
売れっ子じゃないほうのオバサン声優は山の上の宿坊でバイトする(2) 〜お寺のカイダンの巻〜
ショボくれメドゥーサは
トボトボと自分の部屋へ
戻ってドライヤーをかけた。
念入りにブローをして
千尋に戻り、ふと思う。
西さんはもう到着されたのだろうか?
別当様が着いているのだから、
もしかすると、すでに
お着きになっているのでは?
と思い、メッセージを送ってみる。
山の上はWi-Fiが使えるので
一応、通話もできるし
メールも出来る。
インターネットも繋げる…が
ドコモ以外の電話は
アンテナは立たず、
Wi-Fiも場所によっては
いまいち微弱。
メッセージを送信するのも
届くかどうか
一か八かのようなところがあるが、
とりあえず西さんに
私がもう宿坊に着いて
部屋で休憩している旨と、
もし西さんが着いているならば
挨拶に伺いたい旨を打って
送信してみた。
すると直ぐに西さんから
“到着して着替えています。”
と返信が来たので
“ではご都合の良い時に
連絡して下さいませ。”
と返すと
“今います。別当さんもいます。”
と返ってきた。
おー、先ほどお会いした
別当様が西さんと一緒に
いらっしゃる!!
(*゚▽゚*)
これはメドゥーサ姿を
挽回するチャンス!!
“また改めてご挨拶させていただく”
まさにそのタイミング!!!
私はメドゥーサではない!
千尋なのだーーー!!
(*゚▽゚)ノ
(↑いや、アンタ千尋じゃないけどな)
“はい!参ります!”
とメッセージを送り、
菓子折りが入った袋を持って
一階の受付に向かおうと、
千尋は部屋を飛び出した。
“飛び出す。”
その表現が正に適切だった。
勢いよく狭くて短い廊下を、
もはや小走りするように
先を急いだ。
階段のカーブを2〜3段
タ!タ!タ!と下りたとき、
体が宙に浮いた。
“あっ!”と、
“終わった!”を、
同時に思う。
自分の両耳に
ドドドドドーッという音が
入ってきた。
そう。
千尋は見事に、
お尻で滑った方が早そうな
滑り台よりも急な階段を、
お尻で滑った。
( ̄ー ̄)
もちろん滑り台ではないので
お尻への衝撃がすごい。
階段の一段一段の角が千尋の
可愛いピーチちゃんを
直撃してくる。
(↑お尻なっ!)
それが“ドドドドドーッ”という
轟音となって
宿坊中に響き渡っているのが
わかった。
あー、たぶん。
富士山で滑落する人は
きっとこういうことなのだろう。
( O _ O )
“あっ!!”と思った瞬間には
もうなす術もなく
自分の身体が止まるまで
身を任せるしかない。
そして、“あっ!”
と思った瞬間に
“終わり”を悟るのでは
ないだろうか。
私はそうだった。
( ˙-˙ )
(↑階段と富士山
一緒にしちゃってる!!)
音が止み私の身体も止まった。
最後は投げ出されるように
落ちたのだと思う。
一番下の段の前を
塞ぐように横たわっていた。
激痛で茫然とする。
体が全く動かせない。
こういう時、
たぶん人はこう思うだろう。
“わたし…何か悪いことした?”
あー、もちろん
御多分に洩れず
私もそう思って
落ちたコトの意味を
見出そうとしたさ。
けどさ、意味なんかねーよ。
(~_~メ)
(↑やさぐれちゃってる!)
浮かれて滑って
ドドドドーンじゃ!!!
十数年前に
足の指を骨折した時に
医師お墨付きの
“おっちょこちょい”
の称号を頂いた。
その時の私は人生
5度目の骨折。
スチール製の椅子に
かけてあったバッグに
身体を引っかけて、
その椅子が倒れてきて
足の親指に直撃。
骨折をした。
私が医師に
これが5度目の
骨折だということを告げてから
「私はカルシウムが
足りないんでしょうか?
