マイナス一度のスワン【エッセイ】
マイナス一度。スマホに表記された天気情報の気温を見て一気に寒気が身体に纏わりつく。北関東の朝は都心近郊に住んでいたころ、想像していたものよりはるかに寒かった。寒いというよりもはや痛い。東北や北海道なんて行ってしまったらわたしは凍死してしまうのではなかろうか。
寒さに耐えながら台所の換気扇を回し、タバコに火を点ける。
パートナーは介護の仕事をしている関係で、早番、遅番、夜勤と様々な勤務体系なのだが、早番の日は四時には起きなくてはならない。しかし何故かわたしの方がそわそわしてしまって次の日が早番だと思うと深夜二時には起きてしまう。ブランケットにくるまって寒さをしのぎながら、一目ぼれして買ったある日観た邦画に出てきたアヒルのランプの灯りだけを頼りにスマホを見たり本を読んだりする。
この時間はわたしだけのもの。
そしてほんの少し孤独を感じさみしくもある。
そのうち四時になり、のそのそとパートナーが起き上がる。起きてから二十分ほどのスピードで身支度をし、家を出る。それからまたわたしだけの時間が流れていく。朝六時くらいになっても外は真っ暗で、カーテンを開けると漆黒の闇が広がりブラックホールに飲み込まれるのはこんな感じなのかなとか思ったりもする。徐々に陽の光が差してくるも暖かさは感じない。
また台所へ行きタバコを咥える。すると外から「クエーッ」と鳥の鳴き声が聞こえてくる。白鳥。冬になると近くの池に白鳥が集ってくるのだ。群れで鳴きながら池を目指し、上空を飛んでいるのであろう白鳥たちの姿をボンヤリ頭のなかで描き、「冬だなあ」なんて、当たり前のことを思いながら、唐突にやってくる眠気に負け再びパートナーの体温のぬくもりが微かに残った布団へ潜る。