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手にした瞬間に、ほどけてしまうもの

    手にした瞬間に、ほどけてしまうものがある。
    口に出した瞬間に、終わってしまうものがある。

    私にとって「アイデア」とは、
    いつもそんな風に掴みどころのない、
    愛おしくも繊細な存在です。

    私は、刺繍作家として歩み出す前、
    デザインに携わる仕事をしていました。

    アイデアは、とても傷みやすい「生もの」です。

    だからこそ、それを綺麗に形にすることが、
    いかに難しいか。

    デザインの仕事を通して学んだのは、
    目に見えている形だけが全てではない、
    ということでした。

    形になっていない、まだ見ぬものを、
    どれだけ深く想像できるか。
    そのために、私はいつも観察し、
    分析することを大切にしてきました。

    自分の頭の中にある引き出しを、
    インスピレーションでいっぱいに満たしておく。
    いつ、どこからアイデアが降ってきても
    いい状態にしておくこと。
    それが、表現者としての私の姿勢でした。



    悩みの霧と、引き出しの余白

    芸術大学のデザイン科に入学したばかりのころ。
    私の頭の中には、
    たくさんのアイデアが溢れていました。

    でも当時の私は、それを社会や作品に
    活かす術を知りませんでした。

    アイデアはあっても、形にできない。
    かといって、ただただ思いついたものを
    形にすればいい、というわけでもない。

    自分のこれまでの思考癖にぶつかっては、
    どうすればいいのか分からず、
    深く悩んだ時期もありました。

    けれど、その霧を乗り越えた先に、
    ようやく自分の中に
    「アイデアに備えるための引き出し」が
    作られるようになったのです。

    引き出しにしまわれたタネたちは、
    決して消えてしまうわけではありません。

    今は実らないアイデアも、
    何年後かには美しく実っていたり。
    ずっと奥の方にしまっていたアイデアが、今、
    ふとしたきっかけで動き出そうとしていたり。

    アイデアとは、
    アイデアのままずっと持っておくものではなく、
    そのアイデアに適した場面、最高の瞬間に、
    そっとタネを植えていくものなのだと思います。

    これからも、タネを植え続けるように

    私のブランド「LETOWA」の核にあるのは、
    デザイン、アート刺繍、そして
    こうした物事へのアプローチや哲学です。

    あのとき悩んだ時間も、頭の中の引き出しに
    しまってきたすべての記憶も、
    今の私のひと針ひと針に繋がっています。

    アイデアの種を、
    一番美しい形で実らせるための行動を心がけて。

    私はこれからも、心を動かし、手を動かし、
    走り続けたいと思います。


    LETOWA

     
     
    手紙のような、お花のような、贈り物(LETOWA)」をコンセプトに、一針一針に想いを込めた刺繍作品をお届けしています。 育児の傍ら、夫と隣合わせの小さな刺繍机から始まったブランド。特別な日の贈り物や、日々に彩りを添える作品の裏側、そして「夢」を形にするまでの物語を綴ります。

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