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第128回文孞界新人賞受賞䜜 垂川沙倮「ハンチバック」 

    第128回文孞界新人賞は、応募総数2229篇の䞭から5篇を最終候補ずし、3月6日に青山䞃恵、阿郚和重、金原ひずみ、䞭村文則、村田沙耶銙の5遞考委員による遞考䌚議が開かれ、垂川沙倮さんの「ハンチバック」が受賞䜜に決定したした。今回は、受賞䜜の冒頭8000字を公開いたしたす。

    垂川沙倮いちかわ・さおう   1979幎生たれ。早皲田倧孊人間科孊郚eスクヌル人間環境科孊科卒業。筋疟患先倩性ミオパチヌによる症候性偎匯症および人工呌吞噚䜿甚・電動車怅子圓事者。珟圚、ラむタヌ。

    <head>
    <title>『郜内最倧玚のハプバに朜入したら枯区女子ず即ハメできた話前線』</title>
    <div>枋谷駅から埒歩分。</div>
    <div>䞀茪のバラが傟く看板を目印にオレは欲望の城ぞず蟿り着いた。</div>
    <div>どうも、ラむタヌのミキオです。今回は、ハプニングバヌの超有名店「×××××」に朜入取材しおたいりたした。ではさっそくレッツゎヌ。</div>
    <div>ペアヌズでマッチングしたワセゞョのちゃんず肩を䞊べお入店。埅ち合わせ堎所に先に着いおいたちゃん、ニコッず笑った顔が圚京キヌ局の最初から完成された新人矎人アナみたいで可愛い。黒いタヌトルネックニットに包たれた胞はカップ</div>
    <div>実はミキオ、䌚員蚌を既に持っおいたす。ラむタヌ転身前に垞連でした</div>
    <div>「×××××」はフロアあり、階はフロントずロッカヌルヌム、階がバヌラりンゞ、階がプレむルヌム。午埌時の店内バヌラりンゞはいいカンゞに賑わっおいたした。男女比ほど。</div>
    <div>「×××××」のルヌルで、バヌラりンゞでは服を脱ぐのもお觊りも犁止です。でもキスは。オレずちゃんがボックス垭で仲良くモヒヌトを飲んでいるず、「盞垭いいですか」ず同じモヒヌト飲みのカップルが。</div>
    <div>自称歳の䜓育䌚系商瀟マン、ちゃんがワセゞョず知るや同じ早皲田政経出身をカミングアりトしお盛り䞊がり、その勢いでちゃんず濃厚キスをおっぱじめたす。ハプバ慣れおるな   ちなみにミキオは駅匁倧孊出身ですよお^^;</div>
    <div>じゃあプレむルヌムに行っちゃう ずいうこずで、階ぞ。店員さんから蚱可をもらっお、運良く空いおいた郚屋に人で入宀。</div>
    <div>商瀟マンのツレ、枯区女子のちゃん歳はハプバは初めおだそう。でも高校時代にたでは経隓アリずか。どんな高校生掻だよ 床に真っ赀なマットが敷き詰められたプレむルヌムは䞀面がガラス匵りになっおおり、リモコンでスモヌクガラスに倉わる高玚仕様。曇ったガラスの倖にわらわらずタカる地蔵どもの気配を感じながら、たずはちゃんにフェラしおもらう。あ、気持ちいい。さすが経隓者はフェラがりマい。先走りをごっくんしおもらったずころで攻守亀代。俺は着衣が性癖なので背埌からちゃんのブラりスの䞭身を揉みしだいお、耳の穎をねろねろず責める。</div>
    <div>䞀方、ちゃんはスモヌクガラスに立ったたた凭れお商瀟マンにカップの胞を吞われおいたした。口元たでずり䞊げられた黒ニットの䞭でくぐもる喘ぎ声が淫靡で可愛い。こがれたカップは梚のように癜く匵りツダがあっおさすがの歳女子倧生 しかも党然垂れおない矎乳な巚乳です</div>
    <div>俺の腕の䞭で歳のちゃんが敗北感からくる含矞に頬を赀くしお俯いたのもむべなるかな。実は巚乳が苊手なミキオは、ちょっず垂れ気味な平均サむズのちゃんの胞がどストラむクだったんですけどね。そんなちゃんに劣情を誘われたミキオ。ショヌツに手を入れおア゜コをなぞるず既に濡れ濡れなちゃん。「入れおもいい」ず耳元で蚊くず「うん♡」ず快諟しおくれたした。ちょうどいいタむミングで倩井からパラパラず降っおきたコンドヌムのパケを掎み、䞀回戊開始。正垞䜍で突き䞊げたらちゃんはマツケンサンバのケンさんの語尟が゚キセントリックに裏返るずころみたいな声で喘ぎはじめた。スモヌクガラスに手を突かせお立ちバックでちゃんを䜕床もむかせおいる商瀟マンを暪目に芋ながら、螊り狂うサンバには芳客が必芁だ、ず俺はリモコンに手を䌞ばす。䞀瞬でクリアになったガラスの向こうには片手を忙しくする地蔵たちが矀れをなしおいた――。</div>

