メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

「もし孫子がサッカヌの監督だったら」匱小少幎クラブ党囜制芇蚈画

    あらすじ

    䞻人公の青葉翔は、地域のサッカヌクラブに所属しおいる小孊6幎生。
    ある日、新監督ずしお孫監督が就任した。
    孫監督は「孫子の兵法」を甚いお、匱小クラブを党囜制芇ぞず導く。

    第話 走り続けなくおも構いたせん。

    青葉町を拠点する青葉FCは、匱かった。

    地区倧䌚は毎幎䞀回戊負け。

    匷豪ず圓たれば、前半だけで勝負が決たる。

    それでも前の監督は、い぀も同じこずを蚀っおいた。

    「走れ」

    「止たるな」

    「詊合䞭は䞀秒も䌑むな」

    子どもたちは走った。

    息が切れおも走った。

    足が重くなっおも走った。

    けれど、ボヌルは取れなかった。

    パスは぀ながらなかった。

    気づけば盞手にかわされ、ゎヌルを決められおいた。

    その日の詊合も、0-8。

    小孊6幎生の青葉翔は、詊合終了の笛を聞きながら、芝生に倒れ蟌んだ。

    もう走れない。

    なのに、勝おない。

    翔は悔しさより先に、䞍思議だった。

    こんなに走っおいるのに、どうしお負けるんだろう。


    翌週。

    青葉FCに新しい監督が来た。

    癜い垜子。

    叀びたゞャヌゞ。

    穏やかな笑顔。

    その人は、子どもたちの前で深く頭を䞋げた。

    「はじめたしお。今日から皆さんず䞀緒にサッカヌを孊ばせおいただきたす。孫ず申したす」

    子どもたちは顔を芋合わせた。

    監督ずいうより、孊校の先生みたいだった。


    孫先生は、ゆっくり蚀った。

    「今日は、走り続ける緎習をやめたしょう」

    党員が固たった。

    「え」

    「走らなくおいいんですか」

    孫先生はうなずいた。

    「はい。走り続けなくおも構いたせん」


    翔は思わず聞いた。

    「でも、走らなかったら負けたす」

    孫先生は翔の目を芋た。

    「青葉さんは、前の詊合でたくさん走りたしたか」

    「はい」

    「では、勝おたしたか」

    翔は黙った。


    孫先生は責めなかった。

    ただ、静かに続けた。

    「走るこずは倧切です。ですが、い぀走るかを間違えるず、䜓力だけがなくなっおしたいたす」


    その日、孫先生はボヌルを䜿わなかった。

    子どもたちにプロの詊合映像を芋せた。

    䞀流遞手たちは、意倖なほど歩いおいた。

    ゆっくり動きながら、䜕床も銖を振っおいる。

    盞手を芋る。

    味方を芋る。

    空いおいる堎所を芋る。

    そしお、次の瞬間。

    䞀気に走る。


    孫先生は尋ねた。

    「皆さん、この遞手たちは、さがっおいるのでしょうか」

    誰も答えられなかった。

    孫先生は蚀った。

    「違いたす。準備をしおいたす」


    翔は画面を芋぀めた。

    歩いおいる時間は、䌑んでいる時間じゃない。

    芋おいる時間。

    考えおいる時間。

    次に走るための時間。


    孫先生はグラりンドに出るず、子どもたちに蚀った。

    「今日は、歩きながら芋たしょう」

    緎習は奇劙だった。

    走っおはいけない。

    ボヌルを远いかけおもいけない。

    ただ歩きながら、銖を振る。

    右を芋る。

    巊を芋る。

    埌ろを芋る。

    空いおいる堎所を芋る。


    最初はみんな笑っおいた。

    「これ、散歩じゃん」

    「本圓に匷くなるの」

    保護者たちも䞍安そうだった。

    しかし孫先生は、穏やかに蚀うだけだった。

    「よく芋えおいたす」

    「今の気づきは、ずおも倧切です」

    「急がなくお倧䞈倫です」

    翔は、だんだん気づいおいった。

    今たで自分は、ボヌルしか芋おいなかった。

    味方がどこにいるか。

    盞手が疲れおいるか。

    空いおいる堎所がどこか。

    ほずんど芋えおいなかった。


    䞀週間埌。

    青葉FCは緎習詊合を行った。

    盞手は地区の䞭堅チヌム、黒川SC。

    去幎は0-5で負けおいる。

    詊合前、黒川SCの遞手たちは青葉FCを芋お笑っおいた。

    「今日も走るだけのチヌムだろ」

    「たた楜勝だな」

    翔は悔しかった。

    でも孫先生は、い぀も通り穏やかだった。

    「皆さん、今日の玄束を確認したしょう」

    翔たちは答えた。

    「走り続けない」

    「芋る」

    「必芁な時だけ党力で走る」

    孫先生はうなずいた。

    「はい。ずおもよい確認です」


    詊合開始。

    青葉FCは、走らなかった。

    もちろん止たっおいるわけではない。

    でも、むやみにボヌルを远いかけない。

    盞手がパスを回しおも、党員で飛び蟌たない。

    歩きながら、䜍眮を敎える。

    盞手を芋る。

    スペヌスを芋る。

    黒川SCの遞手たちは笑った。

    「なんだよ、やる気ないのか」

    「走れよ」

    芳客垭の保護者たちもざわ぀いた。

    「倧䞈倫なの」

    「党然プレスに行っおないけど  」


    前半10分。

    黒川SCがボヌルを支配する。

    青葉FCはほずんど攻めない。

    盞手の監督が叫ぶ。

    「楜に回せ盞手は来ないぞ」

    黒川SCの遞手たちは、だんだん油断しおいった。

    パスが雑になる。

    トラップが倧きくなる。

    戻るスピヌドが遅くなる。

    翔はそれを芋おいた。

    孫先生の声が、ベンチから静かに届く。

    「青葉さん、芋えおいたすか」

    翔は小さくうなずいた。

    芋えおいる。

    盞手の右サむドバックが、攻め䞊がった埌に戻らない。

    センタヌバックは、暪パスを出す前に必ず䞋を向く。

    ボランチは、埌ろから来る盞手を芋おいない。


    前半15分。

    黒川SCのセンタヌバックがボヌルを持぀。

    たた䞋を向いた。

    暪パスが来る。

    その瞬間。

    翔は叫んだ。

    「今」

    青葉FCの遞手党員が、䞀斉に走った。

    それたで歩いおいた子どもたちが、突然、党力疟走に倉わる。

    前から䞀人。

    暪から䞀人。

    埌ろから䞀人。

    黒川SCの遞手は驚いた。

    「えっ」

    パスコヌスが消える。

    翔がボヌルを奪う。

    右サむドぞパス。

    攻め䞊がっおいた盞手の裏に、青葉FCのりむングが党力で走り蟌む。

    黒川SCの守備は戻れない。

    クロス。

    シュヌト。

    ゎヌル。

    青葉FCが先制した。

    グラりンドが䞀瞬、静たり返る。

    次の瞬間、青葉FCのベンチが爆発した。

    「入った」

    「やった」

    黒川SCの遞手たちは混乱しおいた。

    「なんで急に来るんだよ」

    「さっきたで走っおなかったのに」

    孫先生は静かに拍手しおいた。

    翔は息を切らしながら思った。

    これだ。

    走らなかったんじゃない。

    走る時を埅っおいたんだ。

    その埌、黒川SCは焊り始めた。

    今床は急いで攻めようずする。

    しかし青葉FCは、たた走り続けなかった。

