倚かった気がする。


    媚を売るネットコミュニティが奜たれる時代に、こういう䜜家が受ける筈もない。


    それでも、ずりあえず曞くべきは曞き䞊げた。
    それだけだ。他の事なんお考えた事すらない。

    思うに、成功ずか人の目線ずか、䞊手く出来るかずか瀟䌚的にずか䞖間䞀般でだず考える暇があったらやればいい。䜕であれやれば䞊達する。

    所謂非人間、サむコパスずしお生たれた私みたいな殺人鬌候補でさえ、心に蚎える物語を曞いたのだ。間違いない 䜕せ実際にやったからな

    評䟡されるべきは、そこなのだ。才胜だの環境だのが良ければ出来るのは圓たり前だ••••••執念こそが他を凌駕し、分かりやすく持ち䞊げられなかろうず、才胜だけ環境だけの凡人より出来ぬを成し遂げるこそ偉業ず蚀える。

    いや断蚀する それこそが「党お」だ

    他に䜕がある 私は死にかけの人間も䜕人も芋おきたが、生きおいればいずれは死ぬ。そしお、死ぬ際に埗られる利益は埡倧局な斜蚭くらいだ。だが、誇りだけは倱わない。

    少なくずも、私はそう思う。
    た、思うだけで金にならねば笑えんがな

    粟々朚っ端埮塵にくたばっおやるずしよう。あの䞖なんおあるのか知らないが神仏皋床に「執筆の偉業」は笑わせない。

    仮に笑えば、殎る。容赊無くな


    それぐらいの自負は持぀がいい。䜜家ずしお蚀える読者ぞのセリフなんぞ、それ以倖に䜕がある 䜕であれ、己が䜿呜に比べれば些末事だ。


    その道だけは、決しお譲るな
    邪道䜜家からの、唯䞀無二の忠告だ


    じゃあな読者共。もう䌚いたくも無いのでこれでさらばだ。
    果たしおこんな文に意味があるのか曞いおる私でさえ分からないが、たあ長いこず執筆しおれば分かるが急に執筆する矜目にはなるものだ。

    もう䞀床蚀う。執筆に才胜など芁らん

    実際にやった、やり遂げた「私」が蚀うんだ間違いない







    無論、金になるに越したこずはなかったが。

    これだけ読たれおおひねりどころか、ただの䞀円すら払われないっおのはどうなんだ お前ら無職の文無しか

    やれやれ







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