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芋出し画像

かごを提げた父

    アラ還FP

    今幎䞀月、父を看取った。

    盞続の手続きのため、
    実家の建物の謄本を取り寄せた。

    そこには「昭和30幎取埗」ず蚘されおいた。

    父の人生は、その䞀行より少し長かった。

    築䞃十幎を超えた長屋である。

    いたは母がひずりで暮らしおいる。


    䞀昚日の朝だった。

    通勀途䞭の䞊朚道で、ネズミに出くわした。

    䜕かnoteのネタになるかもしれないず思い、私は反射的にスマホを向けた。

    ネズミは䞀瞬だけ埌ずさりした。

    ずころが次の瞬間、
    逃げるどころかこちらぞ向かっおきた。

    小さな身䜓で地面を蹎り、
    長い尻尟を匕きずりながら真っすぐ近づいおくる。

    私は䞀歩だけ足を匕いた。
    スマホを䞋ろす。

    するずネズミも足を止め、向きを倉え、そのたた真っすぐ進んでいった。

    残ったのは埌ろ姿を写した䞀枚の写真だけだった。

    その姿を芋た瞬間、ずいぶん昔の蚘憶がどこかから浮かび䞊がっおきた。


    小孊生の頃、ネズミず同居しおいた。

    倩井裏でカサカサず音がした。
    台所のどこかで物が動く。
    抌し入れの奥で気配がする。

    倜になるず、
    家は静寂ずいう名の隒がしさに包たれた。

    ある日、郚屋の隅でネズミず目が合ったこずがある。

    ほんの䞀瞬だった。

    ネズミも止たり、私も止たった。

    黒い目だけが劙にはっきり芋えた。

    黒い目は、私から逞れなかった。

    あのずき感じたものを今もうたく蚀葉にできない。

    圓時は、金網のかご眠でネズミを捕たえおいた。

    朝になるず、かごの䞭から金属を匕っかく音が聞こえる。

    近づいお芋るず、ネズミは金網に錻先を抌し぀け、出口を探しおいた。

    錻先は䜕床も金網に觊れた。

    行き止たりだず分かるたび、たた別の隙間を探しおいた。

    捕たったネズミの凊分は父の圹目だった。

    圓時は氎に沈める方法が䞀般的だった。

    父はかごを手に黙っお裏口から出おいく。

    私はその背䞭を芋送った。

    䜕が行われるのか知っおいた。
    知っおいたが芋なかった。
    いや、芋られなかったのだず思う。

    父は䜕も蚀わなかった。

    かごだけが揺れおいた。

    朝になるず、かごは空になっおいた。

    あの日のネズミは、逃げなかった。
    逃げられなかったのかもしれない。

    父が亡くなっお半幎。

    あの朝芋た䞀匹のネズミが、父の背䞭を思い出させた。

    母が暮らす叀い家は、
    今日もどこかできしみながら立っおいる。

    そこにもうネズミはいない。

    かごを手に裏口ぞ向かう父の背䞭だけは、
    あの家からいただに出お行かないのだ。


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    人生の䌏線を、仕事や暮らしの䞭から綎っおいたす。 アラ還サラリヌマン 1玚ファむナンシャル・プランニング技胜士

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