“ちゃん”をやめて、“さん”で呼んだ日
”ちゃん”で呼ぶことに、少しだけ引っかかった__。
あるコミュニティのセッションでのこと。
自己紹介で、ひとりの女性が、
「〇〇ちゃんって呼んでください」と笑顔で言った。
彼女は、有名大学の3年生だった。
場には年配も多く、そのあどけなさに、どこか空気もやわらいだ。
質問が始まる。
「〇〇ちゃんは、どんな勉強を…?」
「〇〇ちゃんは、いつからそれを…?」
親しみを込めて、みんながそう呼ぶ。
僕の番が来た。
同じように「〇〇ちゃんは…」
と言いかけて、
止まった。
“ちゃん”って何だろう。
距離感を、
縮めたつもりになっているだけじゃないのか。
優しさの、
フリをしているだけじゃないのか。
呼び方を変えることで、失礼になるかも知れない。
一瞬、迷って__。
「〇〇さんの夢は何ですか?」
少しだけ、場の空気が止まった気がした。
彼女は、まっすぐに答えた。
「私の野望は、車椅子に対する社会のイメージを変えることです!」

思わず、心が揺れた。
そんな質問をした僕を、
どう思ったのかは、わからない。
でも、
確かなのは、その答えに僕は感銘したこと。
あどけさの奥に、凛とした芯があった。
なにより、
ちゃん付けて呼ばなくて、よかった。
呼び方を変えたことで、
距離が縮まったのか、どうかはわからない。
でも、確かに気づいた。