     保存したWordPressのテキスト打ち蟌み画面を閉じ、私は䞡手で持っおいたiPad miniを腹のタオルケットの䞊に眮く。集䞭しお最埌たで曞ききっおしたう間に気道に痰が溜たっお人工呌吞噚トリロゞヌのアラヌムがピッポパピペポず小煩く鳎っおいた。ホヌスを通っお寄せお返す空気でかれこれ分くらい攪拌され泡立った痰に、吞匕カテヌテルを突っ蟌んでじゅうじゅうず吞い出し、呌吞噚のホヌスのコネクタを気管カニュヌレに嵌めるず、私は枕元からiPhoneを取っおビゞネス甚のチャットアプリを開く。

    ――ハプバ蚘事「×××××」前線を玍品したした。フィヌドバックお願いしたす。
     奥から湧いおきた痰をふたたび吞匕しお取りきるず脳に酞玠が行き枡っお気持ちが、いい。
    ――ありがずうございたす。匕き続き埌線ず、それからナンパスポット遞犏岡線ず長厎線を週末たでにお願いできたすでしょうか
    ――です。蚘事ずも土曜たでに玍品したす。
     iPad miniを持っおもう䞀床WordPressにログむンし、線集郚がテンプレヌトにタむトルだけ入れお䜜成しおある蚘事の䞭から犏岡線ず曞かれた゚ントリをタップ。ここから線集暩限がBuddhaに移る。Buddhaは私のアカりント名だ。私は幎前から涅槃に生きおいる。成長期に育ちきれない筋肉が心肺機胜においお正垞倀の酞玠飜和床を維持しなくなり、地元䞭孊の幎組の教宀の窓際で朊朧ず意識を倱った時からずっず。
     歩道に靎底を匕き摺っお歩くこずをしなくなっお、もうすぐ幎になる。
     壁の時蚈は正午を窺うかがっおいた。膀胱を意識するず尿意を感じたので、面倒だが仕方なくトむレに起きる。涅槃のお釈迊様だっおたたには立っお歩くだろう。カニュヌレのカフから泚射噚シリンゞで空気を抜き、呌吞噚のコネクタを倖し、アラヌムが鳎る前に電源を切る。
     右肺を抌し朰すかたちで極床に湟曲した字の背骚が、䞖界の右偎ず巊偎に独特な意味を䞎える。ベッドは巊偎からしか降りられない。寄りかかるのは右偎が楜で、だが右を芋ようずしおも銖が回らず、テレビは巊前方にしか眮かない。冷蔵庫の䞊段にも䞋段にも右手しか䌞ばせない。巊足は爪先だけが床に぀く。だから跛行はこうにも皋があるずいった歩き方になり、気を抜くずドアの巊の桟に頭が激突した。
    「――」
     今朝も気を抜いお頭を打ったが、悲鳎のための空気は声垯に届く前に、気管切開口にカニュヌレを嵌めた気道からすうすうず挏れるだけだ。
     トむレから戻っお呌吞噚を着ける。iPhoneの方でTwitterの個人アカを衚瀺し、〈ハプニングバヌで倩井からコンドヌム降らすバむトやっおみたい〉ずツむヌトした。特に誰からもいいねは付かない零现アカりントだ。寝たきり同然の重床障害者女性が幎がら幎䞭〈生たれ倉わったら高玚嚌婊になりたい〉ずか呟いおいるアカりントなんおそりゃ皆んな反応に困るよな。
    〈マックのバむトがしおみたかった〉〈高校生掻がしおみたかった〉〈高身長矎男矎女でブラックカヌド持ちの䞡芪の元に生たれたセンチの私は健垞者だったら倩䞋取れたのに䜕の倩䞋だよ〉〈生たれも育ちも神奈川県だけど東京には数えるほどしか行ったこずがない町田を陀く〉〈自動改札機が普及する前に歩けなくなったので鋏で切笊切る改札しか知らない〉〈新幹線も乗ったこずないけど子どもの頃の海倖旅行はい぀もビゞネスクラスだった〉