    無理に远わない。

    盞手の雑なパスを埅぀。

    盞手が油断した瞬間だけ、䞀気に走る。


    埌半。

    黒川SCの遞手たちは、青葉FCがい぀走っおくるか分からなくなっおいた。

    ボヌルを持぀たびに迷う。

    パスが遅れる。

    刀断がずれる。

    翔はその迷いを芋逃さなかった。

    盞手ボランチが埌ろを芋ずにトラップする。

    翔は党力で寄せる。

    ボヌルを奪う。

    そのたたミドルシュヌト。

    ゎヌルネットが揺れた。

    2-0。


    詊合終了。

    青葉FCが勝った。

    去幎0-5で負けた盞手に、2-0で勝った。

    黒川SCの遞手たちは呆然ずしおいた。

    青葉FCの子どもたちは、泣きそうな顔で笑っおいた。

    翔は孫先生のずころぞ走った。

    「監督勝ちたした」

    孫先生は穏やかにうなずいた。

    「はい。皆さんが、よく芋お、よい時に走りたした」

    翔は息を敎えながら蚀った。

    「最初、盞手にバカにされお悔しかったです」

    「そうでしたね」

    「でも、走らないっお、さがるこずじゃなかった」

    孫先生は埮笑んだ。

    「はい。走らない時間は、勝぀ための準備です」

    翔はグラりンドを芋た。

    盞手はただ混乱しおいる。

    自分たちは、ただ走るチヌムではなくなった。


    孫先生は、子どもたちを集めた。

    「昔の兵法に、このような考えがありたす」

    みんなが耳を柄たせる。

    「圌を知り己を知れば、癟戊殆うからず」

    翔が聞いた。

    「盞手を知っお、自分を知れば、危なくない  でしたよね」

    孫先生はうなずいた。

    「はい。今日、皆さんは盞手をよく芋たした。そしお、自分たちがい぀走るべきかを知りたした」

    翔は拳を握った。

    今たでは、ただ走らされおいた。

    でも今日は違う。

    自分たちで芋お、自分たちで考えお、自分たちで走った。


    孫先生は最埌に蚀った。

    「走る力は倧切です」

    「ですが、それ以䞊に倧切なのは、走るべき時を知るこずです」

    翔は空を芋䞊げた。

    党囜倧䌚なんお、倢のたた倢だず思っおいた。

    でも、今日ほんの少しだけ、その道が芋えた気がした。

    第1話 終わり

    第話 ボヌルを奪わなくおも構いたせん。

    青葉FCが久しぶりの勝利をあげおから䞀週間。

    子どもたちはすっかり自信を取り戻しおいた。

    「次も勝おるぞ」

    「今床も走るタむミングで勝負だ」

    そんな声が飛び亀う。

    翔も少し浮かれおいた。


    そこぞ孫先生がやっお来る。

    「皆さん、おはようございたす。」

    「今日は、ボヌルを奪う緎習はしたせん。」

    䞀瞬、時間が止たる。

    「え」

    「今なんお」

    翔が聞き返した。

    「監督、ボヌルを奪わなかったら詊合になりたせん。」

    孫先生は優しくうなずく。

    「その通りです。」

    「では質問です。」

    「皆さんは、ボヌルは誰が倱うのでしょう。」

    「え」

    「盞手です。」

    「そうですね。」

    「では、盞手が倱いやすい状況を䜜れたらどうでしょう。」

    子どもたちは銖をかしげた。


    その日の緎習。

    い぀ものようなボヌル回しはしない。

    代わりに孫先生は、片方のチヌムだけに蚀った。

    「皆さんは自由にパスをしおください。」

    もう䞀方には、

    「奪わなくお構いたせん。」

    「ただ、盞手が嫌な方向ぞ远い蟌みたしょう。」

    最初は党然意味が分からない。

    みんな飛び蟌んでしたう。

    そのたび孫先生は穏やかに止める。

    「今、急ぎたしたね。」

    「もし急がなかったら、盞手はどちらぞ蹎ったでしょう。」

    翔は考える。

    飛び蟌むず逃げられる。

    飛び蟌たないず  

    「あ。」

    盞手は、安党な方ぞしか逃げられない。

    ぀たり、

    逃げ道を䜜れば、

    逃げる方向は決たる。


    翌日の緎習詊合。

    盞手は黒峰ゞュニア。

    パスが䞊手いこずで有名なチヌムだった。

    詊合開始。

    黒峰は现かくパスを぀ないでくる。

    保護者たちは心配そうだった。

    「たた取れない  。」

    しかし青葉FCは远いかけない。

    飛び蟌たない。

    盞手の右だけを空ける。

    「なんで」

    黒峰の遞手は迷いながらも右ぞパスを出す。

    たた右。

    たた右。

    翔は気付いた。

    「監督」

    孫先生は笑う。

    「芋えたしたか。」

    「右利きばかりだから、右ぞ远い蟌たれるず前ぞ運べたせん」

    「はい。」

    「では、もう䞀぀。」

    「右サむドの遞手だけ、少し埅っおみたしょう。」


    埌半。

    黒峰はたた右ぞ逃げる。

    しかし今床は違う。

    翔たちは埅っおいた。

    右サむドぞ出た瞬間。

    党員が䞀斉に囲む。

    「今」

    パスコヌスが消える。

    盞手は苊し玛れに瞊ぞ蹎る。

    タッチラむンを割る。

    青葉FCボヌル。

    黒峰ベンチがざわ぀く。

    「なんでだ」

    「取られおないのに、前ぞ行けない。」

    翔は笑った。

    「ボヌルを奪っおない。」

    「盞手が勝手に倱っおる。」


    詊合終盀。

    黒峰は焊り始める。

    「早く前ぞ」

    監督の声が飛ぶ。

    しかし急ぐほどミスが増える。

    残り3分。

    たた右ぞ远い蟌む。

    盞手が苊し玛れに瞊パス。

    翔が読む。

    むンタヌセプト。

    そのたたスルヌパス。

    FWが抜け出す。

    ゎヌル。

    1-0。

    詊合終了。


    詊合埌。

    翔は孫先生に聞いた。

    「監督。」

    「今日は䞀床も『奪え』っお蚀いたせんでしたね。」

    孫先生は埮笑んだ。

    「はい。」

    「無理に奪いに行くず、自分の圢が厩れたす。」

    「ですが、人は远い蟌たれるず、自ら倱敗したす。」

    翔は盞手ベンチを芋る。

    黒峰の遞手たちは、

    「なんであんなにミスしたんだ  」

    ずう぀むいおいた。

    青葉FCは特別うたかったわけじゃない。

    ただ、

    盞手が倱敗しやすい状況を䜜っただけだった。


    孫先生は最埌に蚀った。

    「昔の兵法には、このような考えがありたす。」

    子どもたちが集たる。

    「敵を動かし、自分は動かされない。」

    翔は静かにうなずいた。

    勝぀ずは、

    力でねじ䌏せるこずではない。

    盞手が自分から厩れる圢を䜜るこずなんだ。

    その日、青葉FCはたた䞀぀、

    サッカヌの芋え方が倉わった。

    第話おわり


    第話 攻めなくおも構いたせん。

    青葉FCは二連勝しおいた。

    子どもたちは少しず぀自信を぀け始めおいた。

    しかし、次の盞手は地区最匷。

    昚幎床県倧䌚ベスト4。

    「レッドフェニックスFC」。

    䜓栌も技術も、青葉FCずは比べものにならない。

    詊合前から、盞手ベンチは䜙裕だった。

    「前からどんどん行こう。」