骨粗鬆症とかではないですか?」
と聞くと医師は
「おっちょこちょいなだけでしょう。」
と私の顔を真っ直ぐ見て
真面目な顔をして言った。
私が過去骨折した原因を
振り返ってみる。
高校時代、体育の時間に
バスケットボールをしていて
ボールが飛んできたところに
指を出し骨折。
スキーに行って
新しいスキー板が
重なってしまい
キズがついちゃう〜と思って
転んで靭帯損傷。
(↑これは骨折じゃないね)
友人とカラオケをしていて
盛り上がりすぎて
カラオケのステージを
踏み外し骨折。
京都の街をひとり
観光で歩き回り過ぎて
左足を疲労骨折。
愛犬を飼い始めたとき
クイック◯ワイパーに
片足をのせて負荷をかけながら
勢いよく掃除をしていたら
宙に浮き、そのままお尻から落ちて
尾てい骨にヒビ。
(↑骨折までは行かなかった)
どれもこれも
自ら骨折を招き入れている。
( ̄ー ̄ )
あー、そうさ。
私に肩書きがあるのだとしたら
“おっちょこちょい”さ。
名刺を刷るのなら
『おっちょこちょい
神田小梅 』
が、いちばんお似合いさ。
意味をすぐ見出したがる人に
私は言いたい。
“すべてのことには意味がある”
…だなんて思うなよ!!
(↑出た!反スピリチュアル!)
善い行いをしていようがいまいが
悪い行いをしていようがいまいが、
おっちょこちょいはな、
常にリスクを背負って
生きてんだよ!
意味がないことだってあるんじゃ!!
(↑やさぐれ度がピークに達してる!)
あー、どうか。
誰も来ないで欲しい。
( ° _ ° )
物凄い音はしたが、
誰も気が付かないで欲しい。
( ˙-˙ )
こんなことあるのか?
こんなことあるのか?
(;ω;)
(↑2回言っちゃってる!)
頭の中は
“誰もきてくれるな”と
“こんなことあるのか?”で
いっぱいだ。
とにかく、こんな姿を
誰かに見られてはいけない。
見られたら
“桐島、部活やめるんだってよ”
どころか、
“神田、来て早々階段落ちして
バイトやめるんだってよ”
になってしまうではないか。
(T_T)
(↑いや、もう全然語呂があってない!)
何とかサッと立って
何事もなかったかのように
涼しい顔で自分の部屋まで
戻れないものだろうか。
腕に力を入れて体を起こそうと
試みるが、ピーチちゃんに
少しでも力がかかると
さらに激痛が増す。
私のピーチちゃん。
もしかしたら
割れちゃっているのではないか?
そこから既に桃太郎が
出ちゃっているのではないかーっ⁉
(T☐T)
(↑イヤ、どういう状況?)
起き上がれない。
:(;゙゚'ω゚'):
体を動かすことが出来ない。
ダメだ。しばらく
ここにいるしかない。
横たわったまま
宙を見つめる。
遠くの方からバタバタと
複数の人たちの足音が
近づいてきた。
「大丈夫⁉」
視線だけを声のほうに向けると
自ずと轟音をきいて
駆けつけてきた人たちが
目に入る。
なんと全員坊主頭!
(゚∀゚)
(↑当たり前っちゃ~当たりまえ)
挨拶をしなければ。
「アルバイトの神田ですぅ・・・
よろしくお願いしますぅ・・・
本当にすいません。
こんな姿で・・・。」
「階段から落ちたの!?」
「はい・・・。」
「何段目くらいから?」
「2~3段下りて・・・
真っ直ぐの一番上からです・・・。」
もうそこには
元気いっぱいの
千尋の姿はない。
そこにいるのは
声にも顔にも覇気がない、
むしろカオナシ寄りの千尋だ。
(↑どんな⁉)
今、ここで私ができることは
手土産渡して元気よく!
明るく楽しく元気よく!
・・・のうちの
手土産を渡すことではないか?