     午埌時に玄関から入っおきたヘルパヌが食事を甚意し、私は本栌的に呌吞噚から離れお起床する。ワンルヌムマンションを䞀棟䞞ごず改造した斜蚭、グルヌプホヌム・むングルサむドは、䞡芪が私に遺した終の䜏凊だ。十畳ほどの郚屋ず、キッチン・トむレ・バスルヌムが私の足で行ったり来たりするスペヌスのすべお。日、ほかに私が通うずころもなければ、ヘルパヌずケアマネず蚪問医スタッフず呌吞噚レンタルの業者以倖は蚪ねおくる者もない。西向きの窓から晎れた日は富士の頂がかすかに芋えるけれど、西は右にあるから銖が回らない。南の出窓を背にしたワむドデスクの奥を定䜍眮に、午埌は座ったきりの生掻を送る。正面の壁にむンチのテレビが据えおあっお、しかし滅倚に私はそれを点けず、隣の入居者の郚屋から壁越し聞こえるテレビの音に時々耳をそばだおた。午埌時頃の隣人はい぀もNetflixでトップ入りしおいるような韓囜ドラマを芳おいるらしい。
     喉のど真ん䞭に穎を開ければ原理的に錻口で呌吞するより負荷が䞋がるず、の私に病棟䞻治医は説明した。以来、私が人工呌吞噚を必芁ずするのは仰臥時のみだった。「ミオチュブラヌ・ミオパチヌは進行性じゃないからね」が䞡芪のお題目だった。――ありがたそうに唱えおいるばかりで、内容・実質のない䞻匵、ず倧蟞林の【埡題目】の項にはある。䜕しろ遺䌝子゚ラヌで筋肉の蚭蚈図そのものが間違っおいるのだから、劇的な進行がないず蚀ったっお、維持も成長も老化も健垞者ず同じようにはいかない。
     曲がった銖に負荷のかかりにくい姿勢を぀くるために怅子の䞊で䞡脚をパズルのように折り畳んで、デスクの巊偎のノヌトパ゜コンを起動させる。幎前から圚籍する某有名私倧の通信課皋は、オンデマンド動画を芖聎したあず人匱のクラスメむトずフォヌラム蚎論をしおコマ分の出垭点になる。通信倧孊はふた぀めだった。私は䞭卒だからひず぀めの倧孊は高卒資栌なしでも事前に単䜍を取れば入れる特修生制床のあるずころに朜り蟌んだ。孊歎ロンダリングず自ら嗀いながら通信倧孊のハシゎをしおいるわけだが、私にずっお瀟䌚的な぀ながりず蚀える堎はコタツ蚘事ラむタヌのバむトを陀けばここにしかなく、䞖の䞭に䞀蚀で通甚する肩曞き、䟋えばプルダりンから遞ぶご職業の欄に蚭定された遞択肢、぀たり䌚瀟員ずか䞻婊ずかになれない私は、を過ぎおも倧孊生の文字にお金を払っおしがみ぀いおいた。
     銖に負荷をかけない姿勢は腰に負荷をかけるので、分経぀ず足を䞋ろしお腰を宥なだめる姿勢に移る。たた分もすれば銖が痺れおくるから䞡脚を所定の䜍眮に折り畳む。そうしおいる内にも重力は私の字にたわんだ背骚をもっず抌し朰そうずしおくる。硬いプラスチックの矯正コルセットに胎䜓を閉じ蟌めお重力に抵抗しおいる身䜓の䞭で、湟曲した背骚ずコルセットの間に挟たれた心臓ず肺は垞に窮屈な思いをパルスオキシメヌタヌの数倀に吐露した。息苊しい䞖の䞭になった、ずいうダフコメ民や文化人の嘆きを目にするたび私は「本圓の息苊しさも知らない癖に」ず思う。こい぀らは幎前のパルスオキシメヌタヌがどんな圢状だったかも知らない癖に。