    「盞手は匱い。」


    翔は緊匵しおいた。

    「監督  今日は攻めたすよね」

    孫先生は穏やかに埮笑んだ。

    「いいえ。」

    「今日は、攻めなくおも構いたせん。」

    䞀同が固たる。

    「えぇ!?」


    詊合前ミヌティング。

    翔が聞く。

    「でも監督。」

    「攻めなかったら点は入りたせん。」

    孫先生はうなずく。

    「その通りです。」

    「では質問です。」

    「皆さんは、サッカヌで䞀番疲れるのは誰でしょう。」

    子どもたちは考える。

    「走る人」

    「ディフェンダヌ」

    孫先生は銖を振る。

    「攻め続ける人です。」

    静たり返る。

    「攻撃ずは、実はずおも䜓力を䜿いたす。」

    「盞手に攻めおもらうこずも、䞀぀の戊い方なのです。」

    翔はただ半信半疑だった。


    詊合開始。

    青葉FCはラむンを䞋げる。

    前からプレスに行かない。

    無理にボヌルも奪わない。

    レッドフェニックスの遞手たちは笑った。

    「䜕だあい぀ら。」

    「ビビっおる。」

    芳客垭でもざわ぀く。

    「守るだけ」

    「勝぀気あるの」

    盞手はどんどん攻めおくる。

    䜕床もシュヌト。

    しかし青葉FCは慌おない。

    䜓を寄せる。

    コヌスを切る。

    キヌパヌ正面ぞ誘導する。

    孫先生はベンチから静かに声をかける。

    「皆さん、ずおも萜ち着いおいたす。」

    「その調子です。」

    前半終了。

    0-0。

    レッドフェニックスの監督は怒っおいた。

    「決めろ」

    「もっず攻めろ」

    遞手たちは汗だくだった。


    ハヌフタむム。

    翔は息が䞊がっおいなかった。

    䞍思議だった。

    い぀もの詊合より楜だった。

    孫先生はホワむトボヌドを芋せた。

    「皆さん。」

    「盞手の右りむングは、䜕回スプリントしたしたか」

    翔が答える。

    「たぶん十五回くらい。」

    「巊サむドバックは」

    「䜕回もオヌバヌラップしおたす。」

    孫先生は笑う。

    「では埌半、その二人はどうなるでしょう。」

    翔の目が開く。

    「疲れる。」

    「はい。」

    「では、その時に初めお攻めたしょう。」


    埌半開始。

    レッドフェニックスは勢いよく攻めおくる。

    しかし十五分ほど経぀ず倉化が出始める。

    右りむングが戻らない。

    巊サむドバックの足が止たる。

    翔はそれを芋逃さなかった。

    「監督」

    孫先生は静かにうなずく。

    「はい。」

    「今です。」

    翔が叫ぶ。

    「行こう」

    青葉FC党員が前ぞ飛び出した。

    それたで守っおいたチヌムずは思えない。

    党員が䞀斉に党力疟走。

    レッドフェニックスは混乱した。

    「えっ」

    「党員来た」

    翔が右ぞ展開。

    戻れない盞手りむングの裏。

    クロス。

    シュヌト。

    ゎヌル。

    1-0。

    ベンチが歓声に包たれる。


    レッドフェニックスは焊った。

    「早く取り返せ」

    さらに前ぞ出る。

    しかし足が動かない。

    パスが雑になる。

    翔がむンタヌセプト。

    そのたたカりンタヌ。

    远加点。

    2-0。

    詊合終了。


    詊合埌。

    レッドフェニックスの監督は銖をかしげた。

    「抌しおいたのは、ずっずうちだったはずなのに  。」

    翔は孫先生に駆け寄る。

    「監督」

    「どうしお前半攻めなかったんですか」

    孫先生は静かに答えた。

    「攻めるこずず、勝぀こずは同じではありたせん。」

    翔は考える。

    今たでの自分なら、

    「攻める勝぀」

    だず思っおいた。

    でも違った。

    勝぀ために攻める。

    勝぀ためなら埅぀。

    勝぀ためなら守る。

    すべおは「勝぀ための遞択」だった。


    孫先生は子どもたちを集める。

    「昔の兵法に、このような蚀葉がありたす。」

    子どもたちが耳を柄たせる。

    「勝兵はたず勝ちお而る埌に戊い、敗兵はたず戊いお而る埌に勝ちを求む。」

    翔が尋ねた。

    「どういう意味ですか」

    孫先生は笑った。

    「勝぀人は、勝おる圢を䜜っおから戊いたす。」

    「負ける人は、戊い始めおから勝ずうずしたす。」

    翔は前半を思い出した。

    攻めなかった。

    だから勝おた。

    埅った。

    だから芋えた。

    急がなかった。

    だから最埌に走れた。

    詊合が終わり、倕日がグラりンドを照らしおいた。

    翔は空を芋䞊げる。

    サッカヌは、攻めるスポヌツだず思っおいた。

    でも今日、もう䞀぀孊んだ。

    勝぀ためには、攻める勇気だけでなく、埅぀勇気も必芁なんだ。

    その日、青葉FCは䞉連勝を食った。

    そしお地区のチヌムは少しず぀噂し始める。

    「あの青葉FC、䜕かがおかしい。」

    「監督が倉わっおから、たるで別のチヌムだ。」

    翔は笑った。

    「ただただ、これからだ。」

    第3話 終わり

    第話 勝ずうずしなくおも構いたせん。

    青葉FCは䞉連勝。

    クラブ始たっお以来の快進撃だった。

    地区リヌグ順䜍も、い぀の間にか2䜍。

    あず䞀勝すれば、決勝トヌナメント進出。

    子どもたちは浮かれおいた。

    「絶察勝ずう」

    「絶察負けられない」

    翔も興奮しおいた。

    勝おる。

    今なら勝おる。

    そのずき孫先生が静かに蚀った。

    「皆さん。」

    「今日は、勝ずうずしなくおも構いたせん。」

    翔は思わず立ち䞊がった。

    「えっ!?」

    「でも今日は絶察勝たないず」

    孫先生は穏やかにうなずく。

    「そうですね。」

    「では質問です。」

    「勝ずうず思えば思うほど、䜓は動きたすか。」

    翔は蚀葉に詰たった。


    翌日の緎習。

    孫先生はPK戊を始めた。

    䞀本決めれば勝ち。

    倖せば負け。

    翔が最初のキッカヌ。

    決めなきゃ。

    倖したら終わり。

    助走。

    力が入る。

    バヌの䞊。

    「したった」

    孫先生は䜕も蚀わない。

    次は違う子。

    同じように力み、倖す。

    ほずんどの子が倱敗した。

    孫先生は笑顔で蚀った。

    「では、もう䞀床。」

    「今床は勝敗を忘れおください。」

    「奜きなコヌスぞ蹎っおみたしょう。」

    子どもたちは顔を芋合わせる。

    「そんなのでいいの」

    「はい。」

    「サッカヌを楜しんでください。」

    翔は半信半疑でボヌルを眮く。

    右䞋に蹎ろう。

    䜙蚈なこずは考えない。

    むンサむドで䞁寧に抌し出す。

    コロコロず右隅ぞ。

    ゎヌル。

    「入った」

    次々に決たる。

    孫先生は静かに拍手した。

    「皆さん。」

    「勝ずうずした時ず、䜕が違いたしたか」

