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10年越しにクソデカ観音様を参拝した話。

    大船という駅がある。

    神奈川県は横浜市と鎌倉市の境目で、通り過ぎたことはあるけど降りたことは無い、みたいな駅だと思う。
    いろんな路線が通っていて、スーパーや商店街も充実している。住むにはとても良いところだ。
    社会人になりたての頃、5年ぐらいここに住んでいた。思い入れのある土地である。


    ところで。
    そんな大船には、クソデカ観音様がある。

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    \どどーん/

    住んでいた当時はこういうものへの造詣が浅く、ちゃんと参拝していなかった。仕事でそれどころじゃなかったし。
    観音様に横目に見つつ、ヒーヒー言いながら駅まで往復する日々だった。
    10月1日のピンクリボンデーには、観音様もピンクにライトアップされたりする。観音様ってそういう俗っぽいこともするんだ…と思ったものだ。

    そんな観音様に、10年越しに会いに行った話。



    大船まで、髪を切りに行こうと思った。

    僕は今、大船まで片道1時間ぐらいのところに住んでいる。
    もちろんもっと近くにも美容室はあるのだけど、どうも行きつけが見つからず、良かったところは予約がパンパン。『行けるタイミングが来るたびにホットペッパービューティーとにらめっこして空いてる店に滑り込む』を、ここ1年ほど続けていた。

    ホットペッパービューティーにはブックマーク機能がある。気に入った美容室(公式にはサロンと言うらしい)やヘアスタイルを登録できる便利な機能だ。

    6月上旬。そろそろ髪を切らなきゃなーとホットペッパービューティーを開いたとき、ブックマークに『スタイリスト』の項目があることに気が付いた。へー、前からこんな項目あったっけ。誰か登録してたかしらん。


    一人だけ、登録してあった。
    かつて大船に住んでいた時、5年近くお世話になったスタイリストさん。

    美容室が自宅と駅との間にあり、通い続けるのにちょうど良かった。
    歳も近く気さくな人柄で、当時は今より二回りぐらい拗らせていた僕だったけれど、おかげさまで楽しい時間を過ごさせてもらえていたものだ。
    大船から引っ越してもしばらく通っていた。その後、子どもが生まれたタイミングでさらに遠くに引っ越して、特に挨拶もせずにフェードアウト。それきりお会いしていなかった。

    そんなスタイリストさんが、
    あれから10年が経った今でも、
    未だに大船の同じ店で、美容師をされているらしい。

    これは!!!エモいやつだ!!!



    ということで、10年越しに大船に行くことにした。
    朝イチで美容室に行って、サラッと鎌倉でも寄って、夕方には子どもたちを迎えに行って。
    なんだかいい感じの休日が送れそうな日程だ。

    いざ行ってみると、なんとスタイリストさんも僕のことを覚えていてくださったそう。あれからどうしたこうしたなどなど、話に華を咲かせたのだった。
    (余談ですが、普通にこの10年変わらず通い続けているお客さんもそこそこいるらしい。どれだけの人生の岐路に関わるのだろう。美容師さんってすごいですね)


    そう、メインは美容室。
    次点で鎌倉。
    観音様は言ってしまえばオマケ。
    「そういえば住んでた頃は参拝までしなかったなー、お迎えまでまだちょっと時間あるし、せっかくだし行っとくか」ぐらいなものだ。

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    そこそこの坂道を上る。


    だったのだけれど。
    いざ参拝してみると、この観音様に新卒時代を守っていただいたのだな、という気持ちになった。
    駅近も駅近の立地にも関わらず、観音様の立つ寺は静かで、厳かで。ピンと張り詰めた空気とはこのことか、という感じ。果たして写真に収めていいものだろうか、と考えてしまうぐらいだった。撮ったけどね。

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    ヘッダー画像。手前の階段からすでに圧倒的存在感。


    静かであることには、意味があると思う。
    『この空間は世間の諸々とは切り離して、神様や仏様と向き合える静けさを保とう』という人々の願いや思いの現れではないだろうか。
    僕は特定の宗教の信仰はしていないけれど、それらを守ろうとした人々の歴史には、敬意を払いたくなった。

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    アジサイがきれい。


    参拝では、身近な人たちの幸福を願った。
    いざ願おうと思うと、やけに色んな人の顔が次から次へと浮かんできたので、片っ端から願っておいた。知らないうちに人との繋がりが増えたものである。
    大船に住んでいた頃の僕は、誰かのために願ったり、身近な人の気遣いに思いを馳せたり出来ていただろうか。大人になったなぁ。
    そんなこんなで、オマケと言うにはもったいないぐらいに良い時間を過ごせたのだった。

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    物としての意味よりも、これを建てて平和を祈ろうとした人々の願いはどれほどのものだったのか、と考えるようになった。


    観音様の前に鎌倉もサラっと寄ったけれど、なんだかもう人が多すぎて落ち着けたものではなかった。静けさの対極。
    小町通りには食べ歩き向けの映え重視フードで溢れていて、それはそれで楽しげではあるのだけど、なんとなくどれにも手が伸びなかった。今思い返すともったいない。
     
    コンテンツが多すぎる社会とはよく言うけれど、そんな時だからこそ、過去の繋がりや静けさに目を向けられたこの日はいい1日だったな、と思えたのでした。

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    鎌倉・小町通りの入り口。人が多い!
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    鶴岡八幡宮。ここまで来るとだいぶ人が減る。
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    大船の、当時から続いてくれていためちゃうまイタリアン。

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