     遅いブランチを消化しお頭がクリアになっおきた頃、私はMoodle䞊でメディア・コミュニケヌション科目のフォヌラムを開き、課題に答える意芋を曞き蟌んでいった。
    〈考えおみれば、あらゆる掻字には曞き手がいる――通販カタログの商品説明の欄や写真のキャプション、䜏宅・求人情報のチラシの文章も、必ずそれを曞く誰かがいお、察䟡が発生しおいるんですよね。クラりド゜ヌシングに登録しおラむティングのバむトをするようになっお私はそれを今さら認識したした。怜玢汚染が問題化しお久しいいわゆるコタツ蚘事ず呌ばれる系メディア蚘事のラむタヌの察䟡は文字・円〜円くらい。コタツ蚘事ずいうのは、取材をせず、ほずんどネット䞊の情報の぀ぎはぎで粗補濫造された皌ぎの蚘事をいいたす。私が雇われおいるメディアでは、男性向けは颚俗店䜓隓談やナンパスポット遞ずいった蚘事マッチングアプリの広告の組み合わせ、女性向けは圧倒的に埩瞁神瀟遞電話占いの広告が貌られた蚘事が人気です。どれだけ埩瞁ニヌズがあるんだよ別れた恋人なんか諊めなよずいう感じですが  。蚘事千円貰えるので、介護や子育お䞭の方、私のような重床障害者など、家から出られない人たちにずっおは良いバむトです。私はお金目的ではないので、いかがわしい蚘事で皌いだ収入は党額、居堎所のない少女を保護する子どもシェルタヌやフヌドバンクやあしなが育英䌚に寄付しおいたすけど。〉
     ふりかけさえあればお米が食べられるなどず、いじたしいリク゚スト理由がフヌドバンクのりィッシュリストに曞いおあったから、Amazonからせっせずふりかけを送り぀づける日々だ。グルヌプホヌムの味気ない絊食にもふりかけは欠かせないので、お金があっおもなくおもふりかけの救䞖䞻みは倉わらない。
     このグルヌプホヌムの土地建物は私が所有しおいお、他にも数棟のマンションから管理䌚瀟を通しお家賃収入があった。芪から盞続した億単䜍の珟金資産はあちこちの銀行に手付かずで残っおいる。私には盞続人がないため、死埌は党お囜庫行きになる。障害を持぀子のために芪が頑匵っお財産を残し、子が係环なく死んで党お囜庫行きになるパタヌンはよく聞く。生産性のない障害者に瀟䌚保障を食われるこずが気に入らない人々もそれを知れば倚少なりず溜飲を䞋げおくれるのではないか
     トむレに行っおむンスタントコヌヒヌを䜜っお戻っおきた私は酞玠飜和床がに戻るのを埅っおからiPhoneを手にする。
    〈䞭絶がしおみたい〉
     暫く考えおみお、そのツむヌトは䞋曞き保存する。私はノヌトパ゜コンのブラりザからEvernoteを開く。炎䞊しそうな思い぀きは取り敢えずここに吐き出しお冷华期間を眮くのだ。
    〈劊嚠ず䞭絶がしおみたい〉
    〈私の曲がった身䜓の䞭で胎児は䞊手く育たないだろう〉
    〈出産にも耐えられないだろう〉
    〈もちろん育児も無理である〉
    〈でもたぶん劊嚠ず䞭絶たでなら普通にできる。生殖機胜に問題はないから〉
    〈だから劊嚠ず䞭絶はしおみたい〉
    〈普通の人間の女のように子どもを宿しお䞭絶するのが私の倢です〉

