
写真を見た瞬間、「これ好きだ」と思った。
初めてゼッポリーニの写真を見た時のことを、今でもよく覚えています。
「あ、これ好きだな。」
まだ食べたこともないのに、なぜかそんな気持ちになりました。
ゼッポリーニはナポリのストリートフード。
青海苔を混ぜたやわらかい生地を、ひと口サイズにして油で揚げるだけの、とても素朴なおつまみです。
「これなら作れそう。」
そう思って作り始めたのですが、思っていたよりずっと大変でした。
生地はかなりゆるく、それなのによくこねなくてはいけません。
ハンドミキサーでこねていたら、途中で「これ、壊れるんじゃない?」と慌てて止めたほど。
そのあとは少しだけ手でこねましたが、生地がやわらかすぎて、どこまでこねれば正解なのかもわからない。
結局、「まあ、このくらいでいいかな」と自分なりに区切りをつけて発酵させました。
レシピを調べると、発酵時間は本当にさまざま。
半日くらいのものもあれば、一日、二日とかけてゆっくり発酵させるものもありました。
私は昼頃に仕込んで、夕方の晩酌に間に合うよう四時間ほどで揚げてしまいました。
でも、それでも十分おいしかったんです。
外はカリッ、中はふんわりもちっとした食感。
揚げたそばから家族の手が伸びてきて、小さなお鍋で少しずつ揚げる私の横で、どんどんお皿が空になっていきました。
青海苔だけでも十分おいしいけれど、桜えびを入れたり、ひじきを混ぜたり。
その日の気分で少しずつ変えながら、我が家の人気おつまみになりました。
そして数年後。
今年の二月と三月、大阪でナポリピザのレッスンを受ける機会がありました。
そこで教えていただいたのが、「ナポリでは生地をゆっくり時間をかけて発酵させる」ということ。
理由は、発酵させるだけではなく、粉を熟成させるため。
「粉を熟成させる。」
初めて聞く言葉に驚きました。
でも、その話を聞いた時、「だからゼッポリーニも長時間発酵させるレシピが多かったんだ」と、何年も前の疑問がようやくつながった気がしたのです。
もちろん私は、今でも四時間くらいで揚げることが多いです。
でも、タイミングを逃したら翌日に揚げてもちゃんとおいしい。
そんな気楽さも、この料理の好きなところ。
きっちり時間を守る日があってもいいし、「今日は明日にしよう」と思う日があってもいい。
適当な私には、そのくらいの余白がちょうどいいのです。
「粉を熟成させる。」
初めて聞いたその言葉は、ずっと頭の中に残っています。
レシピには「一日発酵」「二日発酵」と書かれていても、その理由までは書かれていないことが多いものです。
ナポリで大切にされているのは、ただ生地を膨らませることではなく、時間をかけて粉の風味を育てること。
あの日聞いたその一言で、何年も前に作ったゼッポリーニのレシピが、ようやく一本の線でつながりました。
料理を習う楽しさは、作り方を覚えることだけではありません。
その土地で当たり前に受け継がれてきた「なぜ」を知ること。
そんな瞬間に出会えるから、私は今でも料理を学び続けています。
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