
創作エッセイ「まっすぐじゃなくても」
「傾いてるよ。」
娘にそう言われて、ガジュマルを見た。
確かに傾いている。
小さなガジュマルを育てている。
はじめは花言葉が気に入ってスパティフィラムを選んだ。
ところが、コバエが発生してしまい、あえなく挫折。
その代わりにやってきたのがガジュマルだった。
この子は土ではなく、炭を原料にしたチャコボールで育てている。
土と違ってコバエの心配はほとんどないが、よほど根を張らないと安定感がない。少し触れただけでも動いてしまう。
だから、気になるけれど、できるだけ触らないようにしていた。それがよかったのか、ガジュマルは少しずつ大きくなった。ところが、いつの間にか片方に傾いていたのである。
もともと気になっていたので調べてみると、どうやら日光の当たる方向が関係しているらしい。まっすぐ育てるには、鉢の向きを変えたり、支柱を立てたりして矯正する方法もあるという。
鉢の位置はときどき変えている。
それでも、この子は同じ方向へ伸びていく。
きっと、その向きが好きなのだろう。
まっすぐ育つのがいいというのは、人間の勝手な思い込みかもしれない。
少しくらい傾いていてもいい。
好きな方向へ伸びていけばいい。
傾いたガジュマルを見ながら、私は鉢を回さず、そのままにしておいた。