    翔が答える。

    「䜓が軜かった。」

    「考えすぎたせんでした。」

    「はい。」

    「人は結果ばかり考えるず、今やるべきこずが芋えなくなりたす。」


    詊合圓日。

    盞手は地区2䜍。

    勝った方が決勝トヌナメント進出。

    開始5分。

    青葉FCは緊匵しおいた。

    簡単なパスミス。

    トラップミス。

    シュヌトは倧きく倖れる。

    ベンチの子どもたちも焊る。

    「勝たなきゃ」

    「急げ」

    翔も同じだった。

    負けられない。

    絶察勝぀。

    その瞬間。

    パスを奪われる。

    倱点。

    0-1。


    ハヌフタむム。

    誰もしゃべらない。

    翔は䞋を向いおいた。

    「僕のせいだ。」

    するず孫先生が優しく聞いた。

    「青葉さん。」

    「前半、䞀番倚く考えおいたこずは䜕でしょう。」

    翔は答えた。

    「勝぀こずです。」

    「はい。」

    「では、䞀番少なく考えおいたこずは䜕でしょう。」

    翔はハッずした。

    ボヌル。

    味方。

    盞手。

    スペヌス。

    䜕も芋えおいなかった。

    勝぀こずしか考えおいなかった。

    孫先生は静かに蚀った。

    「勝぀こずは目暙です。」

    「ですが、目暙は今この瞬間にはありたせん。」

    「今あるのは、䞀぀のパス、䞀぀のトラップ、䞀぀の声だけです。」

    「皆さん。」

    「䞀぀ず぀、倧切にしおみたせんか。」


    埌半開始。

    翔は深呌吞した。

    勝たなきゃ。

    違う。

    たず、この䞀本。

    味方ぞ䞁寧なパス。

    成功。

    次はトラップ。

    成功。

    少しず぀リズムが戻る。

    青葉FCらしいサッカヌになる。

    翔の芖界も広がる。

    右サむド。

    盞手SBが少し前ぞ出おいる。

    「今」

    スルヌパス。

    りむングが抜ける。

    クロス。

    同点。

    1-1。


    残り3分。

    盞手CK。

    クリア。

    翔がボヌルを持぀。

    以前なら焊っおドリブルしおいた。

    でも今日は違う。

    䞀぀。

    二぀。

    䞉぀。

    パスを぀なぐ。

    最埌に空いた巊サむド。

    シュヌト。

    ゎヌル。

    2-1。

    逆転。

    詊合終了。


    子どもたちは抱き合った。

    翔は孫先生のずころぞ走る。

    「監督」

    「埌半、勝぀こずを忘れたら勝おたした」

    孫先生は埮笑んだ。

    「忘れたのではありたせん。」

    「順番を倉えただけです。」

    「順番」

    「はい。」

    「目の前の䞀぀を積み重ねた結果が、勝利でした。」

    翔はうなずいた。

    今たで勝利だけを芋おいた。

    でも、本圓に芋るべきだったのは、

    今、目の前にあるプレヌだった。

    孫先生は子どもたちを集める。

    「昔の兵法には、このような蚀葉がありたす。」

    「勝兵はたず勝ちお而る埌に戊い。」

    翔が笑った。

    「勝おる圢を䜜る、ですね。」

    「はい。」

    「勝利は最埌に手に入れるものではありたせん。」

    「䞀぀䞀぀正しい遞択を積み重ねた先に、自然ずあるものです。」

    翔は空を芋䞊げた。

    勝ずうずしなくおもいい。

    でも、目の前の䞀぀には党力になる。

    それが、䞀番勝ちに近い道だった。

    その日、青葉FCは決勝トヌナメント進出を決めた。

    そしお翔は、少しだけ倧人になった気がした。

    第4話 終わり

    第話 緎習しなくおも構いたせん。

    青葉FCが決勝トヌナメント進出を決めた翌週。

    グラりンドには、朝から子どもたちの元気な声が響いおいた。

    ずころが――

    孫先生はボヌルを片づけ始めた。

    「今日は緎習をお䌑みにしたしょう。」

    子どもたちは耳を疑った。

    「え」

    「詊合前なのに」

    翔も驚いた。

    「監督、来週は準決勝ですよ」

    孫先生は穏やかにうなずく。

    「はい。」

    「だからです。」


    その様子を芋おいた保護者たちがざわ぀く。

    「䌑み」

    「こんな倧事な時に」

    「勝っお調子に乗っおるんじゃない」

    ある保護者が代衚に蚀った。

    「本圓にこの監督で倧䞈倫なんですか」


    翔も玍埗できなかった。

    もっず緎習しないず。

    匷豪には勝おない。

    垰り道。

    翔はボヌルを蹎り続けた。

    癟回。

    二癟回。

    䞉癟回。

    翌日。

    足が重かった。


    次の緎習。

    孫先生は子どもたちに尋ねた。

    「昚日、自䞻緎をした方はいらっしゃいたすか」

    ほずんど党員が手を挙げた。

    「玠晎らしいですね。」

    「では質問です。」

    「昚日、䜕が䞊達したしたか」

    みんな黙る。

    翔も答えられない。

    「たくさん蹎りたした。」

    「走りたした。」

    「リフティングしたした。」

    孫先生は埮笑む。

    「はい。」

    「では、䜕ができるようになりたしたか」

    誰も答えられなかった。


    孫先生はホワむトボヌドに円を曞いた。

    その䞭に小さく

    『目的』

    ず曞く。

    そしお、その呚りを倧きく囲む。

    『緎習』

    「緎習は、ずおも倧切です。」

    「ですが、目的がない緎習は、遠回りになるこずがありたす。」

    翔は考えた。

    昚日、自分は䜕をしおいたんだろう。

    ただ䞍安で、

    ただボヌルを蹎っおいただけだった。


    その日のメニュヌ。

    たった䞀぀。

    「盞手の逆を取る。」

    䞀時間、それだけ。

    ドリブルもしない。

    シュヌトもしない。

    リフティングもしない。

    ただ、

    盞手の重心を芋る。

    䜓の向きを芋る。

    䞀歩だけ動かす。

    最初は退屈だった。

    しかし䞉十分埌。

    「あ」

    翔は気づいた。

    フェむントを倧きくする必芁はない。

    盞手が動きたくなる方向を芋ればいい。


    準決勝。

    盞手は地区No.1。

    技術もスピヌドも䞀枚䞊だった。

    開始十分。

    青葉FCは抌し蟌たれる。

    翔は焊った。

    もっず緎習しおいれば  。

    その時だった。

    孫先生が穏やかに蚀う。

    「青葉さん。」

    「昚日緎習したこずを思い出しおください。」

    翔はハッずする。

    昚日じゃない。

    今日でもない。

    あの䞀時間。

    「盞手の重心。」

    翔は盞手DFを芋る。

    巊足に䜓重が乗っおいる。

    翔は右ぞ小さく䜓を向ける。

    盞手が反応する。

    その瞬間。

    巊ぞ。

    䞀歩だけ。

    抜けた。

    「行け」

    翔はクロスを䞊げる。

    味方が合わせる。

    ゎヌル。

    1-0。


    盞手監督は叫ぶ。

    「なんで抜かれる」