(゜▽ ゜)
(↑ちょっとイカれちゃってる)
手元から離れた
菓子折りが入った袋を
手で手繰り寄せ
「これ、みなさんでどうぞ・・・。」
と言うと、ちょうど私の足元に
跪いて座っているお坊さんが
「今は、そんなことはいいから!」
と、仰った。
(↑そりゃそうだ!)
あぁ、今の私は笑いの一つも
取れない千尋だ。
(↑千尋は笑いなんか取ってないぞ!)
このような光景を
私は見たことがあるな。
皆に囲まれ頭を北、
顔を西、右脇を
下にして横たわっている・・・
ハッ!!
Σ(゚Д゚)
涅槃図!!!
今の私は
涅槃図の釈迦ではないかーー!!
(>☐<)
(↑アンタ、千と千尋の世界を
軽く越えちゃってる!)
“シャカでぇーぃす!”
と言えばウケるだろうか?
(゚∀゚)
(↑精神状態がヤバイ)

『涅槃図』
「立てる?」
足元にいるお坊さんが
心配そうな顔をして聞くので
さすがに“シャカでぇーぃす!”とは
言えなかった。
「いや、ちょっと無理です…。」
すると
「座布団をもってきてあげて!
背中のほうに入れてあげて!」
と、また別のお坊さんが
言ったので、顔を見ると
別当様だった。
( ° _ ° )
あー。
別当様にメドゥーサ姿ならまだしも、
釈迦の姿まで見られちゃってる。
(↑メドゥーサ>釈迦になっちゃってるよ!)
初日で働かずしてバイトを
クビにされてしまうのではないか?
( ;∀;)
「ちょっと釈迦さーん。
初日に来て皆んなに迷惑かけて
アンタ、クビね!クビ!」
あー。
高僧にクビにされるだなんて
釈迦の立場がないではないか。
(>人<;)
頭の中がネガティヴさんに
なっていると、
若いお坊さんが階段と
背中からお尻にかけての間に
座布団を入れてくれた。
すると足元にいた
お坊さんが再び口を開いた。
「治るまで、ずっとここに
居ていいから。」
「え?」
と聞き返すと
「下りるにしても自分で歩いて
下りるしかないから。
治るまでずっと部屋で
寝ていてもいいですから。」
と諭すように言われた。
ゲッ。
(O_O)
そうだ。
ここはロープウェイも
ケーブルカーもリフトもない。
登るも下るも徒歩のみだった。
仮に大怪我だったとしても
救急車は来ない。
自分で歩いて下って
病院へ行くしかないのだ。
(T ^ T)
(↑もしくは救助ヘリ?)
…というか、私よ。
インボイスを稼ぎに
バイトに来たのに
自分の部屋で治るまで
寝ていてはインボイスが
払えないではないか。
( ̄ー ̄ )
「あ…たぶん大丈夫です。
骨折はしてないと思うので
もう少し時間が経てば
動けると思います。
鎮痛剤も湿布も
持ってきているので、
部屋に戻ったら湿布を
貼って薬を飲みます。」
すると別当様が仰った。
「今日は痛み止めは
飲まない方がいいよ。
飲んじゃうと本当に
痛みがおさまったのか
痛み止めで
痛みがおさまってるのか
わからないから。
冷やした方がいい!」
冷やしただけでは
この痛みはおさまらない。
これは過去5回骨折した女の勘。
( O _ O )
けれども別当様の
言うことは絶対。
(↑王様ゲームみたいになっちゃってるよ?)
「…そうですね、そうします。」
素直に提案を受け入れる。
また宙を見つめてしまう。
いかんいかん。
なにかウィットに富んだ会話を
しなければ…
( ´△`)
(↑アンタ`気を使いすぎじゃない?)
「こんなことあります?」
私としては、
バイト初日でまだ仕事を
始める前に階段から落ちて
寝転びながら
初対面の挨拶をする。
そんなおっちょこちょいな人なんて
いないよねー?