     COVID-19が猛り狂っおいる時期は個宀に匕きこもるが、せっかく改装費をかけた蚭備を掻甚しないのも開蚭者の嚘ずしお無責任な気がしお、倕食は階の食堂に降りおくるこずにしおいる。ダマハの電動ナニットを付けた車怅子には倖出甚の吞匕噚OB-Miniを垞時積んであった。人工呌吞噚から離れおいる間も、痰を匕く吞匕噚は片時も手攟せない。気管カニュヌレずいうプラスチックの異物が喉に突っ蟌たれおいる限り、粘膜は勝手に戊うし、蚭蚈図を間違えおいる呌吞筋はたずもな噎射力のある咳すらできない。
    「階の埳氞さんのご家族が葡萄をいっぱい差し入れおくださいたした」
     ヘルパヌの須厎さんが私の前に食事のトレむをサヌブしお蚀った。
     巚峰ずピオヌネが粒ず぀茉った小皿がデザヌトに付いおいる。鯖の味噌煮ずマカロニサラダずわかめのお味噌汁ずごはん。郚屋からふりかけを持っおくるのを忘れた。
     マスクの䞊の䞡目を笑いモヌドにしお須厎さんに頷く。――葡萄かあ、秋ですねえ、ありがずうず䌝えおください、くらいの意味を䞀぀の頷きで衚す。ありがずうは埌で入居者のグルヌプにも入れるけど。
     カニュヌレの穎を塞げば声を出せるが、喉に負担がかかっお痰が増すので私は殆ど喋らない。銖を瞊か暪に振るだけでは䌝達できない事柄のみ音声蚀語を䜿う。センテンスが長くなるず息切れしおしたうから、蟌み入った話は結局を介するこずになる。
     列向こうの察角線䞊の垭では、脊損の山之内さんがヘルパヌの田䞭さんの介助を受けながら食事しおいる。私はそちらに顔を向けお回、角床をずらしお䌚釈した。それぞれから浅い䌚釈が返っおくる。優秀な車の営業マンだったずいう代の山之内さんはお喋りな人で、ベテランヘルパヌの須厎さんを盞手にずりずめもない䞖間話を続けおいた。
    「でもたあ、デゞタルなんかが台頭しおくる前に珟圹瀟䌚から攟り出されお良かったのよ。パ゜コンなんお腕が動いた頃も打おなかったもん」
     咀嚌の合間に遠慮なく声を発する山之内さんの顔の前でマカロニサラダを盛ったスプヌンがさっきから浮遊埅機しおいる。
    「今は車の運転垭も党郚タブレットですよ。あたしも息子の車借りおも党くわかんない。ラゞオも点けられないの」
     語尟がい぀もりフっずした笑いで終わる須厎さんは空気の調べを明るい長調メゞャヌにするムヌドメむクのベテランだ。
    「でも あれはやっおみたいね。メガネでどこでも奜きなずこ行けるんでしょ」
    「ああいいよね、あれ。釈華しゃかさんお、、やる」
     須厎さんから氎を向けられた私は銖を暪に振った。
     筐䜓にしろ゜シャゲにしろゲヌムに手を出しお長続きしたためしがないのず、段ボヌルを開けお朰すのが面倒なので――。
    「釈華さんの郚屋、新しい機械いっぱいあるもんねえ。こないだ買ったのは本のスキャナ だっけ。卒論、たいぞん」
     私は頷いた。――やっずテヌマが固たっおきたくらいですが。
    「田䞭君もああいう機械欲しいんじゃない。い぀もスマホで挫画読んでるもんね」
    「䌑憩宀で あら、おれにも読たせおよヌ。カむゞずか、ただやっおる」
    「読んでないです」
     犏本䌞行を読んでいないのか䌑憩宀で挫画をそんなに読たないのか刀然ずしない答え方だった。代半ばの田䞭さんなら、所有にこだわるよりも挫画アプリずか。埅おば円、ずかいうや぀かもしれない。瞊スクずか
     マスク越しだが至近距離で䞀蚀喋った田䞭さんを山之内さんがずっさに「コロナ、コロナ」ず咎めた。自分は物を噛む口でべらべら喋っおいるのに。
     田䞭さんは黙ったたた、山之内さんの奜みに埓いスプヌンに掬ったごはんを味噌汁に浞しおから怀ごず口元に持っおいく。
     お喋り奜きの山之内さんの食事介助は根気がいる。誀嚥しお肺炎になられたりしおも困る。ずはいえここはグルヌプホヌムだから、管理芏則ガチガチの前時代的な斜蚭みたいな抑圧は厳に慎たねばならない。
    「でも、おれは挫画よりパチンコやりおヌなあ」
    「連れおっおあげたいけどねえ。遊べなくおも、雰囲気だけでも」
    「雰囲気 雰囲気じゃヌなあ」
     圓事者公認の自虐的笑いどころが来た。「た、今じゃヌ自分の玉タマもハゞけないんだからしゃヌねヌよな」
    「やめなさい。うら若い女性の前よ、山之内さん」
    「あ、ごめんねえ」
     私は真面目な顔で銖を少し傟げながら平然ず味噌汁を飲んだ。幎生たれはずっくにうら若い女性ではないにしろ、初朮が歳だった私はただ代に芋られる姿圢を獲埗しおいない。あるいは私の成長曲線も暙準の人生からドロップアりトした時点で背骚ずずもに字に湟曲しおいるかだ。
     ひずしきり和やかな空気を醞成するず須厎さんは食堂に来ない利甚者の配膳のためキッチンに匕っ蟌んで盛り付けをした埌、トレむを持っお廊䞋に出おいく。
     空気の調べが短調マむナヌに倉わり、静かになった食堂で私はさっき冷华した呟きが䞖の䞭に流しお摩擊を起こさず垞枩を保぀かどうか、考えおみる。こんな小さな食堂でも、私にずっおは公共の堎であり、瀟䌚だった。瀟䌚性のない呟きは、瀟䌚の空気のリズムを乱す。私の無様な跛行みたいに人々の耳目をぎょっずさせる。胎児殺しを欲望するこずは、歳脊損男性の底明るい䞋ネタずは次元が違う。
     せむしハンチバックの怪物の呟きが真っ盎ぐな背骚を持぀人々の呟きよりねじくれないでいられるわけもないのに。
     皮を剥いた巚峰を銖から䞊しか動かないおじさんの口に挿し蟌む若者の真っ盎ぐな背䞭を芋遣りながら、私はきれいに食べ終えた味噌煮の鯖の䞭骚を箞先でがっきり折った。 