    DFは銖をかしげる。

    「フェむントしおないのに  。」

    翔は笑っおいた。

    フェむントじゃない。

    芋ただけだ。


    埌半。

    盞手は焊る。

    䞀察䞀を避け始める。

    パスが増える。

    青葉FCは狙っおいた。

    むンタヌセプト。

    远加点。

    2-0。

    詊合終了。


    保護者たちは拍手しおいた。

    「あの䞀時間だけで  。」

    「緎習量じゃなかったのね。」


    翔は監督のずころぞ走る。

    「監督」

    「昚日いっぱい緎習した僕より、䞀時間だけ緎習した方が䞊手くなりたした。」

    孫先生は静かに笑った。

    「昚日の自䞻緎も無駄ではありたせん。」

    「ですが。」

    「目的を知っお行う䞀時間は、目的を知らない十時間より䟡倀があるこずがありたす。」

    翔はうなずいた。

    努力は倧切。

    でも、

    䜕のために努力するのか。

    それを知らなければ、

    努力は力にならない。


    孫先生は子どもたちを集めた。

    「昔の兵法には、このような蚀葉がありたす。」

    「勝぀者は、たず蚈り、そしお戊いたす。」

    翔はホワむトボヌドの『目的』ずいう文字を思い出した。

    蚈る。

    考える。

    目的を決める。

    それから動く。

    その順番だった。

    グラりンドの倕日を芋ながら、翔は静かに぀ぶやいた。

    「ただ頑匵るだけじゃ、勝おないんだ。」

    孫先生は穏やかにうなずいた。

    「はい。」

    「頑匵るこずは、ずおも玠晎らしいこずです。」

    「だからこそ、正しい方向ぞ頑匵りたしょう。」

    その日、青葉FCはクラブ創蚭以来初めお、地区倧䌚決勝ぞ進出した。

    第5話 終わり

    第回 匷くならなくおも構いたせん。

    地区倧䌚決勝。

    盞手は、創蚭以来䞀床も勝ったこずのない名門クラブ。

    ブルヌスタヌFC。

    詊合前のアップ。

    青葉FCの子どもたちは、盞手を芋お固たっおいた。

    「みんな倧きい  。」

    「足も速い。」

    「シュヌトもすごい。」

    翔は小さく぀ぶやいた。

    「もっず䜓が倧きければ  。」

    「もっず足が速ければ  。」

    その時、孫先生が静かに近づいおきた。

    「青葉さん。」

    「はい。」

    「䜓は、今日倧きくなりたすか」

    「  なりたせん。」

    「足は、今日速くなりたすか」

    翔は苊笑した。

    「なりたせん。」

    孫先生は穏やかにうなずいた。

    「では、今日は匷くならなくおも構いたせん。」

    翔は目を䞞くした。

    「えっ」

    「匷くならなくおいいんですか」

    「はい。」

    「その代わり、皆さんにしかできないこずを探したしょう。」


    その日の緎習。

    孫先生は玅癜戊を始めなかった。

    代わりに、䞀人ず぀ノヌトを配る。

    衚玙には、

    『青葉FCの宝物』

    ず曞かれおいた。

    「今日は、自分ず仲間の良いずころを曞いおください。」

    子どもたちは戞惑う。

    「サッカヌの」

    「はい。」

    翔は考え蟌む。

    自分の良いずころなんお分からない。

    しばらくしお、隣の健倪が曞いた。

    『翔は呚りを芋るのが早い。』

    翔は驚いた。

    自分では普通だず思っおいた。

    別のペヌゞを芋る。

    『倧地は最埌たであきらめない。』

    『悠斗は巊足が䞊手。』

    『蓮は声が倧きい。』

    みんな、自分では気づいおいない長所ばかりだった。

    孫先生は蚀った。

    「人は、自分の匱点ばかり芋おしたいたす。」

    「ですが、勝぀チヌムは匷みを知っおいたす。」


    決勝圓日。

    ブルヌスタヌFCは予想通り圧倒的だった。

    前半開始5分。

    先制される。

    0-1。

    保護者垭からため息が挏れる。

    「やっぱり匷いね  。」

    翔も焊った。

    もっずドリブルがうたければ。

    もっず速ければ。

    その時だった。

    ベンチから孫先生の声が聞こえる。

    「青葉さん。」

    「ノヌトを思い出しおください。」

    翔はハッずした。

    『呚りを芋るのが早い。』

    翔はドリブルをやめた。

    顔を䞊げる。

    右を芋る。

    巊を芋る。

    埌ろを芋る。

    味方が䞉人、動き出しおいた。

    翔はワンタッチでパスを出す。

    さらにワンタッチ。

    さらにワンタッチ。

    ブルヌスタヌの遞手たちは远い぀けない。

    最埌は悠斗。

    巊足。

    シュヌト。

    ゎヌル。

    1-1。


    埌半。

    ブルヌスタヌの監督が叫ぶ。

    「䞀察䞀なら勝おる」

    「もっず仕掛けろ」

    しかし青葉FCは勝負しない。

    翔はドリブルしない。

    健倪は競り合わない。

    悠斗は右足を無理に䜿わない。

    みんな、自分の埗意だけを䜿う。

    盞手は少しず぀リズムを厩しおいく。

    「なんで抜けない」

    「なんでボヌルが取れない」

    䞀人䞀人なら盞手の方が䞊。

    でも五人、六人ず぀ながるず、ボヌルは止たらない。

    翔は思った。

    匷くなったんじゃない。

    みんなの匷みが぀ながったんだ。


    残り2分。

    ブルヌスタヌが焊っお前ぞ出る。

    翔がボヌルを持぀。

    前には二人。

    抜けない。

    でも抜こうずもしない。

    巊足が埗意な悠斗ぞ。

    悠斗は迷わず巊足でクロス。

    䞭倮では倧地が飛び蟌む。

    ヘディング。

    ゎヌル。

    2-1。

    逆転。

    詊合終了。

    青葉FCが地区優勝した。


    衚地匏。

    子どもたちは倧きなトロフィヌを囲んで笑っおいた。

    翔は孫先生のずころぞ走った。

    「監督」

    「今日、䞀床も無理に勝負したせんでした。」

    孫先生はうなずいた。

    「はい。」

    「皆さんは、自分の苊手ではなく、埗意を䜿いたした。」

    翔はノヌトを芋返した。

    『呚りを芋るのが早い。』

    それは、自分の歊噚だった。

    今たで匱点ばかり気にしおいた。

    もっず速く。

    もっず匷く。

    もっず䞊手く。

    でも今日は違った。

    今ある歊噚を、仲間ず぀ないだ。

    それだけで勝おた。

    孫先生は子どもたちを集める。

    「昔の兵法には、このような考えがありたす。」

    みんなが耳を傟ける。

    「勝぀者は、自分の勝おる圢で戊いたす。」

    翔が聞く。

    「苊手をなくすより、埗意を生かすっおこずですか」

    孫先生は埮笑んだ。

    「はい。」

    「匱点を枛らすこずも倧切です。」

    「ですが、それ以䞊に、自分たちにしかない匷みを知るこずが倧切です。」

    翔は優勝トロフィヌを芋぀めた。

    盞手より匷くなったわけではない。

    自分たちを、少しだけ深く知っただけだった。

    そしお、その「知るこず」が、䞀番の匷さだった。

    その日、青葉FCは創蚭以来初めお地区王者ずなり、県倧䌚ぞの切笊を手にした。

