
すきまのくに

ころころ、くるくる。
ここは、まんまるの くに。
「ぼくたち、どこも とがっていないね」
くるん、くるん。すり、すり。

ピシッ、カクッ。
ここは、しかくの くに。
「ぴったり ならんでいるね」
「ズレてないね」
そとには でないように、ピューッと せん。
ひとつだけ、すこし すきま。

あるひ、ふたつの くにが ぶつかりました。
まるたちは、しかくの カドを みて いいました。
「いたそうだね。
やさしく けずろう」
けず、けず。
しかくたちも、ころがる まるを みて いいました。
「フラフラして あぶないね。
まっすぐ とめて あげよう」
キキーッ、ピシッ。
まわりを かこむ、かたい せんを ひきました。

けず、けず。キキーッ、ピシッ。
ぶつかって、しめつけて、
しかくの カドが ポロッと かけ、
まるの かたちが ギュッと ゆがみました。
それを見た ひとつの まるが、ピタッと とまりました。
「あれ……? なんだか、かわいそうかも」
でも、まわりの まるも しかくも とまりません。
「ただしい かたちに してあげるから!」
けず、けず、けず。
ピシッ、ピシッ、ピシッ。

けず、けず、けず!
キキーッ、ピシッ、ピシッ!
……ビリッ!
あーあ。
まるも、しかくも、
みーんな バラバラ。

ころがって、ぶつかって、すこし いたい。
かけらたちは、すみっこに あつまりました。
「そこ、ちくっと するね」
また ピューッと、みじかい せん。
くっつこうとして、ぶつかって、
また すこし いたい。

だれかが、ふうっと いきを はきました。
「もう、きれいな かたちじゃ なくても いいかも」
かけらたちは、
くっつかないで、
はなれすぎないで。
それぞれのでこぼこに あわせて、
ほんの すこしだけ、すきまを あけて ならびました。
なんだか、すうっと しました。
こんどは、すこし ずれて

柔らかく、どこまでも滑らかな まるの国。
「私たちは、どこも とがっていないね」
「どこにも あたらないね」
彼らは互いにすり寄り、さらに丸くなろうとする。

正しく、どこまでもまっすぐな しかくの国。
「私たちは、少しの ズレもないね」
彼らは誰も外へ出ないよう、きっちりと線を引く。
それでも、ひとつだけ、わずかな隙間があった。

ある日、ふたつの国が重なり合った。
まるは、しかくの角を見て言った。
「あたるよ。
私たちが丸く、なめらかに削ってあげよう」
しかくは、まるの輪郭を見て言った。
「ころがっていくよ。
私たちが線を引いて、まっすぐ止めてあげよう」

ひとつのまるが、ふと動きを止める。
「あれ……? 削れていく」
しかし、まわりの波は止まらない。
「もっと、もっと」
「まだ たりない」
大きすぎる声が、小さな声を飲み込んでいく。

かさなって、きしんで。
……ビリッ。
まるも、しかくも、すべて崩れ落ちた。
残ったのは、形を失った 破片たち。

吹き溜まりのような隅っこで、大小さまざまな破片たちが集まった。
「そこ、ちくっとするよ」
「そのへこみ、ひっかかるよ」
似たかたちが集まって、小さな群れを作る。
大きな群れが、小さな破片を ごりっと削ろうとする。
いびつな者同士が寄り集まり、また短い線を引く。
そしてまた少し、傷つけ合う。

だれかが、ふうっと息を吐いた。
「もう、完全な形じゃなくても、いいのかもしれない」
破片たちは、無理に重なることをやめた。
相手のでこぼこを そっとあててみて、決してくっつかず、離れすぎず。
ほんの少しの隙間を保って、そこに留まった。
隙間は、続いていく