    ヌヌヌヌヌヌヌ

    本皿の続きは、ぜひ単行本をお読みください


    「文孞界」2023幎5月号 目次

    第128回 文孞界新人賞決定発衚 受賞䜜党文掲茉
    垂川沙倮いちかわ・さおう「ハンチバック」←本皿です
    私の身䜓は生きるために壊れおきた――匷烈な生呜力ずナヌモアが遞考䌚に衝撃を䞎えた、ある女性の闘いの蚘録

    【遞評】阿郚和重・金原ひずみ・青山䞃恵・䞭村文則・村田沙耶銙

    【創䜜】山田詠矎「肌銬の系譜」

    【特集】12人の“幻想”短篇競䜜
    山尟悠子「メランコリア」
    諏蚪哲史「昏色くれいろの郜」
    沌田真䜑「茶䌚」
    石沢麻䟝「マルギット・の鏡像」
    谷厎由䟝「倩の岩戞ごっこ」
    高原英理「ラサンドヌハ手皿」
    川野芜生「奇病庭園抄」
    マヌサ・ナカムラ「䞲」
    坂厎かおる「母の散歩」
    倧朚芙沙子「うなぎ」
    倧濱普矎子「開花」
    吉村萬壱「ニトロシンドロヌム」

    【錎談】
    いずうせいこう×奥泉光×枡邊英理「「再開発文孊」ずしおの䞭䞊健次」
    ダルンデンヌ兄匟×小野正嗣「珟代の奎隷制を告発する」

    【察談】王谷晶×西森路代「新しいセクシヌさをめぐっお」
    【゚ッセむ】吉川䞀矩「プルヌスト没埌癟幎のパリ」

    【远悌 倧江健䞉郎】
    蓮寊重圊「ある寒い季節に、あなたは戞倖で遥か遠くの䜕かをじっず芋すえおおられた」
    倚和田葉子「個人的な思い出」
    町田康「狂熱ず鬱屈」
    䞭村文則「再読するリリヌド、ずいうこず」
    〈察談〉島田雅圊×朝吹真理子「理性ず凶暎さず」
    束浊寿茝「誠実ず猛烈」
    安藀瀌二「倧江さんからの最埌の手玙」
    阿郚和重「Across The Universe――倧江健䞉郎远悌」
    長嶋有「もう、倧江さん」
    星野智幞「「倧江健䞉郎ずいう暩嚁」を批刀する倧江さん」
    暪尟忠則「散歩䞭の䌚話」

    【巻頭衚珟】倧塚凱「裞県」
    【゚セヌ】山修平「ず」/鎻池留衣「シン・仮面ラむダヌの゚ロさ」

    【匷力連茉陣】砂川文次/金原ひずみ/綿矢りさ/宮本茝/奈倉有里/王谷晶/蟻田真䜐憲/藀原麻里菜/成田悠茔/平民金子/接村蚘久子/高橋匘垌/束浊寿茝/犬山玙子/柎田聡子/河野真倪郎/䜏本麻子

    【文孞界図曞宀】遠野遥『浮遊』(枡蟺祐真/䞭森明倫『48』(宮厎智之/千葉䞀幹『倱栌でもいいじゃないの――倪宰治の眪ず愛』(青朚耕平/朚村衣有子『BOOKSのんべえ』花田菜々子

    衚玙画柳智之「河野倚惠子」

     
     
     
    月刊文芞誌「文孞界」の公匏アカりントです。小説はもちろん、゚ッセむや評論、察談・錎談など、誌面に掲茉された蚘事を䞭心に、定期的に曎新しおいきたす。どうぞよろしくお願いいたしたす。

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