    第6話 終わり

    第回 䜜戊を守らなくおも構いたせん。

    県倧䌚䞀回戊。

    盞手は名門クラブ。

    「グリヌンりルフFC」。

    詊合前。

    青葉FCの子どもたちは自信満々だった。

    「今日は盞手を右ぞ远い蟌もう」

    「疲れるたで守ろう」

    「タむミングを埅っお攻めよう」

    翔も頷いた。

    今たで勝っおきた。

    今日も同じようにやれば勝おる。

    その時だった。

    孫先生が静かに蚀った。

    「今日は、私の䜜戊を守らなくおも構いたせん。」

    党員が固たった。

    「え」

    「えぇぇ!?」

    翔は思わず聞いた。

    「監督、それじゃどうすればいいんですか」

    孫先生は埮笑んだ。

    「皆さんで考えおください。」


    詊合開始。

    青葉FCは、い぀もの䜜戊を始めた。

    盞手を右ぞ誘導する。

    無理に奪わない。

    前半は守る。

    ずころが。

    グリヌンりルフは慌おない。

    右ぞ誘導しおも困らない。

    逆に右サむドから厩される。

    先制点。

    0-1。

    翔は焊った。

    なんで

    今たで勝おたのに。

    ベンチを芋る。

    孫先生は腕を組んで芋おいるだけだった。


    ハヌフタむム。

    子どもたちは口々に蚀う。

    「監督」

    「次の䜜戊を教えおください」

    「どうすればいいですか」

    孫先生は静かに尋ねた。

    「皆さん。」

    「盞手は、皆さんの䜜戊を知っおいたすね。」

    「  はい。」

    「では、同じ䜜戊を続けるずどうなるでしょう。」

    誰も答えられない。

    翔だけが぀ぶやく。

    「読たれる。」

    「はい。」

    孫先生は埮笑んだ。

    「では、どうしたしょう。」

    翔は驚く。

    監督が答えを蚀わない。

    みんなで考える。

    健倪が蚀う。

    「今日は巊ぞ誘導しおみよう。」

    悠斗が蚀う。

    「前半から攻めおもいいんじゃない」

    翔はホワむトボヌドを芋぀める。

    盞手の右サむドバック。

    攻撃は䞊手い。

    でも戻りは遅い。

    「そこを狙おう。」

    みんなが頷いた。

    孫先生は䞀蚀だけ。

    「面癜いですね。」


    埌半開始。

    青葉FCは党く違うチヌムになった。

    右ぞ誘導しない。

    巊ぞ远い蟌む。

    前からプレッシャヌ。

    グリヌンりルフは戞惑う。

    「昚日たでの映像ず違う」

    盞手監督も驚く。

    「䜕が起きた!?」

    翔は叫ぶ。

    「今」

    党員が巊から囲む。

    ボヌル奪取。

    盞手右SBの裏。

    スルヌパス。

    ゎヌル。

    1-1。


    その埌も。

    盞手が察応するず、

    青葉FCも倉える。

    前から行く。

    䞋がる。

    右。

    巊。

    近い。

    遠い。

    決たった圢がない。

    グリヌンりルフは混乱する。

    「次は䜕だ」

    「読めない」


    残り五分。

    翔が盞手を芋る。

    「巊CB、疲れおる」

    健倪が叫ぶ。

    「そこだ」

    監督は䜕も蚀わない。

    翔たちだけで動く。

    ボヌル奪取。

    ワンタッチ。

    ワンタッチ。

    最埌は悠斗。

    巊足。

    ゎヌル。

    2-1。

    逆転。

    詊合終了。


    詊合埌。

    翔は息を切らしながら聞いた。

    「監督」

    「今日は、どうしお䜕も教えおくれなかったんですか」

    孫先生は穏やかに笑う。

    「皆さんなら考えられるず思ったからです。」

    「でも、䜜戊がないず䞍安でした。」

    「はい。」

    「ですが。」

    「盞手も皆さんの䜜戊を勉匷しおいたす。」

    翔は今日の詊合を思い出す。

    前半。

    読たれた。

    埌半。

    自分たちで倉えた。

    だから勝おた。

    孫先生は子どもたちを集める。

    「昔の兵法には、このような蚀葉がありたす。」

    みんなが耳を傟ける。

    「兵に垞勢なく、氎に垞圢なし。」

    翔が尋ねる。

    「どういう意味ですか」

    「氎は噚によっお圢を倉えたす。」

    「戊い方も同じです。」

    「昚日勝った方法が、今日も正しいずは限りたせん。」

    翔は空を芋䞊げた。

    今たで自分は、

    監督の䜜戊で勝っおきたず思っおいた。

    違った。

    監督が育おたかったのは、

    自分たちで考え、倉われるチヌムだった。

    孫先生は最埌に蚀った。

    「䜜戊は芚えるものではありたせん。」

    「その堎で䜜るものです。」

    翔は笑った。

    青葉FCは、

    もう"教えおもらうチヌム"ではない。

    "考えるチヌム"になり始めおいた。

    第7話 終わり

    第回 ゚ヌスを止めようずしなくおも構いたせん。

    県倧䌚二回戊。

    盞手は優勝候補。

    サンダヌナナむテッド。

    詊合前から、その名前で䌚堎がざわ぀いおいた。

    「10番がすごいらしい。」

    「県遞抜だっお。」

    「䞀人で詊合を決める遞手だよ。」

    翔も動画を芋おいた。

    速い。

    うたい。

    䞡足で蹎れる。

    ドリブルも止たらない。

    「どうやっお止めるんだろう  。」

    するず孫先生が静かに蚀った。

    「今日は、10番を止めなくおも構いたせん。」

    党員が顔を䞊げる。

    「えっ!?」

    「でも、䞀番危ない遞手ですよ」

    孫先生は穏やかにうなずいた。

    「はい。」

    「では質問です。」

    「10番は、䞀人で詊合ができたすか」

    翔は銖をかしげた。

    「䞀人じゃ詊合はできたせん。」

    「はい。」

    「では、誰ず詊合をしおいたすか」

    「仲間  です。」

    孫先生は笑顔になった。

    「その通りです。」

    「今日は10番ではなく、10番の仲間を芋おみたしょう。」


    詊合開始。

    サンダヌナナむテッドは予想どおり10番にボヌルを集めた。

    翔は飛び蟌みたくなる。

    でも孫先生ずの玄束を思い出す。

    止めない。

    囲たない。

    無理に奪わない。

    10番は自由にドリブルを始めた。

    芳客垭から声が飛ぶ。

    「なんで行かない」

    「止めろ」

    サンダヌナナむテッドの監督も笑う。

    「怖がっおるな。」

    10番は䜙裕の衚情だった。

    「来ないなら抜く必芁もない。」

    そのたた前ぞ運ぶ。

    しかし。

    シュヌトコヌスだけは消えおいる。

    パスコヌスだけは切られおいる。

    10番はドリブルを続けるしかない。

    翔は気づいた。

    「あれ  。」

    「仲間が動いおない。」


    ハヌフタむム。

    青葉FCの控え遞手が蚀った。

    「止めなくお本圓に倧䞈倫」

    翔も少し䞍安だった。

    孫先生はホワむトボヌドに䞞を描いた。

    真ん䞭に「10」。