ドジだよね、私。
ハッハッハッ!!
(↑笑ってる)
…くらいなニュアンスで
言っているつもりなので、
お坊さんが私に返す言葉としては
「いやぁ、いないいない!
そんな人、滅多にいない!
ワッハッハ!ワッハッハ!」`
…というのを期待していたのだが、
誰ひとり笑わない!
Σ( ̄0 ̄ノ)ノ
いや、冷静になって考えてみれば、
人が階段から落ちて
瀕死の状態なのに
大笑いするお坊さんは
そうとうクレイジー。
(゚∀゚)
そこへ階段上から
塩野さんが下りてきた。
「えっ!?落ちたの!?
荷物か何かが落ちた音だと
思ってた!」
そうでしょう。そうでしょう。
私は、皆がそう思い
誰も来ないことを願っていたが
こんなに来てしまった。
ザッと見渡して5〜6人。
今、この山の上の宿坊にいる人口の
半数以上が、釈迦になった私の姿を
見つめている。
そこへまた別のお坊さんが
冷湿布を持って来て下さったので
有り難く受け取った。
「すいません…ありがとうございます。」
そろそろ起き上がらなければ
皆が仕事の場に就けないではないか。
お坊さんもずっと釈迦の姿を
拝んでいるワケにもいくまい。
(↑別の意味ではまぁ、有りだけどね)
もう、ピーチちゃんが
破壊されても良いではないか!
(↑コワイコワイ)
私よ、思い切って立ち上がるぞ!!
フンッ…ぐっっっー!!!
まずは腕の力で上体を起こす。
が、やはり尋常じゃない
強烈な痛みがピーチちゃんを襲う。
「いいよいいよ。無理しなくて
座布団を敷いておくから
ここでずっと横になっていても
大丈夫だから。」
足元にいるお坊さんが
言ってくださるが、
ここの階段を通るたびに
釈迦を跨いで
上り下りしなければならないなんて、
もはや踏み絵ならぬ
跨ぎ釈迦ではないか!
(>☐<)
(↑新たなイベント作っちゃってる!)
「いや、もう本当に平気です。」
気合い。気合い。
痛みは気から。
(↑病なっ!)
痛くない痛くない。
私は階段から落ちていない。
(↑落ちたけどな)
千尋。千尋。
私は千尋。
(↑小梅だけどな!)
ぬぅぅ・・・おぉぉぉおおお!!!
大激痛に負けてたまるかーーっっっ!!!
ぐぅぉぉおおおおおおおお!!!!!
立ち上がった。
(@0@;)
クララが立ったなみの
(↑アルプスの少女ハイジね)
驚きと感動のスペクタクル。
こうして私は立ち上がり
釈迦からクララへと
変身を遂げたのだった。
(↑いや、千尋じゃないんかーい!)
「神田さん、4時まで
休憩して大丈夫だから。
4時になったらお勝手に来て。
もし、痛かったら来なくても
大丈夫だから!」
と塩野さんが言って下さったので
“4時まで休憩”
その言葉に甘えさせてもらった。
けど、痛くても行かないなんてことは
あり得ない。
インボイスを稼ぎに来たのだから…。
(T_T)
そろりそろりと階段を上がり
部屋に戻ったクララは、
すぐさまズボンをおろし
ロキソニンテープを
ピーチちゃんに貼り
鎮痛剤を飲んだ。
あー。
王様の言うことは絶対なのに。
(↑王様じゃないけどなっ)
絶対なのにーーーっっっ!!!
( ; ∀ ; )
クララは、冷やしませんでしたーーー!!!
(T⬜︎T)

『クララ・ピーチに
ロキソニンテープを貼る図』
ここで一句。
(↑え?また?)
『山眠る
クララが立ちて
桃割れる』
( ;∀;)
宿坊でのバイト話はつづく

AIに聞いたところ
↑このようなご返答をいただきました(笑)
※長文なのに
最後まで読んでいただき
ありがとうございました!
(≧◇≦)