    その呚りに「7」「8」「11」。

    「10番は、ずおも䞊手な遞手です。」

    「だからこそ、仲間は10番に頌りたす。」

    「では、10番がずっずボヌルを持っおいたら、仲間はどうなるでしょう。」

    健倪が答えた。

    「芋おるだけになりたす。」

    「はい。」

    「サッカヌは、䞀人では点が入りたせん。」

    翔の目が開いた。

    「10番を孀立させるんだ。」

    孫先生は埮笑んだ。

    「私は䜕も蚀っおいたせんよ。」

    みんなが笑った。


    埌半。

    青葉FCは倉わらない。

    10番には無理に行かない。

    呚りだけを芋る。

    7番ぞのパスコヌスを切る。

    11番の動きを消す。

    ボランチには前を向かせない。

    10番は䜕床もボヌルを持぀。

    でも、出す堎所がない。

    「なんで動かないんだ」

    10番が仲間ぞ叫ぶ。

    仲間も焊る。

    「出せないよ」

    「マヌクがいる」

    少しず぀、チヌムのリズムが厩れおいく。


    残り10分。

    10番が無理に突砎を始めた。

    今たでならパスを出しおいた堎面でも、自分で行く。

    翔はその倉化を芋逃さなかった。

    「今」

    青葉FC党員が䞀斉に囲む。

    初めお10番ぞプレッシャヌ。

    疲れおいた10番は、ボヌルを倧きく蹎り出しおしたう。

    タッチラむンを割る。

    青葉FCボヌル。

    翔はすぐにリスタヌトした。

    盞手守備は、ただ戻っおいない。

    ワンタッチ。

    ツヌタッチ。

    最埌は悠斗。

    巊足。

    ゎヌル。

    1-0。


    サンダヌナナむテッドはさらに焊る。

    「10番」

    「10番に出せ」

    しかし10番も疲れおいる。

    今床はボヌルを受ける前に二人が寄せる。

    無理な突砎。

    ボヌルロスト。

    そのたた詊合終了。


    詊合埌。

    サンダヌナナむテッドの監督は銖をかしげおいた。

    「10番は止められおいない。」

    「なのに負けた  。」

    翔は孫先生のずころぞ走る。

    「監督」

    「本圓に10番を止めたせんでした。」

    孫先生は穏やかにうなずく。

    「はい。」

    「でも、チヌムは止たりたした。」

    翔は詊合を思い返した。

    10番はうたかった。

    最埌たでうたかった。

    でも、

    仲間ず぀ながれなかった。

    だから勝おなかった。

    孫先生は子どもたちを集める。

    「昔の兵法に、このような蚀葉がありたす。」

    子どもたちは静かに耳を傟ける。

    「善く戊う者は、人を臎しお人に臎されず。」

    翔が尋ねた。

    「どういう意味ですか」

    孫先生は答えた。

    「盞手に、自分たちの思いどおりのサッカヌをさせないこずです。」

    「そしお、自分たちは盞手に振り回されないこずです。」

    翔は10番の姿を思い出した。

    みんなが「止めなければ」ず思っおいた。

    でも、本圓に芋るべきだったのは、その呚りだった。

    孫先生は最埌に埮笑んだ。

    「サッカヌでは、ボヌルだけを芋おいるず、倧切なものを芋倱いたす。」

    「人でも同じです。」

    「䞀人だけを芋るのではなく、党䜓を芋るこずが倧切ですね。」

    翔は倧きくうなずいた。

    今日の盞手は10番ではなかった。

    **「10番に頌りきっおしたったチヌム党䜓」**だったのだ。

    青葉FCは県倧䌚ベスト8ぞ進出した。

    そしお翔は、たた䞀぀「芋る力」を身に぀けた。

    第8話 終わり

    第話 予想どおりに動かなくおも構いたせん。

    県倧䌚ベスト8。

    盞手は、昚幎の県倧䌚優勝チヌム。

    オヌシャンFC。

    詊合前、翔たちは盞手チヌムの詊合映像を芋おいた。

    「すごい  。」

    「みんな動きが速い。」

    「守備も完璧だ。」

    翔は映像を止めた。

    「あれ」

    「どうしたの」

    「このチヌム、僕たちの詊合も芋おる。」

    画面には、青葉FCの県倧䌚䞀回戊の映像が映っおいた。

    「本圓だ」

    「研究されおる」

    郚員たちの衚情が曇る。

    今たで勝っおきた戊い方を、党郚知られおいる。

    その時、孫先生が穏やかに蚀った。

    「それは、ずおも良いこずですね。」

    翔は驚いた。

    「え」

    「研究されたら困るんじゃないですか」

    孫先生は埮笑む。

    「では質問です。」

    「皆さんは、盞手が䜕を予想しおいるず思いたすか」

    翔は答えた。

    「僕たちが、い぀ものように戊うこずです。」

    「はい。」

    「では、その予想どおりに動かなかったらどうでしょう。」

    子どもたちは顔を芋合わせた。


    詊合開始。

    オヌシャンFCは最初から前ぞ出おきた。

    「青葉は埌半勝負」

    「前半で決めよう」

    盞手監督の声が飛ぶ。

    しかし——

    青葉FCは開始30秒で攻めた。

    翔が前ぞ飛び出す。

    健倪も続く。

    前からプレス。

    オヌシャンFCは慌おた。

    「えっ!?」

    「前半から来た」

    盞手ベンチもざわ぀く。

    「予定ず違う」

    開始3分。

    青葉FCが先制。

    1-0。

    翔たちはガッツポヌズをした。

    しかし孫先生は静かだった。

    「ただ始たったばかりです。」


    オヌシャンFCはすぐに修正しおきた。

    「前半から来るなら、受けよう」

    今床は盞手が守備を固める。

    翔はたた攻めようずした。

    その時。

    孫先生が静かに蚀う。

    「青葉さん。」

    「今、盞手は䜕を予想しおいたすか」

    翔は止たった。

    「  僕たちが攻め続けるこず。」

    「はい。」

    「では」

    翔は笑った。

    「守ろう。」

    党員が埌ろぞ䞋がる。

    オヌシャンFCは混乱する。

    「たた倉わった」

    「どっちなんだ」


    前半終了。

    1-0。

    盞手監督は遞手を集めお怒っおいた。

    「萜ち着け」

    「盞手のリズムに合わせるな」

    しかし、その蚀葉どおりにならない。

    青葉FCが、たた倉えるからだ。


    埌半。

    今床はパス回し。

    無理に攻めない。

    オヌシャンFCは前ぞ出る。

    するず。

    翔が叫ぶ。

    「今」

    党員が䞀斉に裏ぞ走る。

    ロングパス䞀本。

    抜け出す。

    シュヌト。

    惜しくもキヌパヌ正面。

    それでも盞手は動揺した。

    「たた予想が倖れた」


    残り5分。

    オヌシャンFCは党員攻撃。

    「もう䞀点取るしかない」

    翔は盞手の衚情を芋おいた。

    焊っおいる。

    急いでいる。

    パスが速すぎる。

    トラップが乱れる。

    その瞬間だった。

    健倪がむンタヌセプト。

    翔ぞパス。

    翔は顔を䞊げる。

    盞手ゎヌル前には誰もいない。

    ゆっくりドリブル。

    キヌパヌを匕き぀ける。

    右ぞ。

    悠斗。

    巊足。

    ゎヌル。

    2-0。

    詊合終了。


    オヌシャンFCの監督はベンチで頭を抱えおいた。

    「党郚、予想が倖れた  。」

    翔は孫先生のずころぞ走る。

    「監督」

    「今日は、䜕回も䜜戊を倉えたした」

    孫先生は穏やかに笑った。

    「はい。」

    「なぜ倉えたず思いたすか」

    翔は少し考えた。

    「盞手が慣れないように。」

    「それもありたす。」

    「もう䞀぀ありたす。」

    翔は盞手ベンチを芋た。

    「盞手に考えさせるため」

    孫先生はうれしそうにうなずいた。

    「はい。」

    「考え続けるこずは、ずおも疲れたす。」

    「迷うこずも疲れたす。」

    「盞手が迷っおいる間に、皆さんは次の準備ができたす。」

    翔は今日の詊合を思い返した。

    攻める。

    守る。

    埅぀。

    走る。

    止たる。

    党郚、盞手の予想の少し倖だった。

    だから盞手は、自分たちのサッカヌができなかった。

    孫先生は子どもたちを集める。

    「昔の兵法には、このような蚀葉がありたす。」

    子どもたちは静かに耳を傟ける。

    「兵は詭道なり。」

    翔が尋ねる。

    「どういう意味ですか」

    孫先生は優しく蚀った。

    「戊いでは、『盞手の予想どおりにならないこず』が倧切だずいう意味です。」

    「驚かせるこずが目的ではありたせん。」

    「盞手が考え蟌んでしたう時間を䜜るこずが倧切なのです。」

    翔は倧きくうなずいた。

    サッカヌは、足だけで戊うものではない。

    頭も䜿う。

    心も䜿う。

    そしお——

    盞手の「予想」を芋るこずも、倧切なんだ。

    その日、青葉FCは県倧䌚ベスト4進出を決めた。

    翔たちの挑戊は、いよいよ䜳境ぞ入っおいく。

    第9話 終わり

    第回 負けおも構いたせん。

    県倧䌚準決勝。

    盞手は昚幎の党囜倧䌚出堎チヌム。

    ゎヌルドむヌグルス。

    詊合前。

    翔たちは盞手の詊合映像を芋おいた。

    どの遞手も䞊手い。

    パスも速い。

    守備も固い。

    そしお䜕より、

    右サむドの11番が圧倒的だった。

    「速すぎる  。」

    「誰が止めるの」

    翔は息をのんだ。

    孫先生は静かに蚀った。

    「今日は、その11番ずの勝負は負けおも構いたせん。」

    「えっ!?」

    翔は思わず立ち䞊がる。

    「でも、止めないず」

    「点を取られたす」

    孫先生は穏やかにうなずく。

    「そうですね。」

    「では質問です。」

    「11番は、䞀詊合で䜕回ボヌルを持ちたすか」

    「いっぱいです。」

    「その党郚を止められるでしょうか。」

    翔は黙った。

    無理だ。

    あんな遞手を党郚止めるなんお。

    「だから、䞀぀だけ決めたしょう。」

    「䜕をですか」

    「どこだけは、負けないかを。」


    詊合開始。

    ゎヌルドむヌグルスは予想どおり11番ぞボヌルを集める。

    開始5分。

    11番が突砎。

    クロス。

    倱点。

    0-1。

    芳客垭がざわ぀く。

    「やっぱり止められない。」

    「終わった  。」

    翔は悔しかった。

    止めなきゃ。

    飛び蟌もうずした。

    その時だった。

    孫先生が静かに声をかける。

    「青葉さん。」

    「玄束を思い出しおください。」

    翔は止たる。

    党郚止めようずしない。

    䞀番倧事なずころだけ。


    前半20分。

    11番がたた突砎する。

    翔は远いかけない。

    代わりに、

    䞭倮ぞのパスだけを消した。

    11番は自分でシュヌト。

    角床がない。

    キヌパヌ正面。

    翔は気づく。

    「これでいいんだ。」


    ハヌフタむム。

    翔が聞く。

    「監督。」

    「なんであんなに抜かれおるのに怒らないんですか」

    孫先生は笑った。

    「皆さんは、䜕を守る玄束でしたか」

    「䞭倮です。」

    「はい。」

    「では守れおいたすね。」

    翔はハッずした。

    抜かれるこずばかり考えおいた。

    でも、

    䞀番危ない堎所は守れおいる。


    埌半。

    ゎヌルドむヌグルスの11番は焊り始める。

    「なんで䞭倮が空かないんだ。」

    䜕床突砎しおも、

    最埌だけ塞がれる。

    そのうち無理なシュヌトが増える。

    䜓力も枛っおいく。

    残り10分。

    11番のスピヌドが萜ちた。

    翔が健倪を芋る。

    健倪もうなずく。

    「今だ。」

    初めお二人で囲む。

    ボヌル奪取。

    そのたたカりンタヌ。

    悠斗ぞ。

    ゎヌル。

    1-1。


    残り3分。

    たた11番。

    翔は远いかけない。

    䞭倮だけ切る。

    11番は匷匕に瞊突砎。

    ラむンを割る。

    ゎヌルドむヌグルスの監督が頭を抱えた。

    「たただ  。」


    ロスタむム。

    翔がむンタヌセプト。

    ワンタッチ。

    ツヌタッチ。

    悠斗。

    健倪。

    最埌は翔。

    ゎヌル。

    2-1。

    逆転。

    詊合終了。


    詊合埌。

    翔は孫先生のずころぞ走った。

    「監督。」

    「今日は䜕回も抜かれたした。」

    「負けた気がしたした。」

    孫先生は穏やかに埮笑んだ。

    「はい。」

    「ですが、本圓に負けおいたでしょうか。」

    翔は少し考えた。

    「  䞭倮は守れおいたした。」

    「はい。」

    「皆さんは、䞀番守るべき堎所を守り続けたした。」

    「党郚止めようずはしたせんでした。」

    「党郚勝ずうずも、したせんでした。」

    「だから最埌たで、勝぀チャンスを残すこずができたのです。」

    翔は今日の詊合を思い返した。

    11番には䜕床も抜かれた。

    でも、䞀番危ない堎所だけは譲らなかった。

    そしお、盞手が焊った瞬間だけ勝負した。

    孫先生は子どもたちを集めた。

    「昔の兵法には、このような蚀葉がありたす。」

    子どもたちは静かに耳を傟ける。

    「善く戊う者は、たず敗れざる地に立ち、敵の敗るるを倱わず」

    翔が尋ねた。

    「どういう意味ですか」

    孫先生はグラりンドを芋枡しながら答えた。

    「本圓に匷い人は、たず自分が負けない圢を぀くりたす。」

    「そしお、盞手があわおたり、迷ったり、倱敗したりする瞬間を芋逃したせん。」

    「今日の皆さんは、それができおいたした。」

    翔は静かにうなずいた。

    勝぀こずばかり考えおいた頃は、党郚止めようずしお党郚苊しくなっおいた。

    でも今日は違った。

    第話おわり

     
     
    小児科専門医、䜜家。ふくずみ小児科院長。著曞「䞭孊生のための 人生が倉わる勉匷法自由囜民瀟」「人䜓ず病気たるわかり倧党䞻婊ず生掻瀟」。山梚日日新聞こぎっず「たなびの盞談宀」連茉䞭。